乳房星(たらちねぼし)

佐伯達男

文字の大きさ
131 / 153
第27話・北の宿から

【夜空】

しおりを挟む
2017年10月29日朝6時頃、A班のメンバーたちが乗っている専用機が岡山空港に到着した。

専用機を降りたA班のメンバーたちは、特大バスに乗り換えてドライブに出た。

バスは山陽自動車道から国道2号線尾道バイパスを通ってしまなみ海道へ向かう。

朝8時頃、バスはしまなみ海道の今治インターの料金所のゲートをくぐって目的地へ向かう。

朝8時10分頃、バスはイオンモール今治新都市に到着した。

この日は、午後1時からスポーツオーソリティの近くにあるコート(イオンシネマへ向かうエスカレーター付近)で開催される『経営者東西対抗歌合戦』に出場する予定である。

大型自動車メーカーの1社提供で、テレビで生放送される。

チーム構成は、北日本と東日本出身者の東軍と西日本と沖縄出身者の西軍に構成される。

優勝賞金800万円、MVPに選ばれた経営者には最新モデルのダブルデッカーバスが贈られる。

バスを降りたメンバーたちは、テレビ局のスタッフさんたちの案内で楽屋へ行く。

楽屋は、バス停付近にある空き店舗にある。

楽屋へ入ったあと、早速衣装合わせなどを始める。

朝10時10分頃、番組に出場する40組80名さまの経営者さまたちが全員そろった。

衣装合わせなどが終わった私は、ミンジュンさんとたつろうさんと一緒にモールの1階にあるスタバへ行った。

私とミンジュンさんとたつろうさんは、トールドリップを頼んだ。

スタバの店内に、5組10名の西軍で出場する経営者さんたちがいて、名刺交換などをしている。

私は、エクスペリア(スマホ)に内蔵されているウォークマンで歌合戦で歌う歌を聴いている。

歌合戦で歌う歌は、五木ひろしさんの歌で『夜空』である。

2017年に天に召された平尾昌晃先生の作曲・2014年に天に召された山口洋子先生の作詩の歌である。

私は、40組目の一番最後で歌う予定である。

歌を聴き終えて、エクスペリアをスーツの内ポケに入れた私は、名刺入れを出して名刺交換の準備に入る。

しばらくして、西軍の司会をつとめる大手通販会社の前の社長さん(2016年に社長を退任した)が私のもとにきた。

通販会社は、りかさんが以前つとめていた会社である。

「イワマツグループのオーナーさまでございますね。」
「ああ、(通販会社)の前の社長さま…はじめまして…よろしくお願いいたします。」

名刺交換のあと、ざっくばらんに会話を交わす。

このあとも、6~7人の経営者さまたちと名刺交換を交わした。

正午を10分過ぎた頃に、イベントが開催されるコートに観客が入る。

出場者のみなさまは、正午前に楽屋へ戻って準備を整える。

12時半頃であった。

オーソリティ前のコートにたくさんの人たちが集まっていた。

ステージの最前列から4番目のところに、波止浜の母子保護施設で暮らしていた私と同い年の子たち(男の子は所帯持ち、女の子はシングルマザーかおひとりさま)と現在施設で暮らしている母子たちとヨリイさんとマァマがいた。

一行たちは、開催される時を待っている。

ゆりこは、ヨリイさんとマァマのそばに座っている。

マァマの横に、ジョーくんの家族(夫婦と娘3人)が座っている。

ヨリイさんの近くに座っているりほちゃんが私は何番目に歌うのかとジョーくんにたずねた。

「ねえ、よーくんは何番目に歌うのかなぁ~」

ジョーくんは、りほちゃんに私が歌う順番を言うた。

「よーくんは、一番最後の組で歌う予定だよ…よーくんが歌う歌は五木ひろしさんの歌で『夜空』だよ。」

ジョーくんは、ひと間隔おいてりほちゃんに言うた。

「よーくんがちいちゃい時、先生と一緒に『想い出のリズム』(南海放送ラジオ)を聴いていた…その時に聴いた歌だよ…その時のことは、りほちゃんも知ってるだろ…」
「りほ、その時ヨーチエンに行ってた…だから知らなーい…」

そんな中で、ゆりこはひとりでしょぼくれていた。

午後1時、ステージの両サイドに設置されているスピーカーからファンファーレが鳴った。

総合司会の女子アナによるタイトルコールで始まった。

映画『サウンドオブミュージック』の劇中歌『ドレミの歌』に合わせて、東西両軍40組80名さまの経営者さんたちがステージに上がる。

私は、40組目の東軍の出場者と一緒に一番最後に上がった。

40組80名さまの出場者がそろったあと、開幕式に入る。

審査員は今治市長が審査委員長で、市議会議員13名・プロの作曲家先生4名・通町のカラオケ喫茶店経営者夫婦の20人である。

開幕式~2分間のCMのあと、歌合戦が始まった。

前半の20組は西軍先攻東軍後攻、後半の20組は東軍先攻西軍後攻である。

私は、大トリで歌う予定である。

トップバッターは、両軍の司会をつとめる経営者さんふたりである。

先攻の大手通販会社の社長さまは時代劇の主題歌『銭形平次』を、後攻の大手総合商社の社長さまは北島三郎さんの歌で『まつり』を歌う。

2~20組目は、35歳以下の若い世代の社長さまたちで、歌う曲目はJ-POPばかりである。

西野カナ・AKB48・星野源・EXILE・ジュディマリ・リトグリ・キスマイ・キンプリ・chay…

いまふうの歌は、ついて行けない…

後半の20組以降は、36歳以上の人たちで、歌う曲目は私の想い出の歌が多い。

25組目から、私の想い出の歌がつづく…

25組目に入った。

東軍が38歳のファッションワードローブ会社の女性社長さまで曲目は都はるみさんの歌で『北の宿から』・西軍は私と同い年のアプリ開発会社の男性社長さまで曲目は山本譲二さんの歌で『みちのくひとり旅』である。

おふたかたは、失恋した想い出がある。

「それでは歌っていただきましょう~」

東軍の司会のあと、歌のイントロがスピーカーから流れてきた。

この時、ゆりこは下を向いて泣いていた。

裏方で順番待ちをしている私は、なにも言わずに歌を聴いている。

このあと、私の想い出の歌が38組目までつづく…

こんな時だから、ものすごくつらかった時のことをよーく想い出してみよう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

秘書と社長の秘密

廣瀬純七
大衆娯楽
社内の調査のため、社長・高橋健一はこっそり秘書・木村由紀と不思議なアプリで入れ替わることに。 突然“社長役”を任された由紀と、自由に動ける立場を手に入れた高橋。 ふたりの秘密の入れ替わり作戦は、どの様な結末になるのか?

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...