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水の底には誰がいる?
23 都内の河童生息地
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真夜はやや慌てつつ、お猪口の三朝正宗を一気に飲み干す。
「そんなことよりコウ、ここへは情報収集に来たんでしょ? 早く本題に入りましょ」
真夜は照れ隠しのようにそう言った。
「ああ、そうだな。……麻由子、ちょっと聞きたいことがあるんだが」
「ふふふ、なぁに?」
「お前、河童について詳しいか?」
孝介はお猪口を傾けながら、麻由子に質問する。
「河童?」
「今度の記事のネタは河童になりそうなんだ。読者からのリクエストでな……。ただ、俺はそもそもオカルトに詳しくなくってな。真夜はそういうのに興味津々なんだが、こいつは日本育ちじゃねぇのさ。というわけで、お前ら何か知ってるか?」
「そうねぇ……」
麻由子は思考を巡らせながら、空になった真夜のお猪口に新しい酒を注ぐ。
「河童っていったら、佐賀県の酒蔵に河童のミイラがある話は有名よね? そこへ取材に行くっていうのはどうかしら?」
「ああ、ダメだダメだ! その話は真夜にもされたんだがな、ロードスターで気軽に行ける距離じゃねぇとダメだ。俺も他の仕事を抱えてるんでな」
孝介はそう首を振った。それを聞いた真夜は、だったら飛行できるドラゴンでも連れてくればいいのに……と刺身を箸でつつきながら思ったが、今ここでそんなことを話しても始まらないと察して敢えて口を閉じたままにする。
「コウちゃんのクルマで行ける距離っていうと、どこまでかしら?」
「西は名古屋、東は福島、北は新潟燕三条……。まあ、そのあたりだろ。それ以上の距離となると、泊まりがけで行きてぇな」
「日帰りがご希望、ね?」
「まあ、そんなこった」
するとそこへ、
「それはつまり、都内であればちょうどいいってことでござんすか?」
と、仙次が割り込んだ。
「東京都内、それも23区の中ならちょうどようござんしょ? その気になったらクルマじゃなくて電車で行けますし」
「23区内に河童の生息地があるのか?」
「ありますとも! あたしもこの商売柄、よく行くところでござんすよ。そこは――」
「ちょっと待て」
孝介は仙次の言葉を止め、
「最初から答えを聞くのはつまんねぇや。俺が当ててみる」
と、告げた。
「東京23区で、仙次が商売柄よく行く場所……そこが河童と縁のあるところだとすると……どこだろうな?」
そこへ真夜が、
「港じゃないかしら? ほら、魚のマーケットがある場所……何て言ったっけ?」
「豊洲か?」
「そうそう、豊洲! センは魚を扱う料理人だし、河童は水棲の魔物でしょ?」
「なるほど、悪くねぇ考察だな。ただ、河童が海から出てきたってぇ話はあまり聞いたことねぇな。あれは川にいる妖怪じゃなかったか?」
すると仙次が、
「確かにあたしは豊洲にも行きますが、今回はそっちじゃござんせん。魚じゃなくて、それを捌く道具のほう……と言えばお分かりかもしれませんが」
と、微笑みながら告げた。
「道具のほう? それはまな板とか包丁とかかしら?」
真夜がそう返すと、
「ああ、そうか! 分かったぜ、仙次」
孝介が手を叩いた。
「なるほど、そういうことか。……仙次、お前ももったいぶった物言いをする奴だぜ」
「え? え? コウ、そこがどこか知ってるの?」
「そりゃお前ぇ、あそこは有名なところだからな」
孝介は大皿の刺身を箸で持ち上げながら、
「早速だが明日、そこへ行ってみるか。ちょっとした買い物ついでにな」
と、意味深な微笑を真夜に向けた。
「そんなことよりコウ、ここへは情報収集に来たんでしょ? 早く本題に入りましょ」
真夜は照れ隠しのようにそう言った。
「ああ、そうだな。……麻由子、ちょっと聞きたいことがあるんだが」
「ふふふ、なぁに?」
「お前、河童について詳しいか?」
孝介はお猪口を傾けながら、麻由子に質問する。
「河童?」
「今度の記事のネタは河童になりそうなんだ。読者からのリクエストでな……。ただ、俺はそもそもオカルトに詳しくなくってな。真夜はそういうのに興味津々なんだが、こいつは日本育ちじゃねぇのさ。というわけで、お前ら何か知ってるか?」
「そうねぇ……」
麻由子は思考を巡らせながら、空になった真夜のお猪口に新しい酒を注ぐ。
「河童っていったら、佐賀県の酒蔵に河童のミイラがある話は有名よね? そこへ取材に行くっていうのはどうかしら?」
「ああ、ダメだダメだ! その話は真夜にもされたんだがな、ロードスターで気軽に行ける距離じゃねぇとダメだ。俺も他の仕事を抱えてるんでな」
孝介はそう首を振った。それを聞いた真夜は、だったら飛行できるドラゴンでも連れてくればいいのに……と刺身を箸でつつきながら思ったが、今ここでそんなことを話しても始まらないと察して敢えて口を閉じたままにする。
「コウちゃんのクルマで行ける距離っていうと、どこまでかしら?」
「西は名古屋、東は福島、北は新潟燕三条……。まあ、そのあたりだろ。それ以上の距離となると、泊まりがけで行きてぇな」
「日帰りがご希望、ね?」
「まあ、そんなこった」
するとそこへ、
「それはつまり、都内であればちょうどいいってことでござんすか?」
と、仙次が割り込んだ。
「東京都内、それも23区の中ならちょうどようござんしょ? その気になったらクルマじゃなくて電車で行けますし」
「23区内に河童の生息地があるのか?」
「ありますとも! あたしもこの商売柄、よく行くところでござんすよ。そこは――」
「ちょっと待て」
孝介は仙次の言葉を止め、
「最初から答えを聞くのはつまんねぇや。俺が当ててみる」
と、告げた。
「東京23区で、仙次が商売柄よく行く場所……そこが河童と縁のあるところだとすると……どこだろうな?」
そこへ真夜が、
「港じゃないかしら? ほら、魚のマーケットがある場所……何て言ったっけ?」
「豊洲か?」
「そうそう、豊洲! センは魚を扱う料理人だし、河童は水棲の魔物でしょ?」
「なるほど、悪くねぇ考察だな。ただ、河童が海から出てきたってぇ話はあまり聞いたことねぇな。あれは川にいる妖怪じゃなかったか?」
すると仙次が、
「確かにあたしは豊洲にも行きますが、今回はそっちじゃござんせん。魚じゃなくて、それを捌く道具のほう……と言えばお分かりかもしれませんが」
と、微笑みながら告げた。
「道具のほう? それはまな板とか包丁とかかしら?」
真夜がそう返すと、
「ああ、そうか! 分かったぜ、仙次」
孝介が手を叩いた。
「なるほど、そういうことか。……仙次、お前ももったいぶった物言いをする奴だぜ」
「え? え? コウ、そこがどこか知ってるの?」
「そりゃお前ぇ、あそこは有名なところだからな」
孝介は大皿の刺身を箸で持ち上げながら、
「早速だが明日、そこへ行ってみるか。ちょっとした買い物ついでにな」
と、意味深な微笑を真夜に向けた。
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