2 / 8
第1章 ゴブリンとして生きていく!
第2話 女神さまと神さまは、やっぱりいない?
しおりを挟む
森の中で、見窄らしい腰布一枚のゴブリンが固まっている。
その微動だにしないゴブリンを、古代中国の武将の装いに身を包んだゴブリンが、青龍偃月刀を片手に心配そうに見つめていた。
『どうかされましたか、マスター?』
はっ、! ......ゴブリンの言葉で、私は我に返った!
『大丈夫、何でもないよ、......関羽?』
『はぁ、......?』
そして、私を心配そうに見つめるゴブリンに、......“お前が、......本当に関羽なのか?”と聞きたい気持ちを、微妙に隠せずに、そう一声掛けた。
『ふぉおおおおお~! ほぉおおおおお~!』
私は外気と内気の呼吸で、自分の体に気を循環させ、心を落ち着かせる。
落ち着け、冷静になれ、感情に支配されるな!
私は確かに、......金武将【関羽雲長】を召喚したはず?
しかし、私の目の前にいるのは艶やかな顎髭を生やしたゴブリン......。
『我が名は、関羽雲長! マスターお呼びにより参上しました!』って、ドヤ顔で登場したゴブリン......。
古代中国の武将の装いに身を包み、青龍偃月刀を片手に、心配そうに私を見つめているゴブリン......。
ふむ、......間違いじゃない、......残念ながら、このゴブリンが関羽雲長のようだ。
駅前の書店の異世界物コーナーには、こんな話の小説は置いていなかった!
こんな事なら、隣街の大きな書店の、異世界物コーナーも覗いておけば良かった...。
大きな書店では、異世界小説の種類も多く、新刊もいち早く陳列されていると言う。
駅前の書店、......店主の鈴木さん情報だった。
駅前の小さな書店、......鈴木さん、異世界小説を立ち読みさせてくれて、...本当にありがとう。
鈴木さんに感謝をしながらも、ここは......今迄の異世界小説の定石が、通用しない世界の可能性もあると、私は考え始めていた。
私は気を引き締めて、目の前に浮かぶ半透明のプレート、【英雄大戦】に酷似したゲーム画面を確認した。
関羽雲長の武将カード情報は、......!
――――――
情報表示:▼
NAME:【ウンチョウ・カンウ】
個体LV:【1】
備考:▼
年齢:【?歳】
種族:【ゴブリン】
身分:【カード武将】▼
【カード武将】:カードに封じられた武将。
職業:【カード武将】▼
【カード武将】:カードに封じられた武将。
称号:【神将】▼
【神将】:神の如き武将。才能神将を使用可能。
才能:【槍術LV1】▼
【槍術LV1】:槍を巧みに使う下位パッシブスキル。
【鉄壁LV1】▼
【鉄壁LV1】:防御術の上位スキルパッシブスキル。
【神将LV1】▼
【神将LV1】:【神将LV1】発動可能。必殺技アクティブスキル。
説明:▼
【異世界のカード武将。異世界の英雄武将で、美髯公と呼ばれ財神と崇められている】
状態表示:▼
生命力:【28/28】
魔力 :【18/18】
精神力:【29/29】
持久力:【41/41】
満腹度:【96/100】
能力表示:▼
筋力 :【25】
耐久力 :【48】
知力 :【25】
敏捷 :【27】
器用 :【29】
魅力 :【85】
部隊編成表示:▼
統率力:【未設定】
攻撃力:【未設定】
防御力:【未設定】
機動力:【未設定】
持久力:【未設定】/【未設定】
戦法力:【未設定】/【未設定】
士気力:【未設定】/【未設定】
詳細:▼
主将:【未設定】
副将:【未設定】
副将:【未設定】
部隊:【未設定】
戦法:【未設定】
特性:【未設定】
説明:【未設定】
――――――
あ、......あれ? 私が遊んでいたソシャゲの【英雄大戦】のカード情報と、書式も内容も、全く違う!
一体、......どう言う事なんだ? 私のステータス情報と同じ書式だ!
あ、やっぱり、名前は前なんだ、【ウンチョウ・カンウ】......。
そんな事は、今はどうでも良い!
関羽雲長、金武将カードなのに、思ったほど強くないような気が......。
ふむ、......チート武将じゃないのか?
異世界小説は、チートが定石の話のはずだが。
は、......話が違うんじゃないか? 女神さま! いや、話は抑もしてないが!
異世界小説の定石は、適用されないのですか? 神さま!
私は、心の中で女神さまと神さまに、問い掛けた!
シーン、......ですよね。
解ってました、......よ?
『ふぅおおおおお~! ほぉおおおおお~!』
落ち着け、冷静になれ、感情に支配されるな!
この世界には、本当に女神さま、神さま、がいないのかも知れない。
やはり、このゲームのようなシステムが、この世界で生き残る肝になる!
このシステムを早く理解しないと、......この異世界では生き残れないと、私は犇々と感じていた。
満腹度は、私も関羽も、徐々に減少してきている。
カード武将なのに、......腹が減るのか?
よく解らん。
先ずは、水と、食料と、そして、......寝床の確保だ。
う、うん? ふと、視線を感じて、半透明のプレートから顔を上げた。
するとそこには、私を心配そうに見つめる、紅ら顔のゴブリンの円らな瞳が。
ふっ、......思わず、関羽の心配そうな顔を見て、笑いそうになった、......危ない、危ない。
カード武将だろうが、ゴブリンだろうが、私の仲間だ。
親しき仲にも、礼儀ありだ。
し、しかし、......この世界のゴブリンは、顔だけ紅いのかな?
それとも、紅顔と言われていた関羽雲長がゴブリンになったからかな?
抑も関羽雲長がゴブリンになるって、どう言う事なんだ!
ねえ、女神さま、神さま、何とか言って下さい!
シーン、......ですよね。
理不尽だ。
一体どうなってるんだ、......全く解らん。
ああ、しまった! いかん、......いかん!
ゴブリンをほったらかしにしていた。
『失礼した、......関羽雲長殿。貴殿をほったらかしにして、申し訳ない』
顎髭を艶やかに生やした紅顔のゴブリンに、私は深く頭を垂れた。
『! いえ、マスター! 我如きに、頭を下げる必要はありません! 我はマスターに召喚された者にございます! どうぞ、頭を上げられて、......そして、関羽とお呼び下さい!』
私は頭を上げて、毅然と構えているゴブリンの目を見つめ返す。
円らな瞳で、真剣な目で、私を見つめるゴブリンを、......私は何だか可愛いと思った。
『了解した、関羽! 私達は仲間だ、これからよろしく頼む!』
私はそう言いながら、美髯を生やした、紅顔のゴブリンに右手を差し出した。
ゴブリンは最初は不思議そうに、私の右手を見つめ、そして、......私の手を確りと握り返した。
パチパチパチ......
ふむ、このカエルの腿焼きは食べ頃だな。
『関羽、もう一つどうだ? 遠慮するなよ、まだまだ沢山あるんだからな』
美髯のゴブリンは、......疾うに腿肉を食べ終わり、手に付いた脂を全部舐め取っていた。
『はっ、はい、......では! 頂きます!』
勢いよく腿肉に齧り付き、喜色満面なゴブリン。
私は、そんなゴブリンを見ていると、今まで感じた事のない感情が胸に沸き起こる。
ふふ、ふふふ。
私には子供がいない。
結婚をしていない独り身だから当然だが。
もし、子供がいたら......親とは、こんな気持ちなのかも知れない。
そして、私は懐かしい顔を思い出し、深く瞑目し、冥福を祈った。
『きゃあああああ~!』
昼食が終わり、次の目的地に向かおうとした時、突如として響き渡る叫び声が聞こえた。
む、近いな!
『関羽! 行くぞ!』
『はっ、マスター!』
私達は叫び声が聞こえた方向へ走り出した。
・
・
・
・
・
懐かしい許嫁の顔が、思い浮かぶ。
百合子さん、......助けに戻れなくて申し訳ない。
“兼慶さん、必ず生きて戻って来て!”
だが、私は間に合わなかった、......申し訳ない、百合子さん。
亡き許嫁の顔と、言葉が忘れられない。
“死なないで!”
・
・
・
・
・
私の名前は、龍門兼慶。
許嫁の想いに、異世界でも死なないと誓ったゴブリンだ!
その微動だにしないゴブリンを、古代中国の武将の装いに身を包んだゴブリンが、青龍偃月刀を片手に心配そうに見つめていた。
『どうかされましたか、マスター?』
はっ、! ......ゴブリンの言葉で、私は我に返った!
『大丈夫、何でもないよ、......関羽?』
『はぁ、......?』
そして、私を心配そうに見つめるゴブリンに、......“お前が、......本当に関羽なのか?”と聞きたい気持ちを、微妙に隠せずに、そう一声掛けた。
『ふぉおおおおお~! ほぉおおおおお~!』
私は外気と内気の呼吸で、自分の体に気を循環させ、心を落ち着かせる。
落ち着け、冷静になれ、感情に支配されるな!
私は確かに、......金武将【関羽雲長】を召喚したはず?
しかし、私の目の前にいるのは艶やかな顎髭を生やしたゴブリン......。
『我が名は、関羽雲長! マスターお呼びにより参上しました!』って、ドヤ顔で登場したゴブリン......。
古代中国の武将の装いに身を包み、青龍偃月刀を片手に、心配そうに私を見つめているゴブリン......。
ふむ、......間違いじゃない、......残念ながら、このゴブリンが関羽雲長のようだ。
駅前の書店の異世界物コーナーには、こんな話の小説は置いていなかった!
こんな事なら、隣街の大きな書店の、異世界物コーナーも覗いておけば良かった...。
大きな書店では、異世界小説の種類も多く、新刊もいち早く陳列されていると言う。
駅前の書店、......店主の鈴木さん情報だった。
駅前の小さな書店、......鈴木さん、異世界小説を立ち読みさせてくれて、...本当にありがとう。
鈴木さんに感謝をしながらも、ここは......今迄の異世界小説の定石が、通用しない世界の可能性もあると、私は考え始めていた。
私は気を引き締めて、目の前に浮かぶ半透明のプレート、【英雄大戦】に酷似したゲーム画面を確認した。
関羽雲長の武将カード情報は、......!
――――――
情報表示:▼
NAME:【ウンチョウ・カンウ】
個体LV:【1】
備考:▼
年齢:【?歳】
種族:【ゴブリン】
身分:【カード武将】▼
【カード武将】:カードに封じられた武将。
職業:【カード武将】▼
【カード武将】:カードに封じられた武将。
称号:【神将】▼
【神将】:神の如き武将。才能神将を使用可能。
才能:【槍術LV1】▼
【槍術LV1】:槍を巧みに使う下位パッシブスキル。
【鉄壁LV1】▼
【鉄壁LV1】:防御術の上位スキルパッシブスキル。
【神将LV1】▼
【神将LV1】:【神将LV1】発動可能。必殺技アクティブスキル。
説明:▼
【異世界のカード武将。異世界の英雄武将で、美髯公と呼ばれ財神と崇められている】
状態表示:▼
生命力:【28/28】
魔力 :【18/18】
精神力:【29/29】
持久力:【41/41】
満腹度:【96/100】
能力表示:▼
筋力 :【25】
耐久力 :【48】
知力 :【25】
敏捷 :【27】
器用 :【29】
魅力 :【85】
部隊編成表示:▼
統率力:【未設定】
攻撃力:【未設定】
防御力:【未設定】
機動力:【未設定】
持久力:【未設定】/【未設定】
戦法力:【未設定】/【未設定】
士気力:【未設定】/【未設定】
詳細:▼
主将:【未設定】
副将:【未設定】
副将:【未設定】
部隊:【未設定】
戦法:【未設定】
特性:【未設定】
説明:【未設定】
――――――
あ、......あれ? 私が遊んでいたソシャゲの【英雄大戦】のカード情報と、書式も内容も、全く違う!
一体、......どう言う事なんだ? 私のステータス情報と同じ書式だ!
あ、やっぱり、名前は前なんだ、【ウンチョウ・カンウ】......。
そんな事は、今はどうでも良い!
関羽雲長、金武将カードなのに、思ったほど強くないような気が......。
ふむ、......チート武将じゃないのか?
異世界小説は、チートが定石の話のはずだが。
は、......話が違うんじゃないか? 女神さま! いや、話は抑もしてないが!
異世界小説の定石は、適用されないのですか? 神さま!
私は、心の中で女神さまと神さまに、問い掛けた!
シーン、......ですよね。
解ってました、......よ?
『ふぅおおおおお~! ほぉおおおおお~!』
落ち着け、冷静になれ、感情に支配されるな!
この世界には、本当に女神さま、神さま、がいないのかも知れない。
やはり、このゲームのようなシステムが、この世界で生き残る肝になる!
このシステムを早く理解しないと、......この異世界では生き残れないと、私は犇々と感じていた。
満腹度は、私も関羽も、徐々に減少してきている。
カード武将なのに、......腹が減るのか?
よく解らん。
先ずは、水と、食料と、そして、......寝床の確保だ。
う、うん? ふと、視線を感じて、半透明のプレートから顔を上げた。
するとそこには、私を心配そうに見つめる、紅ら顔のゴブリンの円らな瞳が。
ふっ、......思わず、関羽の心配そうな顔を見て、笑いそうになった、......危ない、危ない。
カード武将だろうが、ゴブリンだろうが、私の仲間だ。
親しき仲にも、礼儀ありだ。
し、しかし、......この世界のゴブリンは、顔だけ紅いのかな?
それとも、紅顔と言われていた関羽雲長がゴブリンになったからかな?
抑も関羽雲長がゴブリンになるって、どう言う事なんだ!
ねえ、女神さま、神さま、何とか言って下さい!
シーン、......ですよね。
理不尽だ。
一体どうなってるんだ、......全く解らん。
ああ、しまった! いかん、......いかん!
ゴブリンをほったらかしにしていた。
『失礼した、......関羽雲長殿。貴殿をほったらかしにして、申し訳ない』
顎髭を艶やかに生やした紅顔のゴブリンに、私は深く頭を垂れた。
『! いえ、マスター! 我如きに、頭を下げる必要はありません! 我はマスターに召喚された者にございます! どうぞ、頭を上げられて、......そして、関羽とお呼び下さい!』
私は頭を上げて、毅然と構えているゴブリンの目を見つめ返す。
円らな瞳で、真剣な目で、私を見つめるゴブリンを、......私は何だか可愛いと思った。
『了解した、関羽! 私達は仲間だ、これからよろしく頼む!』
私はそう言いながら、美髯を生やした、紅顔のゴブリンに右手を差し出した。
ゴブリンは最初は不思議そうに、私の右手を見つめ、そして、......私の手を確りと握り返した。
パチパチパチ......
ふむ、このカエルの腿焼きは食べ頃だな。
『関羽、もう一つどうだ? 遠慮するなよ、まだまだ沢山あるんだからな』
美髯のゴブリンは、......疾うに腿肉を食べ終わり、手に付いた脂を全部舐め取っていた。
『はっ、はい、......では! 頂きます!』
勢いよく腿肉に齧り付き、喜色満面なゴブリン。
私は、そんなゴブリンを見ていると、今まで感じた事のない感情が胸に沸き起こる。
ふふ、ふふふ。
私には子供がいない。
結婚をしていない独り身だから当然だが。
もし、子供がいたら......親とは、こんな気持ちなのかも知れない。
そして、私は懐かしい顔を思い出し、深く瞑目し、冥福を祈った。
『きゃあああああ~!』
昼食が終わり、次の目的地に向かおうとした時、突如として響き渡る叫び声が聞こえた。
む、近いな!
『関羽! 行くぞ!』
『はっ、マスター!』
私達は叫び声が聞こえた方向へ走り出した。
・
・
・
・
・
懐かしい許嫁の顔が、思い浮かぶ。
百合子さん、......助けに戻れなくて申し訳ない。
“兼慶さん、必ず生きて戻って来て!”
だが、私は間に合わなかった、......申し訳ない、百合子さん。
亡き許嫁の顔と、言葉が忘れられない。
“死なないで!”
・
・
・
・
・
私の名前は、龍門兼慶。
許嫁の想いに、異世界でも死なないと誓ったゴブリンだ!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる