そこは夢の詰め合わせ

らい

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狐谷

58.どうしたら隣に居れたのかな

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小生は人では無い。人では無いから、思いを寄せても多分その想いが叶うことは無いだろう。

でも、この姿でも。想いを寄せても良いのだろうか。畏怖を植え付ける大きな尻尾と長く伸びた爪。煙草を咥えた物の怪の想いに答える人など居はしない。

「好きって気持ちってどうすればいい?」

「素直に伝えてもいいものかな?」

「嫌がられはしないだろうか?」

口に出してしまえばそれだけ黒い感情が腹の中に溜まるような感覚で。でもこの気持ちの出処が分からなくて。


「ねぇ、小生が好きと言ったらどうする?」

「んー?まぁありがとうって言う?」

これだから、小生は自分の気持ちを伝えることさえできない。手遅れにもうなりつつあるのに。

「もう、会えない。好きな人が出来ちゃった」

「えっ・・・・」

愕然とした。でも、その人のことを喋っている貴女はとても眩しくて、とても楽しそうで。引き止めるなんてそんな事出来るわけがない。

こんなに眩しい貴女の笑顔を奪うなんて、どうしてもできるわけが無い。できたとしても、彼女の好意が自分に向くとは限らないのに。

陽の光にあてられ、美しい紫色を輝かせる髪を遠目から眺める。もうここには戻ってこないあの美しい紫の髪を見ながら。

その日の夜、月に向かって涙を流すのだ。
どこにも行き場のない気持ちを投げ捨てるように。
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