13 / 20
010.ゲーム脳の変態は、幼馴染みを回顧(かいこ)する!
しおりを挟む
FHSLG(ファンタジー歴史シミュレーションゲーム)【アルグリア戦記】とは、アルグリア大陸の住人に為り、四十七の人類国家と数多あるモンスターのコミュニティを、全て統一制覇する事を目指す一人用戦争ゲームで在る。
勿論、統一制覇を目指さずに、悠久の刻の流れを楽しむプレイヤーも多い。現実世界では為し得なかった職業に付く者。其れこそ、楽しみ方は千差万別だ。
戦争ゲームではあるが、継承システムに依り理論上アルグリア大陸が統一制覇されるまで、永遠に自分好みに遊び楽しむ事が出来る遣り込み型のゲームだった。
特色としては、選択したキャラアバターの能力を獲得した英雄ポイントでカスタマイズ出来る事だ。最弱底辺キャラアバターで成り上がりの浪漫プレイを楽しんだり、お気に入りのキャラアバターを強化し続けて、自分好みの最強のアバターに育成して遊ぶプレイヤーも少なくない。
要は好みのキャラアバターで、自分が満足いくまでアバターライフを満喫出来るのだ。現実世界では有り得ない歴史の回帰を楽しむ。自由度は他のゲームの追従を許さない。但し【セーブ不能】の為、【ゲームアウト】は【ゲームオーバー】と同義である。
一期一会。同じアバターでプレイしても、前回と同じ出会いが在るとは限らない。少しの行動の擦れが、運命の擦れを呼び、歴史が変わる。同じ時代でも、プレイヤーの嚔一つで【何か】が変わる。そんな摩訶不思議な仮想現実ゲームが、【アルグリア戦記】だった。
『・・・・・・ご利用ありがとうご座いました! 又のお越しをお待ちしております!』
プレイヤーが【ゲームアウト】で、エフェクト処理されて分解されて消えていく。
『さて、来週から第二陣一千万のプレイヤーさまが、新規にアルグリア戦記に登録をされる。バグなど無ければ良いのですが・・・・・・』
執事服に身を包んだ無表情な黒猫の男が呟く。
彼こそが、【アルグリア戦記の総合案内人】である【ジョドー】で在る。
現在一千万のプレイヤーの対応を一手に引き受け、更に第二陣一千万を加えた二千万のプレイヤーの総合案内人だ。
一千万のプレイヤーに同時接続されながら、分身体を遣い全て対応する。
其の激務を熟しながら本体である執事は仮想空間の中で、空中に映る映像を食い入るように見つめていた。
『くっくくくく! 流石は【廃神】と呼ばれるカルマさまだ。常人の斜め上を、意図も簡単に翔んでいく。鬼畜無理ゲーと呼ばれるシナリオ【創造神の試練】をクリアするとは。クリア第一号は、やはりカルマさまでしたか。流石です』
さて、創造神カリダドの望みは叶うのでしょうか?
画面を無表情で見つめる執事の呟きを、聞いている者は誰も居ない。此の仮想空間は、ジョドーのみが存在出来るプライベート空間だった。
FHSLG【アルグリア戦記】が他の仮想世界のゲームと隔絶しているのは、クリエイターが変わった人物。否、かなりイカれた発想の持ち主だったからだ。
其のクリエイターは、本気で本物のゲーム世界を構築する為には、クリエイターは不要だと言い放った。
自分自身の存在意義を、軽く否定したクリエイターの提案は、前代未聞の試みだった。
人は本物の神には為れない。ならば人が世界を創造しても、其れは偽物でしかない。本物の世界を構築するには、本物の神に創造して貰えば良い。
其のクリエイターは本物の世界を創る為に、本気で真剣に本物の神を創り上げ、全ての権限を与え【新世界】を創造させた。
遊戯管理脳【カリダド】が創造した世界こそが、ファンタジー歴史シミュレーションゲーム【アルグリア戦記】だった。
其のカリダドを補助する補助管理脳が、【アルグリア戦記の総合案内人】であるジョドーの本当の姿だった。
ーーーーーーーーーー
「マスターお帰りなさい。どうされましたか? 顔が酷く気持ち悪いのですが?」
うぐっ。ミリィの容赦無い毒舌で精神にクリティカルヒットを喰らった俺は再度ベッドチェアーに沈み込んで目を瞑った。
やったー! 【創造神の試練】をクリアしたぞ!
俺は心の中で、絶叫し発狂し歓喜に身悶えした。
「熱も無いようですし、精神数値にも異常は見られないのですが。はて、マスター大丈夫ですか?」
う、うん? 何だ?
俺は額の温かい感触に、驚いて目を開けた。
「ぶっ! な、何をしているんだミリィ?」
目を開けた俺の目の前には、事もあろうにミリィの顔が在った。オートドールに額をくっ付けて検温する機能などは存在しない。
全て耳に掛けている【ダイブトリッパー】で体調管理が可能だった。
天然メイドのミリィには困ったものだ。其れに良い匂いもして、時々ドキリとする。
「マスター?」
そんな首を横にコテンとさせても、駄目だものは駄目だ。俺は震える手で、ミリィの肩を掴み優しく押し退けた。
「何かお腹が減ったな。ミリィ、何か軽くで良いから作ってくれないか?」
「はい、マスター! 了解しました!」
溢れんばかりの笑顔ではないが、優しい瞳で微笑んだミリィが調理に向かった。
ふー、助かった。ミリィには再三注意をしていた。余り身体的な接触をしないようにと。
「ミリィ、・・・・・・」
目の前で調理中の【オートドール】ではない、もう此処には存在しない幼馴染みの名を、静かに呟いたカルマだった。
----------
『遂に【創造神の試練】をクリアしましたよ、師匠! 聞こえますか、師匠?』
俺はMMOWG(多人数参加型戦争ゲーム)【矛盾】で師事した師匠で在るプレイヤーネーム【クマメタル】に連絡を取ったが、例の如く闘いに酔っているのだろう。全く反応が無い。
世界を震撼させた一千万オーバーキルのテロリスト【クマメタル】と同じ名前で、仮想現実世界に於いてプレイをするイカれた変態。何が如何為って、仮想現実世界に於いて、其のプレイヤーネームで登録が許可されたのか、首を傾げる事しきりだ。
『カルマ、やっぱり鳥は良いな! 空を自由に翔べる!』
イカれた変態は例の如く、俺の話は全く聞いていなかったようだ。はぁ、トランスしている師匠には何を言っても届かない。自分のルールを忠実に実行する災厄と化す。【殺られたら殺り返す】、至ってシンプルな其のルールに全てを懸ける狂人。
全てと言って良いプレイヤーから忌み嫌われる存在、【凶神】と呼ばれる禍々しい魂の燐光が師匠だった。
『師匠、またモンスタープレイですか? 楽しんでますね【アルグリア戦記】!』
『まあな、血のエフェクト処理以外は最高に、興奮するぜカルマ!』
『其処は仕様なので仕方ないですよ。諦めて下さい師匠。其れから俺やりましたよ。【創造神の試練】をクリアしました!』
『ほう、鬼畜仕様のマゾゲー(マゾヒズムを楽しむ変態のゲーム)シナリオをクリアするとは、お前はイカれてるよカルマ?』
否々、アンタにだけは言われたくないよ! イカれた変態が、俺を変態性嗜好者のように言うのは納得がいかない! 断固反対する!
『其れで、鬼畜シナリオの報酬は何だったんだ?』
『完全制覇クリアの特典は、一千億英雄ポイント券・身体能力値の限界突破券・スキル枠撤廃券・ユニークスキル創造券・特別シナリオ【ゲーム世界へ転生】の選択券が各一枚づつですね!』
中々、破格な特典内容だった。能力値(筋力・耐久力・知力・敏捷・器用・魅力)を英雄ポイント分で、人種種族の成長限界値の上限を設定変更が出来る。但し、スタート時の能力値は初期設定値の侭なので、所謂俺Tueeeは出来ない。
スキル枠撤廃って、無限にスキルをセットして良いらしい。勿論、スキルもカスタマイズ可能だ。
【アルグリア戦記】では、キャラアバターごとにスキルレベルの成長上限値が設定されている。其の成長限界値を、英雄ポイントを使用してカスタマイズする。初期設定値は変更不可な仕様なので、最初からの俺Tueeeは勿論出来ない。
ユニークスキル創造って、もうチートだよね?
最後の特別シナリオ【ゲーム世界に転生】の選択券に至っては、インダストリア社の運営チームが悪乗りしてネーミングしたとしか思えないものだった。
『ほう、【ゲーム世界に転生】か? 浪漫じゃないか、本当に転生したりしてな! はっははははは~!』
豪快に笑う師匠に、『ははは、・・・・・・』と苦笑いで応答する俺だった。
『何にしても、楽しんで来いカルマ! 一回切りの人生だ、悔いの無いようにな!』
全くその通りだ。一回コッキリの人生だ。
俺は亡くなった幼馴染みの分も、人生を楽しむと決めていた。
『じゃあ、師匠! ゲーム世界に転生してきます! また連絡しますから、楽しみにしていて下さい!』
『おう! またなカルマ!』
To be continued! ・・・・・・
勿論、統一制覇を目指さずに、悠久の刻の流れを楽しむプレイヤーも多い。現実世界では為し得なかった職業に付く者。其れこそ、楽しみ方は千差万別だ。
戦争ゲームではあるが、継承システムに依り理論上アルグリア大陸が統一制覇されるまで、永遠に自分好みに遊び楽しむ事が出来る遣り込み型のゲームだった。
特色としては、選択したキャラアバターの能力を獲得した英雄ポイントでカスタマイズ出来る事だ。最弱底辺キャラアバターで成り上がりの浪漫プレイを楽しんだり、お気に入りのキャラアバターを強化し続けて、自分好みの最強のアバターに育成して遊ぶプレイヤーも少なくない。
要は好みのキャラアバターで、自分が満足いくまでアバターライフを満喫出来るのだ。現実世界では有り得ない歴史の回帰を楽しむ。自由度は他のゲームの追従を許さない。但し【セーブ不能】の為、【ゲームアウト】は【ゲームオーバー】と同義である。
一期一会。同じアバターでプレイしても、前回と同じ出会いが在るとは限らない。少しの行動の擦れが、運命の擦れを呼び、歴史が変わる。同じ時代でも、プレイヤーの嚔一つで【何か】が変わる。そんな摩訶不思議な仮想現実ゲームが、【アルグリア戦記】だった。
『・・・・・・ご利用ありがとうご座いました! 又のお越しをお待ちしております!』
プレイヤーが【ゲームアウト】で、エフェクト処理されて分解されて消えていく。
『さて、来週から第二陣一千万のプレイヤーさまが、新規にアルグリア戦記に登録をされる。バグなど無ければ良いのですが・・・・・・』
執事服に身を包んだ無表情な黒猫の男が呟く。
彼こそが、【アルグリア戦記の総合案内人】である【ジョドー】で在る。
現在一千万のプレイヤーの対応を一手に引き受け、更に第二陣一千万を加えた二千万のプレイヤーの総合案内人だ。
一千万のプレイヤーに同時接続されながら、分身体を遣い全て対応する。
其の激務を熟しながら本体である執事は仮想空間の中で、空中に映る映像を食い入るように見つめていた。
『くっくくくく! 流石は【廃神】と呼ばれるカルマさまだ。常人の斜め上を、意図も簡単に翔んでいく。鬼畜無理ゲーと呼ばれるシナリオ【創造神の試練】をクリアするとは。クリア第一号は、やはりカルマさまでしたか。流石です』
さて、創造神カリダドの望みは叶うのでしょうか?
画面を無表情で見つめる執事の呟きを、聞いている者は誰も居ない。此の仮想空間は、ジョドーのみが存在出来るプライベート空間だった。
FHSLG【アルグリア戦記】が他の仮想世界のゲームと隔絶しているのは、クリエイターが変わった人物。否、かなりイカれた発想の持ち主だったからだ。
其のクリエイターは、本気で本物のゲーム世界を構築する為には、クリエイターは不要だと言い放った。
自分自身の存在意義を、軽く否定したクリエイターの提案は、前代未聞の試みだった。
人は本物の神には為れない。ならば人が世界を創造しても、其れは偽物でしかない。本物の世界を構築するには、本物の神に創造して貰えば良い。
其のクリエイターは本物の世界を創る為に、本気で真剣に本物の神を創り上げ、全ての権限を与え【新世界】を創造させた。
遊戯管理脳【カリダド】が創造した世界こそが、ファンタジー歴史シミュレーションゲーム【アルグリア戦記】だった。
其のカリダドを補助する補助管理脳が、【アルグリア戦記の総合案内人】であるジョドーの本当の姿だった。
ーーーーーーーーーー
「マスターお帰りなさい。どうされましたか? 顔が酷く気持ち悪いのですが?」
うぐっ。ミリィの容赦無い毒舌で精神にクリティカルヒットを喰らった俺は再度ベッドチェアーに沈み込んで目を瞑った。
やったー! 【創造神の試練】をクリアしたぞ!
俺は心の中で、絶叫し発狂し歓喜に身悶えした。
「熱も無いようですし、精神数値にも異常は見られないのですが。はて、マスター大丈夫ですか?」
う、うん? 何だ?
俺は額の温かい感触に、驚いて目を開けた。
「ぶっ! な、何をしているんだミリィ?」
目を開けた俺の目の前には、事もあろうにミリィの顔が在った。オートドールに額をくっ付けて検温する機能などは存在しない。
全て耳に掛けている【ダイブトリッパー】で体調管理が可能だった。
天然メイドのミリィには困ったものだ。其れに良い匂いもして、時々ドキリとする。
「マスター?」
そんな首を横にコテンとさせても、駄目だものは駄目だ。俺は震える手で、ミリィの肩を掴み優しく押し退けた。
「何かお腹が減ったな。ミリィ、何か軽くで良いから作ってくれないか?」
「はい、マスター! 了解しました!」
溢れんばかりの笑顔ではないが、優しい瞳で微笑んだミリィが調理に向かった。
ふー、助かった。ミリィには再三注意をしていた。余り身体的な接触をしないようにと。
「ミリィ、・・・・・・」
目の前で調理中の【オートドール】ではない、もう此処には存在しない幼馴染みの名を、静かに呟いたカルマだった。
----------
『遂に【創造神の試練】をクリアしましたよ、師匠! 聞こえますか、師匠?』
俺はMMOWG(多人数参加型戦争ゲーム)【矛盾】で師事した師匠で在るプレイヤーネーム【クマメタル】に連絡を取ったが、例の如く闘いに酔っているのだろう。全く反応が無い。
世界を震撼させた一千万オーバーキルのテロリスト【クマメタル】と同じ名前で、仮想現実世界に於いてプレイをするイカれた変態。何が如何為って、仮想現実世界に於いて、其のプレイヤーネームで登録が許可されたのか、首を傾げる事しきりだ。
『カルマ、やっぱり鳥は良いな! 空を自由に翔べる!』
イカれた変態は例の如く、俺の話は全く聞いていなかったようだ。はぁ、トランスしている師匠には何を言っても届かない。自分のルールを忠実に実行する災厄と化す。【殺られたら殺り返す】、至ってシンプルな其のルールに全てを懸ける狂人。
全てと言って良いプレイヤーから忌み嫌われる存在、【凶神】と呼ばれる禍々しい魂の燐光が師匠だった。
『師匠、またモンスタープレイですか? 楽しんでますね【アルグリア戦記】!』
『まあな、血のエフェクト処理以外は最高に、興奮するぜカルマ!』
『其処は仕様なので仕方ないですよ。諦めて下さい師匠。其れから俺やりましたよ。【創造神の試練】をクリアしました!』
『ほう、鬼畜仕様のマゾゲー(マゾヒズムを楽しむ変態のゲーム)シナリオをクリアするとは、お前はイカれてるよカルマ?』
否々、アンタにだけは言われたくないよ! イカれた変態が、俺を変態性嗜好者のように言うのは納得がいかない! 断固反対する!
『其れで、鬼畜シナリオの報酬は何だったんだ?』
『完全制覇クリアの特典は、一千億英雄ポイント券・身体能力値の限界突破券・スキル枠撤廃券・ユニークスキル創造券・特別シナリオ【ゲーム世界へ転生】の選択券が各一枚づつですね!』
中々、破格な特典内容だった。能力値(筋力・耐久力・知力・敏捷・器用・魅力)を英雄ポイント分で、人種種族の成長限界値の上限を設定変更が出来る。但し、スタート時の能力値は初期設定値の侭なので、所謂俺Tueeeは出来ない。
スキル枠撤廃って、無限にスキルをセットして良いらしい。勿論、スキルもカスタマイズ可能だ。
【アルグリア戦記】では、キャラアバターごとにスキルレベルの成長上限値が設定されている。其の成長限界値を、英雄ポイントを使用してカスタマイズする。初期設定値は変更不可な仕様なので、最初からの俺Tueeeは勿論出来ない。
ユニークスキル創造って、もうチートだよね?
最後の特別シナリオ【ゲーム世界に転生】の選択券に至っては、インダストリア社の運営チームが悪乗りしてネーミングしたとしか思えないものだった。
『ほう、【ゲーム世界に転生】か? 浪漫じゃないか、本当に転生したりしてな! はっははははは~!』
豪快に笑う師匠に、『ははは、・・・・・・』と苦笑いで応答する俺だった。
『何にしても、楽しんで来いカルマ! 一回切りの人生だ、悔いの無いようにな!』
全くその通りだ。一回コッキリの人生だ。
俺は亡くなった幼馴染みの分も、人生を楽しむと決めていた。
『じゃあ、師匠! ゲーム世界に転生してきます! また連絡しますから、楽しみにしていて下さい!』
『おう! またなカルマ!』
To be continued! ・・・・・・
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる