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幼少期編

9.注目

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 カルロス伯父さんとステラはお祝いの挨拶の列を相手していた。


(はぁ…お祝いの挨拶が長いわ…笑顔でいる事がこんなに大変だったなんて…)


(最初にお祖父様とお祖母様の所にいたテオっていう子、黒髪の美幼女だったんですけど!ゲームの中であんなクール系で可愛い子いなかったのに!早くそっちに行きたい…お近付きになりたい…)とステラはひたすら耐えていた。


 テオは食事に手を出せなかった。(ステラさんの方からちらちら視線感じるけど、周囲からも注目されていて落ち着けない…)と感じていたのであった。


 殆どの貴族は将来を見越して、自分の子に友人を持つ為、或いは婚約者探しで関わりを持つ為に参加する。一度でも関わっておけば、お茶会や縁談を送る事ができる。


 ステラと挨拶の目的を果たした貴族たちは、前当主エイダン様と妻のソフィー様に挨拶をしたい様子だったが、事前にお断りをされていた為、近づく事さえ許されていなかった。ステラの次に、テオが注目の的になってしまっていたのだった。


 テオの異変に気づいたお父さんとお母さんは僕を心配してくれた。


「どうしたの?テオの顔色が悪いわ」


「落ち着かなくて…」


「初めてだからしょうがないか。私たちも相当目立っているからな」


 お父さんは苦笑いした。


「エルダン様ソフィー様。失礼ながら席を外させて頂きます」


「ああ、大丈夫だ。カルロスとステラに伝えておく」


「テオちゃんまた後でね!」


 そうして僕たちは離席するのであった。


 退出していくテオを見ていたステラは凄く焦った。


(同席するって言ってたじゃん!何でいなくなっちゃうの?後でお祖父様に問い詰めてみますわ…)


 カルロスはステラの慌てた様子に気付いていた。


「どうしたんだいステラ」


「お父様、私はアルロ御一行様の所にいたテオという子とお話してみたいです」


「わかった、挨拶が終わったらお祖父様に聞いてみよう。今日はステラが主役だから、居なくなると皆困っちゃうから、もう少しだけ我慢してね」


「はい、お父様!」


(やっぱり気になっていたか…)と少し目を細めた。カルロスはそう思いながら、ステラへの祝いの挨拶を受けるのであった。





 私たちは、テオが落ち着かない様子だったので待合室に戻ってきた。私とテオとエラで安心させるようにソファに一緒に座っていた。


「テオ大丈夫か?」「テオちゃん落ち着いたかしら?」


「う、うん。少し落ち着いた」


「猫人族はやはり、気配に敏感なんだな」


「ええ、そうね。私たちは平気だけど、注目されるとテオちゃんビクビクしてたわね」


 僕は申し訳ない気持ちになっていた。


 会場にいた時は、周りから視線を感じ過ぎて落ち着けなかった。いっぱいヒトがいる所には緊張してしまう。猫人族である為か敏感になり震えが止まらなかった。少しずつ慣れていくしかないかもと感じていたが…


「でもテオは、可愛いから注目されていたのだろう。ステラより注目されていたかもしれないな!」


「そうね!テオちゃんの方を見て、見惚れてしまっていたわね!」


 聞き捨てならないと「父さん母さんっ!!」と顔を赤くして叫んでしまった。


「テオ落ち着いただろう?」と笑って見てきた。


「テオちゃんは意識的な問題なのよ、すぐに慣れてくるわ!」


 確かに落ち着いた気がした。気持ちが少し楽になり、僕は笑顔になった。


 少し時間が経った後、ノック音がした。


 お父さんは扉に寄り「何の用だ?」と答えた。


「ステラ様の誕生会が閉会した後にカルロス様がステラ様とこちらに赴くとの事です」


「ああ、わかった。私も会場に行く」


「かしこまりました。廊下で待機します。準備できましたら会場までご案内します。」


 お父さんが僕とお母さんに向かって「閉会した後にカルロスとステラが来る様だ。それまではエラとテオはこっちに居なさい。私はエルダン様とソフィー様の所に戻り、閉会した後に待合室に戻る」と言って、会場の方に戻っていった。


 僕は「お父さん大丈夫かな?」とお母さんに問いかけ「大丈夫よ、私のお父様とお母様は事情は知っているから」と言って撫でてくれた。


お母さんは膝に寄せて、テオは猫のような気持ち良い顔をして寝てしまうのだった。
 




 会場ではカルロスとステラは閉会をした後だった。


「やっと終わったわ…」とステラは疲れていた。


「ステラ、お疲れ様。わかるよその気持ち。私も子供の時はそうだったからね」


「お父様もだったんですね」


「そうだとも。スカーレッドに似てステラはよく頑張ってたよ!」


「お母様もそうだったんですか!?」


「ああ、そうだとも。頑張っていたさ!と事で、ステラにはご褒美をあげよう!気になってたんでしょ?」と片目をウインクした。


「お父様は気づいていたのですね」


「さて、行こうか!」とカルロスは娘のステラをエスコートして、お祖父様とお祖母さまの席に向かっていった。
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