愛の転生令嬢、奮戦記

矢野 零時

文字の大きさ
1 / 25

1バレンタイン哀愁、そして転生

しおりを挟む
 秋川純子は、公立の青山高校に入ることができ、原田茂成と同じクラスになった。純子は教室の後ろの席になったので、前にすわった原田を学校にいる間じゅう、見ることができた。いつも笑顔で誰に対してもやさしくしている原田を純子は好きになった。いま思えば、それは初恋だった。 
 そんな原田は、男友だちからの推薦をうけて学級委員になった。原田はホームルームの時に司会を行い、人からの意見をよく聞きとり、それを議題にすると、てきぱきと処理していった。そんな姿を見ているだけで純子の胸がときめいていた。だから、休憩時間に原田と何気ないことを話しただけで、顔を赤らめてしまうのだった。

 やがて、年が変わり、2月14日、バレンタインデーが近づいてきた。
 自分の気持ちを相手に知らせるには、相応しい日だった。同じクラスの女の子たちの間でも、好きになった人にどうやってチョコを渡すか、話題になり出していた。チョコレート専門店で高いチョコを買って渡そうとする人たちや、自分でオリジナルなチョコ菓子を作って渡そうとする人たちがいる。純子はビスケットを焼き、それに板チョコを溶かしてかけたものを手渡すことにした。チョコビスケットを小箱に入れるとピンク色の紙でラッピングをして赤いリボンをかけておいた。それをカバンに入れて学校に持っていった。
 学校では、原田が純子以外の女の子から、チョコを渡される場面を見ることになったのだ。それを見ているうちに、純子は気後れしてしまった。
 自分が好きになっていることを他の人に知られたくない。もしかしたら、チョコを渡しても原田は受け取ろうとはしないかもしれない。そんなことまで思ってしまう。そんな自分は信じられないくらい弱気になっていたのだ。
 
 学校でチョコを渡すことができなかった純子は失意の中で家に帰った。母は夕食をカレーに決めていた。カレーの時には家族で牛乳を飲むことになっていたのだが、冷蔵庫にある牛乳は、パックの中にほとんど残っていなかったのだ。そこで、母に頼まれ純子は牛乳を買いにコンビニにでかけていった。  
 コンビニに向かう途中で、歩いていた原田を見ることになった。原田は道路にある横断歩道を前に立ち止まっていた。その道路は車も通れる道路だったのだが、そこには信号がついてなかったからだ。
 突然、子犬がちょこちょこと出てきて道路の中ですわりこみ、原田の顔を見てシッポをふった。すぐに原田は子犬を道路から連れだそうとして道路に入っていく。原田が声をかけると、子犬は走り出し道路の外にある草地の中に消えていった。子犬をみつめていた原田は、道路に残っていた。そんな原田に向かってトラックが走ってきたのだ。
「原田くん、あぶない」
 純子は走りトラックの前に飛び出していった。トラックの運転手はブレーキをかけたのだが、スピードは落ちず純子をはね、さらにその後ろにいた原田もはねていたのだった。


               
 明るい光に純子は目を開くと周りは白いかすみにつつまれていたのだ。目をこらしていると、その中に美女が立ち笑っていた。その美女は、金髪で頭に銀の冠をかぶり白いドレスを着ていた。そして背中には白鳥のような白い羽がついていた。
「あなたは、神さま?」と、純子は思わず聞いていた。
「人は、私のことをそう呼んでいるかもしれませんね。あなたは、原田茂成さんを助けるために、死んでしまった。でも、あなたは、あそこで死ぬはずではなかったのですよ。次に生まれる時も、人として生まれて貰うことにしました。そこで、新たに生まれる時に、あなたの希望を叶えてあげたいと思っているのですよ」
「私の望みを叶えてくれるの?」
「はい、そうです。トラックにひかれて、あなたはもう元の世界では亡くなっているのですから」
「原田くんも死んでしまったの?」
「ええ、そうです。子犬を助けようとして亡くなったのですから、もう一度、原田さんにも人として生まれて貰おうと思っておりますわ」
「希望を聞いてくれるのでしたら、原田くんと同じ世界に、私も生まれたいわ?」
「それが望みですか? いいですよ」
「原田くんを見ていられる場所に生まれたいの。私が原田くんの前でおくびょうだったのは、きれいな顔じゃなかったからだわ。だから、美しく生まれたい」
「美しい顔立ちの人であればいいのですね。わかりました。そのとおりにしますよ」
「私が行く世界には、魔法使いはいるのかしら?」
「どうしてですか?」
「シンデレラと同じに、助けて欲しいのよ。魔法使いに」
「わかりました。魔法が使える世界で、あなたが頼めば手助けをしてくれるようにしておきます」
「あ、そうだ。貴族の家に生まれたいわ。両親がちゃんといて、両親に愛されていたいの」
「つまり、令嬢ですね。いいですよ」
 女神は、にっこりと笑っていた。少しわがままを言い過ぎて、女神にことわられるかもしれないと思っていたのだが、そんなことはなかったのだ。思わず純子も笑顔になっていた。
「でも、どんな世界にも苦労することは起きるものですよ」
「苦労ですか?」
「そうです。でも、それを冒険と思ってくださると有難いですね」
 そう言った神さまは白いかすみの中に消えていった。そして純子の意識も再びなくなっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

猫なので、もう働きません。

具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。 やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!? しかもここは女性が極端に少ない世界。 イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。 「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。 これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。 ※表紙はAI画像です

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

【完結】王宮内は安定したらしいので、第二王子と国内の視察に行ってきます!(呼ばれたみたいなので、異世界でも生きてみます。の続編です)

まりぃべる
恋愛
異世界に呼ばれた佐川マリア。マリア・サガワとしてこの世界で生きて行く事に決め、第二王子殿下のルークウェスト=ヴァン=ケルンベルトと一緒に、この国をより良くしていきます!って、実際は2人で旅行がしたかっただけ? 呼ばれたみたいなので、異世界でも生きてみます。の続編です。 長くなりましたので、前作の続きでは無く新しくしました。前作でしおりを挟んでくれた方ありがとうございました。 読んでなくても分かるようにしております。けれど、分かりにくかったらすみません。 前作も読んで下さると嬉しいです。 まだまだ未熟なので、稚拙ではありますが、読んでいただけると嬉しいです。 ☆前作で読者様よりご指摘が有りましたのでこちらにも記載しておきます。 主人公の年齢は設定としてありますが、読者様が主人公になれたらな(もしくは好きな年齢に当てはめて読めたら)という思いを込めて敢えて年齢を記載していません。

あなたの側にいられたら、それだけで

椎名さえら
恋愛
目を覚ましたとき、すべての記憶が失われていた。 私の名前は、どうやらアデルと言うらしい。 傍らにいた男性はエリオットと名乗り、甲斐甲斐しく面倒をみてくれる。 彼は一体誰? そして私は……? アデルの記憶が戻るとき、すべての真実がわかる。 _____________________________ 私らしい作品になっているかと思います。 ご都合主義ですが、雰囲気を楽しんでいただければ嬉しいです。 ※私の商業2周年記念にネップリで配布した短編小説になります ※表紙イラストは 由乃嶋 眞亊先生に有償依頼いたしました(投稿の許可を得ています)

王宮勤めにも色々ありまして

あとさん♪
恋愛
スカーレット・フォン・ファルケは王太子の婚約者の専属護衛の近衛騎士だ。 そんな彼女の元婚約者が、園遊会で見知らぬ女性に絡んでる·····? おいおい、と思っていたら彼女の護衛対象である公爵令嬢が自らあの馬鹿野郎に近づいて····· 危険です!私の後ろに! ·····あ、あれぇ? ※シャティエル王国シリーズ2作目! ※拙作『相互理解は難しい(略)』の2人が出ます。 ※小説家になろうにも投稿しております。

将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!

翠月 瑠々奈
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。 侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。 そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。 私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。 この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。 それでは次の結婚は望めない。 その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

処理中です...