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第一章 異世界降臨
嫁たちよ!
しおりを挟む「ふはははっ! それは私たちが見るからに……そう! 見るからに、君たちに惚れてしまったからだ!」
「「ひゅーひゅー! 兄貴ぃー!」」
「「「きもっ……」」」
僕たちは茂みに隠れて、様子を伺うことにした。
あの変態冒険者は、息ぴったりなエリスたちに辛辣な言葉を吐き捨てられている。
エリスたちのあんな氷点下な目は見たことがない。今にも視線だけで氷属性の最上級魔法を発動しそうだ。
「どういう経緯であんなことに……」
「知るか。まあ碌でもない奴らだってことは俺でもわかる」
ルイズとレックスは呆れ半分、自分の恋人にちょっかいをかけられて怒り半分の視線でヤツらを見ていた。
「もう無視して行きましょう」
「そうですね。狩った魔物はスーちゃんが体内で保存してくれてますし」
「そうしよそうしよ」
「待ち給へ! 私たちの嫁たちよ!」
「「「誰が嫁だっ!!!」」」
良いツッコミだなあ。
そして、さすがに今の言葉には我慢ができなかったのか、等々ルイズとレックスが飛び出してしまった。僕も遅れずに飛び出す。
「ハクト!」
エリスが嬉しそうに僕の名前を呼ぶ。
僕らはそれぞれの恋人たちを庇うように前に出た。なんだこれ?
「むっ!? あーーーーっ! お前は私の新しい子分! なぜそっちにいる!? こっちに来るんだ!」
「やめろコラァッ!」
勝手に子分にすんな! あの時は僕が勝っただろ!
「……子分?」
「ハクト、お前あいつの子分なのか?」
うわぁぁ、最悪だ。せっかく仲間になったのに、ルイズとレックスの視線が痛い。しかし、救いの女神は存在した。
「あーーーーーーーっ!!!!」
僕の後ろにいるエリスが、三馬鹿の変態親分よりも大きな声をあげて、指をさしたのだ。
「思い出したわ! あいつら、前にハクトにボコボコにされた超弱い冒険者よ!」
ありがとうエリス!
エリスの言葉で僕への疑いは晴れた。
そうだよ。僕は潔白だよ。まったく。
「あ、兄貴、やばいべ!」
「そうでやんす。向こうは六人。こっちは三人しかいないでやんす!」
「む……ならば、今こそあの技を使うしかない!」
「さ、さすが兄貴! 何か秘策があるんだべな!」
「俺たち一生兄貴に付いていくでやんす!」
あの技だと……? まさかこんな弱いヤツらに隠し必殺技があるというのか?
ごくり。と誰かが唾を飲む音がした。僕も一応構える。
変態親分はこれ以上にない気迫を僕たちに見せると……
「秘技……私、超疾走ーーーーーーっ!!! さらばだ俺の子分と嫁たちよぉぉぉ!!」
「「あ、兄貴ぃーーーー!」」
逃げた。砂埃を上げながら超スピードで逃げていく。だから誰が子分だ!
「なんだったのあれ……」
「俺でもわかる。あれは馬鹿だろ」
「否定はしないよ」
レックスは自分が馬鹿だと自覚しているが、そのレックスに馬鹿だと判定されたアイツらは超お馬鹿に違いない。
なんでアレで冒険者ができているのか不思議だ。いや、ある意味タフだから天職かもな。
「もう疲れたから帰ろぉ~」
カリナの一言に、皆が黙って頷いた。
町に戻った僕たちは、ギルドで食事をとることにした。三日振りのまともな食事だ。
エリスたちに付いて行った……というよりミーシャに抱えられていったスーは、体内に土蜘蛛という魔物を保管、解体していた。
「やるなお前」
スーはぴょんぴょんと返事をする。
今回のキャンプで収穫した素材は、半分は売って、半分は僕が使っていいことになった。
「んで、お前らなんであんな奴らに絡まれてたんだよ?」
骨付き肉を豪快に食べるレックスがエリスたち女子メンバーに尋ねる。確かに気になる所だ。
「アイツら、最初は土蜘蛛の巣に捕まってたのよ。捕食寸前の所を助けたらああなったの」
スープを飲みながらエリスが言う。それは災難だったな。
まあ、もうすぐ僕らは迷宮のある都市に行くし、アイツらとは会わないだろう。
今回のキャンプは結果を見れば成功だ。まだまだ問題や改善点はあるだろうが、それは徐々に減らしていく。
迷宮都市クレバンに行くのは一週間後。まだまだ用意しなければならないものがたくさんある。
依頼を受けて資金を稼ぎながら、道具作りに励むとしよう。ちなみに、僕以外の皆は依頼をこなしながら修行だ。
ミーシャとルイズの魔法使い組は空を飛ぶという目標にもまだまだ遠い。
エリス、レックス、カリナには纏をもっと強化してもらう。
迷宮は暗い場所も多いだろうからな。暗所での戦闘強化も必要だ。
それから僕は物作りをして準備を整えながら、五人の育成に励んだ。
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