乙女ゲーに転生！？ある日公爵令嬢になった私の物語

本編

７０

それから１月後、裁判の末アニエステ妃の処刑が決まった。身近な人達に「血の誓約」って禁呪を施していたからどうやってももう処刑は免れないんだって。マチルダちゃんの主もアニエステ妃だったんだ。

血の誓約を受けてた人達はアニエステ妃処刑までの期間自宅での謹慎処分になった。という訳でマチルダちゃんも自宅に帰っていった。

マチルダちゃんは誓約の呪いがあったとはいえ、私を殺そうとした罪もあっていずれ修道院に送られることが決まってる。本来なら牢に繋がれてもおかしくない所を、協力的な態度とかで大分減刑してくれたみたい。

ヒートン男爵やらアニエステ妃に連なる人達は片っ端から牢に入れられたんだ。簡単に出ては来れないだろうってグレンは言ってた。

シアさんは王様の実子じゃないことも暴かれて廃嫡になった。王様に見初められる前から恋人関係にあった使用人が父親だったらしい。

アニエステ妃はその人のこと本当に愛してたらしくてさ、王様に見初められて彼と引き離されて自殺未遂までしたんだって。

死にかけてたアニエステ妃を救う為に、両親は魔族を召喚してアニエステ妃と契約させた。その時お腹に居たからシアさんは半魔族のような存在に生まれついてしまったんだって。もし王様の実子だったならそうはならなかったんだろうね。

魔族と契約してからアニエステ妃は性格がすっかり変わってしまったそう。元々は物静かで心優しい女性だったらしいのに。生きる気力を失ってたアニエステ妃はきっと心ごと魔族に明け渡してしまったんだ……

王家の血を引かないシアさんを王にするのは王様への復讐だったって裁判でアニエステ妃はハッキリ言った。その為に邪魔なマジュリア様を手にかけたことも。

王様に見初められて突っぱねられる令嬢なんて居ない。それに愛する彼は口封じの為に殺されてしまったそうだ……
私、女として少しアニエステ妃の気持ちが分かる気がした。同情なんてしないけどね。

「一先ず当面の問題は一つ解決した、かな？」

お茶をすすりながらグレンはくっと片眉を釣り上げた。今日はせっかくの休日だってのにグレンに呼び出されて、ただ今グレンの私室でティータイム中。

「まぁ、大きな因縁の一つはな。まだまだやる事は多い」

ふうってため息つくグレンの横顔はどこか清々しい。私もなんだか嬉しくなって自然と顔が緩んじゃう。和やかな雰囲気だったのにグレンはチラッて私を見ると、気まずそうに目を逸らした。なんだぁ？

「……お前に言ってなかったことがある」