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第1章 ゴブリンとして生きていく!

第3話 女神さま、神さま、突っ込んでくれないのですか?

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鬱蒼うっそうとした森の中で、ゴブリンが一人、猿のモンスターの群れに囲まれていた。



『くっ、来るな!』



『『『キ、キーイ!キー!』』』『『『キ、キーイ!キー!』』』 





しまった! 薬草の採集に夢中になって、猿のモンスター達の縄張りに入ってしまった!



私を取り囲む猿のモンスター達の数が十匹以上はいる! ああ、村の者達と一緒にくれば、こんな事には!



私は木の棒を振り回しながら、猿のモンスター達を威嚇いかくする。



『それ以上、近付くな!』



ああ、どうしょう! 私はここで死ぬわけにはいかない!



妹を残して死ねない! 誰か、誰か助けて、神さま! お願いです、助けて!



私は、狩猟と森林を司る【風神サジタリウス】さまに、助けを求めた!





『キ、キキキキキー!!!』『キ、キキキキキー!!!』



『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお~!!』



古代中国の武将の装いに身を包んだゴブリンが、青龍偃月刀せいりゅうえんげつとうを振り回し雄叫びを上げながら、猿のモンスターの群れに突っ込んで行く!



ゴブリンは猿のモンスターと擦れ違い様に、青龍偃月刀せいりゅうえんげつとうで、猿のモンスターの身体ごと一刀両断で、切り裂く。



『我は関羽雲長かんううんちょう! 女子おなご一人に何をしておるかぁ~!』



美髯びぜんのゴブリンが、襲われていたゴブリンを背に、ドヤ顔で大見得を切っている!



そぉ~......ぐっ、ボキ! そぉ~......



腰布一枚のゴブリンが、猿のモンスターの一匹の背後に忍び寄り、静かに猿のモンスターの口を左手で塞ぎ、右腕で気道を圧迫して、音を発てずに締め折り倒して行く。





人型モンスターなら、私の出番だ。



ジャングルでの、浸透しんとう作戦は手慣れたものだった。



私はおとりとなって暴れている関羽に感謝をしながら、一匹、また一匹と静かに倒していった。



LV







システムメッセージが、頭の中で鳴り響く!



ふむ、後残りは四匹だ。 



私の脳裏には、周辺地図が浮かび、生物印クリーチャーマーク注視ちゅうしすると、その個体情報が読み取れる。



生物印クリーチャーマークは色で識別しきべつが可能で、赤色印レッドマークが【アクティブクリーチャー】で私達を敵として認識していない敵性てきせい生物(認識すると点滅する)、黄色印イエローマークが【パッシブクリーチャー】で私達を敵と認識していない、敵になる可能性のある生物(攻撃をしなければ敵性にはならない)を表している。



青色印ブルーマークは私と関羽で味方生物を表し、緑色印グリーンマークが襲われていたゴブリンのもので中立生物を表している。



この三日間で、ゲームシステムを検証解明して、現在で解っている内の一つだ。





『危ないところを助けて頂いて、ありがとうございます! 私は近くの村に住む者でございます。旅のお方ですか?』



ふむ、何と答えるべきか悩むな。



異世界小説物では、この女性は確実にヒロインだ。



最初に遭遇して、その危機を助ける! うん、間違いない!



この女性がヒロインで間違いない!





『どうかされましたか、マスター?』



う、うん? はっ! 



『大丈夫、何でもない、......よ?』



『はぁ、......?』『......?』



自分の世界に入り込んでいた私を、美髯びぜんのゴブリンと女性のゴブリンが心配そうに見つめていた。





『ふぉおおおおお~! ほぉおおおおお~!』



私は外気と内気の呼吸で、自分の体に気を循環じゅんかんさせ、心を落ち着かせる。



落ち着け、冷静になれ、感情に支配されるな!



ヒロインか、......さて、どうするか?



いや、どうするもこうするもないのでは?



私はハーレムを作る予定も、その気もない。



ふむ、何も問題ないじゃないか!



紛らわしい、お決まりの設定に騙される処だった!



女神さま、これは引っ掛け問題ですね?



私には解っていましたよ?



ふっ、ふふふ。



シーン、......



男なら、みんな騙されるとお思いですか?



伊達だて独身どくしんを、九十八年間続けている訳ではありませんよ、神さま?



ふっ、ふふふ。



シーン、......



ですよね、......本当にいないんですか、女神さま、神さま? 



女神さまと、神さまの突っ込み待ちをした私は、ガックリと項を垂れた。





ゲームシステムの検証結果の一つとして、私は脳内に浮かぶ周辺地図とは別に、他の情報画面がハッキリと、脳内で別画面として認識出来るようになっていた。



急に脳梗塞とかになりませんよね、......脳は大丈夫ですよね、女神さま? 



シーン、......



日課のソシャゲをしながら、片手間に株式投資をしていた私の机の上には、画面モニターが全部で二台あった。



その日課とは違って、私は同時に二個の画面を見て、同時に画面ごとに思考して操作が出来るようになり、それと同時に身体を動かせるようになっていた。



急に破裂したりとか、しませんよね、......本当に大丈夫なんですよね、神さま? 




シーン、......



くっ、私は諦めませんよ! 女神さま、神さま!





これで、『ステータスオープン!』と叫ばなくても情報確認が出来るようになった。



まあ、たまには目の前に出して見るのも悪くは無い。



私は結構、『ステータスオープン!』と言う言葉が気に入っている。



ほら、何か格好良くない? 何かワクワクしない?



え、中二病ちゅうにびょう? それって、何?



異世界には中二病ちゅうにびょうって、病気があるの?







『ゴホン! ......マスター! マスター、戻って来て下さい!』



はっ! しまった、また自分の世界にひたって、二人をほったらかしにしていた。



『ゴホン! 申し訳ない。お嬢さん、怪我はないですか?』



『は、はい! 危ない処を助けて頂いて、ありがとうございます!』



『いえいえ、お気になさらずに、私達は旅の者です!』



『マスター! 猿のモンスターは近くには、居ないようですが、至急ここから離れた方が良いかと!』



ふむ、確かに周辺地図で確認しても、他の猿のモンスターの群れとは距離が離れている。



『お嬢さん、よろしければ家まで送りましょうか? この森には、まだまだ危険なモンスターが沢山いますから』




『ありがとうございます! 私はミラと申します! 近くのバミラ村に住んでいます! よろしくお願いします!』



うんうん、言葉遣いも丁寧な、確りとしたお嬢さんだ。うんうん、関心関心。



『関羽! 護衛を頼む!』



『はっ、お任せ下さい! マスター!』



あ、そうそう、猿のモンスターの亡骸なきがらも回収しておかないと、勿体もったいない、勿体もったいない。



私はゲームシステムの収納機能で、周囲に倒れている猿のモンスター(デルモンキーと言うモンスターらしい)を、脳内に浮かぶ周辺地図で、生物印クリーチャーマークを複数確定して瞬時に回収したのだった。



これも、ゲームシステムの機能の一つだ(倒した側から、回収する事も出来る)。





う、うん? ......何か視線を感じるが、お嬢さんが辺りを見回して混乱している。



視線の元は関羽で、目配せで“人前でゲームシステムを使うのはご遠慮えんりょ下さい”と語っていた。



申し訳ない、......関羽、そうだった。関羽と話し合ってゲームシステムは、出来るだけ秘匿ひとくして置く事にしたんだった。



私は目線で、謝罪のを関羽に伝え、不思議がるお嬢さんを即して、バミラ村に向かった。




さて、この三日間で他にも解った事がある。



私が毎日の日課としていたソシャゲ【英雄大戦】の課金システムだが、倒したモンスター及び、採集した薬草などの素材を、【英雄召喚LV1】で売却出来て、それによりこの世界のお金(ロア)を換金かんきん獲得出来た。



これによって【英雄大戦】のガチャを引けるようになった。



本当に良かった!



実は、最初の一回は初回特典で無料だったからこそ引けたが、その後このゲームシステムが判明するまでは、課金をどうやってするかが重大な問題となっていたからだ。



ガチャ機能には、英雄ガチャの他に装備ガチャとアイテムガチャがある。



英雄ガチャは文字通り、英雄武将カードを引くガチャだ。



装備ガチャは、青龍偃月刀のような武器と、鎧・小手・靴などの装備カードを引くガチャだ。



アイテムガチャは、攻撃・防御・付与・回復などのアイテムカードを引くガチャだ。



それと、【英雄大戦】だけで使用出来るポイントもあった。



ロアに比べて高すぎる印象だが、敵性てきせい生物を倒したら、亡骸なきがら(素材)・経験値・ポイントが獲得出来るので、敵性てきせい生物は積極的に倒して行きたい。



敵性てきせい生物を倒した経験値は、カード武将の【関羽】が倒しても、私が倒しても獲得経験値は均等に分配されるようだ。



部隊編成で、編成するとゲームで言うパーティー扱いになるようだ。



非常に興味深い。



ああ、私の現在のステータスは、こんな感じになっている。



――――――

情報表示:▼

NAME:【カネヨシ・タツカド】

個体LV:【3】 ↑2UP

備考:▼

年齢:【98歳】

種族:【ゴブリン】

身分:【放浪者ほうろうしゃ】▼

   【放浪者ほうろうしゃ】:流離さすらいの旅人。

職業:【英雄召喚師】▼

   【英雄召喚師】:英雄を召喚して使役する。


称号:【プレイヤー】▼

   【プレイヤー】:ゲームプレイヤーの称号。ゲームシステムを使用可能。

   【迷い人】▼

   【迷い人】:アルグリア世界に迷い込んだ者の称号。異世界言語を使用可能。


才能スキル:【英雄召喚LV1】▼

   【英雄召喚LV1】:英雄を召喚して使役するスキル。

   【隠密LV3】▼

   【隠密LV3】:気配を消すスキル。

説明:▼
【異世界からの迷い人とゴブリンが融合ゆうごうした稀有けうなゴブリン】

状態表示:▼

生命力HP:【11/11】

魔力MP :【27/27】 ↑19UP

精神力MSP:【34/34】

持久力EP:【34/37】 ↑9UP

満腹度FP:【89/100】

能力表示:▼

筋力STR   :【13】 ↑2UP

耐久力VIT  :【11】 ↑2UP

知力INT   :【23】 ↑2UP

敏捷AGI   :【22】 ↑2UP

器用DEX   :【28】 ↑2UP

魅力CHA   :【76】 ↑2UP

部隊編成表示:▼

統率力LEA:【98】

攻撃力OFF:【145/141】【特性効果発動中!】

防御力DEF:【287/283】【特性効果発動中!】

機動力MOB:【79】

持久力END:【96】/【100】

戦法力TAC:【100】/【100】

士気力MOR:【104】/【100】【特性効果発動中!】

詳細:▼

主将:【カネヨシ・タツカド】

副将:【ウンチョウ・カンウ】

副将:【未設定】

部隊:【歩兵】▼

   【歩兵】:【カネヨシ・タツカド】【ウンチョウ・カンウ】

戦法:【神将】▼

   【神将】:所属部隊に攻撃力+100・防御力+100効果。

特性:【神将】▼

   【神将】:攻撃力・防御力・士気力が、戦闘中徐々じょじょに上昇し続ける。

説明:【稀有なゴブリンが率いる二人だけのゴブリン部隊】

――――――



突っ込み処満載まんさいだな、......個体レベルが【3】になったが、能力数値はレベル上昇時に【↑1UP】づつしか上がらなかった。



これは、レベルアップ時の能力アップが、固定の【↑1UP】なのかは、今後の検証で明らかになるだろう。



状態数値だが、個体のレベルアップとは関係ない数値のようで、魔力と持久力だけが上昇している、これも継続検証が必要だ。



あ、そうそう! 新たに才能スキル【隠密】が獲れて、今回の戦闘でレベルアップしていた。



才能スキルが獲得出来た理由は、多分私の行動ではないかと推測している。



私は戦争を体験しており、その時の仕草・習慣が今になっても抜けないでいた。



森を探索する時に、自然と気配を消していた事が要因よういんだと思う。



部隊編成表示では、私と関羽を編成したら数値が確定したようだ。



この数値がどれぐらいの強さなのかと言うと、先ほど倒したデルモンキーの部隊攻撃力は【71】で防御力【57】だった。



十二匹の集団を攻撃する前に確認した時の数値だ。



ふむ、良く解らん。



私達はたった二人だったし、数値自体の計算方法も不明だし、これも継続検証の対象だ。



それと戦法と特性の欄の【神将】、これは確実に【関羽】を部隊に編成しているからだった。



戦法【神将】は任意発動で、戦法力を五十消費して、効果時間が三十分間、攻撃力と防御力が各百数値づつ上昇、チャージ時間は十五分。



特性【神将】は常時発動で、戦闘中に攻撃力・防御力・士気力が徐々じょじょに上昇し続けるチートな特性だった!



戦闘が終了したら、徐々じょじょに数値が下がっていくようだ。



しかし、この効果は凄いチート過ぎる! あっ、そうだ!



女神さま、お許し下さい! 



失礼な事ばかり言って、申し訳ないです!



許してくれますよね、神さま?



本当に申し訳ありません!



シーン、......



ゴホン、流石は金武将【関羽雲長かんううんちょう】、異世界小説で言うチートだった。



戦闘中に士気力が、百の母数を超えながら上昇した時には、驚愕きょうがくした。



戦時中、部隊の士気をどうやって維持するかが、指揮官の力量だったからだ。



士気の低い部隊は、通常の実力を発揮出来ないのは当り前だ。



それ故に指揮官は、戦況を読み、自部隊の状態を把握し、行動の判断を下す。



言葉で言うのは容易たやすい、実際は非情ひじょうで、無慈悲むじひで、残酷ざんこくだった。











私を残して黄泉路よみじへ出撃していった仲間達。



私はまだ生き残っている。



仲間の分も私は生き続ける。



“お前は生き残れ!”










私の名前は、龍門兼慶たつかどかねよし



仲間の想いに、異世界でも必ず生き残るとちかったゴブリンだ!
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