夢小説

らい

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ママ

変わらぬ姿と

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ベランダの窓から風が吹く。
猫一匹くらいなら通れる程の空き具合。

五月の朔の花が咲き終わり始めた頃。
何も変わらぬまま、そこに立つ。
咥えた忘れ草をちょっとばかり深く吸っていた。

そんないつもの動作を見ていた。
別に面白みがある訳では無い。
そこに日常というものが詰まっているだけだ。
なんの意味もなくベランダへ続く窓にふと目を動かす。
窓の外では大きな椰子やしの木が風に揺られて大きく首を動かす。

また視線を元に戻す。
多分一番お世話になっている。
そんな人が今日も煙を吐いている。

着ているパーカーの袖を少しだけ。
ほんの少しだけ強く握る。

別に何かある訳でもなく。
吸いきった殻を捨てる。

外では紫蘭の花が太陽に顔を伸ばしている頃だろう。
もしかしたら少し先の時雨しぐれを待っているのかもしれない。
紅葉と共に咲き誇ってやろうという魂胆かもしれないけれど。
雷はそれらにとって天敵だろうか?

そんな他愛もない事を考えつつ、氷の入った麦茶を一気に飲み干してしまう。
浮力を失った氷たちはからんと冷音を響かせ、空気を震わせる。

いつの間にか空は琥珀色に包まれ、遠くから夜の声が聞こえてくる。

台所からは水音と、何かを切る音。
それと・・・。

どうしようもなく心地いいいつも通り。
そこには何かがいて。

真似をして忘れ草を深く吸ってみるけれど。
全く同じにできる訳もなくむせてしまった。
しかし、何故かそれで良いと思った。

またあの人は紫煙に包まれる。
きっと、ずっと包むのだろう。
それを蛇は覚えているだろう。
それを蠍は刻むのであろう。

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