そこは夢の詰め合わせ

らい

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蛙巳

102.影

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それは深夜、夜も更けた頃の話。
俺は唐突にだが夜景が見たくなり近くの丘の上にある公園に足を運んだ。
公園の端にあるただ一つの街灯の下から夜景を見る。

「こんばんは。こんな夜更けにこんなところでどうしたんですか?」

夜景に見とれいてる時に後ろから声がした。
それが女性であるということはすぐにわかった。少し声が低く感じた。夜だからだろうか?

暗くてよく彼女は見えないが軍服?のような帽子と服だった。何か後ろに見えるが暗くて良く見えない。俺は特に気にせず返事をした。

「あぁ、今日は寝れなくてね。気分転換に」

「それはそれは良い事ですね。そしてこれからもっと良い日になったでしょうに。残念です。」

俺は彼女の言ってることが分からなかった。
なぜここで終わるかのような言葉を俺に投げかけたのかさっぱり分からなかった。

彼女が俺に近づいてきた。街灯の光が途切れ途切れになる。そして光に照らされた彼女の背中には『尾』と言えなくもない何かが生えていた。すぐにそれは人では無いということを理解した。

俺は一目散に家へ走った。追ってくる気配は無い。家の玄関を乱暴に開け、すぐに鍵を閉める。追ってきてない事を確認した俺は少し安堵した。

公園で女性は月を見る。三日月をだ。あまり月明かりのない三日月だからこそ、彼女はその姿を現す。

少し月の光が強くなった時に彼女の歯がキラリと光った。ギザギザの鋭い歯が。

「皆様、何処かで会える事をお楽しみにしております。」

頭をうやうやしく下げた彼女は夜闇に紛れて消えた。
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