6 / 6
6
しおりを挟む
次の日から、朝は父が忠幸を学校まで車で送り、帰りは母が忠幸を迎えに行っていた。両親は必死に忠幸を守ろうとしていたのだが、忠幸は暗い顔をし続けていた。
忠幸がため池に飛び込もうとした日から一週間がすぎた。
テレビをつけていると、夕方のニュースをやっていた。
女性のアナウンサーが、ため池に子供の死体が浮かんでいたことを話していた。
その子の顔写真が映しだされた。
すぐに「博くんだ」と、忠幸が言った。
ぼくも両親も額にしわを作って、その写真を見た。
写真の男の子は、やさしい表情を浮かべていて、どこか忠幸に似ていた。
アナウンサーは「名前は山本博さん、三年前に学校でいじめにあって、行方不明になっていたのを家族でさがし続けていたそうです。警察の話では遺体は池のそこにはえていた樹木にからまって沈んでいたのが、樹木からはずれて浮かんできたのではないかと、言っております」と話していた。
「博くんも、ぼくと同じだったんだ。だから、ぼくが困っていたのを見て友だちになりにでてきてくれた。それなのに、追いだしてしまった」
忠幸は大声で泣きだしていた。
「悪かったな、忠幸。友だちは大切だ。友だちを作ることは、お父さんも賛成だよ」
その後、父は、友だちは生きている人にしてくれよなと、言おうとしていた。
だが、父が、それを言いだす前に、玄関でチャイムがなった。
すると、忠幸は涙をぬぐって笑顔になった。
「きっと博くんだよ」と言って、忠幸は立ち上がり居間からでて玄関に向かった。
やがて居間に近づいてくる忠幸と博の笑い声が聞こえてきた。
「馬鹿な、そんなことはあるわけがない」と言った父の声はふるえている。
ぼくは、強張った父と母の顔を見つめ続けていた。
忠幸がため池に飛び込もうとした日から一週間がすぎた。
テレビをつけていると、夕方のニュースをやっていた。
女性のアナウンサーが、ため池に子供の死体が浮かんでいたことを話していた。
その子の顔写真が映しだされた。
すぐに「博くんだ」と、忠幸が言った。
ぼくも両親も額にしわを作って、その写真を見た。
写真の男の子は、やさしい表情を浮かべていて、どこか忠幸に似ていた。
アナウンサーは「名前は山本博さん、三年前に学校でいじめにあって、行方不明になっていたのを家族でさがし続けていたそうです。警察の話では遺体は池のそこにはえていた樹木にからまって沈んでいたのが、樹木からはずれて浮かんできたのではないかと、言っております」と話していた。
「博くんも、ぼくと同じだったんだ。だから、ぼくが困っていたのを見て友だちになりにでてきてくれた。それなのに、追いだしてしまった」
忠幸は大声で泣きだしていた。
「悪かったな、忠幸。友だちは大切だ。友だちを作ることは、お父さんも賛成だよ」
その後、父は、友だちは生きている人にしてくれよなと、言おうとしていた。
だが、父が、それを言いだす前に、玄関でチャイムがなった。
すると、忠幸は涙をぬぐって笑顔になった。
「きっと博くんだよ」と言って、忠幸は立ち上がり居間からでて玄関に向かった。
やがて居間に近づいてくる忠幸と博の笑い声が聞こえてきた。
「馬鹿な、そんなことはあるわけがない」と言った父の声はふるえている。
ぼくは、強張った父と母の顔を見つめ続けていた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
合言葉はサンタクロース~小さな街の小さな奇跡
辻堂安古市
絵本
一人の少女が募金箱に入れた小さな善意が、次々と人から人へと繋がっていきます。
仕事仲間、家族、孤独な老人、そして子供たち。手渡された優しさは街中に広がり、いつしか一つの合言葉が生まれました。
雪の降る寒い街で、人々の心に温かな奇跡が降り積もっていく、優しさの連鎖の物語です。
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
風船タコさん会えるかな?
いもり〜ぬ(いもいもぶーにゃん)
絵本
おととの左手は、おいしいソースいいにおい、ホカホカたこ焼きの入った袋。
ボクの右手は、タコさん風船のひも。
タコさん風船、タコ焼き屋さんでくれはった。
タコさん風船、ボクの頭の上をぷっかぷっか気持ちよさそう。
風船タコさんがボクをちらっ、ちらっ。
そしてボクをじーっと見る。
ボクも風船タコさんを見る。
そして「タコさん、わかったで」とうなずく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる