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11新勇者パーティー
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ダイルは勇者二人を連れてブライアン家の屋敷にやってきた。ダイルはユリアと顔を合わすとすぐに頭をさげていた。
「ギルドに行って勇者を探したのですが、ゴブリン退治に参加したいと言ってくれたのは、この二人だけだったのですよ。なんせ、前にゴブリンがいる屋敷にいって、勇者たちが全滅したことはギルドでも知られてしまっている。だから、参加したがる者はいなかったのですよ。それでも、この二人はゴブリンを相手に戦った経験がある。不足している勇者は駐屯所から兵を出してもらうように、私がノートン所長にお願いをするつもりです。まず自己紹介をしていただきます」
ダイルが顔を向けた先には、灰色のケールを着て手に長杖をもった男がいた。だが、その男の右足先はなく、ギブスがはめられていたのだ。頭髪はぼうぼうで逆立ち、雄ライオンを思わせた。
「それでは、ご挨拶をさせていただこう。名前はボブ・ゴーギャンと申す。ボブとお呼びくだされ。戦闘用の黒魔術を使える。何度もダンジョンに入り、ゴブリンと戦ってまいったが、黒ゴブリンにあってしまい、足の先を食べられてしまった。だが、その時も敵を追い払い、ダンジョンから逃げ出してくることができましたわ」
「同じパーティーの人たちはどうなったのですか?」と、リチャードが聞いていた。
「外で待っていたのですが、誰もでてこなかった。やはりゴブリンに食べられてしまったと思いますよ」
リチャードは口を開き新たな質問をしそうになった時に、ボブの隣にいた男が話し出したのだ。
その男は、若く小太りで、頭髪は黒く、体に筋肉はついているようだった。
「私の名前はマイク。付与魔法を使えます。パーティーメンバーの持っている魔法力のアップを図ることができます。ダンジョンへ必要な荷物を運ぶことができますし、魔物退治の証拠にする魔物の耳を切るのもうまいですよ」
「メンバーの魔法力をあげると言われましたが、どのくらいのレベルをあげることができるのですか?」
ユリアは、自分のレベルを高めてくれるならば、と期待を持って聞いていたのだ。
「そうですね。一回の呪文をかけるのに十五分ほど時間がかかりますし、率にすれば1パーセントですね」
「たった1パーセントですか!」
ユリアの顔が曇ったのを見たマイクは話を続けた。
「ぜひ、パーティーのメンバーに加えてください。母の病気を治すためには、ダンジョンの中に出来るひかりゴケをとって、それから作った薬を与えなければならないのです」
マイクの強張った顔を見ていては、参加を拒否することなどできはしない。
「参加していただくだけで有難いことです」と、ユリアは言っていた。
「パーティーメンバーを集めていた方、あなたがユリアさまですね」
「はい、そうです。でも、パーティーのリーダーは、こちらにおられるリチャードさま。でも、その名前は誤解を与えることがありますので、別の言い方で呼んでいただけますか。えっと、リーダーでお願いします」と言って、ユリアはリチャードの方に顔を向けた。リチャードは笑っていて、いやがってはいない。
「それでは、リーダーと呼ばせていただきますよ」と、マイクが言ってくれた。
「よろしくお願いしますね」
リチャードは二人の勇者に頭をさげると、その場所から離れていった。ユリアが目で後を追うと、リチャードは剣を手に家から出ていったのだ。
「ともかくも、ブライアン家にご面倒をかけたくありません。お二人は、私の家にある部屋に泊まってもらうつもりです。他の家よりは大きいので、ゆっくりはしてもらえると思っておりますよ」
ダイルは、二人を連れて、ブライアン家の屋敷からでていった。彼らの背を見ながら、ユリアは自分もパーティーのメンバーになることを決めたのだった。それはギルドからきた勇者たちに頼りきることはできないと思ったからだ。リチャードも同じことを考えていたに違いない。ともかく、自分が入れば、パーティーメンバーの数は四人になる。
そう思ったユリアは、おぼえたての魔法の特訓をしようと思って屋敷をでて、森にいった。
森にきたユリアは、桂の大木をみつけると、十メートル離れて、その前に立った。左手に杖を持ち呪文を唱え、地面に落ちている小石を浮かしたのだ。それを右手で掴み、桂の幹に向かって思いっきり投げたのだった。石は見事に桂の幹にあたって落ちていた。
サマンサのように魔法で石を自分の前に戻すことができない。ユリアは石に近づいて、木の前に落ちた石をみつめた。石はドーナツのように穴があいた輪になっていたのだ。
「確かに、どうなるか、わからないのね。ともかく穴だけは、あかないようにしたいわ」と、ユリアはつぶやいていた。その後、石を拾いにいくのが面倒なので、ユリアは、前もって小石を集めて小山を作り、それを掴んでは、桂の木に投げつけていたのだった。
先にブライアン家の屋敷をでたリチャードは、戦いの実践力を高めなければと思い、対戦訓練を行うために駐屯所を訪ずれ、ノートンにそこにいる強い兵を貸してもらうことを願いでた。
ノートンは、快く強い兵とリチャードの対戦を許してくれたのだ。
次の日、リチャードは刃のない鉄剣を鍛冶屋に作ってもらい、それを手に持って駐屯所にいった。対戦の時は、兵たちには刃のある剣を持ってもらった。すぐに一人の兵が相手では、リチャードは簡単に相手の剣をはじき飛ばせるようになっていた。
翌日には、二人の兵に参加してもらい、対戦の訓練を行った。だが、その対戦でも、打ち合いの激しさで兵たちの手がしびれだし手から剣を落としていた。
翌々日は、三人の兵を相手にして対戦を行った。すると、その対戦では、兵士たちが「参った」と声をあげていた。
さらに、その次の日には、四人の兵にして対戦を行ってみたのだが、そうなると兵同志が邪魔になり、リチャードに向かって剣をふることができなくなっていた。そこで、もう兵の数を増やさないことにしたのだった。
「ギルドに行って勇者を探したのですが、ゴブリン退治に参加したいと言ってくれたのは、この二人だけだったのですよ。なんせ、前にゴブリンがいる屋敷にいって、勇者たちが全滅したことはギルドでも知られてしまっている。だから、参加したがる者はいなかったのですよ。それでも、この二人はゴブリンを相手に戦った経験がある。不足している勇者は駐屯所から兵を出してもらうように、私がノートン所長にお願いをするつもりです。まず自己紹介をしていただきます」
ダイルが顔を向けた先には、灰色のケールを着て手に長杖をもった男がいた。だが、その男の右足先はなく、ギブスがはめられていたのだ。頭髪はぼうぼうで逆立ち、雄ライオンを思わせた。
「それでは、ご挨拶をさせていただこう。名前はボブ・ゴーギャンと申す。ボブとお呼びくだされ。戦闘用の黒魔術を使える。何度もダンジョンに入り、ゴブリンと戦ってまいったが、黒ゴブリンにあってしまい、足の先を食べられてしまった。だが、その時も敵を追い払い、ダンジョンから逃げ出してくることができましたわ」
「同じパーティーの人たちはどうなったのですか?」と、リチャードが聞いていた。
「外で待っていたのですが、誰もでてこなかった。やはりゴブリンに食べられてしまったと思いますよ」
リチャードは口を開き新たな質問をしそうになった時に、ボブの隣にいた男が話し出したのだ。
その男は、若く小太りで、頭髪は黒く、体に筋肉はついているようだった。
「私の名前はマイク。付与魔法を使えます。パーティーメンバーの持っている魔法力のアップを図ることができます。ダンジョンへ必要な荷物を運ぶことができますし、魔物退治の証拠にする魔物の耳を切るのもうまいですよ」
「メンバーの魔法力をあげると言われましたが、どのくらいのレベルをあげることができるのですか?」
ユリアは、自分のレベルを高めてくれるならば、と期待を持って聞いていたのだ。
「そうですね。一回の呪文をかけるのに十五分ほど時間がかかりますし、率にすれば1パーセントですね」
「たった1パーセントですか!」
ユリアの顔が曇ったのを見たマイクは話を続けた。
「ぜひ、パーティーのメンバーに加えてください。母の病気を治すためには、ダンジョンの中に出来るひかりゴケをとって、それから作った薬を与えなければならないのです」
マイクの強張った顔を見ていては、参加を拒否することなどできはしない。
「参加していただくだけで有難いことです」と、ユリアは言っていた。
「パーティーメンバーを集めていた方、あなたがユリアさまですね」
「はい、そうです。でも、パーティーのリーダーは、こちらにおられるリチャードさま。でも、その名前は誤解を与えることがありますので、別の言い方で呼んでいただけますか。えっと、リーダーでお願いします」と言って、ユリアはリチャードの方に顔を向けた。リチャードは笑っていて、いやがってはいない。
「それでは、リーダーと呼ばせていただきますよ」と、マイクが言ってくれた。
「よろしくお願いしますね」
リチャードは二人の勇者に頭をさげると、その場所から離れていった。ユリアが目で後を追うと、リチャードは剣を手に家から出ていったのだ。
「ともかくも、ブライアン家にご面倒をかけたくありません。お二人は、私の家にある部屋に泊まってもらうつもりです。他の家よりは大きいので、ゆっくりはしてもらえると思っておりますよ」
ダイルは、二人を連れて、ブライアン家の屋敷からでていった。彼らの背を見ながら、ユリアは自分もパーティーのメンバーになることを決めたのだった。それはギルドからきた勇者たちに頼りきることはできないと思ったからだ。リチャードも同じことを考えていたに違いない。ともかく、自分が入れば、パーティーメンバーの数は四人になる。
そう思ったユリアは、おぼえたての魔法の特訓をしようと思って屋敷をでて、森にいった。
森にきたユリアは、桂の大木をみつけると、十メートル離れて、その前に立った。左手に杖を持ち呪文を唱え、地面に落ちている小石を浮かしたのだ。それを右手で掴み、桂の幹に向かって思いっきり投げたのだった。石は見事に桂の幹にあたって落ちていた。
サマンサのように魔法で石を自分の前に戻すことができない。ユリアは石に近づいて、木の前に落ちた石をみつめた。石はドーナツのように穴があいた輪になっていたのだ。
「確かに、どうなるか、わからないのね。ともかく穴だけは、あかないようにしたいわ」と、ユリアはつぶやいていた。その後、石を拾いにいくのが面倒なので、ユリアは、前もって小石を集めて小山を作り、それを掴んでは、桂の木に投げつけていたのだった。
先にブライアン家の屋敷をでたリチャードは、戦いの実践力を高めなければと思い、対戦訓練を行うために駐屯所を訪ずれ、ノートンにそこにいる強い兵を貸してもらうことを願いでた。
ノートンは、快く強い兵とリチャードの対戦を許してくれたのだ。
次の日、リチャードは刃のない鉄剣を鍛冶屋に作ってもらい、それを手に持って駐屯所にいった。対戦の時は、兵たちには刃のある剣を持ってもらった。すぐに一人の兵が相手では、リチャードは簡単に相手の剣をはじき飛ばせるようになっていた。
翌日には、二人の兵に参加してもらい、対戦の訓練を行った。だが、その対戦でも、打ち合いの激しさで兵たちの手がしびれだし手から剣を落としていた。
翌々日は、三人の兵を相手にして対戦を行った。すると、その対戦では、兵士たちが「参った」と声をあげていた。
さらに、その次の日には、四人の兵にして対戦を行ってみたのだが、そうなると兵同志が邪魔になり、リチャードに向かって剣をふることができなくなっていた。そこで、もう兵の数を増やさないことにしたのだった。
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