好きに生きるだけですが、問題があるのですか?

雪蟻

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第二章

裁きのひととき

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その日、彼女が怒り狂っているのを見た。
なんでも、ルルと呼ばれる、気配操作の魔法を扱う子が殺されたらしい。
悪魔が関わっていたらしいが、悪魔が仕掛けたのは、きっかけのみ。
つまり、実行者は、少なくともそれをすることを望んでいたということらしい。
私は、悪魔に対して詳しくはないけど、ハイエルフがしょうもない嘘をつくとは思えなかった。
だって、興味のないことには、とことん関心を示さないのが、ハイエルフだ。
その彼女が、涙を流しながら、怒りを示しているのだ。
どう考えても、悪いのは実行者なのだろう。
ハイエルフは、関心のある人間が殺された時、制裁を加えるのはよくある話だ。
だけど、それは、淡々と容赦のないものだ。
あんなに、人間の私にすら分かるほど、取り乱し、感情を剥き出しにすることは無い。
つまり、起きた結果が、あまりにも許せないことなのだ。
その他の人間に被害を出さずに、実行者とそれに関係した者以外に手を出そうとしてない事からも、分かる。
普通なら、まとめて吹き飛ばせばいい。
それをしないということは、彼女の中で、どうしても直接、やらねばならない理由があるからであろう。
よせばいいのに、私は、近付いた。
何が、彼女をそこまでさせるのか、気になったからだ。
近づいて、私は後悔した。

「ルルは、あの日、私のあげた指輪を外していました、それは、心許した貴方に、その身を任せるのに、他者から与えられた物をつけているのは失礼だと思ったからです。それだけ、貴方を好ましく思い、信頼していた、なのに、なんで、ルルを殺したのです。ルルは、貴方になら、全てを捧げられると、それ程までの信頼を、なぜ裏切れるのです。答えなさい! 人間のオス! 何が足りなかったのです! ルルに何が!」

ああ、この子は、私たち人間なんかより、よっぽど美しい生き物だ。
好ましく思ったお気に入りが、殺されたことを制裁するより、殺す結論に至った理由が欲しいのだ。
納得したいから、取るに足らない理由でも、自分を愛したであろう同族を、裏切り、殺すことになった、その理由を知りたいのだ。
そんなこと、どうでもいいと切り捨てるはずのハイエルフである彼女は、理由を望んでいる。

でも、ごめんなさい。
貴女には理解できないと思う。
人間は、貴女と比べ物にならないぐらい、低俗だから。

「知らねぇよ、あいつがそんなに愛してくれてたなんて、俺に近づいて、俺の研究成果を奪おうとしてるって方が、よっぽど信じられる。だから、殺したんだよ! そう言われたしな!」
「共に過ごし、好ましく思い、一緒になろうと思っていた相手より、突然現れた、人を騙すことに長けている悪魔の方が信用出来たということですか、そんな事で、私のルルは殺されたんですか、分かりました」

あぁ、そんなやつの言葉で、泣かないで欲しい。
貴女には、いつものように、淡々と話していて欲しい。
悲しみや怒りに染まらないで欲しい。
低俗な私たちに、揺さぶられないで欲しい。

「ヒールウィンド、泣かないでよ。お願いだから、いつものように、魔法を見て楽しんでた時に、戻ってよ、私の魔法は、聖女よりすごいんでしょ! だから、泣かないで、こんなクズの言葉に涙なんて流さないで!」
もう見ていたくない、やっと分かった。
ハイエルフだから、そんな理由で、嫌っていたのがバカみたいだ。
この子は、見た目通り、幼い子。
長く生きたついでに、ここに来たんじゃない。
ハイエルフの長い寿命からしたら、ほんとに子供のまま。
そんな中、人を理解しようとしてくれてた。
理解に苦しむと切り捨ててしまえばいいのに、いつもこの街にいたのは、知りたかったから。
魔法を、人間という存在を。
気に入らないという程じゃないから、残ってくれていた。
まだ、沢山、この子は学びたいんだ。
本当に知らないから。
だから、私の魔法を、自分じゃ思いつかないって言ったんだ。
もう、誰も、この子を傷つけさせない。
私の持てる魔法で癒してあげる。
だから、もう泣かないで。

「素敵な魔法です。こんなに緻密な魔法を、人間が短い寿命で成し遂げる。感嘆に値します。だから、泣くなと言うのなら、泣きませんから、そんなに魔力を無駄にしないでください。勿体ないです。貴女はより研鑽を積み、もっと素敵な魔法を作り上げていけます。私のために、使い過ぎないでください」
そう言うと、彼女は、私の魔法を強制的に止めた。
私に負担がかからないように、ピッタリの力で相殺して見せた。
ほんと、ずるいわよ。

「ルルに足りなかったのは、時間ですね。貴方ともっと長い時間語り合えていたなら、悪魔などに惑わされなかったのでしょう。ですが、許しません。ハイエルフの制裁は手を抜いてはならない。同族に失礼ですから、徹底的に、殺します。自らが崩壊する恐怖と共に死になさい、断末魔の絶叫は、悪魔が好むものですからね、堕ちろ」
禍々しい魔力を放つ、魔法陣が現れたかと思えば、彼女の制裁対象達はみな、消え去った。
きっと、地獄の苦しみの果てに死ぬのだろう。

「あの、少し恥ずかしいのですが、離れて貰えますか、私は見た目ほど子供ではありません」
「ハイエルフは些細なことは気にしないはずでしょ。私よりは長生きかもしれないけど、まだ子供よ。大人しく抱かれてなさい」
もう誰にも渡さない。
そんなことは出来ないけれど、せめて、今この時だけは、私の腕の中で守られていて欲しい。
心をざわつかせることなく、穏やかなる時を過ごして欲しい。
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