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次の日、シルビアは朝日の明るさだけでは、起きることができなかった。体じゅうがだるく、節々が痛んでいたからだ。いつまでも起きないので侍女がやってきた。
「王女さま、もう起きられる時間にございますが」
「わかっているわよ」
必死に体を起こして立ちあがった。侍女たちは、シルビアが魔物退治していることをまるで知らない。シルビアが必死に起きあがると、侍女たちが集まりシルビアの着替えを手伝ってくれた。
せっかくドレスを着せてくれたのだが、それは無駄になってしまった。朝食を食べた後、ロダンやトムと共にふたたび着替えを行うために衣服室にいったからだ。それは、今日もそこで一介の魔法師キムトになるためだった。
着替えている途中で、腕が上がらずシルビアは顔をしかめてしまった。すると、ロダンは一粒の錠剤を右手にのせ、左手には水を入れたカップを持ってシルビアに近づいてきた。
「これを飲んでくだされ」
「なんですか、これは?」
「ポーションという生命力を増強させる薬ですぞ。とうぜん疲労回復にも役に立つ!」
言われるままには、シルビアは錠剤を口に入れ、カップの水で一気にのみ込んだ。するとどうだ。すぐに体に力がみなぎり、節々の痛みも消えていった。
「いかがでござるかな?」
「効いたわよ。これなら、すぐにでもウサギ退治にいけるわ」
ロダンはにやりと笑い、「その前にして置かなければならないことがございます」と言っていた。
「なにかしら? ともかく、でかけましょう」
シルビアたちは馬車にのって街にでて、何台もの馬車が置かれている広場にいった。賃貸馬車置場だ。小屋があって、そこに管理人が待機している。トムは、広場の空いている所に馬車をとめ、管理人と話をして銅貨一枚を支払っていた。その間、ロダンとともにシルビアは馬車からおりた。
「ウサギの肉は侍女たちにも分けて処分いたしましたが、皮はまだ溜まったままです。これからもウサギを捕り続けることを考えますと、皮も処分をして置かなければならないと思いましてな」
そう言ったロダンは先に立って歩き出した。木々に挟まれた通りをいくと、歩いている人も増え出し街並みが見えてきた。街には、食堂、果物屋、仕立屋もある。やがて皮製品販売と書かれた看板をかかげた店が見えてきた。ロダンは、その中に入り込んでいった。
シルビアには初めてのことなのでロダンのすることを見守るしかない。店頭には毛皮でできたマフラーやストールが置かれていた。店の中には、毛皮をなめしてつくったコートやガウンがいくつも吊りさげられている。
「へい、いらっしゃい」
目じりのさがった愛想のいい店員がでてきた。
「ウサギの皮なんだけど、引き取ってくれない?」
トムはロダンの魔法袋に手を入れて、ウサギの皮を次から次へと取り出して、カウンターの上にのせていた。
「旦那、ウサギばかりを持ち込む冒険者が多いんですよ。だから、高い値段では引き取れませんよ」
「じゃ、皮一枚でいくらなんだい?」と、ロダンが口をはさんで訊いていた。
「皮三枚で銅貨一枚だね」
「どうして、そんな安いのかね?」
「買い取っても、売り先がない。最近は毛皮服を買う人がいなくなってしまったからね。この値段でいやなら、持ち帰ってもらうしかありませんよ」
店員の顔から笑いが消え額に血管が浮きあがっている。
「そうか、ともかく五十六枚全部引き取ってもらうよ。これからもウサギを捕まえてくるつもりでいるからね。その時にも引き取ってもらわないと困る」
「へい、それじゃ銅貨十八枚。皮二枚はサービスとしてもらっておきます」と言って、ロダンにコインを渡していた。それを魔法袋に無造作にロダンは押し込んでいた。
シルビアも王女になったので、果歩だった時のようなお金を稼ぐことを考えなくてもよくなっている。果歩であった頃には、昼の弁当を買う時でも、三五〇円にするか、四〇〇円にするかで、悩んでしまっていた。その五〇円が積もれば、弁当をもう一食買うことができたからだ。
ウサギの皮を処分すると、ロダンたちは次にギルドの建物をめざした。
ギルドについた三人はすぐに受付カウンターにむかった。受付嬢を前にすると、三人は軽く会釈をした。
「言われた仕事は終えたつもりよ」
キムトとなのっているシルビアがそう言うと、トムはカウンターの上に麻袋からウサギの尾を紐でしばった物を出して載せた。これが魔獣退治の証拠品だ。受付嬢はウサギの尾を数えていた。
「確かに、ウサギの数は五十六ありますね」
その後、受付嬢は、魔法力測定カードを出して、キムトの顔にかざした。新人なので確かめていたのだ。
生命力 600ポイント
魔法エネルギー 417ポイント
使える魔法 攻撃魔法
火力 レベル2
水力 レベル1
風力 レベル1
雷力 レベル1
防御魔法
遮断 レベル100
「まちがいなく、ウサギ退治をされているようですね。次もウサギ退治を続けますか?」
「そうですね。しばらく続けたいと思っていますよ」
そう答えながら、シルビアはロダンの方に顔を向けた。ロダンは右手で髭をなぜながら、うなずいていた。シルビアが思ったように、ウサギ退治を続けて魔力ポイントをまずあげるべきだと思っているのだ。
「でも簡単なウサギ退治の仕事は、もう残ってはいませんよ」
そう言いながら受付嬢は銀貨一枚をキムトに手渡していた。その銀貨はウサギ退治代だった。
「じゃ、どんな仕事が残っているのかしら?」
「少し上になりますが、大ウサギ退治はどうでしょうか?」
「大ウサギって、どんな魔獣なんですか?」
「そうですね。前のウサギよりは大型で牛をも食べる魔獣ですよ。大型なので、倒した後のポイント数は10ポイントです。倒すために、魔法エネルギーは1ポイント使いますから、9ポイント手に入りますよ。どういたしますか?」
「倒しごたえがあって、いいかもしれませんな。それにポイントが一気に手に入る」
ロダンが賛成をしてくれた。さっそく、シルビアは、「それでいいわ」と、受付嬢に答えた。
「それでは、大ウサギで困っているダイジ牧場を紹介いたしますよ」
そう言った受付嬢は、シルビアに許可書を手渡していた。
「王女さま、もう起きられる時間にございますが」
「わかっているわよ」
必死に体を起こして立ちあがった。侍女たちは、シルビアが魔物退治していることをまるで知らない。シルビアが必死に起きあがると、侍女たちが集まりシルビアの着替えを手伝ってくれた。
せっかくドレスを着せてくれたのだが、それは無駄になってしまった。朝食を食べた後、ロダンやトムと共にふたたび着替えを行うために衣服室にいったからだ。それは、今日もそこで一介の魔法師キムトになるためだった。
着替えている途中で、腕が上がらずシルビアは顔をしかめてしまった。すると、ロダンは一粒の錠剤を右手にのせ、左手には水を入れたカップを持ってシルビアに近づいてきた。
「これを飲んでくだされ」
「なんですか、これは?」
「ポーションという生命力を増強させる薬ですぞ。とうぜん疲労回復にも役に立つ!」
言われるままには、シルビアは錠剤を口に入れ、カップの水で一気にのみ込んだ。するとどうだ。すぐに体に力がみなぎり、節々の痛みも消えていった。
「いかがでござるかな?」
「効いたわよ。これなら、すぐにでもウサギ退治にいけるわ」
ロダンはにやりと笑い、「その前にして置かなければならないことがございます」と言っていた。
「なにかしら? ともかく、でかけましょう」
シルビアたちは馬車にのって街にでて、何台もの馬車が置かれている広場にいった。賃貸馬車置場だ。小屋があって、そこに管理人が待機している。トムは、広場の空いている所に馬車をとめ、管理人と話をして銅貨一枚を支払っていた。その間、ロダンとともにシルビアは馬車からおりた。
「ウサギの肉は侍女たちにも分けて処分いたしましたが、皮はまだ溜まったままです。これからもウサギを捕り続けることを考えますと、皮も処分をして置かなければならないと思いましてな」
そう言ったロダンは先に立って歩き出した。木々に挟まれた通りをいくと、歩いている人も増え出し街並みが見えてきた。街には、食堂、果物屋、仕立屋もある。やがて皮製品販売と書かれた看板をかかげた店が見えてきた。ロダンは、その中に入り込んでいった。
シルビアには初めてのことなのでロダンのすることを見守るしかない。店頭には毛皮でできたマフラーやストールが置かれていた。店の中には、毛皮をなめしてつくったコートやガウンがいくつも吊りさげられている。
「へい、いらっしゃい」
目じりのさがった愛想のいい店員がでてきた。
「ウサギの皮なんだけど、引き取ってくれない?」
トムはロダンの魔法袋に手を入れて、ウサギの皮を次から次へと取り出して、カウンターの上にのせていた。
「旦那、ウサギばかりを持ち込む冒険者が多いんですよ。だから、高い値段では引き取れませんよ」
「じゃ、皮一枚でいくらなんだい?」と、ロダンが口をはさんで訊いていた。
「皮三枚で銅貨一枚だね」
「どうして、そんな安いのかね?」
「買い取っても、売り先がない。最近は毛皮服を買う人がいなくなってしまったからね。この値段でいやなら、持ち帰ってもらうしかありませんよ」
店員の顔から笑いが消え額に血管が浮きあがっている。
「そうか、ともかく五十六枚全部引き取ってもらうよ。これからもウサギを捕まえてくるつもりでいるからね。その時にも引き取ってもらわないと困る」
「へい、それじゃ銅貨十八枚。皮二枚はサービスとしてもらっておきます」と言って、ロダンにコインを渡していた。それを魔法袋に無造作にロダンは押し込んでいた。
シルビアも王女になったので、果歩だった時のようなお金を稼ぐことを考えなくてもよくなっている。果歩であった頃には、昼の弁当を買う時でも、三五〇円にするか、四〇〇円にするかで、悩んでしまっていた。その五〇円が積もれば、弁当をもう一食買うことができたからだ。
ウサギの皮を処分すると、ロダンたちは次にギルドの建物をめざした。
ギルドについた三人はすぐに受付カウンターにむかった。受付嬢を前にすると、三人は軽く会釈をした。
「言われた仕事は終えたつもりよ」
キムトとなのっているシルビアがそう言うと、トムはカウンターの上に麻袋からウサギの尾を紐でしばった物を出して載せた。これが魔獣退治の証拠品だ。受付嬢はウサギの尾を数えていた。
「確かに、ウサギの数は五十六ありますね」
その後、受付嬢は、魔法力測定カードを出して、キムトの顔にかざした。新人なので確かめていたのだ。
生命力 600ポイント
魔法エネルギー 417ポイント
使える魔法 攻撃魔法
火力 レベル2
水力 レベル1
風力 レベル1
雷力 レベル1
防御魔法
遮断 レベル100
「まちがいなく、ウサギ退治をされているようですね。次もウサギ退治を続けますか?」
「そうですね。しばらく続けたいと思っていますよ」
そう答えながら、シルビアはロダンの方に顔を向けた。ロダンは右手で髭をなぜながら、うなずいていた。シルビアが思ったように、ウサギ退治を続けて魔力ポイントをまずあげるべきだと思っているのだ。
「でも簡単なウサギ退治の仕事は、もう残ってはいませんよ」
そう言いながら受付嬢は銀貨一枚をキムトに手渡していた。その銀貨はウサギ退治代だった。
「じゃ、どんな仕事が残っているのかしら?」
「少し上になりますが、大ウサギ退治はどうでしょうか?」
「大ウサギって、どんな魔獣なんですか?」
「そうですね。前のウサギよりは大型で牛をも食べる魔獣ですよ。大型なので、倒した後のポイント数は10ポイントです。倒すために、魔法エネルギーは1ポイント使いますから、9ポイント手に入りますよ。どういたしますか?」
「倒しごたえがあって、いいかもしれませんな。それにポイントが一気に手に入る」
ロダンが賛成をしてくれた。さっそく、シルビアは、「それでいいわ」と、受付嬢に答えた。
「それでは、大ウサギで困っているダイジ牧場を紹介いたしますよ」
そう言った受付嬢は、シルビアに許可書を手渡していた。
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