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4初出陣
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次の日、シルビアたちは朝食をすますと冒険者となるための身支度を整えた。シルビアは少年風なズボンをはいた魔法師姿。ロダンは街の中を歩いている商人風な服装、トムはジーパンをはいて額に鉢巻をまき果物屋の店員姿だった。そんな姿が城の中にいる人たちに見られないためにも馬車にのって城から出たのだった。
魔獣ウサギがでるというタネダ牧場はこの国の西にある山沿いにあった。
馬車の御者はトムが務め、馬を牧場にむかって走らせた。馬車の中で、ロダンはシルビアとむかいあっていた。もしかしたら、魔獣退治に行くのには、優雅過ぎる出陣だったかもしれない。
しばらくして目的のタネダ牧場が見えてきた。牧場には青い草がおいしげり、たくさんの羊が群れをなして草を食べていた。
「青い空が広がり、いい日になりましたな」
ロダンが華やいだ言葉を述べていたがシルビアは落ち着かない気分だった。
馬車が牧場ぞいの道を進んでいくと、突然牧場の中の羊たちが声をあげて、ちりぢりになって逃げ出したのだ。
「おや、魔獣が現れましたぞ」
馬車が止まった。トムがたづなを引いて、馬を止めたのだ。シルビアは身震いをひとつすると、馬車の戸を開けてロダンより先におりていった。ここは、王女として弱い所を見せるわけにはいかない。シルビアは、すぐに牧場の柵をのりこえると、草地の中に入り込んでいった。
たかがウサギでしょう。怖いことなんかないわ。自分を勇気づけるために、シルビアは過去の記憶を呼び覚ましていた。
果歩だった頃に通っていた小学校のウサギ小屋でニンジンを食べていたウサギたちを思い出した。かわいらしくて、思わず抱きしめていた。
シルビアは牧場を見廻す。草の中に隠れていたウサギたちをみつけた。思ったように小さく可愛らしい。こんなのは、魔法を使わなくても退治してしまえる。そう思ったシルビアは剣をふりあげて、ウサギの上にふりおろそうとした。すると危機を感じたウサギは顔をあげて、鋭い視線をシルビアに送ってきた。
ウサギはたちまち膨れあがり、三倍の大きさになったのだ。ガオーという叫び声とともに、シルビアに飛びかかってきた。予想外の行動だった。シルビアは金縛りにあったように動くことができない。
このままでは、シルビアはウサギに噛みつかれてしまう。そう思った途端、シルビアの前に槍が突き出され、ウサギの動きを封じてくれた。
「シルビアさま、慌てずとも、ゆっくりと退治してくだされ」
槍を手にしていたのは、ロダンだった。だが、いつの間に、槍なんか持つことができたのだろうか?
自分の作った問いに答えをみつけられずにいるうちに、ウサギはふたたびシルビアに襲いかかってきた。すると、今度はムチが伸びてきて、ウサギの体に巻きついていた。ムチをふったのはトムだった。ムチはウサギの体じゅうに巻きつき、まるでウサギは縛りあげられたようだった。
「シルビアさま、剣で火を放ち、ウサギの心の臓を刺してくだされ」
ロダンにそう言われたので、シルビアは火を放つことを念じながら、ウサギの胸を剣で刺し貫いていた。
「お見事でござった」
ロダンは笑みを浮かべ喜んでくれた。トムはムチをゆるめて、手元にたばね腰につるしていた。
「これなら、ロダンに倒してもらった方が早かったのではないかしら?」
「いやいや、最後はシルビアさまに倒してもらわないと、シルビアさまの魔法ポイントがあがりませんぞ。それに火の魔法で魔獣を倒し続ければ、火力魔法のレベルをあげることにもなる」
ロダンがそう言っている間に、トムは短剣を出して、まずウサギの尾をきりとって腰にさげた麻袋に入れていた。その後、ウサギの体から皮をはぎ、肉と分けていた。それが終ると、肉と皮を抱えてロダンに近づいていった。すると、ロダンは腰に下げていた袋を開けた。トムはその中にウサギの皮と肉を放り込んだのだ。まるでそこが井戸でもあるかのように、袋の中に落ちていった。放り込まれたのに、袋は膨れ上がりもしない。元の大きさのままなのだ。ロダンは袋を閉めると前と同じように袋を腰にさげたままで、平然としている。
「どうして、ウサギの肉や皮が、そんな袋の中に入ってしまうのよ」
「これは魔法袋でござる。どんな物でも入れて持って歩けるし、入れてしまえば重さはなくなる。それに袋の中は城などの他の場所に通じるようにすることもできる」
「じゃ、先ほど出した槍は、この袋の中から出したのね」
「さよう。シルビアさま、もっとウサギを退治して、ポイントを貯めなければいけませんぞ。花火玉を飛ばして火をつけるためには、多くの魔法エネルギーを使うことになりますのでな」
シルビアとロダンが話をしているそばを、トムが走り出していた。トムが向かっている先に草の中に隠れていた新たなウサギをみつけたからだ。すばやく、トムはムチをふり、ウサギの体に巻き付け、動けなくしていた。
「シルビアさま、早く倒してください」
シルビアも走り出し、ムチで動けなくなったウサギの胸の上に火をともした剣をあて貫いていた。ウサギは叫び声をあげる。
「シルビアさま、ここにもウサギを見つけましたぞ」と、今度はロダンが槍でウサギを押さえつけている。ロダンの元にシルビアは走った。そして、シルビアはロダンが押さえているウサギの胸に火を起こした剣を突きたてた。
その間にトムはシルビアが倒したウサギの解体作業を行い、尾をとった後、皮と肉の塊にし、ロダンの所に運び、ロダンに魔法袋を開けさせると、その中にそれらを入れていた。
だんだんと慣れてきたシルビアは、草の中に隠れているウサギを自分だけで見つけるのができるようになった。ウサギの姿を見つけると走り出し、すぐにシルビアは剣をふりおろした。もはやロダンやトムの助けをかりてはいない。ウサギの素早い動きを見越して、シルビアも剣をすばやく動かすことが、それができるようになっていたのだ。
ウサギを新たに十体も倒すと、シルビアは荒い息をはいていた。そこにロダンやトムがやってきた。
「だいぶ倒したけれど、まだいるかしら?」
「いや、この辺りにはウサギの姿はもう見えませんね」と言ったトムは片手を目の前にかざして、周りを見廻していた。すぐにロダンは魔法力表示カードを出してシルビアの前にかざした。
「ウサギ一体を倒すと、魔法エネルギーが5ポイント増えますな。しかし、魔法を使うと魔法エネルギーは1ポイント消費する。つまり、差し引き4ポイント増えることになる。これまで二十一体倒しましたので84ポイント増えておりますぞ」
そう言いながらロダンは、魔法力ポイントが増えていることをシルビアに見せてくれた。
「効果あるのね。じゃもう少し頑張るわ。場所を変えましょう」
シルビアはふたたび剣を掴むと、姿を見せたウサギにむかって走り出した。シルビアに追いつくと、トムたちはシルビアが倒したウサギの解体と保存を行っていた。
やがて日が傾き出してきた。
「シルビアさま、そろそろ終わりにいたしませんか」
ロダンも、さすがに疲れた顔をしている。
「そうね。ウサギ、新たに三十五体は倒したわ。これで魔法力は140ポイント増えた。全部あわせれば、224ポイントになる。少しは溜まったわね」
「ごもっとも、その通りで」
トムは二人がいる牧場そばの道まで、馬車を動かしてきた。その後、二人が馬車にのると、まっすぐに城に帰った。
さすがに、シルビアも空腹を感じていた。無理もない。これほど動き廻ったのは、転生前に、きまぐれに参加した市のマラソン大会で走った時以来のことであった。
食事室に行って、シルビアは驚いた。その晩の夕食は、ウサギの丸焼きが出されていたからだ。さらにウサギの肉を使ったハンバーグ、ウサギ肉のスープ。すべてがウサギづくしだった。
シルビアは、ウサギをぱくぱくと食べながら、料理を運んでくれた侍女に聞いた。
「どうして、ウサギ料理ばかりなのかしら?」
「ロダンさまが食材置き場にたくさんのウサギを仕入れてくれました。それらは新鮮な肉でございましたので料理人たちが今晩の食材にウサギを使ったそうですよ。わたしたちも、ウサギを分けてもらっておりますので、自宅に持ち帰るつもりです」
そこでシルビアは気がついた。ロダンの魔法袋は城の食材置き場につながっていたのだ。だから、たくさんのウサギがそこに置かれた。そのおかげでシルビアも腹いっぱいウサギを食べることができたのだ。だが、こんな生活をし続けていたら、太ってしまうかもしれない。そんな考えが、シルビアの頭をよぎっていた。
魔獣ウサギがでるというタネダ牧場はこの国の西にある山沿いにあった。
馬車の御者はトムが務め、馬を牧場にむかって走らせた。馬車の中で、ロダンはシルビアとむかいあっていた。もしかしたら、魔獣退治に行くのには、優雅過ぎる出陣だったかもしれない。
しばらくして目的のタネダ牧場が見えてきた。牧場には青い草がおいしげり、たくさんの羊が群れをなして草を食べていた。
「青い空が広がり、いい日になりましたな」
ロダンが華やいだ言葉を述べていたがシルビアは落ち着かない気分だった。
馬車が牧場ぞいの道を進んでいくと、突然牧場の中の羊たちが声をあげて、ちりぢりになって逃げ出したのだ。
「おや、魔獣が現れましたぞ」
馬車が止まった。トムがたづなを引いて、馬を止めたのだ。シルビアは身震いをひとつすると、馬車の戸を開けてロダンより先におりていった。ここは、王女として弱い所を見せるわけにはいかない。シルビアは、すぐに牧場の柵をのりこえると、草地の中に入り込んでいった。
たかがウサギでしょう。怖いことなんかないわ。自分を勇気づけるために、シルビアは過去の記憶を呼び覚ましていた。
果歩だった頃に通っていた小学校のウサギ小屋でニンジンを食べていたウサギたちを思い出した。かわいらしくて、思わず抱きしめていた。
シルビアは牧場を見廻す。草の中に隠れていたウサギたちをみつけた。思ったように小さく可愛らしい。こんなのは、魔法を使わなくても退治してしまえる。そう思ったシルビアは剣をふりあげて、ウサギの上にふりおろそうとした。すると危機を感じたウサギは顔をあげて、鋭い視線をシルビアに送ってきた。
ウサギはたちまち膨れあがり、三倍の大きさになったのだ。ガオーという叫び声とともに、シルビアに飛びかかってきた。予想外の行動だった。シルビアは金縛りにあったように動くことができない。
このままでは、シルビアはウサギに噛みつかれてしまう。そう思った途端、シルビアの前に槍が突き出され、ウサギの動きを封じてくれた。
「シルビアさま、慌てずとも、ゆっくりと退治してくだされ」
槍を手にしていたのは、ロダンだった。だが、いつの間に、槍なんか持つことができたのだろうか?
自分の作った問いに答えをみつけられずにいるうちに、ウサギはふたたびシルビアに襲いかかってきた。すると、今度はムチが伸びてきて、ウサギの体に巻きついていた。ムチをふったのはトムだった。ムチはウサギの体じゅうに巻きつき、まるでウサギは縛りあげられたようだった。
「シルビアさま、剣で火を放ち、ウサギの心の臓を刺してくだされ」
ロダンにそう言われたので、シルビアは火を放つことを念じながら、ウサギの胸を剣で刺し貫いていた。
「お見事でござった」
ロダンは笑みを浮かべ喜んでくれた。トムはムチをゆるめて、手元にたばね腰につるしていた。
「これなら、ロダンに倒してもらった方が早かったのではないかしら?」
「いやいや、最後はシルビアさまに倒してもらわないと、シルビアさまの魔法ポイントがあがりませんぞ。それに火の魔法で魔獣を倒し続ければ、火力魔法のレベルをあげることにもなる」
ロダンがそう言っている間に、トムは短剣を出して、まずウサギの尾をきりとって腰にさげた麻袋に入れていた。その後、ウサギの体から皮をはぎ、肉と分けていた。それが終ると、肉と皮を抱えてロダンに近づいていった。すると、ロダンは腰に下げていた袋を開けた。トムはその中にウサギの皮と肉を放り込んだのだ。まるでそこが井戸でもあるかのように、袋の中に落ちていった。放り込まれたのに、袋は膨れ上がりもしない。元の大きさのままなのだ。ロダンは袋を閉めると前と同じように袋を腰にさげたままで、平然としている。
「どうして、ウサギの肉や皮が、そんな袋の中に入ってしまうのよ」
「これは魔法袋でござる。どんな物でも入れて持って歩けるし、入れてしまえば重さはなくなる。それに袋の中は城などの他の場所に通じるようにすることもできる」
「じゃ、先ほど出した槍は、この袋の中から出したのね」
「さよう。シルビアさま、もっとウサギを退治して、ポイントを貯めなければいけませんぞ。花火玉を飛ばして火をつけるためには、多くの魔法エネルギーを使うことになりますのでな」
シルビアとロダンが話をしているそばを、トムが走り出していた。トムが向かっている先に草の中に隠れていた新たなウサギをみつけたからだ。すばやく、トムはムチをふり、ウサギの体に巻き付け、動けなくしていた。
「シルビアさま、早く倒してください」
シルビアも走り出し、ムチで動けなくなったウサギの胸の上に火をともした剣をあて貫いていた。ウサギは叫び声をあげる。
「シルビアさま、ここにもウサギを見つけましたぞ」と、今度はロダンが槍でウサギを押さえつけている。ロダンの元にシルビアは走った。そして、シルビアはロダンが押さえているウサギの胸に火を起こした剣を突きたてた。
その間にトムはシルビアが倒したウサギの解体作業を行い、尾をとった後、皮と肉の塊にし、ロダンの所に運び、ロダンに魔法袋を開けさせると、その中にそれらを入れていた。
だんだんと慣れてきたシルビアは、草の中に隠れているウサギを自分だけで見つけるのができるようになった。ウサギの姿を見つけると走り出し、すぐにシルビアは剣をふりおろした。もはやロダンやトムの助けをかりてはいない。ウサギの素早い動きを見越して、シルビアも剣をすばやく動かすことが、それができるようになっていたのだ。
ウサギを新たに十体も倒すと、シルビアは荒い息をはいていた。そこにロダンやトムがやってきた。
「だいぶ倒したけれど、まだいるかしら?」
「いや、この辺りにはウサギの姿はもう見えませんね」と言ったトムは片手を目の前にかざして、周りを見廻していた。すぐにロダンは魔法力表示カードを出してシルビアの前にかざした。
「ウサギ一体を倒すと、魔法エネルギーが5ポイント増えますな。しかし、魔法を使うと魔法エネルギーは1ポイント消費する。つまり、差し引き4ポイント増えることになる。これまで二十一体倒しましたので84ポイント増えておりますぞ」
そう言いながらロダンは、魔法力ポイントが増えていることをシルビアに見せてくれた。
「効果あるのね。じゃもう少し頑張るわ。場所を変えましょう」
シルビアはふたたび剣を掴むと、姿を見せたウサギにむかって走り出した。シルビアに追いつくと、トムたちはシルビアが倒したウサギの解体と保存を行っていた。
やがて日が傾き出してきた。
「シルビアさま、そろそろ終わりにいたしませんか」
ロダンも、さすがに疲れた顔をしている。
「そうね。ウサギ、新たに三十五体は倒したわ。これで魔法力は140ポイント増えた。全部あわせれば、224ポイントになる。少しは溜まったわね」
「ごもっとも、その通りで」
トムは二人がいる牧場そばの道まで、馬車を動かしてきた。その後、二人が馬車にのると、まっすぐに城に帰った。
さすがに、シルビアも空腹を感じていた。無理もない。これほど動き廻ったのは、転生前に、きまぐれに参加した市のマラソン大会で走った時以来のことであった。
食事室に行って、シルビアは驚いた。その晩の夕食は、ウサギの丸焼きが出されていたからだ。さらにウサギの肉を使ったハンバーグ、ウサギ肉のスープ。すべてがウサギづくしだった。
シルビアは、ウサギをぱくぱくと食べながら、料理を運んでくれた侍女に聞いた。
「どうして、ウサギ料理ばかりなのかしら?」
「ロダンさまが食材置き場にたくさんのウサギを仕入れてくれました。それらは新鮮な肉でございましたので料理人たちが今晩の食材にウサギを使ったそうですよ。わたしたちも、ウサギを分けてもらっておりますので、自宅に持ち帰るつもりです」
そこでシルビアは気がついた。ロダンの魔法袋は城の食材置き場につながっていたのだ。だから、たくさんのウサギがそこに置かれた。そのおかげでシルビアも腹いっぱいウサギを食べることができたのだ。だが、こんな生活をし続けていたら、太ってしまうかもしれない。そんな考えが、シルビアの頭をよぎっていた。
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