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【初級者 編】
レアキャラクター
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◇
夜が明ければ朝が来る。
ここ『EX』の世界にも夜明けと共に朝が訪れた。
この世界でも同じく朝が来て、昼もくればまた夜に。通常のゲームに良くある話だが、時間の流れが現実世界の何倍も早いようなことはなく、現実世界と並行して時が流れる仕様だ。
これは、今後”何も”起きなければの話であり、ゲームなのだから世界改変が行われる可能性もあるだろう。
この世界は『ゲーム』だ、ということを理解してほしい。
モンスターは誕生後、数日もすれば成人と相違ないほどに成長し、NPCは三年もすれば高校生くらいまでに急速に成長する。
だからといって寿命が短いというわけではない。成人からは老ける速度が極端に下がり、ほぼ容姿を保ったまま歳を重ねる。そしてモンスターに限りその概念は存在せず、成人状態から衰えることはない。
これはこの世界における理であり、モンスターやNPCが絶滅しないための、救済システムなのだろう。加えて、野生動物なども同様である。
例えばひとりのプレイヤーに対し、一日五〇体のモンスターを倒したとしよう。現実世界と同じように成長した場合、数ヶ月も経てばモンスターはおろかNPCさえも絶滅の危機に瀕する。
EXでのモンスター数はプレイヤーの数百倍から数千倍にも及ぶ。これは決してプレイヤー数が少ないのではなく、どちらかと言えばモンスターのほうが少ない。たった一名のプレイヤーに対し、数多くのモンスターが日々命を奪われていることから『モンスターの数は“より”多くなければならない』が正論なのではなかろうか。
それほどにプレイヤーとは強大な力を持っており、その気になればこの世界を滅ぼしかねない者たちの集まりなのだ。
だからこそレアキャラクターはプレイヤーたちの対立勢力として常に居続けなければならない。
僅か数名のチートプレイヤーがいるだけで、この世界は滅ぼされかねないのだから――……。
◆
『レアキャラクター』とは成長し強くなった住み人のことを指す。
『住み人』とはこの世界のみで暮らす全ての生命体である。
もともとレアキャラクターという名称の住み人は存在せず、プレイヤーたちが勝手に名付けた通称である。
では、なぜレアキャラクターと呼ぶのか。
当然、呼び名から察するに数が少ないからとも言えるが、数が少ないという理由だけでレアキャラクターと呼ぶ者は、少数派であろう。
レアキャラクターには必須条件があり、それは相応の利益を得られるキャラクターであることだ。
例えば、やっとの思いで探し出したキャラクターが、全く利益の欠片もなかった際、それをレアキャラクターとは言わない。敢えて名付けるならばゴミキャラクターなどとダメ出しされるのが関の山。
利益とは、この世界で最も重要視されている経験値の取得量を指す。
つまりレアキャラクターとは、数は極めて少なく“稀に”しか遭遇できないのだが、その“稀に”匹敵した取得経験値をもつキャラクターのことを呼ぶ。ボスモンスターに関しては、居場所や存在意義など明確となっていることが多いため、レアと称されることはない。
更にレアキャラクターは例外なく強大な力を持っていることが確認されている。
その力とは腕力や魔力のような、戦闘面で主に活躍する能力に限らず、知能だけが異常に高いキャラクターや、ただ脚の速いだけのキャラクターなど、その種類や数が定かではないようだ。
◆
本日は【八月三一日】
学生にとって夏休み最終日ということもあり、新学期を楽しみにしている者、まだまだ休みが欲しいと思う者、夏休みの宿題に追われる者……など、それぞれの思いは違えど、来たる新学期のために気持ちの切り替えを行う。
それは現在高校三年生であるベニネコやレイカも同じことで、話題にしたくはなくても何となく口にしてしまうのが心情と言うべきか。
「あーあ。明日から学校かー……やだなー」
始まりの街をフラフラと歩んでいるのはベニネコとレイカで、この二人が目指しているのは街の中央広場である。
「楽しみ……ふふ」
ベニネコとしては、まだまだ休みを欲しているようだが、勉学を好むレイカは明日からの新学期が楽しみな様子。レイカは普段ほとんど笑顔を見せず、無口で無表情な人物なのだが、勉学に至っては感情を露わにするようだ。
とは言え、悪知恵を思いついたかのような薄気味悪い笑いは、見たものに恐怖心を植え付けること間違い無いだろう。
「レイちゃんはいいよねー、頭良いから。わたしの成績は中の下だし……あ、下の中かも」
「がんば……です」
現実世界の話を淡々と進める二人は、高校生三年生であり同じ高校へ通う仲。互いの想いがどれほどのものかは不明だが、親友と呼ぶに相応しい仲との認識は、二人ともにもっている。
ふたりが中央広場へ向かっているのは人と会うためだ。始まりの街にある広場は、待ち合わせ場所として多くのプレイヤーや住人が使用していることから、人が溢れて混み合うことも多々あり。
なぜこの広場が混み合うのかというと、強さに関係なく転送できるからである。本日初めてこの世界の仲間入りとなった初心者だったとしても、始めに転送されるのは始まりの街なのである。つまり、何もせずとも転送陣は登録されており、フレイヤーなら誰もが辿り着ける街なのだ。
それゆえに、始まりの街の中央広場を待ち合わせの場として用いる者は多い。
何はともあれ、ふたりは日常会話などを交わしながら広場へ向かう。
夜が明ければ朝が来る。
ここ『EX』の世界にも夜明けと共に朝が訪れた。
この世界でも同じく朝が来て、昼もくればまた夜に。通常のゲームに良くある話だが、時間の流れが現実世界の何倍も早いようなことはなく、現実世界と並行して時が流れる仕様だ。
これは、今後”何も”起きなければの話であり、ゲームなのだから世界改変が行われる可能性もあるだろう。
この世界は『ゲーム』だ、ということを理解してほしい。
モンスターは誕生後、数日もすれば成人と相違ないほどに成長し、NPCは三年もすれば高校生くらいまでに急速に成長する。
だからといって寿命が短いというわけではない。成人からは老ける速度が極端に下がり、ほぼ容姿を保ったまま歳を重ねる。そしてモンスターに限りその概念は存在せず、成人状態から衰えることはない。
これはこの世界における理であり、モンスターやNPCが絶滅しないための、救済システムなのだろう。加えて、野生動物なども同様である。
例えばひとりのプレイヤーに対し、一日五〇体のモンスターを倒したとしよう。現実世界と同じように成長した場合、数ヶ月も経てばモンスターはおろかNPCさえも絶滅の危機に瀕する。
EXでのモンスター数はプレイヤーの数百倍から数千倍にも及ぶ。これは決してプレイヤー数が少ないのではなく、どちらかと言えばモンスターのほうが少ない。たった一名のプレイヤーに対し、数多くのモンスターが日々命を奪われていることから『モンスターの数は“より”多くなければならない』が正論なのではなかろうか。
それほどにプレイヤーとは強大な力を持っており、その気になればこの世界を滅ぼしかねない者たちの集まりなのだ。
だからこそレアキャラクターはプレイヤーたちの対立勢力として常に居続けなければならない。
僅か数名のチートプレイヤーがいるだけで、この世界は滅ぼされかねないのだから――……。
◆
『レアキャラクター』とは成長し強くなった住み人のことを指す。
『住み人』とはこの世界のみで暮らす全ての生命体である。
もともとレアキャラクターという名称の住み人は存在せず、プレイヤーたちが勝手に名付けた通称である。
では、なぜレアキャラクターと呼ぶのか。
当然、呼び名から察するに数が少ないからとも言えるが、数が少ないという理由だけでレアキャラクターと呼ぶ者は、少数派であろう。
レアキャラクターには必須条件があり、それは相応の利益を得られるキャラクターであることだ。
例えば、やっとの思いで探し出したキャラクターが、全く利益の欠片もなかった際、それをレアキャラクターとは言わない。敢えて名付けるならばゴミキャラクターなどとダメ出しされるのが関の山。
利益とは、この世界で最も重要視されている経験値の取得量を指す。
つまりレアキャラクターとは、数は極めて少なく“稀に”しか遭遇できないのだが、その“稀に”匹敵した取得経験値をもつキャラクターのことを呼ぶ。ボスモンスターに関しては、居場所や存在意義など明確となっていることが多いため、レアと称されることはない。
更にレアキャラクターは例外なく強大な力を持っていることが確認されている。
その力とは腕力や魔力のような、戦闘面で主に活躍する能力に限らず、知能だけが異常に高いキャラクターや、ただ脚の速いだけのキャラクターなど、その種類や数が定かではないようだ。
◆
本日は【八月三一日】
学生にとって夏休み最終日ということもあり、新学期を楽しみにしている者、まだまだ休みが欲しいと思う者、夏休みの宿題に追われる者……など、それぞれの思いは違えど、来たる新学期のために気持ちの切り替えを行う。
それは現在高校三年生であるベニネコやレイカも同じことで、話題にしたくはなくても何となく口にしてしまうのが心情と言うべきか。
「あーあ。明日から学校かー……やだなー」
始まりの街をフラフラと歩んでいるのはベニネコとレイカで、この二人が目指しているのは街の中央広場である。
「楽しみ……ふふ」
ベニネコとしては、まだまだ休みを欲しているようだが、勉学を好むレイカは明日からの新学期が楽しみな様子。レイカは普段ほとんど笑顔を見せず、無口で無表情な人物なのだが、勉学に至っては感情を露わにするようだ。
とは言え、悪知恵を思いついたかのような薄気味悪い笑いは、見たものに恐怖心を植え付けること間違い無いだろう。
「レイちゃんはいいよねー、頭良いから。わたしの成績は中の下だし……あ、下の中かも」
「がんば……です」
現実世界の話を淡々と進める二人は、高校生三年生であり同じ高校へ通う仲。互いの想いがどれほどのものかは不明だが、親友と呼ぶに相応しい仲との認識は、二人ともにもっている。
ふたりが中央広場へ向かっているのは人と会うためだ。始まりの街にある広場は、待ち合わせ場所として多くのプレイヤーや住人が使用していることから、人が溢れて混み合うことも多々あり。
なぜこの広場が混み合うのかというと、強さに関係なく転送できるからである。本日初めてこの世界の仲間入りとなった初心者だったとしても、始めに転送されるのは始まりの街なのである。つまり、何もせずとも転送陣は登録されており、フレイヤーなら誰もが辿り着ける街なのだ。
それゆえに、始まりの街の中央広場を待ち合わせの場として用いる者は多い。
何はともあれ、ふたりは日常会話などを交わしながら広場へ向かう。
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