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10 付記

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 佐川も捜査を終えた後、県警本部に報告をあげている。

 その内容の一部等について、読者の皆様に追加報告をしておきたい。

 一つ目は、生田弁護士がなぜ殺される場所に行ったのかについてだ。
 それは、田村からの自供調書を作成する中で明らかになった。
 生田弁護士に電話をかけたのは田村だった。それも声を変えることができる変成ソフトを使い、若者のふりをして電話をかけていた。

 電話で田村から生田は次のようなことを信じ込ませられていた。 
 
 若者はゲーム会社にいてレーシングゲームを作っていた者であり、彼が作ったゲームでは、仮想空間でのった車を手だけで動かすことができる。そのソフトを日光自動車に売りに行き断られ、その時の記録を持っている。

 当然、その記録文書は、生田弁護士にとっては、欲しい物だ。だから、それを受け取り、さらに若者からもっと詳細な話を聞きたくて、生田弁護士は本通りの交差点近くにある喫茶店に向かっていたのだった。
 
 それが、生田を殺害するための罠とも知らずに。
 
 他の捜査員の捜査状況についても報告を行っておく。
 生田弁護士を撃った銃、トカレフは残念ながら見つけることができなかった。また、中国に逃げた犯人は捕まえることはできずにいる。それは、中国と日本の間には犯罪人引渡し条約が結ばれておらず、中国に代理処罰を依頼することも難しいからであった。

 だが、生田弁護士事務所の補佐をしていた岸本は、日光自動車が生田の殺害を行ったこと、そして、その理由が本来ならばできる技術革新の隠ぺいであったことをマスコミに流していた。


  
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