二次創作小説

らい

文字の大きさ
上 下
30 / 30
イバラ

現れる夜

しおりを挟む
明るい太陽は私の身体には毒だ。
暖かい日差しと照らす光は私の身体を悪くも蝕む。
あか色の光は暖かな光で世界を照らす。

だから私は夜にのみ活動をするのだ。
夜は私の時間。私だけの時間。
誰にも邪魔はさせない。
私の至福の時間なのだ。

遠くの山に太陽が沈む。
白に近い色をした太陽は沈む時にのみ
まだ照らしていたいとでも言うような恨めしいオレンジ色へと変わる。

少しずつ太陽が山へ消えていく。
暗い色の空が消える太陽を捕まえるように勢い良く走る。
太陽は捕まらないように山へ隠れていく。

その暗い空は私にとって最高の空。
完全に太陽が山に隠れた。私の時間だ。
上を見れば暗い黒の空に星が輝く。
輝く星のおかげで青く見える空。

その暗い青の世界に一つ。
白く輝く異質で大きな白。
太陽に大きさこそ劣るけれど、美しさはこちらの方が上だろう。

そう。「月」さ。

月の光は白く世界を照らす。
あの大きなお城も。古き良き街並みも。
道も、山も、海も、電気を消したあの部屋も。
全てを寂しげに照らす。


大きく長い身体を起こし、ゆったりと進む。
低い引きずるような音。
私はそれに乗って街を進む。

中身は無い。肉なんて、血なんてものはない。
ただ骨だけの私のそれに乗り、ゆったり進む。
あぁ美しい。寂しげな街が。
ここは私の街。夜は私の時間。

誰も居なくなる。
誰も歩かない。
誰もが私の前から消える。
誰も私と会おうとしない。

だから私は夜が好きだ。
太陽の昇る時間は私と出会ってくれない人々が楽しげに笑うあの姿を見てしまったら
私は、この街を壊してしまいそうだから。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...