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【番外編】魔王は何故辺境に住むのか
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注:今回はリアル世界ではなく、ゲーム的ファンタジー世界の話です。
俺の名前は奥洲天成。
魔族の四天王として転生した俺は、今、人間の町を襲っている。
成果は上々。
「た、頼む……。娘だけは助けてくれ」
俺の足に、幼い娘を抱いた父親が土下座してくる。
俺はニヤリと笑った。
「ククク、麗しい親子愛だ。だが、人間よ、生き残った娘のことが可哀想だとと思わんか?」
「……」
「父親を失い、四歳の娘が一人で生きていけると思うか? それならば、親子そろって転生した方がいいだろう?」
俺は火炎の魔法で、父親も娘も浄化した。
「ハーッハッハッ、転生だ! 人間なんぞみんな、転生しちまえ! うざい神と女神を過労死させてやるのだ!」
街を破壊した俺は2000キロ東にある毒沼の中央にある魔王城に凱旋した。
しかし、いつも思うんだが、もう少しいいところに住んでもいいんじゃないのか? こう真っ暗で、交通の便も最悪で、一々行き来するだけでも大変なのだが。
「これは四天王テンセー様、お帰りなさいませ」
「うむ。魔王様はどこだ?」
「ハッ、魔王様は鍛錬中でございます」
「またか……」
俺は毒沼の方へと向かうことにした。
「フッ、フッ……」
毒沼の真ん中で、魔王は300キロのダンベル二つで背筋のトレーニングをしていた。魔王曰く、じわじわと体力を削り取られる毒沼で行う筋トレは最高に効くんだそうだ。
「……テンセーか」
「ははっ。人間国に攻め入り、ヒガシノタウンを攻め落としました」
「生き残った者は?」
「私の仕事でございますぞ。もちろん、全員、転生させましたとも」
俺は誇らしげに宣言した。
魔王はダンベルを置き、毒の中からメディシンボールを取り出した。それを持ち、体を左右に捻り、体幹を鍛えている。
「魔王様、もう少し人間界に近いところに城を移しては? 毎回、遠征だけで2000キロを移動するのは疲れることこのうえありません」
「テンセーよ。娯楽の多い人間界に近づいたら、我々はどうなると思う?」
「それは……」
「我々が強い力を持てるのは、この何もなく過酷な環境でトレーニングに励んでいるからだ。都会の遊びや女を知ってしまえば、奴らは堕落する。『我々はフリーエージェントだから13年400億ドルの契約を寄越せ』とか『チーム編成に口を出す権利を与えろ』など言ってくるに決まっている」
「確かにそういう奴らもいるでしょうが……」
いや、確かにこれは非常に深刻な問題である。
人の影響の強い地域に行った魔物は軒並み弱体化する、というのは魔界の定評だ。
スライムの奴らは迷宮の中では人を溶かす最高級の魔物だった。ゴブリンは常に万単位で行動していて、どんな勇者でも倒しきる頃にはヘトヘトにさせるくらいのタフを持っていた。
それが今や……
奴らは人間を脅かしたり、遊ぶことの楽しさを知って弱くなった。
それは認める。
だが、俺は納得がいかない。
そもそも魔族なんて天使が堕落して出来た奴だったのではないか。
「そうだ。ここにいる連中は、最低限の規律すら守れない連中だ。いわばボトムズというわけだな。そんな連中は不便なところで軍隊のような生活を送らせて、ようやく一人前になれるというわけだ。分かるな?」
確かにここにいる魔族には人間で言うなら少年院上がりのような連中が多い。こんな奴らを街に派遣したら人類の生活に溺れ、ダメになってしまう。ヤクザの大親分になるならまだいいが、魔族のエリート候補生が半グレ集団の構成員クラスになってしまうのは悲しい。
「テンセー、貴様の部下だってそうだ。『四天王の言うことなんか聞かねえよ』と学級崩壊を起こしたらどうする?」
「まずいです」
「そうだろう。魔界は強いものが上に行くことが望ましい。しかし、弱い奴らが無鉄砲にも上に挑みまくる構造は面倒なだけだ。その面倒を考えれば、遠征で多少疲れようが、遠くに置いておくに越したことはない」
「……私が浅はかでありました」
「うむ。テンセーよ、次はドマンナカシティを襲うのだ」
おぉ! ドマンナカシティ! 人口200万を超す人間界最大の都市の一つ。
「分かりました! 必ずやドマンナカシティの200万人も転生させてみせましょう!」
よーし!
200万人転生させて、神も女神も天手古舞にさせてやる!
『貴様の仕業だったのか……』
うん? 空中から声が?
『最近、やたらと転生者が多いと思ったら、こんなところでバンバカ死なせまくっていたのがいたとはねぇ。おかげで最近は、全くテレビが観られないのよ!』
やばい! 神と女神にバレた!
早く逃げなければ!
『逃がすかぁ!』
ギャー!
~魔王城の会議室~
「テンセーがやられちゃったって」
「フフッ、彼は四天王の中でも最弱ですからね」
「……神なんかにやられる、……四天王の面汚し」
"神の一言"
神童でも若いうちからちやほやされると駄馬になってしまうという。
人間界の近くに住むということは、魔物にとっては危険極まりないことなのだ。
で、上位魔族だと数も少ないだろうから、堕落したものが現れると非常に大変だというわけだ。
多分……
俺の名前は奥洲天成。
魔族の四天王として転生した俺は、今、人間の町を襲っている。
成果は上々。
「た、頼む……。娘だけは助けてくれ」
俺の足に、幼い娘を抱いた父親が土下座してくる。
俺はニヤリと笑った。
「ククク、麗しい親子愛だ。だが、人間よ、生き残った娘のことが可哀想だとと思わんか?」
「……」
「父親を失い、四歳の娘が一人で生きていけると思うか? それならば、親子そろって転生した方がいいだろう?」
俺は火炎の魔法で、父親も娘も浄化した。
「ハーッハッハッ、転生だ! 人間なんぞみんな、転生しちまえ! うざい神と女神を過労死させてやるのだ!」
街を破壊した俺は2000キロ東にある毒沼の中央にある魔王城に凱旋した。
しかし、いつも思うんだが、もう少しいいところに住んでもいいんじゃないのか? こう真っ暗で、交通の便も最悪で、一々行き来するだけでも大変なのだが。
「これは四天王テンセー様、お帰りなさいませ」
「うむ。魔王様はどこだ?」
「ハッ、魔王様は鍛錬中でございます」
「またか……」
俺は毒沼の方へと向かうことにした。
「フッ、フッ……」
毒沼の真ん中で、魔王は300キロのダンベル二つで背筋のトレーニングをしていた。魔王曰く、じわじわと体力を削り取られる毒沼で行う筋トレは最高に効くんだそうだ。
「……テンセーか」
「ははっ。人間国に攻め入り、ヒガシノタウンを攻め落としました」
「生き残った者は?」
「私の仕事でございますぞ。もちろん、全員、転生させましたとも」
俺は誇らしげに宣言した。
魔王はダンベルを置き、毒の中からメディシンボールを取り出した。それを持ち、体を左右に捻り、体幹を鍛えている。
「魔王様、もう少し人間界に近いところに城を移しては? 毎回、遠征だけで2000キロを移動するのは疲れることこのうえありません」
「テンセーよ。娯楽の多い人間界に近づいたら、我々はどうなると思う?」
「それは……」
「我々が強い力を持てるのは、この何もなく過酷な環境でトレーニングに励んでいるからだ。都会の遊びや女を知ってしまえば、奴らは堕落する。『我々はフリーエージェントだから13年400億ドルの契約を寄越せ』とか『チーム編成に口を出す権利を与えろ』など言ってくるに決まっている」
「確かにそういう奴らもいるでしょうが……」
いや、確かにこれは非常に深刻な問題である。
人の影響の強い地域に行った魔物は軒並み弱体化する、というのは魔界の定評だ。
スライムの奴らは迷宮の中では人を溶かす最高級の魔物だった。ゴブリンは常に万単位で行動していて、どんな勇者でも倒しきる頃にはヘトヘトにさせるくらいのタフを持っていた。
それが今や……
奴らは人間を脅かしたり、遊ぶことの楽しさを知って弱くなった。
それは認める。
だが、俺は納得がいかない。
そもそも魔族なんて天使が堕落して出来た奴だったのではないか。
「そうだ。ここにいる連中は、最低限の規律すら守れない連中だ。いわばボトムズというわけだな。そんな連中は不便なところで軍隊のような生活を送らせて、ようやく一人前になれるというわけだ。分かるな?」
確かにここにいる魔族には人間で言うなら少年院上がりのような連中が多い。こんな奴らを街に派遣したら人類の生活に溺れ、ダメになってしまう。ヤクザの大親分になるならまだいいが、魔族のエリート候補生が半グレ集団の構成員クラスになってしまうのは悲しい。
「テンセー、貴様の部下だってそうだ。『四天王の言うことなんか聞かねえよ』と学級崩壊を起こしたらどうする?」
「まずいです」
「そうだろう。魔界は強いものが上に行くことが望ましい。しかし、弱い奴らが無鉄砲にも上に挑みまくる構造は面倒なだけだ。その面倒を考えれば、遠征で多少疲れようが、遠くに置いておくに越したことはない」
「……私が浅はかでありました」
「うむ。テンセーよ、次はドマンナカシティを襲うのだ」
おぉ! ドマンナカシティ! 人口200万を超す人間界最大の都市の一つ。
「分かりました! 必ずやドマンナカシティの200万人も転生させてみせましょう!」
よーし!
200万人転生させて、神も女神も天手古舞にさせてやる!
『貴様の仕業だったのか……』
うん? 空中から声が?
『最近、やたらと転生者が多いと思ったら、こんなところでバンバカ死なせまくっていたのがいたとはねぇ。おかげで最近は、全くテレビが観られないのよ!』
やばい! 神と女神にバレた!
早く逃げなければ!
『逃がすかぁ!』
ギャー!
~魔王城の会議室~
「テンセーがやられちゃったって」
「フフッ、彼は四天王の中でも最弱ですからね」
「……神なんかにやられる、……四天王の面汚し」
"神の一言"
神童でも若いうちからちやほやされると駄馬になってしまうという。
人間界の近くに住むということは、魔物にとっては危険極まりないことなのだ。
で、上位魔族だと数も少ないだろうから、堕落したものが現れると非常に大変だというわけだ。
多分……
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