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第1章 ゴブリンとして生きていく!
第3話 女神さま、神さま、突っ込んでくれないのですか?
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鬱蒼とした森の中で、ゴブリンが一人、猿のモンスターの群れに囲まれていた。
『くっ、来るな!』
『『『キ、キーイ!キー!』』』『『『キ、キーイ!キー!』』』
しまった! 薬草の採集に夢中になって、猿のモンスター達の縄張りに入ってしまった!
私を取り囲む猿のモンスター達の数が十匹以上はいる! ああ、村の者達と一緒にくれば、こんな事には!
私は木の棒を振り回しながら、猿のモンスター達を威嚇する。
『それ以上、近付くな!』
ああ、どうしょう! 私はここで死ぬわけにはいかない!
妹を残して死ねない! 誰か、誰か助けて、神さま! お願いです、助けて!
私は、狩猟と森林を司る【風神サジタリウス】さまに、助けを求めた!
『キ、キキキキキー!!!』『キ、キキキキキー!!!』
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお~!!』
古代中国の武将の装いに身を包んだゴブリンが、青龍偃月刀を振り回し雄叫びを上げながら、猿のモンスターの群れに突っ込んで行く!
ゴブリンは猿のモンスターと擦れ違い様に、青龍偃月刀で、猿のモンスターの身体ごと一刀両断で、切り裂く。
『我は関羽雲長! 女子一人に何をしておるかぁ~!』
美髯のゴブリンが、襲われていたゴブリンを背に、ドヤ顔で大見得を切っている!
そぉ~......ぐっ、ボキ! そぉ~......
腰布一枚のゴブリンが、猿のモンスターの一匹の背後に忍び寄り、静かに猿のモンスターの口を左手で塞ぎ、右腕で気道を圧迫して、音を発てずに締め折り倒して行く。
人型モンスターなら、私の出番だ。
ジャングルでの、浸透作戦は手慣れたものだった。
私は囮となって暴れている関羽に感謝をしながら、一匹、また一匹と静かに倒していった。
個体名【カネヨシ・タツカド】のスキル【隠密LV2】のレベルが上がりました!
個体名【カネヨシ・タツカド】の【個体レベル】が上がりました!
システムメッセージが、頭の中で鳴り響く!
ふむ、後残りは四匹だ。
私の脳裏には、周辺地図が浮かび、生物印を注視すると、その個体情報が読み取れる。
生物印は色で識別が可能で、赤色印が【アクティブクリーチャー】で私達を敵として認識していない敵性生物(認識すると点滅する)、黄色印が【パッシブクリーチャー】で私達を敵と認識していない、敵になる可能性のある生物(攻撃をしなければ敵性にはならない)を表している。
青色印は私と関羽で味方生物を表し、緑色印が襲われていたゴブリンのもので中立生物を表している。
この三日間で、ゲームシステムを検証解明して、現在で解っている内の一つだ。
『危ないところを助けて頂いて、ありがとうございます! 私は近くの村に住む者でございます。旅のお方ですか?』
ふむ、何と答えるべきか悩むな。
異世界小説物では、この女性は確実にヒロインだ。
最初に遭遇して、その危機を助ける! うん、間違いない!
この女性がヒロインで間違いない!
『どうかされましたか、マスター?』
う、うん? はっ!
『大丈夫、何でもない、......よ?』
『はぁ、......?』『......?』
自分の世界に入り込んでいた私を、美髯のゴブリンと女性のゴブリンが心配そうに見つめていた。
『ふぉおおおおお~! ほぉおおおおお~!』
私は外気と内気の呼吸で、自分の体に気を循環させ、心を落ち着かせる。
落ち着け、冷静になれ、感情に支配されるな!
ヒロインか、......さて、どうするか?
いや、どうするもこうするもないのでは?
私はハーレムを作る予定も、その気もない。
ふむ、何も問題ないじゃないか!
紛らわしい、お決まりの設定に騙される処だった!
女神さま、これは引っ掛け問題ですね?
私には解っていましたよ?
ふっ、ふふふ。
シーン、......
男なら、みんな騙されるとお思いですか?
伊達に独身を、九十八年間続けている訳ではありませんよ、神さま?
ふっ、ふふふ。
シーン、......
ですよね、......本当にいないんですか、女神さま、神さま?
女神さまと、神さまの突っ込み待ちをした私は、ガックリと項を垂れた。
ゲームシステムの検証結果の一つとして、私は脳内に浮かぶ周辺地図とは別に、他の情報画面がハッキリと、脳内で別画面として認識出来るようになっていた。
急に脳梗塞とかになりませんよね、......脳は大丈夫ですよね、女神さま?
シーン、......
日課のソシャゲをしながら、片手間に株式投資をしていた私の机の上には、画面が全部で二台あった。
その日課とは違って、私は同時に二個の画面を見て、同時に画面ごとに思考して操作が出来るようになり、それと同時に身体を動かせるようになっていた。
急に破裂したりとか、しませんよね、......本当に大丈夫なんですよね、神さま?
シーン、......
くっ、私は諦めませんよ! 女神さま、神さま!
これで、『ステータスオープン!』と叫ばなくても情報確認が出来るようになった。
まあ、偶には目の前に出して見るのも悪くは無い。
私は結構、『ステータスオープン!』と言う言葉が気に入っている。
ほら、何か格好良くない? 何かワクワクしない?
え、中二病? それって、何?
異世界には中二病って、病気があるの?
『ゴホン! ......マスター! マスター、戻って来て下さい!』
はっ! しまった、また自分の世界に浸って、二人をほったらかしにしていた。
『ゴホン! 申し訳ない。お嬢さん、怪我はないですか?』
『は、はい! 危ない処を助けて頂いて、ありがとうございます!』
『いえいえ、お気になさらずに、私達は旅の者です!』
『マスター! 猿のモンスターは近くには、居ないようですが、至急ここから離れた方が良いかと!』
ふむ、確かに周辺地図で確認しても、他の猿のモンスターの群れとは距離が離れている。
『お嬢さん、宜しければ家まで送りましょうか? この森には、まだまだ危険なモンスターが沢山いますから』
『ありがとうございます! 私はミラと申します! 近くのバミラ村に住んでいます! よろしくお願いします!』
うんうん、言葉遣いも丁寧な、確りとしたお嬢さんだ。うんうん、関心関心。
『関羽! 護衛を頼む!』
『はっ、お任せ下さい! マスター!』
あ、そうそう、猿のモンスターの亡骸も回収しておかないと、勿体ない、勿体ない。
私はゲームシステムの収納機能で、周囲に倒れている猿のモンスター(デルモンキーと言うモンスターらしい)を、脳内に浮かぶ周辺地図で、生物印を複数確定して瞬時に回収したのだった。
これも、ゲームシステムの機能の一つだ(倒した側から、回収する事も出来る)。
う、うん? ......何か視線を感じるが、お嬢さんが辺りを見回して混乱している。
視線の元は関羽で、目配せで“人前でゲームシステムを使うのはご遠慮下さい”と語っていた。
申し訳ない、......関羽、そうだった。関羽と話し合ってゲームシステムは、出来るだけ秘匿して置く事にしたんだった。
私は目線で、謝罪の意を関羽に伝え、不思議がるお嬢さんを即して、バミラ村に向かった。
さて、この三日間で他にも解った事がある。
私が毎日の日課としていたソシャゲ【英雄大戦】の課金システムだが、倒したモンスター及び、採集した薬草などの素材を、【英雄召喚LV1】で売却出来て、それによりこの世界のお金(ロア)を換金獲得出来た。
これによって【英雄大戦】のガチャを引けるようになった。
本当に良かった!
実は、最初の一回は初回特典で無料だったからこそ引けたが、その後このゲームシステムが判明するまでは、課金をどうやってするかが重大な問題となっていたからだ。
ガチャ機能には、英雄ガチャの他に装備ガチャとアイテムガチャがある。
英雄ガチャは文字通り、英雄武将カードを引くガチャだ。
装備ガチャは、青龍偃月刀のような武器と、鎧・小手・靴などの装備カードを引くガチャだ。
アイテムガチャは、攻撃・防御・付与・回復などのアイテムカードを引くガチャだ。
それと、【英雄大戦】だけで使用出来るポイントもあった。
ロアに比べて高すぎる印象だが、敵性生物を倒したら、亡骸(素材)・経験値・ポイントが獲得出来るので、敵性生物は積極的に倒して行きたい。
敵性生物を倒した経験値は、カード武将の【関羽】が倒しても、私が倒しても獲得経験値は均等に分配されるようだ。
部隊編成で、編成するとゲームで言うパーティー扱いになるようだ。
非常に興味深い。
ああ、私の現在のステータスは、こんな感じになっている。
――――――
情報表示:▼
NAME:【カネヨシ・タツカド】
個体LV:【3】 ↑2UP
備考:▼
年齢:【98歳】
種族:【ゴブリン】
身分:【放浪者】▼
【放浪者】:流離いの旅人。
職業:【英雄召喚師】▼
【英雄召喚師】:英雄を召喚して使役する。
称号:【プレイヤー】▼
【プレイヤー】:ゲームプレイヤーの称号。ゲームシステムを使用可能。
【迷い人】▼
【迷い人】:アルグリア世界に迷い込んだ者の称号。異世界言語を使用可能。
才能:【英雄召喚LV1】▼
【英雄召喚LV1】:英雄を召喚して使役するスキル。
【隠密LV3】▼
【隠密LV3】:気配を消すスキル。
説明:▼
【異世界からの迷い人とゴブリンが融合した稀有なゴブリン】
状態表示:▼
生命力:【11/11】
魔力 :【27/27】 ↑19UP
精神力:【34/34】
持久力:【34/37】 ↑9UP
満腹度:【89/100】
能力表示:▼
筋力 :【13】 ↑2UP
耐久力 :【11】 ↑2UP
知力 :【23】 ↑2UP
敏捷 :【22】 ↑2UP
器用 :【28】 ↑2UP
魅力 :【76】 ↑2UP
部隊編成表示:▼
統率力:【98】
攻撃力:【145/141】【特性効果発動中!】
防御力:【287/283】【特性効果発動中!】
機動力:【79】
持久力:【96】/【100】
戦法力:【100】/【100】
士気力:【104】/【100】【特性効果発動中!】
詳細:▼
主将:【カネヨシ・タツカド】
副将:【ウンチョウ・カンウ】
副将:【未設定】
部隊:【歩兵】▼
【歩兵】:【カネヨシ・タツカド】【ウンチョウ・カンウ】
戦法:【神将】▼
【神将】:所属部隊に攻撃力+100・防御力+100効果。
特性:【神将】▼
【神将】:攻撃力・防御力・士気力が、戦闘中徐々に上昇し続ける。
説明:【稀有なゴブリンが率いる二人だけのゴブリン部隊】
――――――
突っ込み処満載だな、......個体レベルが【3】になったが、能力数値はレベル上昇時に【↑1UP】づつしか上がらなかった。
これは、レベルアップ時の能力アップが、固定の【↑1UP】なのかは、今後の検証で明らかになるだろう。
状態数値だが、個体のレベルアップとは関係ない数値のようで、魔力と持久力だけが上昇している、これも継続検証が必要だ。
あ、そうそう! 新たに才能【隠密】が獲れて、今回の戦闘でレベルアップしていた。
才能が獲得出来た理由は、多分私の行動ではないかと推測している。
私は戦争を体験しており、その時の仕草・習慣が今になっても抜けないでいた。
森を探索する時に、自然と気配を消していた事が要因だと思う。
部隊編成表示では、私と関羽を編成したら数値が確定したようだ。
この数値がどれぐらいの強さなのかと言うと、先ほど倒したデルモンキーの部隊攻撃力は【71】で防御力【57】だった。
十二匹の集団を攻撃する前に確認した時の数値だ。
ふむ、良く解らん。
私達はたった二人だったし、数値自体の計算方法も不明だし、これも継続検証の対象だ。
それと戦法と特性の欄の【神将】、これは確実に【関羽】を部隊に編成しているからだった。
戦法【神将】は任意発動で、戦法力を五十消費して、効果時間が三十分間、攻撃力と防御力が各百数値づつ上昇、チャージ時間は十五分。
特性【神将】は常時発動で、戦闘中に攻撃力・防御力・士気力が徐々に上昇し続けるチートな特性だった!
戦闘が終了したら、徐々に数値が下がっていくようだ。
しかし、この効果は凄いチート過ぎる! あっ、そうだ!
女神さま、お許し下さい!
失礼な事ばかり言って、申し訳ないです!
許してくれますよね、神さま?
本当に申し訳ありません!
シーン、......
ゴホン、流石は金武将【関羽雲長】、異世界小説で言うチートだった。
戦闘中に士気力が、百の母数を超えながら上昇した時には、驚愕した。
戦時中、部隊の士気をどうやって維持するかが、指揮官の力量だったからだ。
士気の低い部隊は、通常の実力を発揮出来ないのは当り前だ。
それ故に指揮官は、戦況を読み、自部隊の状態を把握し、行動の判断を下す。
言葉で言うのは容易い、実際は非情で、無慈悲で、残酷だった。
・
・
・
・
・
私を残して黄泉路へ出撃していった仲間達。
私はまだ生き残っている。
仲間の分も私は生き続ける。
“お前は生き残れ!”
・
・
・
・
・
私の名前は、龍門兼慶。
仲間の想いに、異世界でも必ず生き残ると誓ったゴブリンだ!
『くっ、来るな!』
『『『キ、キーイ!キー!』』』『『『キ、キーイ!キー!』』』
しまった! 薬草の採集に夢中になって、猿のモンスター達の縄張りに入ってしまった!
私を取り囲む猿のモンスター達の数が十匹以上はいる! ああ、村の者達と一緒にくれば、こんな事には!
私は木の棒を振り回しながら、猿のモンスター達を威嚇する。
『それ以上、近付くな!』
ああ、どうしょう! 私はここで死ぬわけにはいかない!
妹を残して死ねない! 誰か、誰か助けて、神さま! お願いです、助けて!
私は、狩猟と森林を司る【風神サジタリウス】さまに、助けを求めた!
『キ、キキキキキー!!!』『キ、キキキキキー!!!』
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお~!!』
古代中国の武将の装いに身を包んだゴブリンが、青龍偃月刀を振り回し雄叫びを上げながら、猿のモンスターの群れに突っ込んで行く!
ゴブリンは猿のモンスターと擦れ違い様に、青龍偃月刀で、猿のモンスターの身体ごと一刀両断で、切り裂く。
『我は関羽雲長! 女子一人に何をしておるかぁ~!』
美髯のゴブリンが、襲われていたゴブリンを背に、ドヤ顔で大見得を切っている!
そぉ~......ぐっ、ボキ! そぉ~......
腰布一枚のゴブリンが、猿のモンスターの一匹の背後に忍び寄り、静かに猿のモンスターの口を左手で塞ぎ、右腕で気道を圧迫して、音を発てずに締め折り倒して行く。
人型モンスターなら、私の出番だ。
ジャングルでの、浸透作戦は手慣れたものだった。
私は囮となって暴れている関羽に感謝をしながら、一匹、また一匹と静かに倒していった。
個体名【カネヨシ・タツカド】のスキル【隠密LV2】のレベルが上がりました!
個体名【カネヨシ・タツカド】の【個体レベル】が上がりました!
システムメッセージが、頭の中で鳴り響く!
ふむ、後残りは四匹だ。
私の脳裏には、周辺地図が浮かび、生物印を注視すると、その個体情報が読み取れる。
生物印は色で識別が可能で、赤色印が【アクティブクリーチャー】で私達を敵として認識していない敵性生物(認識すると点滅する)、黄色印が【パッシブクリーチャー】で私達を敵と認識していない、敵になる可能性のある生物(攻撃をしなければ敵性にはならない)を表している。
青色印は私と関羽で味方生物を表し、緑色印が襲われていたゴブリンのもので中立生物を表している。
この三日間で、ゲームシステムを検証解明して、現在で解っている内の一つだ。
『危ないところを助けて頂いて、ありがとうございます! 私は近くの村に住む者でございます。旅のお方ですか?』
ふむ、何と答えるべきか悩むな。
異世界小説物では、この女性は確実にヒロインだ。
最初に遭遇して、その危機を助ける! うん、間違いない!
この女性がヒロインで間違いない!
『どうかされましたか、マスター?』
う、うん? はっ!
『大丈夫、何でもない、......よ?』
『はぁ、......?』『......?』
自分の世界に入り込んでいた私を、美髯のゴブリンと女性のゴブリンが心配そうに見つめていた。
『ふぉおおおおお~! ほぉおおおおお~!』
私は外気と内気の呼吸で、自分の体に気を循環させ、心を落ち着かせる。
落ち着け、冷静になれ、感情に支配されるな!
ヒロインか、......さて、どうするか?
いや、どうするもこうするもないのでは?
私はハーレムを作る予定も、その気もない。
ふむ、何も問題ないじゃないか!
紛らわしい、お決まりの設定に騙される処だった!
女神さま、これは引っ掛け問題ですね?
私には解っていましたよ?
ふっ、ふふふ。
シーン、......
男なら、みんな騙されるとお思いですか?
伊達に独身を、九十八年間続けている訳ではありませんよ、神さま?
ふっ、ふふふ。
シーン、......
ですよね、......本当にいないんですか、女神さま、神さま?
女神さまと、神さまの突っ込み待ちをした私は、ガックリと項を垂れた。
ゲームシステムの検証結果の一つとして、私は脳内に浮かぶ周辺地図とは別に、他の情報画面がハッキリと、脳内で別画面として認識出来るようになっていた。
急に脳梗塞とかになりませんよね、......脳は大丈夫ですよね、女神さま?
シーン、......
日課のソシャゲをしながら、片手間に株式投資をしていた私の机の上には、画面が全部で二台あった。
その日課とは違って、私は同時に二個の画面を見て、同時に画面ごとに思考して操作が出来るようになり、それと同時に身体を動かせるようになっていた。
急に破裂したりとか、しませんよね、......本当に大丈夫なんですよね、神さま?
シーン、......
くっ、私は諦めませんよ! 女神さま、神さま!
これで、『ステータスオープン!』と叫ばなくても情報確認が出来るようになった。
まあ、偶には目の前に出して見るのも悪くは無い。
私は結構、『ステータスオープン!』と言う言葉が気に入っている。
ほら、何か格好良くない? 何かワクワクしない?
え、中二病? それって、何?
異世界には中二病って、病気があるの?
『ゴホン! ......マスター! マスター、戻って来て下さい!』
はっ! しまった、また自分の世界に浸って、二人をほったらかしにしていた。
『ゴホン! 申し訳ない。お嬢さん、怪我はないですか?』
『は、はい! 危ない処を助けて頂いて、ありがとうございます!』
『いえいえ、お気になさらずに、私達は旅の者です!』
『マスター! 猿のモンスターは近くには、居ないようですが、至急ここから離れた方が良いかと!』
ふむ、確かに周辺地図で確認しても、他の猿のモンスターの群れとは距離が離れている。
『お嬢さん、宜しければ家まで送りましょうか? この森には、まだまだ危険なモンスターが沢山いますから』
『ありがとうございます! 私はミラと申します! 近くのバミラ村に住んでいます! よろしくお願いします!』
うんうん、言葉遣いも丁寧な、確りとしたお嬢さんだ。うんうん、関心関心。
『関羽! 護衛を頼む!』
『はっ、お任せ下さい! マスター!』
あ、そうそう、猿のモンスターの亡骸も回収しておかないと、勿体ない、勿体ない。
私はゲームシステムの収納機能で、周囲に倒れている猿のモンスター(デルモンキーと言うモンスターらしい)を、脳内に浮かぶ周辺地図で、生物印を複数確定して瞬時に回収したのだった。
これも、ゲームシステムの機能の一つだ(倒した側から、回収する事も出来る)。
う、うん? ......何か視線を感じるが、お嬢さんが辺りを見回して混乱している。
視線の元は関羽で、目配せで“人前でゲームシステムを使うのはご遠慮下さい”と語っていた。
申し訳ない、......関羽、そうだった。関羽と話し合ってゲームシステムは、出来るだけ秘匿して置く事にしたんだった。
私は目線で、謝罪の意を関羽に伝え、不思議がるお嬢さんを即して、バミラ村に向かった。
さて、この三日間で他にも解った事がある。
私が毎日の日課としていたソシャゲ【英雄大戦】の課金システムだが、倒したモンスター及び、採集した薬草などの素材を、【英雄召喚LV1】で売却出来て、それによりこの世界のお金(ロア)を換金獲得出来た。
これによって【英雄大戦】のガチャを引けるようになった。
本当に良かった!
実は、最初の一回は初回特典で無料だったからこそ引けたが、その後このゲームシステムが判明するまでは、課金をどうやってするかが重大な問題となっていたからだ。
ガチャ機能には、英雄ガチャの他に装備ガチャとアイテムガチャがある。
英雄ガチャは文字通り、英雄武将カードを引くガチャだ。
装備ガチャは、青龍偃月刀のような武器と、鎧・小手・靴などの装備カードを引くガチャだ。
アイテムガチャは、攻撃・防御・付与・回復などのアイテムカードを引くガチャだ。
それと、【英雄大戦】だけで使用出来るポイントもあった。
ロアに比べて高すぎる印象だが、敵性生物を倒したら、亡骸(素材)・経験値・ポイントが獲得出来るので、敵性生物は積極的に倒して行きたい。
敵性生物を倒した経験値は、カード武将の【関羽】が倒しても、私が倒しても獲得経験値は均等に分配されるようだ。
部隊編成で、編成するとゲームで言うパーティー扱いになるようだ。
非常に興味深い。
ああ、私の現在のステータスは、こんな感じになっている。
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情報表示:▼
NAME:【カネヨシ・タツカド】
個体LV:【3】 ↑2UP
備考:▼
年齢:【98歳】
種族:【ゴブリン】
身分:【放浪者】▼
【放浪者】:流離いの旅人。
職業:【英雄召喚師】▼
【英雄召喚師】:英雄を召喚して使役する。
称号:【プレイヤー】▼
【プレイヤー】:ゲームプレイヤーの称号。ゲームシステムを使用可能。
【迷い人】▼
【迷い人】:アルグリア世界に迷い込んだ者の称号。異世界言語を使用可能。
才能:【英雄召喚LV1】▼
【英雄召喚LV1】:英雄を召喚して使役するスキル。
【隠密LV3】▼
【隠密LV3】:気配を消すスキル。
説明:▼
【異世界からの迷い人とゴブリンが融合した稀有なゴブリン】
状態表示:▼
生命力:【11/11】
魔力 :【27/27】 ↑19UP
精神力:【34/34】
持久力:【34/37】 ↑9UP
満腹度:【89/100】
能力表示:▼
筋力 :【13】 ↑2UP
耐久力 :【11】 ↑2UP
知力 :【23】 ↑2UP
敏捷 :【22】 ↑2UP
器用 :【28】 ↑2UP
魅力 :【76】 ↑2UP
部隊編成表示:▼
統率力:【98】
攻撃力:【145/141】【特性効果発動中!】
防御力:【287/283】【特性効果発動中!】
機動力:【79】
持久力:【96】/【100】
戦法力:【100】/【100】
士気力:【104】/【100】【特性効果発動中!】
詳細:▼
主将:【カネヨシ・タツカド】
副将:【ウンチョウ・カンウ】
副将:【未設定】
部隊:【歩兵】▼
【歩兵】:【カネヨシ・タツカド】【ウンチョウ・カンウ】
戦法:【神将】▼
【神将】:所属部隊に攻撃力+100・防御力+100効果。
特性:【神将】▼
【神将】:攻撃力・防御力・士気力が、戦闘中徐々に上昇し続ける。
説明:【稀有なゴブリンが率いる二人だけのゴブリン部隊】
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突っ込み処満載だな、......個体レベルが【3】になったが、能力数値はレベル上昇時に【↑1UP】づつしか上がらなかった。
これは、レベルアップ時の能力アップが、固定の【↑1UP】なのかは、今後の検証で明らかになるだろう。
状態数値だが、個体のレベルアップとは関係ない数値のようで、魔力と持久力だけが上昇している、これも継続検証が必要だ。
あ、そうそう! 新たに才能【隠密】が獲れて、今回の戦闘でレベルアップしていた。
才能が獲得出来た理由は、多分私の行動ではないかと推測している。
私は戦争を体験しており、その時の仕草・習慣が今になっても抜けないでいた。
森を探索する時に、自然と気配を消していた事が要因だと思う。
部隊編成表示では、私と関羽を編成したら数値が確定したようだ。
この数値がどれぐらいの強さなのかと言うと、先ほど倒したデルモンキーの部隊攻撃力は【71】で防御力【57】だった。
十二匹の集団を攻撃する前に確認した時の数値だ。
ふむ、良く解らん。
私達はたった二人だったし、数値自体の計算方法も不明だし、これも継続検証の対象だ。
それと戦法と特性の欄の【神将】、これは確実に【関羽】を部隊に編成しているからだった。
戦法【神将】は任意発動で、戦法力を五十消費して、効果時間が三十分間、攻撃力と防御力が各百数値づつ上昇、チャージ時間は十五分。
特性【神将】は常時発動で、戦闘中に攻撃力・防御力・士気力が徐々に上昇し続けるチートな特性だった!
戦闘が終了したら、徐々に数値が下がっていくようだ。
しかし、この効果は凄いチート過ぎる! あっ、そうだ!
女神さま、お許し下さい!
失礼な事ばかり言って、申し訳ないです!
許してくれますよね、神さま?
本当に申し訳ありません!
シーン、......
ゴホン、流石は金武将【関羽雲長】、異世界小説で言うチートだった。
戦闘中に士気力が、百の母数を超えながら上昇した時には、驚愕した。
戦時中、部隊の士気をどうやって維持するかが、指揮官の力量だったからだ。
士気の低い部隊は、通常の実力を発揮出来ないのは当り前だ。
それ故に指揮官は、戦況を読み、自部隊の状態を把握し、行動の判断を下す。
言葉で言うのは容易い、実際は非情で、無慈悲で、残酷だった。
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私を残して黄泉路へ出撃していった仲間達。
私はまだ生き残っている。
仲間の分も私は生き続ける。
“お前は生き残れ!”
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・
・
私の名前は、龍門兼慶。
仲間の想いに、異世界でも必ず生き残ると誓ったゴブリンだ!
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