19 / 59
第二章
裁きのひととき
しおりを挟む
その日、彼女が怒り狂っているのを見た。
なんでも、ルルと呼ばれる、気配操作の魔法を扱う子が殺されたらしい。
悪魔が関わっていたらしいが、悪魔が仕掛けたのは、きっかけのみ。
つまり、実行者は、少なくともそれをすることを望んでいたということらしい。
私は、悪魔に対して詳しくはないけど、ハイエルフがしょうもない嘘をつくとは思えなかった。
だって、興味のないことには、とことん関心を示さないのが、ハイエルフだ。
その彼女が、涙を流しながら、怒りを示しているのだ。
どう考えても、悪いのは実行者なのだろう。
ハイエルフは、関心のある人間が殺された時、制裁を加えるのはよくある話だ。
だけど、それは、淡々と容赦のないものだ。
あんなに、人間の私にすら分かるほど、取り乱し、感情を剥き出しにすることは無い。
つまり、起きた結果が、あまりにも許せないことなのだ。
その他の人間に被害を出さずに、実行者とそれに関係した者以外に手を出そうとしてない事からも、分かる。
普通なら、まとめて吹き飛ばせばいい。
それをしないということは、彼女の中で、どうしても直接、やらねばならない理由があるからであろう。
よせばいいのに、私は、近付いた。
何が、彼女をそこまでさせるのか、気になったからだ。
近づいて、私は後悔した。
「ルルは、あの日、私のあげた指輪を外していました、それは、心許した貴方に、その身を任せるのに、他者から与えられた物をつけているのは失礼だと思ったからです。それだけ、貴方を好ましく思い、信頼していた、なのに、なんで、ルルを殺したのです。ルルは、貴方になら、全てを捧げられると、それ程までの信頼を、なぜ裏切れるのです。答えなさい! 人間のオス! 何が足りなかったのです! ルルに何が!」
ああ、この子は、私たち人間なんかより、よっぽど美しい生き物だ。
好ましく思ったお気に入りが、殺されたことを制裁するより、殺す結論に至った理由が欲しいのだ。
納得したいから、取るに足らない理由でも、自分を愛したであろう同族を、裏切り、殺すことになった、その理由を知りたいのだ。
そんなこと、どうでもいいと切り捨てるはずのハイエルフである彼女は、理由を望んでいる。
でも、ごめんなさい。
貴女には理解できないと思う。
人間は、貴女と比べ物にならないぐらい、低俗だから。
「知らねぇよ、あいつがそんなに愛してくれてたなんて、俺に近づいて、俺の研究成果を奪おうとしてるって方が、よっぽど信じられる。だから、殺したんだよ! そう言われたしな!」
「共に過ごし、好ましく思い、一緒になろうと思っていた相手より、突然現れた、人を騙すことに長けている悪魔の方が信用出来たということですか、そんな事で、私のルルは殺されたんですか、分かりました」
あぁ、そんなやつの言葉で、泣かないで欲しい。
貴女には、いつものように、淡々と話していて欲しい。
悲しみや怒りに染まらないで欲しい。
低俗な私たちに、揺さぶられないで欲しい。
「ヒールウィンド、泣かないでよ。お願いだから、いつものように、魔法を見て楽しんでた時に、戻ってよ、私の魔法は、聖女よりすごいんでしょ! だから、泣かないで、こんなクズの言葉に涙なんて流さないで!」
もう見ていたくない、やっと分かった。
ハイエルフだから、そんな理由で、嫌っていたのがバカみたいだ。
この子は、見た目通り、幼い子。
長く生きたついでに、ここに来たんじゃない。
ハイエルフの長い寿命からしたら、ほんとに子供のまま。
そんな中、人を理解しようとしてくれてた。
理解に苦しむと切り捨ててしまえばいいのに、いつもこの街にいたのは、知りたかったから。
魔法を、人間という存在を。
気に入らないという程じゃないから、残ってくれていた。
まだ、沢山、この子は学びたいんだ。
本当に知らないから。
だから、私の魔法を、自分じゃ思いつかないって言ったんだ。
もう、誰も、この子を傷つけさせない。
私の持てる魔法で癒してあげる。
だから、もう泣かないで。
「素敵な魔法です。こんなに緻密な魔法を、人間が短い寿命で成し遂げる。感嘆に値します。だから、泣くなと言うのなら、泣きませんから、そんなに魔力を無駄にしないでください。勿体ないです。貴女はより研鑽を積み、もっと素敵な魔法を作り上げていけます。私のために、使い過ぎないでください」
そう言うと、彼女は、私の魔法を強制的に止めた。
私に負担がかからないように、ピッタリの力で相殺して見せた。
ほんと、ずるいわよ。
「ルルに足りなかったのは、時間ですね。貴方ともっと長い時間語り合えていたなら、悪魔などに惑わされなかったのでしょう。ですが、許しません。ハイエルフの制裁は手を抜いてはならない。同族に失礼ですから、徹底的に、殺します。自らが崩壊する恐怖と共に死になさい、断末魔の絶叫は、悪魔が好むものですからね、堕ちろ」
禍々しい魔力を放つ、魔法陣が現れたかと思えば、彼女の制裁対象達はみな、消え去った。
きっと、地獄の苦しみの果てに死ぬのだろう。
「あの、少し恥ずかしいのですが、離れて貰えますか、私は見た目ほど子供ではありません」
「ハイエルフは些細なことは気にしないはずでしょ。私よりは長生きかもしれないけど、まだ子供よ。大人しく抱かれてなさい」
もう誰にも渡さない。
そんなことは出来ないけれど、せめて、今この時だけは、私の腕の中で守られていて欲しい。
心をざわつかせることなく、穏やかなる時を過ごして欲しい。
なんでも、ルルと呼ばれる、気配操作の魔法を扱う子が殺されたらしい。
悪魔が関わっていたらしいが、悪魔が仕掛けたのは、きっかけのみ。
つまり、実行者は、少なくともそれをすることを望んでいたということらしい。
私は、悪魔に対して詳しくはないけど、ハイエルフがしょうもない嘘をつくとは思えなかった。
だって、興味のないことには、とことん関心を示さないのが、ハイエルフだ。
その彼女が、涙を流しながら、怒りを示しているのだ。
どう考えても、悪いのは実行者なのだろう。
ハイエルフは、関心のある人間が殺された時、制裁を加えるのはよくある話だ。
だけど、それは、淡々と容赦のないものだ。
あんなに、人間の私にすら分かるほど、取り乱し、感情を剥き出しにすることは無い。
つまり、起きた結果が、あまりにも許せないことなのだ。
その他の人間に被害を出さずに、実行者とそれに関係した者以外に手を出そうとしてない事からも、分かる。
普通なら、まとめて吹き飛ばせばいい。
それをしないということは、彼女の中で、どうしても直接、やらねばならない理由があるからであろう。
よせばいいのに、私は、近付いた。
何が、彼女をそこまでさせるのか、気になったからだ。
近づいて、私は後悔した。
「ルルは、あの日、私のあげた指輪を外していました、それは、心許した貴方に、その身を任せるのに、他者から与えられた物をつけているのは失礼だと思ったからです。それだけ、貴方を好ましく思い、信頼していた、なのに、なんで、ルルを殺したのです。ルルは、貴方になら、全てを捧げられると、それ程までの信頼を、なぜ裏切れるのです。答えなさい! 人間のオス! 何が足りなかったのです! ルルに何が!」
ああ、この子は、私たち人間なんかより、よっぽど美しい生き物だ。
好ましく思ったお気に入りが、殺されたことを制裁するより、殺す結論に至った理由が欲しいのだ。
納得したいから、取るに足らない理由でも、自分を愛したであろう同族を、裏切り、殺すことになった、その理由を知りたいのだ。
そんなこと、どうでもいいと切り捨てるはずのハイエルフである彼女は、理由を望んでいる。
でも、ごめんなさい。
貴女には理解できないと思う。
人間は、貴女と比べ物にならないぐらい、低俗だから。
「知らねぇよ、あいつがそんなに愛してくれてたなんて、俺に近づいて、俺の研究成果を奪おうとしてるって方が、よっぽど信じられる。だから、殺したんだよ! そう言われたしな!」
「共に過ごし、好ましく思い、一緒になろうと思っていた相手より、突然現れた、人を騙すことに長けている悪魔の方が信用出来たということですか、そんな事で、私のルルは殺されたんですか、分かりました」
あぁ、そんなやつの言葉で、泣かないで欲しい。
貴女には、いつものように、淡々と話していて欲しい。
悲しみや怒りに染まらないで欲しい。
低俗な私たちに、揺さぶられないで欲しい。
「ヒールウィンド、泣かないでよ。お願いだから、いつものように、魔法を見て楽しんでた時に、戻ってよ、私の魔法は、聖女よりすごいんでしょ! だから、泣かないで、こんなクズの言葉に涙なんて流さないで!」
もう見ていたくない、やっと分かった。
ハイエルフだから、そんな理由で、嫌っていたのがバカみたいだ。
この子は、見た目通り、幼い子。
長く生きたついでに、ここに来たんじゃない。
ハイエルフの長い寿命からしたら、ほんとに子供のまま。
そんな中、人を理解しようとしてくれてた。
理解に苦しむと切り捨ててしまえばいいのに、いつもこの街にいたのは、知りたかったから。
魔法を、人間という存在を。
気に入らないという程じゃないから、残ってくれていた。
まだ、沢山、この子は学びたいんだ。
本当に知らないから。
だから、私の魔法を、自分じゃ思いつかないって言ったんだ。
もう、誰も、この子を傷つけさせない。
私の持てる魔法で癒してあげる。
だから、もう泣かないで。
「素敵な魔法です。こんなに緻密な魔法を、人間が短い寿命で成し遂げる。感嘆に値します。だから、泣くなと言うのなら、泣きませんから、そんなに魔力を無駄にしないでください。勿体ないです。貴女はより研鑽を積み、もっと素敵な魔法を作り上げていけます。私のために、使い過ぎないでください」
そう言うと、彼女は、私の魔法を強制的に止めた。
私に負担がかからないように、ピッタリの力で相殺して見せた。
ほんと、ずるいわよ。
「ルルに足りなかったのは、時間ですね。貴方ともっと長い時間語り合えていたなら、悪魔などに惑わされなかったのでしょう。ですが、許しません。ハイエルフの制裁は手を抜いてはならない。同族に失礼ですから、徹底的に、殺します。自らが崩壊する恐怖と共に死になさい、断末魔の絶叫は、悪魔が好むものですからね、堕ちろ」
禍々しい魔力を放つ、魔法陣が現れたかと思えば、彼女の制裁対象達はみな、消え去った。
きっと、地獄の苦しみの果てに死ぬのだろう。
「あの、少し恥ずかしいのですが、離れて貰えますか、私は見た目ほど子供ではありません」
「ハイエルフは些細なことは気にしないはずでしょ。私よりは長生きかもしれないけど、まだ子供よ。大人しく抱かれてなさい」
もう誰にも渡さない。
そんなことは出来ないけれど、せめて、今この時だけは、私の腕の中で守られていて欲しい。
心をざわつかせることなく、穏やかなる時を過ごして欲しい。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
慈愛と復讐の間
レクフル
ファンタジー
とある国に二人の赤子が生まれた。
一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。
慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。
これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。
だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。
大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。
そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。
そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。
慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。
想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる