そこは夢の詰め合わせ

らい

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キリン

7.ただ一つの声

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海を見ていた。青い青い海を、青に映る白い太陽も、反射する青空も。彼女はぼーっと眺めていた。時々白波が彼女の足にかかる。彼女はなにかに取り憑かれたようにずっと海を見ていた。いつの間にか彼女の頬には涙が流れていた。

「━━━━ッ」

彼女は海を見て泣いていた。声にならない悲痛な音で、誰にも見られない朝焼けの中に泣き声が響いていた。否、誰にも彼女が泣いている理由が、意味が分からないから近づけないのだ。金色の髪の間から見える頬には沢山の涙の跡があった。

「ああぁぁあっ・・・」

人目を気にせず彼女は海に向かって泣き続ける。膝を着き、彼女が海に手を伸ばすが誰もその手を掴む者は居ない。彼女の周りに人が集まるがそれを気にしない。彼女の身体は白波に濡れる。

夜が朝日に、光にのまれていく。朝日により照らさせる彼女の顔を見て数人が気が付くだろう。彼女は有名な歌い手である。そんな彼女が海に向かって泣いているのだ。騒ぎは大きくなるだろう。空気を読まない人々は彼女を一目見ようと押し寄せる。それを一人の男が立ち塞がる。

「歌い手がなんだ!有名人だからなんだ!人が・・・人が泣いているんだぞ!お前らがファンだと言うのなら・・・心配が先だろう!人の気持ちも考えられないのならファンなんて辞めちまえ!」

高校生くらいだろうか、背丈は170cm程の男が彼女に群がる人々に吠える。それに気圧されたように群がっていた人々は数歩後ろに下がる。彼女も泣くのを止めてその男を見ていた。彼女は誰かと重ねたのかその男の背中で泣く。

周りに居た人々も何かを察したのか彼女と男を周りから隠した。どこから聞きつけたのか分からない報道陣や新聞社の人々から彼女と男を守る。先程男が自分にしたように。

彼女に男は言う。

「苦しかったでしょう。辛かったでしょう。何も俺には分からないけれど、泣いている理由も聞かないけれど、今は感情の許すままに泣いてください。」

彼女はその男の腕の中で泣いた。
辛いこと、苦しいこと全てを吐き出すように。
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