七千億EXPのレアキャラ ~いらっしゃいませ、どうぞご覧下さいませ~

太陽に弱ぃひと

文字の大きさ
28 / 53
【初級者 編】

繰り返す日々

しおりを挟む
 ◇

 翌日の朝――――

 米子は朝食を終えリーザの店を出た。
 とりあえず街はずれのフィールドを目指すため、先ずは装備品やアイテムの確認、及び準備を行う。

 リーザが現実世界でどのような暮らしをし、どのような人物なのかは今のところ不明だが、少なくとも朝から”夕方”まではこの世界にいることが分かった。

 そのリーザが店にいる時間帯は近場のフィールドへ赴き、経験値稼ぎができる。
 
 そう思った米子は、リーザにことを告げ店を出た。

 米子の経験値はリセットされたが、プレイヤー時に所持していたアイテムや装備品は消滅されずに残っており、貧困ながらも戦闘を可能とする。

 装備品及びアイテムは、プレイヤーとしてのシステムとは関係のない物だから、消滅されていないのだと考えられる。

 通常のゲーム世界で良く耳にする『アイテムストレージ』など、持ち歩けないほど多くの所持品を保存できる、都合のよいシステムやバッグなどはなく、持ち歩ける量しか持つことが出来ない。これは現実世界と同じ感覚で、リュックサックやバッグなどが無ければ、両手で荷物を持つしか方法はない。……加えるが、衣服のポケットに剣は入らない、というより危ないだろう。

 単独の戦闘において武器は必須であり、両手で武器以外の荷物を持つのは危険だ。だからこそ、何かしらの荷物入れを持たなければ身を亡ぼすこととなろう。

 所持品が消えずに残っていた米子にも、もちろんバッグはリュックサックなどを所持しているが、実用的とは言えず”見た目”重視だ。「だってJKだもん」が言い訳。きっと後一年もしたら「だってJDだもん」と、いうに違いない。

 そしてバックやリュックを所持している、とはいえ全てを持ち歩けるわけではないのだから、貸し倉庫のような場所に所持品を預けておかなければならない。ある程度経験値に余裕のある者たちは土地や建物をもっていたり、又はリーザのような店を構える者は、所持品をそこで保管しているようだ。

 肝心な米子には自身の所持する土地や建物がなく、居候である。

 それでもリーザから「部屋を自由に使っていい」と言われいることから、貸し倉庫に預けておいた所持品を今後移動する予定となっているようだ。

 『ストレージ』と呼ばれる貸し倉庫は、この世界における公共施設であり、その全てを住み人のみで経営している。使用するために支払う経験値は少なめで、とにかく安くて安全。

 これはゲーム初心者でも、ストレージが使えるようにとの配慮からだろう。

 米子が所持品をすぐにでも移動しないのは、使用料が少ないからとも言えるが、面倒くさいから移動しないのかもしれない。

 本日の予定は街はずれへ赴き戦闘を行う。
 今の米子にはそれしか頭になく、まさに戦闘狂――――

(――よし、準備完了)

 米子が、ストレージから引き出した所持品は全部で五つ。


 ⬛️ 可愛いショルダーバッグ(自称)

 ⬛️ 光攻撃魔法の魔道書(弱め)

 ⬛️ 補助アイテム五つ(適当)

 ⬛️ 短剣(軽量)

 ⬛️ 飴ちゃん(持てるだけ)


 これ以外にローブや回復魔法の魔道書など、もともと装備していた物は変わらず、所持したままの状態となっている。

 準備を終え、街はずれのフィールドへ向かう。

 始まりの街から数キロ先は草原が広がっている。
 数キロ先を目視しても全てが見渡せるはずもなく、敢えて表現するならば『見渡す限りの草原地帯』と言えば良いか、視界を遮るものは少なく、吹き抜ける風が心地よい。

 街の出入り口から街道が通っており、街道ではモンスターが姿を見せることは多くない。その弱者たる米子でも街道付近は、無理をしなければ安全である。

 その街道から数百メートルも離れればモンスターもいるため、初めは最弱と言われるスライム系や、野生動物を相手に経験値を稼ぐ。

 危なくなったら街へ戻るか街道付近まで逃げ、回復したらまた野生動物とぺちぺち戦闘――そう、子供同士が手をフル回転して喧嘩する感じ。

 気が遠くなる作業だが、米子はこの方法が最も効率的と考えた。

(あーあ、疲れたな……それに擦り傷だけでも超痛いし、NPCって理不尽だなあ。――でも頑張らなきゃ!)

 心身ともに疲れ果て、擦り傷程度でも激痛が走る――まさに命懸け。


 
 ――――――



 戦闘での、傷の痛みに耐えながら苦戦すること五日後――――

 一体のモンスターを倒す時間は多少減ってきたように思えるが、まだまだ苦戦中というところ。全く以て強くなった気がしない。

(はあっ、はあっ。……これじゃダメだ! ウサギさん程度で苦戦してたら、いつになっても回復アイテムのお世話になりっぱなしだよお!)

 米子が脳裏で言う『ウサギさん』とは『アンゴラ』と呼ばれる野生動物だ。その容姿は何処からどう見ても『アンゴラウサギ』なのだが、見た目はソックリでも体長は米子ほどあり獰猛である。因みにモンスターではないが多少の経験値を稼ぐことが可能だ。

 ここ五日で分かったことは、米子の魔力が低いため回復魔法も効果が薄いということ。命を失うわけにはいかない米子としては、常備品として回復アイテムを必要以上持ち歩くよう心掛ける。



 ――――――



 更に一〇日後――――

 成長した実感はないが、確実に一体に費やす戦闘時間が減ってきている。始まりの街を目視できる範囲ならば、苦戦することもなくなってきた。

(――攻撃魔法は、まだまだ弱いけど……短剣の扱いには慣れてきたかも? 怪我も少なくなってきたし、明日からはもっと街から離れてみよっかな?)

 短剣程度で倒せるモンスターには限りがあり、今の米子では危険と言えよう。
 そこで米子はモンスターを避け、野生動物をメインに狩り続ける。

 限りがある、とはいえ短剣の優遇された職業を取得していれば、始まりの街周辺のモンスターなどあくびの出る間に撃退してしまう。

 始まりの街周辺の野生動物から得られる経験値は少量で、撃退すること事態に期待感を抱くことはできないが、その肉を持ち帰り食材として売れば、経験値を手に入れることも可能であり無駄な戦闘とは言い難い。弱者たる米子としては、これが一番経験値を稼げるのだ。



 ――――――



 そして、米子が戦闘を始めて約一カ月後――

 着々と成長し、始まりの街から数キロ先まで行っても心に余裕が出来てきた。最近では経験値の少ない野生動物を避け、モンスターとのみ戦闘するよう心掛けており、使用する回復アイテムも減ってきたように思える。
 
 野生動物から得られる経験値と売却分の経験値を足したとしても、モンスターで得られる経験値のほうが遙かに多く、戦闘を行うならモンスターにしたほうが効率的と言える。それは如何に早く倒せるかによるのだが……野生動物保護団体様に、お叱りを受ける前に虐待は避けるべき。

(相手がスライムやバットなら安泰かな? 女子力? ってやつだけ凄い勢いで上がってきてるけど、全く強くなった気がしないのだけれど……意味あるのかな? コレ)

 今の米子に、女子力とはいったいどんな秘密があるのかは分かりかねないが、無駄に数値が高いことに関しては気がかり。

 JKのステータスはヒューマンがベースとなっていることから、基本的にステータスの数値が“ほぼ”一直線の状態。それに対し、女子力だけが数倍高いのだ――、にも関わらず、特殊な力を感じることはなく未だ謎なのである。

(もうこんな時間か。そろそろ帰らないと……今日は、このくらいで止めとこ)

 リーザのログアウトする時間は、陽の落ちる頃と聞かされている。夕暮れ時の空を見上げ、急ぎ足で始まりの街への帰路につく。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ

タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。 灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。 だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。 ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。 婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。 嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。 その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。 翌朝、追放の命が下る。 砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。 ――“真実を映す者、偽りを滅ぼす” 彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。 地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...