そこは夢の詰め合わせ

狐谷

132.狐窓

狐の窓というものをご存知だろうか？
ある特定の指の動きと呪文を唱えることで人間に化けている妖怪を見ることが出来る。

多くの妖怪が人に化けているため、その窓を覗くだけで誰が「妖怪」なのかそれとも「人間」なのかを知ることが出来る優れた窓だ。

「鬼」「猫又」「烏天狗」「ろくろ首」「ひとつ目小僧」など多くの妖怪が人に化けているのを見た。そして仲良くしていた女性を彼は覗いてしまった。

彼の眼に映ったのは大きな大きな九つの尾。
綺麗に整えられた毛並みに大きく細い耳。
大きく恐ろしいその姿に彼はそっと走り出す。

バレないように抜き足差し足。物に当たらないようにひっそり息を殺す。しかし彼女は大妖怪。そんなのすぐにバレてしまう。

「見たねぇ？小生を。狐の窓で。」

ふわりふわりと空を飛ぶ。逃げる彼の行く道を遮るように降りた狐がそう行った。

「狐の窓は通常の妖怪に使ってもバレやしないさ。通常ならね。しかし狐って付いてるんだ。狐の妖怪にはバレてしまう。小生のような九尾とかね。」

長くなった爪は彼の首をそっと撫でる。
彼は殺されなかったとホッとする。

「もうやるんじゃないよその窓。あぁ・・・次なんて無いけどね・・・」

狐がふわりと消えたあと、彼の首は鋭い刃物で綺麗に切られて死んでいた。

その断面は美しく綺麗な断面だったと言う。
狐の窓は本物を見ることが出来るが代償は必要なのである。