刑事殺し・トラブル・ 抗争の渦

矢野 零時

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1悪夢

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 間違いなく、俺は夢の中にいた。
 それは本当に起きた出来事の記憶から始まった。
 俺は池の中に落ちた。すると、何が白いウナギの様な生き物が動いてきて、すでに傷ついていた腹にくい込んできだのだ。強い痛みで俺は気を失っていた。
 しばらくすると、俺の周りは暗い夜空に変わり、たくさんの星々に囲まれていたのだ。それも、見えないはずの真後ろの夜空までもが見えていた。人間である俺が同時に360度の光景を同時に見ることなどできるはずがない。俺は思わず、誰が見ているだろうと頭を廻した。 
 まるで、大きな窓から外を見るように立っている白い物が見え出したのだ。それは塑像のようにも見え、俺は前に廻り込み、貌をみた。白い顔は笑っていた。だが、眼はただの丸い点でしかなく、笑っている口の中の歯はすべて鋭くとがっていた。
 俺は出て行けとこの白い物に向かって言い、医者に相談をしてでも、この白い物から逃れなければならないと思った。すると、白い塑像は溶けて樹液のようになって俺に抱きついてきたのだ。
 一緒になったのだ。別になったら、もう生きていることなどできんぞ。
 白い物は、俺に向かってそう言った。
 途端に、夜空の星は流れ出した。白い物は宇宙を飛んでいたのだ。やがて、一つの星が見えだした。それに、どんどんと近づいて行く。地球だ。さらに周りの風景が変わり出していった。やがてビルが立ち並ぶ街並みに変わった。それは東京の街並み、俺の世界に帰ってきた。
 そう思った途端、俺は目覚めていた。
 はじかれたようにベッドで上体を起こした。背にも胸にも水を浴びたように汗をかいていた。俺はバスルームに行き、パジャマを脱いで洗濯機に投げ入れ、バスタオルをとるとそれで体を拭いた。
 窓から朝日が入ってきていた。洗面台の鏡を前に歯をみがいた。口の中に歯ブラシを入れているだけで空腹を覚えた。俺の空腹感は強烈だった。そう俺一人の食欲でなくなったからだ。俺は、俺に寄生した者、寄生体に必要な栄養分までも食べなければならなくなったのだ。
 俺は家を出ると、カフェケルンに行った。
 大友警察署に出勤する前による所だ。いつも座る場所に俺はすわった。そこは、目立たずに店の中にいることができる場所だった。やがて、ウエイトレスの前野勝代が近づいてきた。年齢は四十を超えて小太りだが、動きは機敏だった。
「いつものようにステーキの肉を用意はしてあるわよ」
「レアでいいから250グラムを二枚頼むよ。ライスはつけてくれ」
「でも、大丈夫なの?」と、勝代は心配をしてくれる。俺は刑事だが安月給取りにしか過ぎないからだ。それなのに、毎日ステーキの朝食をとり二千円近い金額を支払っている。だが、店としてはこんないい客はいないはずだ。
「まあ、しかたがないさ」と俺は諦めの言葉を口にする。
「ふ~ん」と、鼻を鳴らし、勝代は調理場のカウンターに注文票の伝票を置きに戻っていった。


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