そこは夢の詰め合わせ

らい

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さなのぶ

40.オドロケ

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『鬼』それはある国での伝承の一つ。
それはこの国にもあった。

「出たぁぁぁあ『鬼』だぁぁあ!」

暗い暗い道、薄い霧が立ち込める場所で絶叫があがる。その道から逃げるようにして男性が出てくる。その男が出てきた一刻後に角の生えた女性と思わしき人物が出てくる。しかし、彼女には人には間違いなくない『角』が生えていた。彼女は逃げていく男を見たあと口角を釣り上げてまたその道へと戻る。その背中は何か恐ろしい何かを秘めている気がした。

「今日も人が来るとはねぇ・・・」

彼女は鬼。この国唯一の『━━━━━』と呼ばれる部類の『鬼』である。彼女はを表す象徴の鬼。その鬼には本名がある。しかし名前を言ってしまうとそれは彼女の本能を起こさせる。誰もそれを知るものはいないことが唯一の救いである。

「人間様とは話もしてみたいものです。」

彼女が『鬼』という概念であるから人は逃げてしまう。彼女が『鬼』でなければ話すことはできるのだろうか?さて、それを知るものはいないのである。

ある日、いつものように来た人間を追い返そうと彼女が姿を現すが、その人間は逃げなかった。それに不思議に思うが逃げないならと彼女は彼に手を伸ばす。しかし、悪寒が走り咄嗟に手を引いた。そして気になったことを彼女が聞いた。

「なぜ君は逃げないんだい?」

明確だった。彼の足には足枷があり、間違いなく生贄であった。しかし彼女はそんなもので消えるような『鬼』では無い。それで消えると思われたことに彼女は憤慨した。

「では、君。我が名前を教えるから呼んでくれるか?」

彼は了承した。そして誰にも言ったことのない彼女の本名を彼に伝える。そして彼はその名を呼んだ。

天探女あまのさぐめ様。」

天探女。それは『鬼』の一つ、「天邪鬼」の名であった。その名を呼ばれた一刻後、その国に残った人間は名を呼んだ彼だけだったという。

この話を書いたのは彼ではない。
では、誰がこの話を書いたのだろうか・・・
この国の『人間』はもういないと言うのに。
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