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第1章 ゴブリンとして生きていく!

第4話 女神さま、神さま、セクハラってあるんですか?

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森の中を進む三人のゴブリンは、三人三様だった。



一人は、革袋を肩に掛けて、革の胸当てと、革のミニフレアスカートの陽気ようきなゴブリン。



一人は、青龍偃月刀せいりゅうえんげつとうを持った、古代中国の武将の装いに身を包んだ、寡黙かもくなゴブリン。



一人は、見窄みすぼらしい腰布一枚の、影が薄いゴブリン。





『もう直ぐ村ですよ! タツカドさま! カンウさま!』



陽気ようきなミラは屈託くったくなく笑いながら、私達にバミラ村が近い事を告げる。



私と関羽は、うなづき了解のを伝える。



ありがとう、お嬢さん。



でも、私の脳裏に浮かぶ周辺地図に、バミラ村の場所は確りと映っているんだ。



実は【バミラ村】は、私達の次の目的地だったのだ。



バミラ村、推定100個体ほどの、ゴブリンの村。



私は、この世界の情報を、同じゴブリン族から得ようと考えていた。



情報確認だけでは、今一、解らん。



異世界小説を立ち読みしただけの私では、心構えも、何をすれば良いのかも、定石じょうせきもよく解っていなかったのだから。





『ここが、そうです! ようこそ、バミラ村へ!』



陽気ようきに、そして可憐かれんに笑うお嬢さん、そんなに飛び跳ねると、パンツが見えますよ?



あ、これってセクハラになるのか?



この世界に、セクハラってあるんですか、女神さま?



シーン、......



わざとじゃないんです! 解ってくれますよね、神さま?



シーン、......



釣れないですね~、おっと連れないですね~、女神さま神さま?





私達が村へ到着すると、革鎧で身を固め、手に木槍を持ったゴブリンが、誰何すいかして来た。



『ミラ、誰だ其奴そいつらは? 見掛けない風体ふうていだな、何処どこの者だ?』



『マル、キル、安心して! この人達は、旅人よ! 森の猿達から、私、助けて貰ったの!』



村は木の柵に囲まれていて、入り口は一カ所。



木の門の前にいるのが、マル。



門の横の物見台の上から、弓矢で私達を狙っているのが、キルだった。



キルは、革のベストに革のズボンの軽装で、弓矢を下ろしながら、ミラを叱りつける!



『ミラ、俺は言ったよな? 森の奥に行くなと! 猿達を刺激するなと! 忘れたとは言わさないぞ?』



『ごめんなさい、キル! 薬草の群生地ぐんせいちを見つけて、思わず夢中になってしまったの! ......』



ミラは、陽気ようきな振る舞いから一転して、しおらしく謝った。



『ふー、仕方のない奴だな。その薬草で、ナルが少しでも良くなればいいんだが、......』





ふむ、話の内容からすると、お嬢さんは、ナルさんの為に薬草を採りに森に入り、採集に夢中なって、猿の縄張りに入ったと言う事ですか。



なるほど、に落ちました。



何故、一人で薬草を採集するのに、猿の縄張りに入ったのか、不注意にしても軽率けいそつでしたから。



地元の者ならば、猿の縄張りも知っていたはず。



それだけナルさんと言う方が、お嬢さんにとって大切な方と言う事なのでしょう。





『旅の方、ありがとう! ミラを助けてくれて!』



無骨ぶこつな鎧を着たマルが、私達に礼を述べる。



ふむ、余所者よそものに対して、警戒は解いてはいないが、礼儀はおもんじるようだ。



これは、良い話合いが出来る相手かも、知れない。



私はそんな風に思いながらも、『お気になさらず』とだけ伝えたのだった。





パチパチパチ、......



大きなゲルの中に、私と関羽は、バミラ村の村長と、いおりはさんで座っていた。



『旅のお方、ミラを助けて頂いて、本当にありがとうですじゃ! 私はこの村の村長、バミカですじゃ!』



平身低頭へいしんていとうな村長に、頭を上げてくれと思いながらも、礼を受けないのはかえって失礼になるかもと思った私は、『お気になさらず』と言うに止まった。



何でもナルさんと言うのは、ミラさんの妹さんで、二人とも村長のお孫さんだった。



妹のナルさんが、体調を崩していて、薬草をせんじようにも、村の備蓄びちくが少なくなっていたので、ミラさんが森に採集に行ったと、村長は厳しい顔で私達に事情を説明してくれた。



現在、バミラ村は森の猿との間で、縄張りのいさかいが起こっていて、森の中に迂闊うかつに近付く事を禁じているそうだ。



以前はバミラ村にも、猿と意志を伝え合う、【伝達師でんたつし】と言う職業の者がいたのだが、先日鬼籍きせき(亡くなった)に入り、それ以降は猿との関係が悪くなったそうだ。



話合いで関係がたもっていたなら、そうなるでしょうね。



身振り手振りでは、らちが明かないと、なるほど。



ふむ、伝達師でんたつしか~、相手は誰でも意思疎通いしそつうが出来るのだろうか?



鳥とか、虫とか、......蚊と話せたら、叩きづらいかも。



まあ、言葉が通じない相手と話が出来るとは、浪漫ロマンですね。



確かドリ○ル先生と言う、動物のお医者さんがいましたね。



話せない筈の動物達と会話が出来る、小説を読んだ私も動物達と、何時か話せたらなと、感慨かんがいふけったものです。





『意志がわせないと、猿達と交渉も出来ないので、困っておるのですじゃ』



ツ、ツーーー......



あ、あれ、......れはやってしまったかも、知れませんね。



猿達を倒してしまった私は、や汗が止まりません。





『村長、申し訳ない事を、私達はしてしまったかも知れません。お孫さんを助ける為とは言え、猿達を倒してしまいました......』



『いえいえ、門番から仔細しさいは聞いておりますじゃ。貴殿達きでんたちには感謝こそすれ、謝罪などはいらないですじゃ! 頭を上げて下され!』



頭を下げた私に、戸惑とまどう村長は、激しく恐縮きょうしゅくしていた。





『村長~! 大変だ! 村が猿達に囲まれている! 早く来てくれ!』



村の門を警護していたマルさんが、息せき切ってゲルの中に、飛び込んで来た。



村長は厳しい顔を、より一層厳しくして、立ち上がった。



『貴方方は、村の客人になります! どうぞ、そのままここで、おくつろぎ下され! 行くぞ、マル!』



それだけ私達に言って、村長はマルさんを伴って、出て行ってしまった。



猿達に囲まれつつある事は、実は解っていました。



脳裏の周辺地図で、バミラ村が500体ほどの猿のモンスターに、徐々じょじょに囲まれているからでした。



ゲームシステムを隠すって、難しいですね。



どう言う風に伝えようかと、思案しあんしている間に、事態じたい推移すいいしてしまいました。



はてさて、一体どうしたものでしょうね。



猿のモンスターは、12匹倒してゲームシステムに保管しているので、証拠はないはず。



いや、この世界では証拠など関係なく、疑わしいだけで戦いが始まるかも知れないですね。





『マスター、よろしいのですか?』



関羽が、心配そうに私に問い掛けますが、そうですね。



もしかせずとも、この事態じたいは私達の行動が、起こした可能性が高いですね。



なら、安穏あんのんとして、くつろいでいる訳にもいきません。



戦いになるならば、素手すてごろでは、心許こころもとないですね。



証拠隠滅も兼ねて、猿のモンスターさん達には、ロア(この世界の貨幣)に換金かんきんさせて貰いましょうか。



『関羽、状況によっては、戦いに私達も参加します! 準備をお願いします!』



『はっ!』



久しぶりに、言ってみましょう!



『ステータスオープン!』



私の目前に現れる半透明はんとうめいなプレート。



【英雄召喚LV1】を、ポチッと押して、もう一枚の半透明はんとうめいなプレートを出現させる!



【素材換金】で、猿のモンスターをクリック確定させて換金かんきんした。



【780ロア】、......これって高いのか、安いのか、全く解らん。



を決した私は、【装備ガチャ】のボタンを押す!



一回【500ロア】で、一個の装備が当たる仕組みになっている。



銃とか出たら、武器チートだなと、ドキドキしながら【装備ガチャ】カードの確定を待つ!



まぶしく光る演出画面! 出現する銅のカードの【英雄大戦】の独特のカード紋様もんよう! 



あ、あああああ~! くっ、またも発動したか、物欲ぶつよくセンサー!



銅の装備カードの演出で、ガックリと気を落とした私だが、ゴクリと息を飲む中、銅のカードが裏返り、銅装備が現れる!



出現したのは、......





何だが、村がさわがしいわね。



ナルは、これで大丈夫。



熱も下がって来るでしょう。



母が亡くなってから、ナルは元気がなくなり、いつも一人で、花と話をしていた。



母は伝達師でんたつしとして、猿達と交渉をする大事な役目があった。



伝達師でんたつしに成れるのは、相手の気持ちが解る才能が必要だと、母はいつも言っていた。



私にはその才能がなかったようで、猿達が何を怒っているのか、全く解らなかった。



でも、何とかしないと猿達とは、いずれ戦いになると、はっきり解っていた。



それにしても、変わった旅人だなと思った。



腰布一枚のゴブリンに、見た事もない装いのゴブリンが従っていた。



それに、あの温かい目は、父を思い出させる。



村の為に、勇敢に戦って亡くなった父。



そんな勇敢ゆうかんな父の目と、ソックリな目をした旅人のゴブリン。



私は、父と同じ目をしている、タツカドさんの目が忘れられなかった。





バミラ村の前で対峙たいじする、ゴブリンと猿のモンスター【デルモンキー】の間では、一触即発いっしょくしょくはつの緊張した状態が続いていた。



攻撃が開始されたら、全面戦争になる。



生き残る為には、昨日の友も今日は敵になる、そんな世界だった。



してや、言葉が通じない相手だ。



村長は、物見台の上から、デルモンキーに囲いを解けと告げるが、一向にそんな気配を相手は見せなかった。



そんな時、木の門を軽々と飛び越え、デルモンキー達の前に降り立った者がいた!





『どうも、初めまして、カネヨシ・タツカドと申します! 代表の方はられますか?』



見窄みすぼらしい腰布一枚で、武器を持っていないゴブリンが、たった一人で、数百のデルモンキーの群れの前に立っていた。










戦友達せんゆうたちは、私の兄で、父で、先生でもあった。



年少の私に、戦友達せんゆうたちは、厳しくも優しく接してくれた。



考えろ、実行しろ、失敗したら、また考えろ、実行しろ、その繰り返しだ。



試行錯誤トライアルアンドエラー、良いか兼慶かねよし! 諦めるな! 考えろ! 実行しろ!



″諦めるな! 考えろ! 実行しろ!″











私は龍門兼慶たつかどかねよし



戦友達せんゆうたちの教えを胸に、絶対に諦めないと誓ったゴブリンだ!
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