15 / 23
第十五話 凶事
フターク国の城内には礼拝堂があった。城の改修が始まると礼拝堂が壊され、そこにおかれていたトロの神像も破壊されてしまったのだ。やがて、その影響がでてきた。
その一つがインガ国で起こった。
これまで、ロズエルは、魔神サタンのために作った神殿のある部屋に、寝る間も惜しんでいりびたり、そこで両手を合わせて頭よりも高く掲げ、「サタン様。お姿をお見せください。私は、あなたの下僕でございます」と叫び続けていた。これがベルソ国の王から教わった魔神サタンを呼び出す方法だったからだ。それなのに、サタンを呼び出すことができないでいたのだ。
だが、この日は違った。神殿のある部屋に立ち並べたロウソクの炎が風もないのに揺れだしたのだ。そして、背筋が寒くなるような掠れた声が聞こえてきた。
「わしを呼ぶ者は誰だ?」
「私、ロズエルでございます」
「何故、わしを呼ぶ」
「サタン様のお力をお借りして、この世界の帝王となりたいと思っております。ぜひ、お力をお貸し願いたい」
サタンは笑った。その笑い声が、部屋じゅうに鳴り響いた。
「その前に、わしと血の契約を結び、わしが望む生贄をささげなければならんぞ」
「生贄とは?」
「すくなくとも月に一度以上若い娘を連れてきて神殿にささげよ。それをわしが食らうのじゃ」
その申し出に、思わずロズエルは息をのんだ。だが、その程度の事をしなければ、帝王にはなれないかもしれないとも思っていた。
「わかりました。生贄をお届けいたしましょう。あなた様との契約はどのようにすれば、よろしいのですかな」
「ならば、自分の腕に傷をつけ、血を出して、それを暗がりの中につき出して見よ」
言われるままに、ロズエルは腰につけていた短剣で自分の腕に傷をつけ、血をだした。その腕を暗がりの中に入れると、反対方向から灰色の腕がつき出されてきたのだ。その腕にも傷がつけられ、血がでていた。その腕が動き、ロズエルの腕と重ねると血がまじりあった。すると、腕が火で焼きつけられたような痛みを覚えたのだ。思わず、ロズエルは顔をゆがめていた。
暗がりから、笑い声がふたたび聞こえてきた。
「これで契約ができた。それでは、まず今月の生贄を忘れないことだ」
ロズエルはしばらくの間、暗闇の中に立ち続け、やがて口をゆがめて笑っていた。
二つ目は、突然、冷夏になり、秋が近づくと小麦やトウモロコシのできが悪くなっていたことだ。
当然、パンやパスタを作るための原料は不足し、食料の値段が上がり簡単に食料を買うことができなくなっていた。気象の悪化は、さらにブタや牛を育てるための飼料も不作にし、ブタや牛を痩せさせ増やすことができなくなっていたのだ。そして、それはフターク国ばかりではなく近隣の国も同じ事態に陥っていた。
フターク国で小麦が手に入らなくなったことを知ると、アンナは小麦粉を買って孤児院に送っていた。さらにベーコンやチーズなんかも手に入るとすぐに孤児院に送っていたのだ。それができたのは、ガンダ国にトロ神の小さな礼拝所があって、アンナたちが機会あるごとにそこで祈りを続けていたからだ。そのおかげで、ガンダ国は小麦粉などの穀物のできは悪くならなかったのだ。
もう一つアンナが、それをできた訳を記しておく。
アンナは、ガンダ国で暮せるようになると、すぐに孤児院にいるオバタに手紙を書いていた。それはオバタが離れていてもアンナを心配していることを知っていたからだ。二人は機会あるごとに手紙のやりとりを続け、アンナは自分が手にしたお金も定期的にオバタに送っていたのだった。
やがて、飢饉の影響を受けだした各国の王とともにそこに住む住民代表たちがフタ―ク国に集まりピイドール王に会見を申し込んだ。改修を終え新しくなったばかりの宮殿の大広間で話し合いが始まった。
ピイドールを前に各王を代表したドルマ王が、集められた協力金を使って、穀倉地帯を持っているリーズル国から小麦粉を買い入れて各国に配分してくれるように申し込んだのだ。
だが、ピイドールは、面白くなさそうな顔をし続けていた。今まで、フターク国王に向かってこのような要求をされたことがなかったからだ。
「何を馬鹿なことを言っている。一度、わしが決めたことを変えた試しはないわ」
「では、私たちの願いは聞いてもらえないわけですね」と、住民代表の一人が言っていた。
「くどいわ。何度も、同じことを言わすではない」
「もう一度お考えなおしをお願いできないでしょうか?」
「これで、終わりじゃ」
そう言って、ピイドールは玉座から立ち上がり、大広間から出て行った。
集まった者たちは王を追いかけようとしたが警護兵たちにさえぎられ捕まってしまった。そのうえ、捕らえた人たちを城の北側にある牢屋に入れてしまったのだ。
だが、夜になると、怒りに燃えた人たちは牢屋に押し入り、牢屋に入れられた人たちを助け出していた。その時から人々は暴徒とかし、城を破壊し城の中にある物は奪いさっていた。
その一つがインガ国で起こった。
これまで、ロズエルは、魔神サタンのために作った神殿のある部屋に、寝る間も惜しんでいりびたり、そこで両手を合わせて頭よりも高く掲げ、「サタン様。お姿をお見せください。私は、あなたの下僕でございます」と叫び続けていた。これがベルソ国の王から教わった魔神サタンを呼び出す方法だったからだ。それなのに、サタンを呼び出すことができないでいたのだ。
だが、この日は違った。神殿のある部屋に立ち並べたロウソクの炎が風もないのに揺れだしたのだ。そして、背筋が寒くなるような掠れた声が聞こえてきた。
「わしを呼ぶ者は誰だ?」
「私、ロズエルでございます」
「何故、わしを呼ぶ」
「サタン様のお力をお借りして、この世界の帝王となりたいと思っております。ぜひ、お力をお貸し願いたい」
サタンは笑った。その笑い声が、部屋じゅうに鳴り響いた。
「その前に、わしと血の契約を結び、わしが望む生贄をささげなければならんぞ」
「生贄とは?」
「すくなくとも月に一度以上若い娘を連れてきて神殿にささげよ。それをわしが食らうのじゃ」
その申し出に、思わずロズエルは息をのんだ。だが、その程度の事をしなければ、帝王にはなれないかもしれないとも思っていた。
「わかりました。生贄をお届けいたしましょう。あなた様との契約はどのようにすれば、よろしいのですかな」
「ならば、自分の腕に傷をつけ、血を出して、それを暗がりの中につき出して見よ」
言われるままに、ロズエルは腰につけていた短剣で自分の腕に傷をつけ、血をだした。その腕を暗がりの中に入れると、反対方向から灰色の腕がつき出されてきたのだ。その腕にも傷がつけられ、血がでていた。その腕が動き、ロズエルの腕と重ねると血がまじりあった。すると、腕が火で焼きつけられたような痛みを覚えたのだ。思わず、ロズエルは顔をゆがめていた。
暗がりから、笑い声がふたたび聞こえてきた。
「これで契約ができた。それでは、まず今月の生贄を忘れないことだ」
ロズエルはしばらくの間、暗闇の中に立ち続け、やがて口をゆがめて笑っていた。
二つ目は、突然、冷夏になり、秋が近づくと小麦やトウモロコシのできが悪くなっていたことだ。
当然、パンやパスタを作るための原料は不足し、食料の値段が上がり簡単に食料を買うことができなくなっていた。気象の悪化は、さらにブタや牛を育てるための飼料も不作にし、ブタや牛を痩せさせ増やすことができなくなっていたのだ。そして、それはフターク国ばかりではなく近隣の国も同じ事態に陥っていた。
フターク国で小麦が手に入らなくなったことを知ると、アンナは小麦粉を買って孤児院に送っていた。さらにベーコンやチーズなんかも手に入るとすぐに孤児院に送っていたのだ。それができたのは、ガンダ国にトロ神の小さな礼拝所があって、アンナたちが機会あるごとにそこで祈りを続けていたからだ。そのおかげで、ガンダ国は小麦粉などの穀物のできは悪くならなかったのだ。
もう一つアンナが、それをできた訳を記しておく。
アンナは、ガンダ国で暮せるようになると、すぐに孤児院にいるオバタに手紙を書いていた。それはオバタが離れていてもアンナを心配していることを知っていたからだ。二人は機会あるごとに手紙のやりとりを続け、アンナは自分が手にしたお金も定期的にオバタに送っていたのだった。
やがて、飢饉の影響を受けだした各国の王とともにそこに住む住民代表たちがフタ―ク国に集まりピイドール王に会見を申し込んだ。改修を終え新しくなったばかりの宮殿の大広間で話し合いが始まった。
ピイドールを前に各王を代表したドルマ王が、集められた協力金を使って、穀倉地帯を持っているリーズル国から小麦粉を買い入れて各国に配分してくれるように申し込んだのだ。
だが、ピイドールは、面白くなさそうな顔をし続けていた。今まで、フターク国王に向かってこのような要求をされたことがなかったからだ。
「何を馬鹿なことを言っている。一度、わしが決めたことを変えた試しはないわ」
「では、私たちの願いは聞いてもらえないわけですね」と、住民代表の一人が言っていた。
「くどいわ。何度も、同じことを言わすではない」
「もう一度お考えなおしをお願いできないでしょうか?」
「これで、終わりじゃ」
そう言って、ピイドールは玉座から立ち上がり、大広間から出て行った。
集まった者たちは王を追いかけようとしたが警護兵たちにさえぎられ捕まってしまった。そのうえ、捕らえた人たちを城の北側にある牢屋に入れてしまったのだ。
だが、夜になると、怒りに燃えた人たちは牢屋に押し入り、牢屋に入れられた人たちを助け出していた。その時から人々は暴徒とかし、城を破壊し城の中にある物は奪いさっていた。
あなたにおすすめの小説
「身分が違う」って言ったのはそっちでしょ?今さら泣いても遅いです
ほーみ
恋愛
「お前のような平民と、未来を共にできるわけがない」
その言葉を最後に、彼は私を冷たく突き放した。
──王都の学園で、私は彼と出会った。
彼の名はレオン・ハイゼル。王国の名門貴族家の嫡男であり、次期宰相候補とまで呼ばれる才子。
貧しい出自ながら奨学生として入学した私・リリアは、最初こそ彼に軽んじられていた。けれど成績で彼を追い抜き、共に課題をこなすうちに、いつしか惹かれ合うようになったのだ。
聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!?
元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。
お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!
にのまえ
恋愛
すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。
公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。
家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。
だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、
舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。
「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった
歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。
だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」
追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。
一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。
誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。
「その言葉は、もう翻訳できません」
現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。
和泉鷹央
恋愛
聖女は十年しか生きられない。
この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。
それは期間満了後に始まる約束だったけど――
一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。
二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。
ライラはこの契約を承諾する。
十年後。
あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。
そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。
こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。
そう思い、ライラは聖女をやめることにした。
他の投稿サイトでも掲載しています。
婚約破棄して泥を投げつけた元婚約者が「無能」と笑う中、光り輝く幼なじみの王子に掠め取られました。
ムラサメ
恋愛
「お前のような無能、我が家には不要だ。今すぐ消えろ!」
婚約者・エドワードのために身を粉にして尽くしてきたフィオナは、卒業パーティーの夜、雨の中に放り出される。
泥にまみれ、絶望に沈む彼女の前に現れたのは、かつての幼なじみであり、今や国中から愛される「黄金の王子」シリルだった。
「やっと見つけた。……ねえ、フィオナ。あんなゴミに君を傷つけさせるなんて、僕の落ち度だね」
汚れを厭わずフィオナを抱き上げたシリルは、彼女を自分の屋敷へと連れ帰る。
「自分には価値がない」と思い込むフィオナを、シリルは異常なまでの執着と甘い言葉で、とろけるように溺愛し始めて――。
一方で、フィオナを捨てたエドワードは気づいていなかった。
自分の手柄だと思っていた仕事も、領地の繁栄も、すべてはフィオナの才能によるものだったということに。
ボロボロになっていく元婚約者。美しく着飾られ、シリルの腕の中で幸せに微笑むフィオナ。
「僕の星を捨てた報い、たっぷりと受けてもらうよ?」
圧倒的な光を放つ幼なじみによる、最高に華やかな逆転劇がいま始まる!
【完結】真の聖女だった私は死にました。あなたたちのせいですよ?
時
恋愛
聖女として国のために尽くしてきたフローラ。
しかしその力を妬むカリアによって聖女の座を奪われ、顔に傷をつけられたあげく、さらには聖女を騙った罪で追放、彼女を称えていたはずの王太子からは婚約破棄を突きつけられてしまう。
追放が正式に決まった日、絶望した彼女はふたりの目の前で死ぬことを選んだ。
フローラの亡骸は水葬されるが、奇跡的に一命を取り留めていた彼女は船に乗っていた他国の騎士団長に拾われる。
ラピスと名乗った青年はフローラを気に入って自分の屋敷に居候させる。
記憶喪失と顔の傷を抱えながらも前向きに生きるフローラを周りは愛し、やがてその愛情に応えるように彼女のほんとうの力が目覚めて……。
一方、真の聖女がいなくなった国は滅びへと向かっていた──
※小説家になろうにも投稿しています
いいねやエール嬉しいです!ありがとうございます!
宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです
ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」
宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。
聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。
しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。
冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。