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幼少期編

8.誕生会の始まり

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 ●クローチェ家ステラの誕生会が始まる少し前


「さて、私はこの後、また同席する。テオがどんな姿なのか楽しみにしておるぞ!」と戻っていった。


 僕はこの世界に魔道具があることを初めて知った。


 エイダンお祖父ちゃんがお父さんが挨拶に次いで、宝物庫に行ってたらしい。クローチェ家の宝物庫にある魔法具、フード付きマントを僕の為に探してきてくれたという。一体いくらするのであろうか想像がつかなかった。


 いずれお金の勉強もすると思うが、前世の記憶、漫画の知識からすると、屋敷1つ買える値段はするのだろうと思った。


 お父さんとお母さんが、10日前に猫耳と尻尾が出ていても大丈夫って言っていたが、万が一の場合があるからとお祖父ちゃんに言われた。


 考慮した結果、やっぱり駄目だったみたいだ。派閥に情報が漏洩を防ぐためでもあるという。お母さんには「テオにはまだ早いわ」と言われて教えてくれなかったけど。


「エイダンお父様から貸してくれた魔道具つけるわね!」


「この魔道具はテオの姿を少しだけ変えてくれるんだ。部分的な認識阻害の魔道具だからな!」


 見た目は半透明なカッパだった。この魔法具の効果は、幻覚を被るようにできる。


 自分の身体の耳と尻尾を見えないようにしてと念じるように言えばいいらしい。外すには解除と念じる。他の方法はある一定の強い衝撃を与えられると解除される。例えば、転んだりすると解除されるとの事。


「僕の耳と尻尾を見えなくして!」と言った瞬間、僕が着ていた魔道具が透明になっていった。


「あら、これなら安心ね!」「ああ、これで普通の女の子だな!」


 今の僕は普通の女の子に見えるらしい。


「お父さん僕は男の子だよ…女の子姿の方が好きなの?」


「テオがどんな姿をしていても可愛いからな!」


「お父さんっ!」


「貴方、テオが可愛いからといって、からかっては駄目よ」


「すまない、すまない」とお父さんはデレデレしていた。僕はジト目になった。


「テオちゃん、鏡を見てみなさい」


「うん、見てみる…」


 僕は鏡を見てみた。家で見たときは猫耳と尻尾の美幼女だったが、この姿だとお父さんが言った通り、女の子だと納得してしまう。ただの美幼女にしか見えない。


 僕が男の子だとバレないんじゃないかと思ってしまう。エルダンお祖父ちゃんとソフィーお祖母ちゃんは僕が男だと分かっているのかすら怪しい。何故なら性別に触れられてないからだ。


「あらあら、テオちゃんどうしたの?」


「びっくりしてた。魔道具を被っている感覚もないの」


「凄いわね!エルダンお祖父ちゃんとソフィーお祖母ちゃんに誕生会で見せに行きましょうね!」


「うん!ありがとうって伝える!」


「そろそろ時間だ。会場にいこうか」


 僕たちはお父さんとお母さんと手を繋いで、執事に案内されて会場へ向かうのであった。





 ●会場にて


 会場にはクロリーチェ家に招待された貴族がおよそ20程いるらしい。これでも少ないという。王家のパーティーだと50以上集まるらしい。


「アルロ御一行様、こちらの扉の方からどうぞ」


 執事に案内された席にエルダンお祖父ちゃんとソフィーお祖母ちゃんがいた。


「おお、きたか!待っておったよ」


「あら、テオちゃんはとても可愛いわね!良かったわ!」


「エルダンお祖父ちゃん、ソフィーお祖母ちゃんありがとう」


 お礼を言って僕とお父さんとお母さんは席に座った。


 会場は騒めいた。エルダン様とソフィー様に同席している人たちに、皆驚いていた。


 理由は、エラは婚約してから滅多に姿を見せていなかったからだ。そしてアルロは、他国に嫁いだ王女殿下の元執事であり、現在は王城で働いている有名人である。更には、とてもクールな美少女がいたからであった。


 すぐに落ち着きが戻った後、カルロス伯父さんが目の前に立った。隣には主役であるステラが立っていた。赤茶色の髪色をした少女だった。


「私の娘のステラの誕生日にお集まり頂き、ありがとうございます!皆様、グラスを持ってお立ちください」


 カルロス伯父さんは一息おいた。


「ステラの誕生日を祝して乾杯!」


「「「「「「乾杯ー!!」」」」」


 カルロス伯父さんの乾杯に合わせて、グラスとグラスが当たる音が響いた。そして、カルロス伯父さんと娘のステラが最初に挨拶に来るのであった。


「アルロ御一行様、改めて誕生会にお越し頂きありがとうございます!本日は楽しんでいってください!ステラも挨拶しなさい」


「初めまして、アルロ御一行様。改めまして、ステラ・クロリーチェと申します!本日は私の為に参加して頂きありがとうございます!」


「誕生日おめでとうございます!初めまして、アルロと申します。こちらはエラとテオです。宜しくお願いします!」と家族でお辞儀をした。


「では、また後程戻るので!」とカルロスとステラは挨拶待ちの人たちの所に戻るのであった。


 離れる際、ステラが僕の方をじっと見つめられていたのが不思議に感じるのであった。
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