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幼少期編

4.準備

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 帰ってきた僕にお父さんは「大事な話があるからまた夜に宜しくな!」と言われた。お母さんとお風呂に入って綺麗になった後、昨日に引き続き同じ形また始まるのであった。


「お母さんの家の招待状なんだが、お母さんと話し合った結果、渋々だが連れて行く事に決めた」


「お母さん考えたんだけど、テオの耳と尻尾は隠さずに行ける方法を思いついたのよ!」


 それを聞いて違う意味で、僕は嫌な予感しかしなかった。


「うん、分かったけど。お母さん、どんな格好するの?」


「ちょっとまってね、今から準備するから!」
 

 お母さんは離席して、テオの服を準備しにいった。その間にお父さんが話を続けた。


「お父さんとお母さんはね、テオの事を隠してきたんだ。そろそろ私たち以外の家族に教えたいんだ。だから招待状を受けることにしたんだ」


「でも僕は、ヒトじゃないよ…」としょぼんとした。


「安心しろ。テオはお母さんの幼い時姿に瓜二つなんだ。ヒトじゃなくても私たちの子だからな!」


 そう話していると「テオちゃん、こっち来てー!」と僕はお母さんに呼ばれた。


 お母さんの置物部屋として使われている部屋だと聞いていた。普段は鍵が掛かっている。入ったのは初めてだ。見てみると幼い子が着るドレスがあった。


「テオちゃんには、この服を着て欲しいの!」


「男の子なんだけど…着ないと駄目なの?」とウルウルした顔でお母さんに訴えた。


「テオちゃんは似合うから大丈夫よ!」


 お母さんはウキウキである。そんなお母さんを悲しませたくないと思いながら諦めて「わかった…着てみる」とお母さんにドレスを着るのを手伝ってもらうのであった。


 自分の姿を見るためには鏡が必要だが、お母さんの置物部屋には鏡もあった。お母さんは元お嬢様だったことは知っていたが、どれだけお金持ちの令嬢なのかと思った。


 世間知らずの僕でも、お父さんとお母さんはとても凄い人だとはわかっていた。一番の証拠がお風呂があるからだ。


 そして僕は鏡を見てみる。そこに映ったのは、青色の左右に3つのボタンと黒リボン付きのパーティードレスを着た、クール系な猫耳少女の姿をした僕であった。気にしたら負けだ。


「これ、テオの為にお母さんがオーダーメイドで作ってもらったのよ?お父さんにも見てもらいなさい」


「わかった…」と僕は恥ずかしそうにお母さんの服を掴みながら部屋から出て、お父さんに見せた。


「テオにドレス着てもらったわよ!」


「テオにドレス??どれどれ…っ!?」


 テオを見た瞬間、お父さんは固まってしまった。みるみる真っ赤になる顔を手で押さえた。


「どうです…か?」とお父さんに聞いてみる。


「…似合っている…」


 どうやら破壊力があり過ぎたらしい。僕の言い方と仕草といい、声が高い。そして、ふわふわした手入れされた黒耳と尻尾。


 とりあえず可愛いのだと理解した。お母さんは「私が準備してよかった!」と満足そうな顔で言った。


「私のお兄さん、伯父さんの娘さんの家で誕生日会に参加することにしたから、テオにはその姿で当日参加することになるから宜しくね」と笑顔で言ってきた。お母さん強い。


 僕はそれに従うしかなかった。恥ずかしいけど我慢。


 今から僕は女だって思っておこうかな?そうすれば、僕の耳と尻尾を制御できるようになるかもしれない。言葉遣いも女の子っぽく、~ですわって前世で見た漫画の真似して言えるようにしておこうかな?と対策を立てる僕であった。





 ●10日後の昼


「エラ、テオそろそろ向かう準備しなさい、準備してくるから」とお父さんが先に出ていった。


 僕は初めて家族で出掛ける準備をしていた。僕がヒトではなかった理由もある。
そして、初めて外の世界に触れることになる。


 女の恰好はもう慣れた。お母さんに寝る時だけ、ワンピースにしてもらうように頼んだのだ。お母さんは凄く嬉しそうにしていた。お父さんは凄く顔を真っ赤にしていたけど。


 トレーニングの成果もあって、僕の耳と尻尾が感情に耐えられるようになったと思う。ただし、女の子姿に限る。


「テオそろそろ、いきましょうか」


「うん!」と言って僕は帽子付きのマントをしてから、お母さんと手を繋いで外に出る。


 数分歩いた後、散歩をしても見つけられなかった王都へ続く道があった。


 その先にお父さんと執事おり、馬車があった。


「貴方、お待たせしたわ。お久しぶりね!カーター!」


 老いた執事の方は、セバス・カーターというらしい。


「お久しぶりでございます。今日は執事の担当するカーターと申します。お嬢様宜しくお願いします」と笑顔で僕の方に向かってお辞儀をした。


 その瞬間ビクッとした。少し変な気分になった。これは動物のってやつか?と思ったが、気にせず僕もペコリとお辞儀をした。


「さて、向かおうか。馬車に乗りなさい」とお父さんが声をかけて、僕とお母さんは馬車に乗り込み、王都に向かうのであった。
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