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おばあちゃんの家にいくとね!

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 おかあさんは、おばあちゃんのためにカーディガンをあんでいましたが、それができあがりました。
 日曜日にちようび
 おかあさんにたのまれて、ルミはカーディガンをおばあちゃんのいえにとどけにいきました。すると、おばあちゃんは、よろこんでくれました。
「おやつに、ルミのすきなものをべようね」といって、おばあちゃんは、ルミのおさらあかいイチゴがのったショートケーキをふたつものせてくれました。
「のどがつまったら、こまるね」といって、おばあちゃんは、オレンジジュースもしてくれました。
 ショートケーキふたつにオレンジジュースは、ルミのおなかをまんぷくにしてくれました。
 そこで、おばあちゃんのいえにわてみることにしました。えんがわにこしをおろして、サンダルをはいていると、足元あしもとでアリさんたちがうごきまわっていました。
 ルミがたちあがると、ルミのスカートについていたケーキのくずがいくつもアリさんのまえにおちていきました。
 アリさんたちは、ケーキを触角しょっかくでさわっていましたが、ものだとわかったのか、それをはこしたのです。
 どこにはこんでいくのでしょうか?
 ルミはかがみこんで、あるいているアリさんたちのあとをつけました。ひまわりのあいだを、つぎはカーネションのあいだを、さらにコスモスのあいだをアリさんたちはケーキをはこんでいきます。
 すると、だんだんとアリさんたちがおおきくえだしました。
「アリさん、どうして、おおきくなったの?」と、ルミはいちばんうしろにいてケーキをおしていたアリさんにきました。すると、アリさんはたちどまり、ルミのほうにかおをむけました。
 そのアリさんの触角しょっかくは、ほそいスプーンのようでした。ですから、ルミは、そのアリさんをスプーンアリさんとよぶことにしました。
「ちがうよ。ルミちゃんがちいさくなっただけだよ」と、スプーンアリさんはこたえました。
「スプーンアリさん、わたしがちいさくなったの?」
 まわりをまわすと、こしのたかさにえていた花々はなばな電信柱でんしんばしらうえにある電灯でんとうのようにえています。
 ルミとスプーンアリさんがあるいていると、やがて大きなあなえてきました。まるで地面じめんにできたほらあなのようです。
「ここが、わたしたちのおしろにはいる出入口でいりぐちです。ルミちゃんのおおきさなら、おしろによっていけるよ」と、スプーンアリさんはいいました。
「よってもいいのかしら?」
「ぜひ、よってください。ルミちゃんが、ケーキをにわにおとしてくれなければ、ケーキみたいなご馳走ちそうべることなどできなかったのですから」
 ルミがスプーンアリさんについてなかにはいりトンネルのような通路つうろをおりていくと、おおきな広間ひろまにでました。そこは天井てんじょうあながあいていますので、ひかりがはいってきて、くらくはありません。それに、広間ひろまのまんなかおおきなテーブルがあって、はこばれたケーキがすでにこまかくわけてっぱでつくった小皿こざらにのせてありました。ルミがちいさくなっているせいか、小皿こざらの上にあるショートケーキは四個よんこぶんはあるみたいです。
 ひげのはえたアリさんが「みんな、おやつだよ」と、大声おおごえをあげました。すると、アリさんたちがどんどんやってきてテーブルのまわりにおいた椅子いすにすわりだしたのです。
「ルミちゃんも、どうぞ」といわれたので、ルミも椅子いすにすわりました。おばあちゃんのいえでケーキをべていたのですが、こうやってアリさんたちと一緒いっしょにすわると、またケーキをべたくなってしまいます。
 みんなとルミがケーキをべていると、キリギリスさんがやってきて、にもっていたバイオリンをひきだしたのです。アリさんたちは、べるのを途中とちゅうでやめて、びょうしをっていました。
「でも、どうして、キリギリスさん、ここにいるのかしら?」と、ルミがくびをかしげました。
 すると、となりにすわっていたアリさんが、
「キリギリスさんは、きょねんのふゆからアリのおしろにすんでいるんですよ」
とおしえてくれました。
「そうね。ゆきがふったら、キリギリスさんはそとではきていけないものね」
「いまは、ここで演奏家えんそうかとして音楽おんがくをかなでてもらっているんですよ」
 おなかいっぱいだったのに、さらにケーキをべ、たのしい音楽おんがくをきいていると、ルミはねむくなってしまいました。おもわず、テーブルのうえかおをふせ、ルミはをつぶりました。
 どのくらい、時間じかんがたったのでしょうか?
「ルミちゃん、おきなさい」
 ルミをよぶこえがするので、をあけると、おばあちゃんがルミをのぞきこんでいました。
「そろそろ、ルミちゃんはいえにかえらないといけないよ」
「そうだわ。そうよね、おばあちゃん」といって、ルミはたちあがりました。
「ほんとうならば、おくっていけばいいのだけどね。そんなことをすれば、今度こんどは、おかあさんが、わたしをおくっていくといいだすにまっているからね。だから」
「だから?」
「だから、タクシーをよんだよ」
 おばあちゃんは、玄関げんかんまえにとまっているあおくるまゆびさしてわらっていました。


                     おわり

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