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第二幕
ある意味テンプレな展開です
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「誤認の方が上位スキルだったんですね」
「だろうな、私の部屋から出ることがなかったからか、さほど危機感がなかったが、やろうと思えば私の首ぐらい狙えたんじゃないか?」
無理だろうなー。
フェリーシア様だと、精神に干渉する魔法にかなり耐性があるから、誤認をかけられていると気付きそう。
「そんなことより、あちらに説明してやれ、この世の終わりって顔してるじゃないか」
まぁ、そうだよね。
絶対に入ってくることが出来なくなるはずの結界を壊すことなくすんなり入ってきたら怖いよね。
「いきなり入ってきてすみません。フェリーシア様を匿ってくれませんかー」
などと軽く話しかけたら矢が飛んできた。
いやまぁ、敵と思うよね。
でもねー?
敵対意思があるかないかぐらい見極められないようじゃ、門番みたいな役割にならないかな。
とは言え、いつも通り反撃するわけにもいかないから矢だけを狙って消し去る。
「あのー、フェリーシア様をですね」
「ホーリーブレス」
聖女の魔法? エルフの森で?
「アクアブラスト」
きっちり相殺する。
周りに被害も出にくい水を選択する私えらい。
「あんたら、いい加減にしな!」
黒姉さんがちょっと怒りつつ、何か魔法を使おうとしたのだろうと思う。
ドリアードさんだし、エルフ達になら分かる何かをするつもりだったに違いない。
発動できなかったけど。
「サンクチュアリ」
「ちっ、余計な事を」
外へと魔力を出すことを禁じる結界魔法。
ほんと、余計な事してくれる。
フェリーシア様も黒姉さんも純粋な魔法特化だから、こういうのには弱い。
「魔法は封じました、任せます」
そんな聖女様(仮)の声を合図に一気になだれ込んでくるエルフ達。
これが、取り押さえるつもりなら私も抵抗なんてしない予定だった。
ただ、このバカ達は敵対意思はないと示している相手を殺しに来た。
「黒姉さん、いいですよね?」
「だめだ、取り返しがつかんことになる」
だから、確認を取ったんだけど、無茶振り要求である。
よし、頑張ろう。
大丈夫、私勇者だしチート無双だよ。
サンクチュアリの中だと誤認は自分にかけない限り、発動しないけどね?
「死ね!」
「嫌ですよ、話ぐらい聞いてくださいな」
簡素な作りの槍だったが、この際仕方ない。
簡単にぶん殴って、奪い取る。
これでも努力スキル伸ばすのは続けてたからね。
ー武神ー
武器であれば、なんでも使いこなせることの証。
あらゆる武器にて、縛られることなく、戦技を使えるようになる。
※戦技ってのは武器ごとに出せる魔法みたいなもの。魔力を使うけど、武器ごとに決まっているから、槍の戦技は剣で使えない。
っていうのを無視して使える程極めてますよって証。 称号って言った方が通じそうなスキル。
「戦技は、魔法扱いだから困るよね」
確実に1人ずつ無力化する。
気絶ぐらいは、やむ無しでしょう。
「お前、魔法職じゃなかったのかい」
「勇者ですからねー、頑張れば勝手に強くなる卑怯者ですよ」
実際、少ない努力で武神なんて手に入るぐらい卑怯者。
普通、それ以外をかなぐり捨てて、生涯をかけて手にするようなスキルをぶっ倒れるかなぐらいの手抜き努力で手に入るのだから。
「所で、黒姉さんでもフェリーシア様でもいいんですけど、あれは何でしょうか? 私の知識にないんですけど」
「……詰んだね。降伏を促してこないってことは、私が誰か全く理解していないらしい。すまんね、こっちのミスだ」
「一応答えるなら、トレントドラゴンという。どうせ聞いても仕方ないだろうから、詳細は省くがエルフの巫女が召喚する使い魔の1つと思っていて構わん。魔法なしでは、どうしようも無いな。森の中なら、あいつは万全の私ですら、手を焼く」
そんな説明を受けたので、手加減をすることをやめる。
サンクチュアリの弱点は、外側に魔力を流せなくなるだけで、内側で完結する魔法に対して無力であるということ。
そして、強烈な一撃が結界に加わると砕けるということ。
トレントドラゴンとやらの、攻撃が物理的で助かった。
槍を巫女とやらに投げつけ、木の幹がうねうねと巻き付いたような槍のようなものを素手で真下に叩きつける。
身体強化マシマシである。
もちろん、そんな無茶をすれば多少なりとも被害はこっちに来るけど、今は無視する。
手早く、こっちが全員を無力化しないと話すら聞いて貰えないのだから仕方ない。
「黒姉さん、任せます」
言い切る前に聖女様を狙う。
またサンクチュアリ使われたら面倒だし。
「寝てなさい!」
殺すのはまずそうだから、強烈な当て身である。
意識が飛んでくれたらそれでいい、殺すつもりで来てるのだから、それぐらいの怪我は甘んじて受け入れて欲しい。
そのままエルフの巫女とやらを狙う。
トレントドラゴンが邪魔だが、使い魔なら自己修復ぐらい持っているだろうと、刻む。
サンクチュアリさえ無ければ武器は用意出来るのだから。
「戦技、疾風陣」
陣なんて付いてるけど、別に結界を、貼るわけじゃない。
ただ、近寄れないぐらい風の刃を纏った剣の振り回しと言っていい。
「そんな、許さな──」
「邪魔」
エルフの巫女さんは、簡単に吹っ飛んで行ったので、大丈夫。
次は他のエルフ達。
「空間転移、からのー! フリージング」
氷結魔法で作った壁で矢を防ぐ。
「黒姉さん、どうにかなりませんか」
「悪いね、どうも私が誰なのか本当に理解してなかったらしい。私は盟約をしていてね、エルフを攻撃できない、いや傷付けられないんだ。過度な防御すらできん」
つまり、身分証明のつもりの魔法を使ったのに、無視して来ていると。
本来なら、かつて盟約をして貰えるほどの仲であると示せば話ぐらい聞いてくれたのだろう。
「あー、それで殺すなって言ってるんですね。私が勝手に怪我させるぐらいならまだしも、見える範囲で殺すのは見逃せないと」
「傷付けるな、とまでは言わないけどね。とは言え、その条件で止められるかい?」
「黒姉さんの事をちゃんと理解している人が出てくるまで粘りますよ」
いっそ殺そうと思ってただけに、かなり厳しい。
だけど、盟約を反故にするわけにもいかないからね。
盟約違反したら、大概死ぬことになる。
黒姉さんが死ぬのは嫌かな。
「撹乱してきます」
とりあえずは、防御だけに専念してもらって、こっちから1人ずつ無力化していこう。
眠らせる魔法ぐらい覚えておけば良かった。
これだけの人数相手に誤認は効きが悪い。
最初から掛けてれば良かったんだけど、サンクチュアリのせいで下地を壊されちゃったんだよね。
初見でどこまで浸透させるかってのが、有効な誤認を一旦切り離されたから、違和感を覚えやすいんだよねー。
なので、駆け抜けながら1人ずつとやろうとして失敗を悟った。
普通、味方が手早く片付けられたら、そちらに意識が行く。
次は自分かもしれないからだ。
ただ、もし勝ちたいのなら、悪手である。
では、どれが一番いいかと言うと、相手の勝利条件を崩すことだ。
この場合、矢でフェリーシア様を狙い、結界に衝突覚悟で突っ込めばいい。
黒姉さんは、傷付ける行為を避けねばならないため、結界を弱める他ない。
フェリーシア様は当然戦えるような状態では無いため、無理をして矢を処理しなければならない。
そうなると、私が防御に回らないといけないが、死ぬつもりで突っ込んでくるのを黒姉さんがいるため放置できない。
大丈夫、前回はそこに全てを捧げなきゃダメだったけど、この程度なら時間稼ぎぐらいはできる。
「反応速度向上、身体的危険関知排除」
イメージをより明確にする為に、誤認の範囲を言葉で指定する。
やることは単純、攻撃を全て防ぐ。
これだけ騒ぎになっているのだから、話し合いに持ち込める人が来てくれるはず。
というか、選択肢がない。
せめて、壁際とかなら守りやすかったのに。
飛んでくる矢は殺しに来てるから容赦がない。
風の魔法でとんでもないスピードで襲ってくる。
見たことないけど、銃で撃たれたらこんな感じかな?
さしもの私も、あの時みたいにとんでもスピードを維持するとすぐに倒れて終わりである。
間違って殺すわけにはいかないので、確実に対処する。
矢は1つ残らず安全に魔法で落とす。
突撃してくるやつだけ片っ端から無力化する。
最初の五分で私の身体が悲鳴をあげた。
誤認で痛覚も無かったことにしてるから、問題なく動いていることになっている。
あくまで、反応速度を上げているだけだから。
身体自体に無茶をさせていない。
だから、内側がズタズタになるまでは時間の猶予がある。
もちろん、バフ扱いしている間中、私に負荷がかかり続けるのでそのうちあの時と同じようになるだろうけど。
「確実に追い詰めているぞ、落ち着いて戦うんだ」
あーやだやだ、私が無理してるの誤魔化せないから、全然士気が落ちない。
「魔法で気絶させるの面倒なのだけど」
出来ないわけじゃない。
ただ、無駄に魔力を使えない。
こっちがすり減る膠着状態を維持するしかない。
殺していいなら少しづつ減らせるから楽なんだけどね。
「無理そうなら、諦めて構わないんだよ?」
「嫌です。やれる事全てをやりきります」
だってねぇ?
殺されない限り死なないらしいし?
魔王スキル万歳。
そんな悪あがきは、2時間後ぐらいに唐突に途切れる。
「貴様ら、騒がしいと思えば何をしている」
やっと、救世主登場である。
正直、意識が残ってた自分を褒めたいぐらいにズタズタ度が致命的になっていたのだ。
とは言え、まだ意識は手放せない。
「侵入者を排除しております」
「ここまで、馬鹿だったとはな…… あちらに我らが古き盟友、新樹の姫君がおられることも分からんのか! 何より、精霊がこれほどまでに怒りを示していてもなお気づかんとは、同じ血を引く者として嘆かわしい」
新樹の姫君は、黒姉さんだと思われる。
精霊は、分からない。
多分周りにいるんだと思うけど、これは無視。
別に助けてくれるわけじゃないみたいだし。
「しかし、侵入者です」
「もう良い、下がれ。これ以上の無礼は許さん」
まだ、気を抜けない。
嫌な予感がずっとしている。
大丈夫、まだ動ける。
「そこだ!」
ほんの一瞬の呼吸の間を狙った一撃。
ギリギリ間に合った。
「……あはは、意外と動けるものですね。私すごい」
本当にギリギリ、2度は無理かな……
そこで私の意識は完全に落ちた。
「だろうな、私の部屋から出ることがなかったからか、さほど危機感がなかったが、やろうと思えば私の首ぐらい狙えたんじゃないか?」
無理だろうなー。
フェリーシア様だと、精神に干渉する魔法にかなり耐性があるから、誤認をかけられていると気付きそう。
「そんなことより、あちらに説明してやれ、この世の終わりって顔してるじゃないか」
まぁ、そうだよね。
絶対に入ってくることが出来なくなるはずの結界を壊すことなくすんなり入ってきたら怖いよね。
「いきなり入ってきてすみません。フェリーシア様を匿ってくれませんかー」
などと軽く話しかけたら矢が飛んできた。
いやまぁ、敵と思うよね。
でもねー?
敵対意思があるかないかぐらい見極められないようじゃ、門番みたいな役割にならないかな。
とは言え、いつも通り反撃するわけにもいかないから矢だけを狙って消し去る。
「あのー、フェリーシア様をですね」
「ホーリーブレス」
聖女の魔法? エルフの森で?
「アクアブラスト」
きっちり相殺する。
周りに被害も出にくい水を選択する私えらい。
「あんたら、いい加減にしな!」
黒姉さんがちょっと怒りつつ、何か魔法を使おうとしたのだろうと思う。
ドリアードさんだし、エルフ達になら分かる何かをするつもりだったに違いない。
発動できなかったけど。
「サンクチュアリ」
「ちっ、余計な事を」
外へと魔力を出すことを禁じる結界魔法。
ほんと、余計な事してくれる。
フェリーシア様も黒姉さんも純粋な魔法特化だから、こういうのには弱い。
「魔法は封じました、任せます」
そんな聖女様(仮)の声を合図に一気になだれ込んでくるエルフ達。
これが、取り押さえるつもりなら私も抵抗なんてしない予定だった。
ただ、このバカ達は敵対意思はないと示している相手を殺しに来た。
「黒姉さん、いいですよね?」
「だめだ、取り返しがつかんことになる」
だから、確認を取ったんだけど、無茶振り要求である。
よし、頑張ろう。
大丈夫、私勇者だしチート無双だよ。
サンクチュアリの中だと誤認は自分にかけない限り、発動しないけどね?
「死ね!」
「嫌ですよ、話ぐらい聞いてくださいな」
簡素な作りの槍だったが、この際仕方ない。
簡単にぶん殴って、奪い取る。
これでも努力スキル伸ばすのは続けてたからね。
ー武神ー
武器であれば、なんでも使いこなせることの証。
あらゆる武器にて、縛られることなく、戦技を使えるようになる。
※戦技ってのは武器ごとに出せる魔法みたいなもの。魔力を使うけど、武器ごとに決まっているから、槍の戦技は剣で使えない。
っていうのを無視して使える程極めてますよって証。 称号って言った方が通じそうなスキル。
「戦技は、魔法扱いだから困るよね」
確実に1人ずつ無力化する。
気絶ぐらいは、やむ無しでしょう。
「お前、魔法職じゃなかったのかい」
「勇者ですからねー、頑張れば勝手に強くなる卑怯者ですよ」
実際、少ない努力で武神なんて手に入るぐらい卑怯者。
普通、それ以外をかなぐり捨てて、生涯をかけて手にするようなスキルをぶっ倒れるかなぐらいの手抜き努力で手に入るのだから。
「所で、黒姉さんでもフェリーシア様でもいいんですけど、あれは何でしょうか? 私の知識にないんですけど」
「……詰んだね。降伏を促してこないってことは、私が誰か全く理解していないらしい。すまんね、こっちのミスだ」
「一応答えるなら、トレントドラゴンという。どうせ聞いても仕方ないだろうから、詳細は省くがエルフの巫女が召喚する使い魔の1つと思っていて構わん。魔法なしでは、どうしようも無いな。森の中なら、あいつは万全の私ですら、手を焼く」
そんな説明を受けたので、手加減をすることをやめる。
サンクチュアリの弱点は、外側に魔力を流せなくなるだけで、内側で完結する魔法に対して無力であるということ。
そして、強烈な一撃が結界に加わると砕けるということ。
トレントドラゴンとやらの、攻撃が物理的で助かった。
槍を巫女とやらに投げつけ、木の幹がうねうねと巻き付いたような槍のようなものを素手で真下に叩きつける。
身体強化マシマシである。
もちろん、そんな無茶をすれば多少なりとも被害はこっちに来るけど、今は無視する。
手早く、こっちが全員を無力化しないと話すら聞いて貰えないのだから仕方ない。
「黒姉さん、任せます」
言い切る前に聖女様を狙う。
またサンクチュアリ使われたら面倒だし。
「寝てなさい!」
殺すのはまずそうだから、強烈な当て身である。
意識が飛んでくれたらそれでいい、殺すつもりで来てるのだから、それぐらいの怪我は甘んじて受け入れて欲しい。
そのままエルフの巫女とやらを狙う。
トレントドラゴンが邪魔だが、使い魔なら自己修復ぐらい持っているだろうと、刻む。
サンクチュアリさえ無ければ武器は用意出来るのだから。
「戦技、疾風陣」
陣なんて付いてるけど、別に結界を、貼るわけじゃない。
ただ、近寄れないぐらい風の刃を纏った剣の振り回しと言っていい。
「そんな、許さな──」
「邪魔」
エルフの巫女さんは、簡単に吹っ飛んで行ったので、大丈夫。
次は他のエルフ達。
「空間転移、からのー! フリージング」
氷結魔法で作った壁で矢を防ぐ。
「黒姉さん、どうにかなりませんか」
「悪いね、どうも私が誰なのか本当に理解してなかったらしい。私は盟約をしていてね、エルフを攻撃できない、いや傷付けられないんだ。過度な防御すらできん」
つまり、身分証明のつもりの魔法を使ったのに、無視して来ていると。
本来なら、かつて盟約をして貰えるほどの仲であると示せば話ぐらい聞いてくれたのだろう。
「あー、それで殺すなって言ってるんですね。私が勝手に怪我させるぐらいならまだしも、見える範囲で殺すのは見逃せないと」
「傷付けるな、とまでは言わないけどね。とは言え、その条件で止められるかい?」
「黒姉さんの事をちゃんと理解している人が出てくるまで粘りますよ」
いっそ殺そうと思ってただけに、かなり厳しい。
だけど、盟約を反故にするわけにもいかないからね。
盟約違反したら、大概死ぬことになる。
黒姉さんが死ぬのは嫌かな。
「撹乱してきます」
とりあえずは、防御だけに専念してもらって、こっちから1人ずつ無力化していこう。
眠らせる魔法ぐらい覚えておけば良かった。
これだけの人数相手に誤認は効きが悪い。
最初から掛けてれば良かったんだけど、サンクチュアリのせいで下地を壊されちゃったんだよね。
初見でどこまで浸透させるかってのが、有効な誤認を一旦切り離されたから、違和感を覚えやすいんだよねー。
なので、駆け抜けながら1人ずつとやろうとして失敗を悟った。
普通、味方が手早く片付けられたら、そちらに意識が行く。
次は自分かもしれないからだ。
ただ、もし勝ちたいのなら、悪手である。
では、どれが一番いいかと言うと、相手の勝利条件を崩すことだ。
この場合、矢でフェリーシア様を狙い、結界に衝突覚悟で突っ込めばいい。
黒姉さんは、傷付ける行為を避けねばならないため、結界を弱める他ない。
フェリーシア様は当然戦えるような状態では無いため、無理をして矢を処理しなければならない。
そうなると、私が防御に回らないといけないが、死ぬつもりで突っ込んでくるのを黒姉さんがいるため放置できない。
大丈夫、前回はそこに全てを捧げなきゃダメだったけど、この程度なら時間稼ぎぐらいはできる。
「反応速度向上、身体的危険関知排除」
イメージをより明確にする為に、誤認の範囲を言葉で指定する。
やることは単純、攻撃を全て防ぐ。
これだけ騒ぎになっているのだから、話し合いに持ち込める人が来てくれるはず。
というか、選択肢がない。
せめて、壁際とかなら守りやすかったのに。
飛んでくる矢は殺しに来てるから容赦がない。
風の魔法でとんでもないスピードで襲ってくる。
見たことないけど、銃で撃たれたらこんな感じかな?
さしもの私も、あの時みたいにとんでもスピードを維持するとすぐに倒れて終わりである。
間違って殺すわけにはいかないので、確実に対処する。
矢は1つ残らず安全に魔法で落とす。
突撃してくるやつだけ片っ端から無力化する。
最初の五分で私の身体が悲鳴をあげた。
誤認で痛覚も無かったことにしてるから、問題なく動いていることになっている。
あくまで、反応速度を上げているだけだから。
身体自体に無茶をさせていない。
だから、内側がズタズタになるまでは時間の猶予がある。
もちろん、バフ扱いしている間中、私に負荷がかかり続けるのでそのうちあの時と同じようになるだろうけど。
「確実に追い詰めているぞ、落ち着いて戦うんだ」
あーやだやだ、私が無理してるの誤魔化せないから、全然士気が落ちない。
「魔法で気絶させるの面倒なのだけど」
出来ないわけじゃない。
ただ、無駄に魔力を使えない。
こっちがすり減る膠着状態を維持するしかない。
殺していいなら少しづつ減らせるから楽なんだけどね。
「無理そうなら、諦めて構わないんだよ?」
「嫌です。やれる事全てをやりきります」
だってねぇ?
殺されない限り死なないらしいし?
魔王スキル万歳。
そんな悪あがきは、2時間後ぐらいに唐突に途切れる。
「貴様ら、騒がしいと思えば何をしている」
やっと、救世主登場である。
正直、意識が残ってた自分を褒めたいぐらいにズタズタ度が致命的になっていたのだ。
とは言え、まだ意識は手放せない。
「侵入者を排除しております」
「ここまで、馬鹿だったとはな…… あちらに我らが古き盟友、新樹の姫君がおられることも分からんのか! 何より、精霊がこれほどまでに怒りを示していてもなお気づかんとは、同じ血を引く者として嘆かわしい」
新樹の姫君は、黒姉さんだと思われる。
精霊は、分からない。
多分周りにいるんだと思うけど、これは無視。
別に助けてくれるわけじゃないみたいだし。
「しかし、侵入者です」
「もう良い、下がれ。これ以上の無礼は許さん」
まだ、気を抜けない。
嫌な予感がずっとしている。
大丈夫、まだ動ける。
「そこだ!」
ほんの一瞬の呼吸の間を狙った一撃。
ギリギリ間に合った。
「……あはは、意外と動けるものですね。私すごい」
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そこで私の意識は完全に落ちた。
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