そこは夢の詰め合わせ

らい

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咲楽

143.誰が貴女を

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「誰が貴女なんか愛すものか。」

そう言われてあの世界からこちらの世界に落とされた。それから彼女は心を閉ざすように、人からの目線を気にするようになった。

『誰がお前なんか愛すものか』
『誰が貴女なんかと仲良くするか』
『誰が貴様なんか好きになるか』

誰が、誰が、誰が。ずっとそう言われて生きてきた。この世界ではそう言ってくる人はいなかった。

彼女は自分を変える努力をした。
髪色を暗闇のような黒から輝くような明るい紫にした。身なりも何もかも美しく綺麗に着飾った。自分を虚偽で、嘘の美しさで固めた。

誰もがそれを褒めた。美しく綺麗にした彼女の外側を褒めた。誰も中身を褒めることはなかった。

「優しいね。君の眼は。」

そう初めて言ってくれた人もいた。
初めてだった。それから少しずつ、彼女の外側だけでなく中身を褒める人も出てきた。時には厳しい言葉をかける人もいたけれど。

「ありがとう・・・!」

中身を見てくれた人がいた事に。
それを正そうとしてくれた人がいた事に。
彼女は嬉しくて、嬉しくて。
透明な雫が頬を伝った。

誰もが彼女を愛した。
誰もが貴女を愛した。
彼女はそれを知れたことに。

「ありがとう。僕を愛してくれて」

そう言って透明な雫が頬を伝った。
彼女の眼は死んだ魚のような、ハイライトのない暗い眼だった。
そんな彼女の眼から流れた涙は悲しく静かな涙だった。
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