リアル中世世界に転生しました

川野遥

文字の大きさ
15 / 47

狼と人間

しおりを挟む
 俺の名前は奥洲天成。
 女神がワールドカップに夢中なため、引き続きハンターとして活動している。

 最近、街の西側の街道が危ないらしい。
 曰く、狼の集団が出て、旅人達が行方不明になるケースが相次いでいるということだ。
 俺達ハンター達に何とかしてくれという話が来た。

「……はほー」
 ガードナーさんが何か言っているが、空気が抜けて全く分からない。
 連れて行っても、途中で倒れて病死するかもしれないから、置いていくしかない。
 隊長、副長、マイケルと四人で出発した。

 西の方にはうっそうとした森が広がっている。
 中々に不気味な光景だ。狼が沢山住んでいても不思議はない。

 しかし、そうではなかった。

 一時間後、俺達は30人を超える盗賊達に囲まれていた。
「ヘッヘッヘ、たった4人でやってくるとは馬鹿なハンターもいたものだ」
 リーダー格のちょっとイった目をしている奴がナイフを舐めながら言ってくる。その周りには毛むくじゃらの男達が大勢いた。

 実際のところ、野獣の仕業と見せかけて、実は盗賊たちがいたというケースは少なくない。中世は森も多いし、行方不明者を森の奥深くに捨てれば分かったものではないからな。
 日本だってそうだ。伝記上の鬼達は、実はその地域の人間達だったというケースが多かったらしい。

 イップスで役に立たない隊長のアレクに報告を頼む。
 シーザーには残ってもらうが、正直全くアテにならない。
 俺達の実戦力は2人、相手は20人。
 これは話にならない。
 チートなんてない以上、俺達はもう終わりかもしれない。

 ……いや、一つだけ方法があるかもしれない。

「……盗賊たちよ。分かった、俺達の持っている財産を全て渡そう。ただ、死ぬ前に一つだけ願いを言っていいか?」
 俺は観念した顔で言った。
「おお、俺達もそこまで鬼ではない。一つくらいは聞いてやろう」
「……これから言う呪文をお前達が唱えてくれれば、俺は天国に行ける。俺が教えた後、復唱してくれ」
 そう言って、ゴニョゴニョと耳打ちした。
 本当は羊皮紙にでも書いて渡したいのだが、盗賊やっているような連中が文字を読めるとは思わんからな。
 奴らは首を傾げながら、復唱した。
「『サッカー観るしか能のない駄女神なんかにハンターにさせられて、可哀相になぁ。三流の女神でも、もうちょっとまともな仕事につけたはずなのに。五流の駄女神だわ、あいつは。わっはっは』……。何だこれは?」

『何ですってぇ!』
 突然、雷が天を裂き、大雨が降ってきた。
「な、何だ? いきなり天候が……。うわぁぁ!」
『おまえ達なんか、アリクイに食べられるアリになってしまえぇぇぇ!』
「ギェェェェ!」
 盗賊たちは全員消えた。おそらく、言葉通り未開の南米で、アリにさせられたのだろう。
 死んでから転生させるのではなく、殺してから転生させるのだからとんでもない話だ。だが、今回は女神の不真面目さに助けられたと言ってもいいだろう。

 しかし、俺達の戦いは終わらない。
 世界にはまだ見ぬ狼達がいる。

 俺達の戦いは、これからだ!


 ご愛読ありがとうございました。
<完>


"天成の一言"
 鬼、龍、狼、歴史上、魔獣の仕業にされてきた多くのことが実は人間の仕業だったという説もある。
 結局、いつの時代も一番恐ろしいのは人間ということかもしれん。

 ちなみに今後も続く予定だが、この話を入れることで、作者が途中で飽きた、若しくは不測の事態が起きて途絶えた場合でも「既に完結した作品」と主張するつもりらしい。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【完結】侍女が王女に転生?!英雄と結婚して破滅の国を救います!

カナタカエデ
ファンタジー
八十歳で生涯を終えた、元王宮侍女カリナ。 その最期の瞬間――枕元に、かつて仕えた王女アメリアが現れた。 「お願い…私の人生をやり直して。国を、私を、救って――」 次に目を開くと、カリナは十八歳の“王女アメリア”として転生していた。 彼女は知っている。 このままでは王国は滅び、愛する主君が破滅する未来を。 未来を変えるため、アメリアは 冷徹と噂される英雄ヴァルクとの政略結婚を選ぶ。 これは、かつて守れなかった主人のための転生。 そのはずなのに――彼への想いは、気づけば変わり始めていた。 王女と英雄が紡ぐ、破滅回避ラブファンタジー開幕。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜 挿絵はA I画像を使用 10/20 第一章完結 12/20 第二章完結 2/16 第三章完結 他サイト掲載 (小説家になろう、Caita)

処理中です...