ヒアカムザサン

NaRu

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いつも太陽みたいな秋がどしゃ降りの顔をしていた。

誰でもエエんやな

その一言がなんか心にひっかかってる。
秋にそう思われてたんやな。
一生懸命探してくれてたのに。
俺は巽からセフレ解消されてから考えてた。
んで、もうセフレはいらんて。
ちゃんと好きになりたい。
パートナーがほしいって。
俺、ショックやったんや。
秋に言われた言葉が。

久しぶりに店に寄った。
秋は迎えてくれんかった。

「秋、なんか変やねんけどなんかあったんかな?」

と畑ちゃんに聞かれた。

「さぁな。」

と誤魔化しといた。
秋、怒ってるんかな?
なんで怒ってるんやろ。
隣の席の閑くんと仲良くなって話してたら後からきた原って子に睨まれた。
なるほど、嫉妬か。
、、、嫉妬。
もしかして、秋はタクシーで送ってくれた営業先の人に嫉妬してるんかな?
でも、なんで?
ふと、視線を感じて目をやると秋と目があった。
でもすぐに反らされた。
このまま秋と喋れんくなるんかな。
まだまだ話したいこといっぱいあるのに。

「颯太くんは恋人とかいないんですか?」

と閑ちゃんに聞かれた。

「おらへんねん。」

「好きな人は?」

「好きな人。ずっと片想いばっかりやったからなぁ。なんかあんまり恋愛にたいして前向きになられへんねん。」

「そうなんやぁ。もったいないよ。」

「え?」

「だって、一人でも楽しいことが二人やったらもっと楽しくなるんやもん。」

そうか。
俺にはそういう希望みたいなものが足りないんか。
なんか全部後ろ向きに考えてしまって。

俺は家に帰って、ベランダから秋が帰ってくる姿を探した。
秋、また太陽みたいに笑ってよ。
眩しいくらいに。

その夜、俺は変な夢を見た。
秋が笑ってるんやけど、俺じゃなく俺の後ろにいる女の子にで。
俺は必死に手を振るけど無視される。
そこで目が覚めた。
俺の目からは涙が流れてた。
なんでこんな夢。
でも、この夢が現実になったら、、、。
俺は怖くなってスマホをとりだし、秋にメールした。

秋、お願い。
俺のこと無視せんといて。
俺を一人にせんといて。

そう送った。
しばらくして返信がきた。

ごめん。
無視してた訳じゃないねん。
なんか、ごめんな。
なんかあったん?大丈夫?

ちょっとほっとした。

怖い夢見ただけ。
遅くにごめん。疲れてるやろうに。

ううん。
あんなこと言ったのに、颯太からメール来て嬉しかったよ。
ほんまにごめんな。

その返信を見て安心して寝てしまった。
やっぱり秋は太陽や。
俺には秋が必要なんやな。

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