25 / 77
本編
23
しおりを挟む
日課の裏庭での魔法訓練中、どうやら風邪を引いたみたいだ。ちょっと薄着だったのがまずかったかな。頭ガンガン悪寒でゾクゾク関節も痛い。
「ただの風邪のようですね。2、3日寝ていれば良くなりますよ」
ヴァルク家主治医のインテリ眼鏡がにっこり笑うと、メイドに薬渡して去ってった。風邪なんて久しぶりだな。元アンジェリカは結構病弱だったみたいでさ、しょっちゅう倒れてたらしいんだ。あれ、でも私アンジェリカになってから病弱って自覚したことないな。んーまいっか!健康なのはよきよき。あ、今は絶賛風邪引き中だった……って自覚したら意識が朦朧としてきた。休養が必要だからね、私は逆らわずに睡魔に身を委ねた。
「お、ここは……」
「やっ!また会えたね」
私に笑いながら手振ってる無個性平均顔の男。
「自称カミサマ?」
「うん、僕神様。無個性だけど覚えててくれて嬉しいな」
「ホントに神様なら聞きたいこといっぱいあるよ?」
「いいよー時間が許す限り教えてあげる」
まじか!太っ腹だな。
「そもそもアンジェリカって何?スペック高過ぎない?」
「アンジェリカは僕の巫女だからね。遠い昔君の魂に僕手ずから恩寵を授けてる。今となっては人々から忘れ去られた存在だけどね」
巫女ねえ。お正月に神社で売り子してるお姉さん達が頭に浮かんじゃった。
「あ、それ全然違うから」
「また心読んでるしっ!キモ神めっ!」
「あーついごめんごめん。でもキモ神は……悲しいなぁ」
神様しょんぼり。なんかやけに人間臭いんだよね。
「遠い昔にってことは……つまりアンジェリカの魂は恩寵とやらと共に輪廻転生してるってこと?」
「そう。君は頭が良いから話が早くて助かるね」
「……その恩寵とかアンジェリカの役割って何なの?」
「お、核心きたね、聞いちゃう?」
え……聞いたら後戻りできなくなるとかそういうヤツ?何かそれにはまだ覚悟が足りないような気がするな。
「うんうん、そうかそうか」
神様したり顔で頷いてる。掌の上で転がされてる感半端ない……
「僕はね、恩寵を盾に君に何かを強要するつもりはないんだよ。君は自由に思うまま生きればいい」
「うん、言われなくてもそのつもり。ねえ、アンジェリカはグレンが好きだったんでしょ?戻らずにアンジェリカとして結ばれた方が幸せだったんじゃないの?」
神様ここで微妙な顔になる。なんだその表情は?ちょっと悲しそう?
「アンジェリカはそうでも、グレンはどうだろね。二人はこのままだと不幸にしかならなかった」
「グレンは元アンジェリカを愛せなかったってこと?」
悲しそうに神様は頷いた。
「グレンはアンジェリカを愛する筈だった。でもあのアンジェリカでは駄目なんだ」
「待って!それだとまるで私なら愛されるみたいに聞こえるじゃん!?」
「あれ、自覚ないの?」
「あ、やっぱいい!それ以上聞きたくないです!」
ふふって神様イヤらしい含み笑い。こいつホントに神様なんかい?
「いいよ、見えること見ないふりって君なりの防衛本能なんだろね。自分を大事にするのは悪いことじゃ無い」
何こいつ急に訳わかんないこと言ってんの?グレンが私を愛するとか……ないない。そもそも私があのグレンを愛するとか想像もつかないし。
「ふふ、いつかその曇った眼がクリアになると良いね」
「……それよりこの世界はゲームなのかって話。この間聞けなかったよね?」
「そうだったね。簡潔に言えばあのゲームがこの世界をベースに作られたものなんだよ。だからこの世界はゲームじゃなくて現実。君はチキュウから見たら所謂異世界の現実で生きてるってこと」
やっぱり私の前提が間違ってたんだ。ゲームに出ていたキャラも、ここでは自分の意思で動いて生きてる。じゃあ最初からゲームの知識なんて無い方が良かったんじゃ……
「んーそう言われちゃうと僕もちょっと切な悲しいなぁ」
「また勝手に人の心を……何であんたが切な悲しくなんのよ?」
「ああ時間足りない!その話もまた今度かな。お大事にねアンジェリカ」
神様がバイバイって手振ると、一瞬で意識が途切れた。
「ただの風邪のようですね。2、3日寝ていれば良くなりますよ」
ヴァルク家主治医のインテリ眼鏡がにっこり笑うと、メイドに薬渡して去ってった。風邪なんて久しぶりだな。元アンジェリカは結構病弱だったみたいでさ、しょっちゅう倒れてたらしいんだ。あれ、でも私アンジェリカになってから病弱って自覚したことないな。んーまいっか!健康なのはよきよき。あ、今は絶賛風邪引き中だった……って自覚したら意識が朦朧としてきた。休養が必要だからね、私は逆らわずに睡魔に身を委ねた。
「お、ここは……」
「やっ!また会えたね」
私に笑いながら手振ってる無個性平均顔の男。
「自称カミサマ?」
「うん、僕神様。無個性だけど覚えててくれて嬉しいな」
「ホントに神様なら聞きたいこといっぱいあるよ?」
「いいよー時間が許す限り教えてあげる」
まじか!太っ腹だな。
「そもそもアンジェリカって何?スペック高過ぎない?」
「アンジェリカは僕の巫女だからね。遠い昔君の魂に僕手ずから恩寵を授けてる。今となっては人々から忘れ去られた存在だけどね」
巫女ねえ。お正月に神社で売り子してるお姉さん達が頭に浮かんじゃった。
「あ、それ全然違うから」
「また心読んでるしっ!キモ神めっ!」
「あーついごめんごめん。でもキモ神は……悲しいなぁ」
神様しょんぼり。なんかやけに人間臭いんだよね。
「遠い昔にってことは……つまりアンジェリカの魂は恩寵とやらと共に輪廻転生してるってこと?」
「そう。君は頭が良いから話が早くて助かるね」
「……その恩寵とかアンジェリカの役割って何なの?」
「お、核心きたね、聞いちゃう?」
え……聞いたら後戻りできなくなるとかそういうヤツ?何かそれにはまだ覚悟が足りないような気がするな。
「うんうん、そうかそうか」
神様したり顔で頷いてる。掌の上で転がされてる感半端ない……
「僕はね、恩寵を盾に君に何かを強要するつもりはないんだよ。君は自由に思うまま生きればいい」
「うん、言われなくてもそのつもり。ねえ、アンジェリカはグレンが好きだったんでしょ?戻らずにアンジェリカとして結ばれた方が幸せだったんじゃないの?」
神様ここで微妙な顔になる。なんだその表情は?ちょっと悲しそう?
「アンジェリカはそうでも、グレンはどうだろね。二人はこのままだと不幸にしかならなかった」
「グレンは元アンジェリカを愛せなかったってこと?」
悲しそうに神様は頷いた。
「グレンはアンジェリカを愛する筈だった。でもあのアンジェリカでは駄目なんだ」
「待って!それだとまるで私なら愛されるみたいに聞こえるじゃん!?」
「あれ、自覚ないの?」
「あ、やっぱいい!それ以上聞きたくないです!」
ふふって神様イヤらしい含み笑い。こいつホントに神様なんかい?
「いいよ、見えること見ないふりって君なりの防衛本能なんだろね。自分を大事にするのは悪いことじゃ無い」
何こいつ急に訳わかんないこと言ってんの?グレンが私を愛するとか……ないない。そもそも私があのグレンを愛するとか想像もつかないし。
「ふふ、いつかその曇った眼がクリアになると良いね」
「……それよりこの世界はゲームなのかって話。この間聞けなかったよね?」
「そうだったね。簡潔に言えばあのゲームがこの世界をベースに作られたものなんだよ。だからこの世界はゲームじゃなくて現実。君はチキュウから見たら所謂異世界の現実で生きてるってこと」
やっぱり私の前提が間違ってたんだ。ゲームに出ていたキャラも、ここでは自分の意思で動いて生きてる。じゃあ最初からゲームの知識なんて無い方が良かったんじゃ……
「んーそう言われちゃうと僕もちょっと切な悲しいなぁ」
「また勝手に人の心を……何であんたが切な悲しくなんのよ?」
「ああ時間足りない!その話もまた今度かな。お大事にねアンジェリカ」
神様がバイバイって手振ると、一瞬で意識が途切れた。
0
あなたにおすすめの小説
当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!
朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」
伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。
ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。
「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」
推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい!
特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした!
※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。
サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
婚約破棄までの七日間
たぬきち25番
恋愛
突然、乙女ゲームの中の悪役令嬢ロゼッタに転生したことに気付いた私。しかも、気付いたのが婚約破棄の七日前!! 七日前って、どうすればいいの?!
※少しだけ内容を変更いたしました!!
※他サイト様でも掲載始めました!
婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される
さくら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。
慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。
だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。
「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」
そう言って真剣な瞳で求婚してきて!?
王妃も兄王子たちも立ちはだかる。
「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない
三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。
男装の騎士に心を奪われる予定の婚約者がいる私の憂鬱
鍋
恋愛
私は10歳の時にファンタジー小説のライバル令嬢だと気付いた。
婚約者の王太子殿下は男装の騎士に心を奪われ私との婚約を解消する予定だ。
前世も辛い失恋経験のある私は自信が無いから王太子から逃げたい。
だって、二人のラブラブなんて想像するのも辛いもの。
私は今世も勉強を頑張ります。だって知識は裏切らないから。
傷付くのが怖くて臆病なヒロインが、傷付く前にヒーローを避けようと頑張る物語です。
王道ありがちストーリー。ご都合主義満載。
ハッピーエンドは確実です。
※ヒーローはヒロインを振り向かせようと一生懸命なのですが、悲しいことに避けられてしまいます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる