魔法王女に転生した私は必ず勝ちますわ!

矢野 零時

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18お椀森

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 次の日、リカードはムガール帝国の兵士たちを砦から板台にのせて下におろした。おろされた兵士たちは隊列をくみ、お椀森にむかった。すぐに森の中でケンタウロスを相手に兵士たちの決戦が始まった。七日の間、ケンタウルスたちと兵士たちの戦いは続いていた。

 ムガール帝国の兵士たちが怪我をすれば、砦からおりて森そばに来ていた白魔法師のジョアンナが治療を行って、戦いに何度でも参加できるようにしてくれた。ケンタウルスたちも互角の戦いをしていたので、ケンタウルス側でも怪我の治療を行える白魔法師でいると思われたのだ。
 ともかく、ケンタウルスの数が減っていく様子がなかったのだが、突然、ケンタウルスたちが現れなくなった。
「もう少ししたら、白旗を掲げて、和平交渉の者が現れるのでないですかな」
 将軍ネグレスがリカードに楽観的なことを言っていた。

 だが、ネグレスは敵の正体をまるで判っていなかったのだ。
 その夜に現れたケンタウルスは、ムガール帝国の兵士と同じ服を着ていた。頭は兜をかぶっていたが顔は馬で、その代わり体は人になっていたのだ。かれらは、闇にじょうじて、ジョアンナを襲い出したのだ。白魔法師を倒すことが勝利への第一歩だと気づいたからだ。だがジョアンナには、剣士ロビンが側にいつもついている。彼女を襲おうとするケンタウルスは、次々とロビンに切り倒されていった。そのうちに兵士に化けているのが馬顔のケンタウルスだと知ると、ムーガル帝国の兵士たちと戦いが始まった。だが、馬顔のケンタウルスたちは、次から次へとやってくる。ジョアンナが兵士の治療をできないようにしたことと、戦う者の数を増していけば、勝てると判断したのに違いなかった。
 ロビンはジョアンナの先導をしていち早くその場を離れ北砦にジョアンナを連れ帰ったのだ。ケンタウルスたちを相手に戦っていたリカードやネグレスたちも敵数の多さに負け出し、ロビンたちの後を追うようにその場を離れ砦に戻るしかなかった。
  
 次の日には、馬顔のケンタウルスたちが群れをなして砦を襲ってきた。驚いたことに、ケンタウルスは空を飛んで襲ってきたのだ。それができたのは、彼らの背に羽がついていたからだ。兵士たちは、近づいてくるケンタウルスには弓で矢をはなち、砦の見張り台にきた者には剣で切りかかっていた。
 すぐにシルビアも見張り台の上に剣を持ってたち、飛んでくるケンタウルスに火柱を放っていた。火柱の威力は偉大だ。飛んでいたケンタウルスは次々と黒こげになって、地面に向かって落ちていった。ふたたび、砦の周りを飛んでいるケンタウルスはいなくなっていた。
 だが、ネグレスは強張った顔をリカードにむけていた。
「殿下、待っていては、今度はどんな変化をするかもわかりません。そうならないうちに、ケンタウルスを完全に倒してしまわないといけませんぞ」
「そうだな。すぐに兵士たちをお椀森にむけさせよう」
「今度は、私が、先陣を切らしていただきますわ」
 シルビアがそう言ったのは、このまま兵士をケンタウルスと戦わせると、多くの死者がでてしまうと思ったからだ。

 シルビアはロダンと一緒にホウキにのると、空を飛んでお椀森にむかった。
 森の中に入ると、羽のはえたケンタウルスは、たくさんいた。まるで胡麻をばらまいたようだった。それも砦に飛んできていた者よりも体が大きくなっていた。見ていると、彼らは大きな木の洞(ほら)から次々とでてくるのだ。
 彼らの前に、シルビアはホウキを降下させた。
 ホウキからおりたシルビアは、ロダンにホウキをあずけていた。
「ともかく、あんたらを倒さないと、戦争は終らないわ」
 シルビアは、腰に下げていた剣をぬいて念をかけながら、彼らに向けたのだ。剣からでた火柱が彼らを襲い、彼らは燃えて倒れていった。

 すると、木の洞から鉄の鎧をまとった巨大なケンタウルスが三体でてきた。すぐにシルビアは三体にむかって火柱を放った。
「なんだ。これは? 何の攻撃にも、なっていないぞ」と、巨大なケンタウロスの一体はあざけりの声をあげていた。彼らが着ていた鎧には炎を防ぐための守備魔法がかけられていたのだ。
 そう言われたシルビアは、今度は左手をあげ、左手にはめた指輪に念をかけた。この指輪はダランガ国に戻って魔道具室から持ってきていた物だった。その指輪は雷光を発し、ジクザクの光が三体のケンタウロスを襲っていた。たちまちケンタウロスは小刻みに震え倒れていった。

 やがて、リカードたちが兵士を連れて駆けつけてきてくれた。すると、三体のケンタウロスが守るように立っていた大木の洞から声が聞こえ出した。
「これで勝ったきでいるのか。わしがいる限り、ケンタウロスたちを何度でも呼び寄せることができるのだぞ」
 声が聞こえてきた大木の洞には、何かがいる。暗い中で三つの目が光った。
「なぜ、ムガール帝国に進撃をしてくる。お互いの血が流れるだけだろう。もうやめようではないか」
 リカードは声をかけた。
「異界の門が開いたのだ。わしらは、この地に進んでくるしかなかろう」
「異界の門? なんのことか解らんな。それに、負け戦をしているのは、今はどちらかな。負けている者が言うセリフではないと思うが」
「そんなことが言えるのわ。そこの女のせいじゃな」
 怒りの声がすると同時に洞から光が飛び出し、シルビアを襲った。すばやくリカードは聖剣をぬいてシルビアの前に立った。聖剣に当たって光は反射して洞の中にいる者にむかっていたのだ。その光にあたった者は、「ギャー」という叫び声をあげていた。光魔法は、まだシルビアが学ぶこともしていない未知の魔法だった。

 辺りの光が消えると、片手をあげて目をおさえているリカードを見ることになった。
「リカードさま、どうなされましたか?」
「いや、剣で光を受けた時に目を少しやられたようです。時間が経てばいつもと同じに見えると思いますよ」と言ってリカードは目をつぶったままで笑っていた。
「すぐにジョアンナの所にお連れをしなければ」
 シルビアはリカードの手をとると、すぐにホウキにのせ、しっかりと背に抱きついてもらった。そしてホウキで飛んで砦にいるジョアンナの元にむかった。すぐに手当をしてもらうためだ。 

 その間、ロダンとトムは武器を手にして木の洞をのぞきにいった。そこには、すでに息絶えた者がいた。体は間違いなく人であったが頭は馬だったのだ。額にはその真ん中にもう一つ目があり、耳そばに二本の牛角がついていた。まるでキメラだ。リカードに反射された光は、額にある三つ目を貫き、頭に穴を開けていたのだった。

 この後、ネグレスはリカードの了解を元にケンタウロスの支配者と思える者と洞のある大木を焼き払った。さらに河原から大きな石を運ばせ、大木のあった場所にのせて異世界からの門を封印したのだった。





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