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十話
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「誕生日のお祝い?」
蓮くんはぱちくりと目を輝かせ、きょとんとした顔をした。
「うん。そろそろ誕生日でしょ?何か欲しい物とか聞いとこうかな~って」
「うーん、、、」
こういうのはサプライズで用意するものなんだろうけど、長年の付き合いになるとネタも尽きてくる。アクセサリー、化粧品、洋服、お菓子、、、あげられるものは大体あげてしまった。元々そういった気遣いが出来るタイプでもセンスがある訳でもない私は、数年前から二人に直接聞くようになっていた。その方がお互いwin-winだし、決して考えるのが面倒くさかったという訳ではない。
「悠斗は何て?」
「『蓮斗を祝え』だってさ。自分の誕生日でもあるのに、忘れちゃってるんじゃない?」
「僕は未来ちゃんにお祝いしてくれるだけで嬉しいよ?」
「でも、去年の誕生日の時、かなり祝ってもらったからさ~」
去年の私の誕生日の時は、悠くんからは大きなクマのぬいぐるみともこもこマフラー、蓮くんからは二人が好きなアクセサリーブランドのネックレスと期間限定のケーキ。よくネタが尽きないね。
「すぐに思い付かなかったら後でも良いよ。あとは、叶えてほしいこととか」
「叶えてほしいこと、、、」
蓮くんは考え込むように顎に手を当てて、ぶつぶつと何かを呟き始めた。今までは割と適当で欲しい物を答えてくれていたから、今年は珍しいなと思う。
「、、、結婚は、三人じゃ無理だよね、、、。重婚、、、?いや、この場合は一妻多夫、、、、、、?」
「うーん。何か不穏な言葉が聞こえるな~、、、」
「、、、法律のことはよく分からないし、後で悠斗に聞いて、、、」
「ダメだこりゃ」
とりあえず「私に出来る範囲でね」と念を押しておく。仮に許嫁相手だとしても誕生日プレゼントでおいそれと自分の姓を捧げる訳にはいかない。というか結婚願望があったのか。相手は選んだ方が良いと思うけど、、、。
「、、、決めた」
「あ、決めたんだ。どうする?」
考え直してくれた蓮くんが、やけに意志のこもった顔付きで私を見てくる。あまりに真剣な顔付きなものだから、こちらも背筋が伸びたように力が入った。蓮くんの言葉を待つ私の間に、何とも言えない空気が流れる。ゆっくりと口を開く蓮くんの穏やかな声は、小さいけれど私の耳に確実に届いた。
「僕の、、、僕達の『お願い』を叶えてほしい」
蓮くんのお願いは至ってシンプル。いわゆる『一日何でもお願いを聞く』というやつだった。
「お願い、、、っていうと?」
「僕がやりたいこととか、悠斗のやりたいことに付き合ってほしいんだ」
「あ、悠くんの分も」
「うん。一日だから、、、二人分としてならそれくらい我儘言っても良いかなって」
少し恥ずかしそうにもじもじする姿に胸の奥がジーンと暖かくなって、孫がいるおばあちゃんってこんな気持ちなのかなって考えた。普通ならどんなお願いをされるやら、と疑ってしまうが、蓮くんのことだ。悠くんも『蓮斗のお願いに付き合ってくれ』くらいしか言わないだろうし、断る理由は特になかった。
「うん。良いよ~」
「ほ、本当?やった!」
「何するか考えておいてね~!」
「うん!悠斗にも僕から伝えておくね」
花がほころんだように笑顔で喜ぶ蓮くん。
この会話をしたのが約二週間程前のことだった。
「楽しかったね~」
「ああ、父さんと母さんも元気そうだったしな」
今日は六月十三日。二人の誕生日の翌日だ。誕生日当日は例年通り桜井家のお屋敷でお祝いパーティーをした。私の誕生日プレゼントである『一日何でも言うこと聞く日』は誕生日の翌日になった。
一つ目のお願いは一緒に出掛けること。蓮くんが行きたかったというカフェでお昼ご飯を食べ、電車に乗って隣町にある大型のショッピングモールで服やアクセサリーを見に行った。その後は悠くんの希望でゲームセンターで遊んだ。
久しぶりに乗る電車は何だか新鮮で楽しくて、乗っているだけでワクワクしてしまって。
私があまりにも目をキラキラさせるものだから、二人に「子供みたい」と笑われてしまった。
午後は時間が少し余ったので、三人で色々なお店をブラブラすることにした。
そして、さすがに歩き疲れたということで通路に置いてあるベンチに座る。
「ねぇ、ちょっとトイレ行ってきても良い?」
私が立ち上がってそう言うと、二人は「うん」と頷いて買い物袋を取り上げた。
「じゃあこの荷物、俺達が持っとく」
「うん。ありがとう」
通路左に曲がり、トイレを見付ける。
トイレを済ませて二人の待つベンチに戻ろうとしたら、後ろから肩をポンッと叩かれた。
「ねえそこの子~」
え?
振り返ると見知らぬ男が一人で立っていた。
「可愛いね、一人~?」
その言葉を聞いて、ちょっと焦る。
これって、もしかしなくても、、、、、、、、、ナンパってやつ?
こんなショッピングモールでナンパとかしてくる人っているんだ。てっきりアニメの中だけの話かと、、、。
「いえ、一人じゃ、、、」
「俺も一人なんだ~。良かったら一緒にまわろ~」
「結構です!」
(話が通じない!!)
その時、横からサッと手が伸びてきて、男の手を掴んだ。
「嫌がっているじゃないですか」
その声にハッとして横を見ると、ムッとした顔の蓮くんがいた。
しばらく蓮くんと男が睨み合っていたら、男がバッと手を離し、焦ったように声を上げる。
「うわっ、何だよお前」
「何って、、、婚約者?」
「、、、は?」
さらに蓮くんは私に抱きつくと、自信満々に言った。
「この子は僕の婚約者だから、触らないでもらえるかな?」
思いがけない蓮くんの言葉に一瞬ドキッとした。婚約者というのは当っているが、、、、、、。
男は何ともない表情を浮かべたかと思うと、悔しそうに大声を上げた。
「くそっ、イケメンめー!」
そして、男はどこかに走って行ってしまった。
蓮くんはぱちくりと目を輝かせ、きょとんとした顔をした。
「うん。そろそろ誕生日でしょ?何か欲しい物とか聞いとこうかな~って」
「うーん、、、」
こういうのはサプライズで用意するものなんだろうけど、長年の付き合いになるとネタも尽きてくる。アクセサリー、化粧品、洋服、お菓子、、、あげられるものは大体あげてしまった。元々そういった気遣いが出来るタイプでもセンスがある訳でもない私は、数年前から二人に直接聞くようになっていた。その方がお互いwin-winだし、決して考えるのが面倒くさかったという訳ではない。
「悠斗は何て?」
「『蓮斗を祝え』だってさ。自分の誕生日でもあるのに、忘れちゃってるんじゃない?」
「僕は未来ちゃんにお祝いしてくれるだけで嬉しいよ?」
「でも、去年の誕生日の時、かなり祝ってもらったからさ~」
去年の私の誕生日の時は、悠くんからは大きなクマのぬいぐるみともこもこマフラー、蓮くんからは二人が好きなアクセサリーブランドのネックレスと期間限定のケーキ。よくネタが尽きないね。
「すぐに思い付かなかったら後でも良いよ。あとは、叶えてほしいこととか」
「叶えてほしいこと、、、」
蓮くんは考え込むように顎に手を当てて、ぶつぶつと何かを呟き始めた。今までは割と適当で欲しい物を答えてくれていたから、今年は珍しいなと思う。
「、、、結婚は、三人じゃ無理だよね、、、。重婚、、、?いや、この場合は一妻多夫、、、、、、?」
「うーん。何か不穏な言葉が聞こえるな~、、、」
「、、、法律のことはよく分からないし、後で悠斗に聞いて、、、」
「ダメだこりゃ」
とりあえず「私に出来る範囲でね」と念を押しておく。仮に許嫁相手だとしても誕生日プレゼントでおいそれと自分の姓を捧げる訳にはいかない。というか結婚願望があったのか。相手は選んだ方が良いと思うけど、、、。
「、、、決めた」
「あ、決めたんだ。どうする?」
考え直してくれた蓮くんが、やけに意志のこもった顔付きで私を見てくる。あまりに真剣な顔付きなものだから、こちらも背筋が伸びたように力が入った。蓮くんの言葉を待つ私の間に、何とも言えない空気が流れる。ゆっくりと口を開く蓮くんの穏やかな声は、小さいけれど私の耳に確実に届いた。
「僕の、、、僕達の『お願い』を叶えてほしい」
蓮くんのお願いは至ってシンプル。いわゆる『一日何でもお願いを聞く』というやつだった。
「お願い、、、っていうと?」
「僕がやりたいこととか、悠斗のやりたいことに付き合ってほしいんだ」
「あ、悠くんの分も」
「うん。一日だから、、、二人分としてならそれくらい我儘言っても良いかなって」
少し恥ずかしそうにもじもじする姿に胸の奥がジーンと暖かくなって、孫がいるおばあちゃんってこんな気持ちなのかなって考えた。普通ならどんなお願いをされるやら、と疑ってしまうが、蓮くんのことだ。悠くんも『蓮斗のお願いに付き合ってくれ』くらいしか言わないだろうし、断る理由は特になかった。
「うん。良いよ~」
「ほ、本当?やった!」
「何するか考えておいてね~!」
「うん!悠斗にも僕から伝えておくね」
花がほころんだように笑顔で喜ぶ蓮くん。
この会話をしたのが約二週間程前のことだった。
「楽しかったね~」
「ああ、父さんと母さんも元気そうだったしな」
今日は六月十三日。二人の誕生日の翌日だ。誕生日当日は例年通り桜井家のお屋敷でお祝いパーティーをした。私の誕生日プレゼントである『一日何でも言うこと聞く日』は誕生日の翌日になった。
一つ目のお願いは一緒に出掛けること。蓮くんが行きたかったというカフェでお昼ご飯を食べ、電車に乗って隣町にある大型のショッピングモールで服やアクセサリーを見に行った。その後は悠くんの希望でゲームセンターで遊んだ。
久しぶりに乗る電車は何だか新鮮で楽しくて、乗っているだけでワクワクしてしまって。
私があまりにも目をキラキラさせるものだから、二人に「子供みたい」と笑われてしまった。
午後は時間が少し余ったので、三人で色々なお店をブラブラすることにした。
そして、さすがに歩き疲れたということで通路に置いてあるベンチに座る。
「ねぇ、ちょっとトイレ行ってきても良い?」
私が立ち上がってそう言うと、二人は「うん」と頷いて買い物袋を取り上げた。
「じゃあこの荷物、俺達が持っとく」
「うん。ありがとう」
通路左に曲がり、トイレを見付ける。
トイレを済ませて二人の待つベンチに戻ろうとしたら、後ろから肩をポンッと叩かれた。
「ねえそこの子~」
え?
振り返ると見知らぬ男が一人で立っていた。
「可愛いね、一人~?」
その言葉を聞いて、ちょっと焦る。
これって、もしかしなくても、、、、、、、、、ナンパってやつ?
こんなショッピングモールでナンパとかしてくる人っているんだ。てっきりアニメの中だけの話かと、、、。
「いえ、一人じゃ、、、」
「俺も一人なんだ~。良かったら一緒にまわろ~」
「結構です!」
(話が通じない!!)
その時、横からサッと手が伸びてきて、男の手を掴んだ。
「嫌がっているじゃないですか」
その声にハッとして横を見ると、ムッとした顔の蓮くんがいた。
しばらく蓮くんと男が睨み合っていたら、男がバッと手を離し、焦ったように声を上げる。
「うわっ、何だよお前」
「何って、、、婚約者?」
「、、、は?」
さらに蓮くんは私に抱きつくと、自信満々に言った。
「この子は僕の婚約者だから、触らないでもらえるかな?」
思いがけない蓮くんの言葉に一瞬ドキッとした。婚約者というのは当っているが、、、、、、。
男は何ともない表情を浮かべたかと思うと、悔しそうに大声を上げた。
「くそっ、イケメンめー!」
そして、男はどこかに走って行ってしまった。
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