乳房星(たらちねぼし)

佐伯達男

文字の大きさ
70 / 153
第14話・みずいろの雨

【いつでも夢を】

しおりを挟む
日本時間の午前10時半頃であった。

場所は、伊勢神宮の内宮の境内にて…

けんちゃんとてつろうは、境内にある茶店で赤福(伊勢名物)とお抹茶を頼んで休憩している。

そこから歩いて30歩先に流れる五十鈴川のそばにあるお浄め所に、参拝客のみなさまが集まっている。

2人は、ゆみさんからの頼みでマリンホールディングスの石頭のCEOからデリシャン株49パーセント分の株式を取得しようとジカダンパンを続けていたが、SPたちからボコボコにいて回されてばかりいた。

2日前に、2人は名古屋近郊にあるビール工場へ行ってCEOにジカダンパンを申し出た。

けれど、SPたちからボコボコにいて回された。

2人は苦戦を強いられていたが、2人の間に大きなギャップが生じた。

ゆりこと結婚することを目標に自分磨きに専念するけんちゃんとなまじ自分探しをするてつろう…

2人の間に生じたギャップが原因で、けんちゃんはガマンの限度を超えそうになった。

ゆみさんから支給される30万円だけが正味の収入である。

その中から、2人分の宿代を払い続けたらどないなるのか?

けんちゃんは、てつろうをめんどくさいと思うようになった。

そんなけんちゃんは、てつろうを怒鳴りつけた。

「コラ!!コラといよんのが聞こえんのか!?」
「(つらそうな声で)なんぞぉ~」
「なんぞぉじゃなかろがオドレは!?」
「(つらそうな声で)何怒ってんねん?」
「オレの身にもなれと怒っとんじゃボケ!!」

けんちゃんは、ひと間隔おいてからてつろうに言うた。

「オドレなぁ!!自分探しばあいしよるけんそななひねたツラになったんがまだ分かってへんみたいだな!!なんぞぉその目つきは!?オレをにらみつけよんか!?」
「にらみつけてないよぅ~」

けんちゃんは、てつろうに対してより激しい怒りをぶつけた。

「オレは、今でもオドレを激しくうらんでいる…オドレはオレにうらまれていることに気がついてへんみたいだな!!」
「けんちゃんは、オレにどななうらみがあるのだよぅ~」
「オドレがゆりこちゃんをドロボーしたことだ!!オレとゆりこちゃんがいた高校にオドレが教育実習に来た時に、オドレがゆりこちゃんをドロボーした…ゆりこちゃんと別れたのはオドレのせいだ!!」
「なんでオレのせいなんだよぅ~」
「いいわけばかりを言うな!!多賀てつろう!!」
「けんちゃん…」
「多賀てつろうよぉ…オドレはなんで大学院へいったんぞ!?」
「研究したいことがあるから行った…」
「理由はそれだけか?」

けんちゃんからの問いに対して、てつろうはだまりこんだ。

けんちゃんは、ますます怒った声で言うた。

「多賀てつろうよぉ、甘ったれるのもたいがいにせえよ!!単に世間に認められたいだけなんだろ!!それとも、女の子たちからソンケーされたいから大学院へ行ったのか!?それとも、ゆりこちゃんと結婚したいから大学院へ行ったのか!?」

けんちゃんからの問いに対して、てつろうは『全部当てはまる。』と答えてからこう言うた。

「オレは…逃げるためにがゆりこと結婚しようと思った。」

けんちゃんは、あきれ声でてつろうに言うた。

「やっぱりそうか…」

てつろうは、居なおった声でけんちゃんに言うた。

「逃げる方法はそれしかなかったんだよ…」
「逃げるって…」
「大学にいた時の恩師と尾鷲だよ。」

てつろうは、ひと間隔おいてからけんちゃんに理由を説明した。

「オレの研究が世に認められて表彰された…ゆりこと結婚することを決めて2人で準備していた…その時に大学の時の恩師が『いいお話しがあるけど…』と言うて、オレに中予農機に就職して、重役のメイゴと結婚してムコに入れ…』と命令した…小関(創業家)の家のムコに入ったら、一生研究できなくなる…恩師は『小関の家の人たちは多賀くんがムコ養子になったら、社長の肩書きを与えるというてるよ。』とやさしく言うた…けど、拒否した(てつろうとお見合い結婚する予定だった女性はのちにたつろうさんの嫁はんになった)」

てつろうは、お抹茶をひとくちのんでからけんちゃんに言うた。

「ほんで、オレはゆりこと結婚すると決意した…そしたら今度は実家の家族から反発が飛んだ…表彰された日の翌々日に実家のオカンが『代理シューカツで出席した市役所に就職することが決まったからUターンしなさい。』と命令された…だから…」
「それも断ったと言いたいのだろ…もうやめい…オンドレの泣き言なんぞ聞きとない…」

てつろうの言葉をさえぎったけんちゃんは、小皿に盛られている赤福をつまんで、口の中にほおばった。

てつろうは、ますますつらそうな表情を浮かべている。

近くを流れている五十鈴川のせせらぎと早すぎるセミの鳴き声が周囲に聞こえている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

秘書と社長の秘密

廣瀬純七
大衆娯楽
社内の調査のため、社長・高橋健一はこっそり秘書・木村由紀と不思議なアプリで入れ替わることに。 突然“社長役”を任された由紀と、自由に動ける立場を手に入れた高橋。 ふたりの秘密の入れ替わり作戦は、どの様な結末になるのか?

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...