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【初級者 編】
繰り返しの日々 2
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◇
ここ毎日のことなのだが、帰宅して先ずリーザへ、一言。
勿論、タマも一緒だ。
「リーザさん、ただ今帰りました」
「ただ、ただいまぉ!」
「――おかえり。怪我はないかい?」
マイコが一礼すると、リーザが安否を心配する。これは米子がリーザの店で暮らしてから、毎日行われる挨拶のようなもの。街に入ると毎日出入り口にて出迎えてくれるのはタマで、街からはタマも同行し帰宅している。
取って付けたような会話だが、孤独感を感じる米子には家族と暮らしているかのような錯覚と、今日も生きていたという実感が湧く。
「着替えだけしてきますね。少しだけ待っていてください」
「ん? 前にも言ったけど、店のことは気にしなくていいんだよ? 店なんかよりシャワーでも浴びてスッキリして、ゆっくり食事でも――」
米子はリーザの声を掻き消すように言う。
「いいえ。わたしは鑑定も錬金も出来ませんが、受け付けくらいなら出来ますので……それにリーザさんの力になりたいんです」
リーザは日没となればログアウトして現実世界へ。居候として暮らす米子は少しでもリーザに協力出来ればと、二週間ほど前から店の受け付けを始めた。
当然ながら、米子には鑑定も錬金も出来ない。出来ることは受け付け後の物品を預かり保管庫へ移すだけのだが、店の営業時間が長くなったことにより売り上げは増えたと言える。
リーザとしても予約品の鑑定や錬金は時間に縛られることなく作業が行えるため、受付のみでも有り難いと思っているのだ。
「まあ、マイコのお陰で売り上げは増えたよ。それにあんた見た目がいいから人気あるしね。けど毎日そんなに疲れ切って帰ってくるのにさ……大変じゃないかい?」
「わたしは全然平気ですよ! ほら、元気いっぱいです! それにタマもいますし」
「はいはいぉ! おいらにお任せあれ」
米子は自身の元気さをアピールするために、訳の分からぬ体操をタマと同調したかのように行い、リーザへ大丈夫だと伝える。その行為がその場限りの振る舞いだと知りながらも、首を縦に振らなければ納得しない米子の性格を考慮すると、邪険にするわけにもいかない様子。
「――ったく。けど無理はするんじゃないよ、いいね?」
「はい! すぐ着替えてきますね」
――――――
店を閉めるのは午後九時、が決まり。たまに店内で寝てしまうこともあるが、最近慣れてきたのか眠ってしまうようなことは無くなってきた。もしかしたら戦闘を行い成長したからこそ、体力の上昇とともに疲れなくなってきているのかもしれない。
店の戸締まりをして店内の清掃を行い、シャワーを浴びたら適当に食事を済ませ、ベッドへ入る頃には日の変わる午前〇時に。
「今日も一日終わったね、タマ。お疲れ様」
「はいぉ……おいら寝、るぉ」
タマの生態から考えると眠けがあるのか疑いたくもなるが、午前〇時過ぎには必ずと言って良いほど動きが鈍くなる。プレイヤーだった時には、いつ何時呼び出しても『眠い』など口にしたことは無かったのだが、マスターである米子の変化に伴いタマにも何らかの形で変化が起きたのだろう。
その変化とは見た目は変わらず実体化したことや、眠気が襲う素振りを見せたりすることである。他に気づいた点をあげるならば、ぬいぐるみゆえ外見から表情を伺うことは皆無だが、喜怒哀楽を動作や口調などで感じ取れるようになった。
そう感じ取れるのは別に米子が特別な子だからではなく、リーザやベニネコのようなプレイヤーにも感じ取れているようだ。他のサポーターとは一線を画す‟何か”が、タマにはあるはず。
「うん。おやすみ、タマ」
返事もなく座ったまま、電池の切れたオモチャのようにピタリと停止するタマ。このまま夜が明けるまでどれだけ大きな物音を立てようと、決して目を覚ますことはない。
毎日がこの繰り返しで一日が終わってゆく。
(明日は、空音の森へ行ってみようかな? 結構強くなってきたし問題ないよね?)
こう、毎晩のように明日の課題を決めている米子。
明日は街はずれにある森へ赴き、経験値稼ぎをすることに決めた。
明日のためにもしっかり寝る。これは日々の暮らしから、現実世界でも必ず決まった時間に就眠していた健康的な生活からくるもので、疲れとは関係なく眠けが襲う。それが横浜 米子という少女っぽいNPCの日常。
本日も変わらず就眠前にあれこれ考えながらも、いつのまにやら深い眠りについていた……――――
――――――
――
ここ毎日のことなのだが、帰宅して先ずリーザへ、一言。
勿論、タマも一緒だ。
「リーザさん、ただ今帰りました」
「ただ、ただいまぉ!」
「――おかえり。怪我はないかい?」
マイコが一礼すると、リーザが安否を心配する。これは米子がリーザの店で暮らしてから、毎日行われる挨拶のようなもの。街に入ると毎日出入り口にて出迎えてくれるのはタマで、街からはタマも同行し帰宅している。
取って付けたような会話だが、孤独感を感じる米子には家族と暮らしているかのような錯覚と、今日も生きていたという実感が湧く。
「着替えだけしてきますね。少しだけ待っていてください」
「ん? 前にも言ったけど、店のことは気にしなくていいんだよ? 店なんかよりシャワーでも浴びてスッキリして、ゆっくり食事でも――」
米子はリーザの声を掻き消すように言う。
「いいえ。わたしは鑑定も錬金も出来ませんが、受け付けくらいなら出来ますので……それにリーザさんの力になりたいんです」
リーザは日没となればログアウトして現実世界へ。居候として暮らす米子は少しでもリーザに協力出来ればと、二週間ほど前から店の受け付けを始めた。
当然ながら、米子には鑑定も錬金も出来ない。出来ることは受け付け後の物品を預かり保管庫へ移すだけのだが、店の営業時間が長くなったことにより売り上げは増えたと言える。
リーザとしても予約品の鑑定や錬金は時間に縛られることなく作業が行えるため、受付のみでも有り難いと思っているのだ。
「まあ、マイコのお陰で売り上げは増えたよ。それにあんた見た目がいいから人気あるしね。けど毎日そんなに疲れ切って帰ってくるのにさ……大変じゃないかい?」
「わたしは全然平気ですよ! ほら、元気いっぱいです! それにタマもいますし」
「はいはいぉ! おいらにお任せあれ」
米子は自身の元気さをアピールするために、訳の分からぬ体操をタマと同調したかのように行い、リーザへ大丈夫だと伝える。その行為がその場限りの振る舞いだと知りながらも、首を縦に振らなければ納得しない米子の性格を考慮すると、邪険にするわけにもいかない様子。
「――ったく。けど無理はするんじゃないよ、いいね?」
「はい! すぐ着替えてきますね」
――――――
店を閉めるのは午後九時、が決まり。たまに店内で寝てしまうこともあるが、最近慣れてきたのか眠ってしまうようなことは無くなってきた。もしかしたら戦闘を行い成長したからこそ、体力の上昇とともに疲れなくなってきているのかもしれない。
店の戸締まりをして店内の清掃を行い、シャワーを浴びたら適当に食事を済ませ、ベッドへ入る頃には日の変わる午前〇時に。
「今日も一日終わったね、タマ。お疲れ様」
「はいぉ……おいら寝、るぉ」
タマの生態から考えると眠けがあるのか疑いたくもなるが、午前〇時過ぎには必ずと言って良いほど動きが鈍くなる。プレイヤーだった時には、いつ何時呼び出しても『眠い』など口にしたことは無かったのだが、マスターである米子の変化に伴いタマにも何らかの形で変化が起きたのだろう。
その変化とは見た目は変わらず実体化したことや、眠気が襲う素振りを見せたりすることである。他に気づいた点をあげるならば、ぬいぐるみゆえ外見から表情を伺うことは皆無だが、喜怒哀楽を動作や口調などで感じ取れるようになった。
そう感じ取れるのは別に米子が特別な子だからではなく、リーザやベニネコのようなプレイヤーにも感じ取れているようだ。他のサポーターとは一線を画す‟何か”が、タマにはあるはず。
「うん。おやすみ、タマ」
返事もなく座ったまま、電池の切れたオモチャのようにピタリと停止するタマ。このまま夜が明けるまでどれだけ大きな物音を立てようと、決して目を覚ますことはない。
毎日がこの繰り返しで一日が終わってゆく。
(明日は、空音の森へ行ってみようかな? 結構強くなってきたし問題ないよね?)
こう、毎晩のように明日の課題を決めている米子。
明日は街はずれにある森へ赴き、経験値稼ぎをすることに決めた。
明日のためにもしっかり寝る。これは日々の暮らしから、現実世界でも必ず決まった時間に就眠していた健康的な生活からくるもので、疲れとは関係なく眠けが襲う。それが横浜 米子という少女っぽいNPCの日常。
本日も変わらず就眠前にあれこれ考えながらも、いつのまにやら深い眠りについていた……――――
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