そこは夢の詰め合わせ

らい

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イバラ

83.怖気と共に

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『なぜ。あの時私は生き残ったのだろう。
君は知る必要がある。あの森と共存する道を選ぶのなら。これは私が数年前に体験した出来事だ。』

    数年前 宵 あの森にて


ただ私はこの森を抜けたかっただけなのに。
なにかに追われている。それがなんなのか分からないけれど。私は捕まってはいけない気がして、酷く動物の騒ぐ森を走る。

「━━━━━━━━━━━━!」

なにか聞こえた気がすると思って振り返った時だった。怖気がする。何も居ないし、何の声も聞こえない。そうだ。何も聞こえなくなった。獲物にならないようにそっと息を動物達が潜めるように、自分が標的にならないように静まり返る森のように。

開けた暗い大地で見た。私は『見た』のだ。
「蛇」を。別に無数に蛇を従えてた訳でもない。それが珍しい色をしていた訳でもない。
毒を吐いた訳でもない。だけなのだ。の蛇を従えて、出てきた蛇。蛇を人とした時のような姿をした女性を私は見た。


-------------------------------------------

無我夢中で走った私は気がついた時には街に出ていた。しかしこれだけははっきりと覚えていた。彼女の笑う声だけは。それだけは耳にこびりついて離れないのだ。ずっと・・・
ずっト・・・ズット・・・




嫌にはっきりと聞こえる地面を擦る音
低く、卑しく、それは暗闇と共に
か細い光を頼りに進む希望を消すかのような暗く嫌な音。はっきりと聞こえてしまえばもう、はすぐそこだ・・・

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