異世界転生したオタク、本気で鬱展開無しの魔法少女を育てる〜悪の組織と魔法少女達を束ねたら、魔王軍の戦力を超えてました〜

ネリムZ

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やっほー僕様はルーぺ。ヤベーゾの新人だぞ★

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 「す、すみません。サイン様」

 「別に構いませんよ。そもそも初の試みで貴方も不安定。次の機会にまた頑張りなさい」

 「御意!」

 ハンサムを回収したサイン。
 そこに人影が忍び寄って来る。

 「いやはや。よーやく会えましたなサイン殿」

 「はぁ。毎回追いかけてくる影があるので、時間のある今日は会おうと思いましたが⋯⋯人間が我々に何の御用で?」

 「イヒヒ。僕様は人間では無いのだがね」

 そう言いながら、姿を隠していたローブを脱いだ。
 猫の耳に尻尾の生えた人⋯⋯獣人である。

 「ハンサム。先に拠点へ帰りなさい」

 「御意」

 「僕様と会話してくれてありがたい限りだよ本当本当」

 「それで? 露出狂が何の御用で」

 「それは同じじゃないか?」

 ローブの下は下着しか履いて無かった獣人の女は眼鏡をクイッと上げる。
 興味深そうに離れて行くハンサムを目で追っている。

 「いやはや。怪人と言う見るからに人工的に作られた種族に興味があってね」

 「まだまだ実験中ですけどね」

 ハンサムは魔獣を組み合わせて作られた怪人である。その方法は漫画からサシャが閃き完成させた。
 しかし、荒削りであり不安定。

 「それで、御用は?」

 「単刀直入に言おう。僕様を仲間に加えて欲しい」

 「何故?」

 その言葉を待っていた、そう言いたげにニヤリと笑う。
 天を見上げ、神に訴えるようにサインに向かい目的を叫ぶ。

 「僕様は種族の神秘を知りたい。何故獣人は人間より五感や身体能力が優れている! 何故人間は周囲の不可視なマナを操れる! 何故魔族は自らマナを回復でき扱う事ができる!」

 「それが世界のルールです」

 「その秩序ルールを僕様は解き明かしたいのだよ! 何故人間の体内にあるマナは再生しない! 何故獣人はマナに鈍い。何故! 何故! どうして種族でこれ程までの違いが存在する!」

 サインは理解する。
 コイツはヤベー奴だと。

 「僕様はきっと役に立てる。僕様はただ知りたいんだ。この不合理な世界を。そして解き明かしたい。可能ならバランスを整えたい」

 「バランス?」

 「全ての種族の長所を手に入れた完全無欠の種族を作り出し世界をそれらで埋めつくしたい。種族的個性の平等化が僕様の夢! 怪人はその手掛かりになりそうなんだ。どうだろう。僕様は裏切らないし全面的に協力すると誓おう」

 サインは考える。
 露出狂の変態でヤベー奴を仲間に加えるべきかどうか。
 相手は自分達を完全に利用する気でいる。そんな相手を懐に入れて良いのか。

 「我が主に面会する機会を与える。連絡先を寄越しなさい」

 「イヒヒ。感謝するよ」

 利用できるなら利用しよう。
 裏切るならその時に潰せば良い。
 サインはそう結論付けた。

 女は話が一段落した事を確認して質問する。

 「それとサイン殿。君は人間かい?」

 「当然です」

 「⋯⋯まぁ、そう言う事にしておこう。覚えて欲しいが、獣人は人間より直感が数十倍も優れている。種族の偽装も簡単に看破できるのだよ」

 「はぁ。そうですか」

 サインは呆れながら言葉を聞き流した。
 別れる前に一応、質問する。

 「貴女にとって私は何に思えますか?」

 「⋯⋯さぁ? 混ざり者、としか言えないね」

 「混ざり者?」

 「僕様の知らない気配⋯⋯邪悪な気配⋯⋯伝説程度の種族だが悪魔⋯⋯気高くも威圧のある圧倒的な強者の気配⋯⋯全ての頂点に立ちうる覇気⋯⋯龍種。そして最後に異なるマナのオーラ⋯⋯妖精よりも濃いから精霊? しかし人間に近い⋯⋯英霊か? 僕様の直感と知識ではこう認識しているよ」

 「くだらないですね」

 「うん。僕様も言っていて思ったよ」

 悪魔は魔界に住んでいると言われている伝説上の種族である。
 その正体は不明で眉唾物の噂話ばかり。

 龍種は長命でマナを使わずとも破壊と殺戮が可能なパワーを持ち、自身のマナが自然回復し操れる。
 当然のように空気中のマナも操れる。
 圧倒的な強さで一部の龍種は動く災害と呼ばれている。
 魔獣とはまた違う存在。

 英霊とは人間が精霊化した種族である。
 人間の枠を超えた人間である。

 「この3つが交わる事は無いだろうし、悪魔なんて存在も怪しい。だから僕様は君に興味が湧いたよ。研究させてくれよ。僕様は研究者でもあるのでね」

 「構いませんよ。我らの利になるのなら」

 「そうかいそうかい。仲良くなりたいから最後の質問⋯⋯君の目的は何かね? ヤベーゾにいる理由は?」

 夢の共有。仲良くなるための1歩。
 サインは迷う事無く語る。

 「我が主を支えるのが最重要目的⋯⋯次に重要な目的は⋯⋯魔王軍と言うゴミをこの世界から駆除する事」

 自分に向けられた訳でも無いのに、絶望の沼に入ってしまう程の殺意に喉を鳴らした。

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 「⋯⋯」

 「初めましてアークくん」

 「殺すぞッ!」

 「ごめんって。アーク様。この度、ヤベーゾに所属したく面接に来ました。ルーペって名だよイヒヒ。ある禁忌を犯して業界から追放された医者兼、世界の種族について研究する研究者だった者だよ」

 その禁忌とやらが気になるが、聞かない方が良いのだろう。
 まさかサシャがこんな見るからに頭のおかしな人を連れてくるとは思わなかった。

 腰とショートヘアを左右に揺らしながら僕の返答を待っている。
 
 サシャの報告によれば、魔法少女の育成に関わっている事実は教えていないらしい。
 もしもこの情報が公開されたら大変だからね。信頼関係の構築が先か。

 「ねね。僕様はここで雇ってくれるのかい? 怪人なんて言う人工的種族を作っている君達なら僕様の考えが理解できるはずだけどね」

 いやいや、理解できないって。
 この子の目指す世界は個性の無い世界だ。
 そんな普遍かつ退屈な世界を僕は求めていない。

 人間なら人間らしい思想と戦い方を持って欲しいし、他の種族にも言える事だ。
 バランスは取られているのに、そのバランスを崩して新たなバランスを作るなんて僕の望む世界じゃない。

 ここは丁寧にお断りしよう。
 彼女の思想は彼女一人で追いかけて貰おう。

 「にしても⋯⋯素晴らしい場所だねここは」

 「え?」

 「構造的に最初は意味も無く用意された物や無駄な広さだったと思うけど⋯⋯徐々に改善しているのが分かる。一番分かりやすいのは怪人が入っているあのカプセルだね。自動的に外のマナを吸収して回復系の魔法に自動で変換、それを水に溶け込ます事で汚れを洗い落としながら回復している⋯⋯違うな」

 ルーペは深く観察して結論を出した。

 「液体にする事で傷口に入れさせ⋯⋯内部から丁寧に回復させているのか⋯⋯これなら後遺症が残る心配も無いし、水に溶かす事でマナの消費を減らしているね。呼吸用の機械も後付けか?」

 何も情報を渡していないのにしっかりと詳細を当てて来る。
 天才⋯⋯そう言う他無いだろう。
 彼女なら僕が求めるような怪人や怪獣を作るのはお手の物かもしれない。

 サシャが配合技術を完成させたが、完璧では無い。
 怪人ハンサムもまだまだ不安定。

 ルーペと言う化学班が加われば組織が安定するか?
 兵士を作り出すマッドサイエンティスト、戦闘と躾の得意統括者。

 「ん~」

 「そう言えば⋯⋯怪人の案はアーク様が担当しているのかい?」

 「どうしてだ?」

 「何。異型へのこだわりを感じてね。ハンサムに関してはアンバランスな種族の組み合わせだが違和感を無くすような努力を感じたのだよ。この怪人はこうあるべきだと、叫んでいるように感じた」

 心の中で暖かい何かが広がって行くのを感じた。
 ただの人型犬では味気ないと思い、強そうな爬虫類と組み合わせた。
 毛のある顔と鱗のある身体。

 違和感はあるが装備で誤魔化した。
 性能では無い。見た目重視だった。
 彼女は⋯⋯それに気づいてくれた。

 「そうだ。僕様の目的の先を言っていなかったね」

 「え?」

 「僕様は種族的個性を均等化させ、差別が起こらないようにと考えている。魔族は自然のマナを操れないから穢れた存在、人間は自己のマナを回復できないから軟弱な存在⋯⋯そんな根底にある差別意識を無くしたいのさ」

 僕は彼女を誤解していたのかもしれない。
 理解されない価値観を持ちながらも理解されそうな思想を持っている。

 「そのためならどんな事だってするさ。どんな犠牲だって払ってみせよう。アーク様が望むならば、貧相だが僕様の身体を貪ってくれても構わない」

 「⋯⋯ガリっ!」

 サシャの奥歯を噛み締める音が聞こえた。

 「素晴らしい」

 「アーク様っ!?」

 サシャの驚く声が聞こえる。

 実に素晴らしい。
 目的のためなら全てを差し出せる覚悟と精神力。
 正義を語る面々からは絶対に理解されない価値観と倫理観。
 欠如した道徳心。ついでに羞恥心。

 悪の組織にとって、素晴らしい素質と才能を秘めているでは無いか。
 これ程の逸材が自ら、こちらの世界へ足を踏み入れようとしている。
 魔法少女も一人増えたのなら、幹部も一人増えて良いだろう。

 「良かろう。我が組織に入るが良い。我の知識と技術を提供しよう」

 「感謝するよアーク様。⋯⋯僕様の身体そんなに魅力的だったかな? 少し照れるな」

 クネクネする彼女に速攻でキッパリ言葉を放つ。

 「それは違う」

 「当然です。それ以上下品な言葉でアーク様の耳を腐らせるなら⋯⋯永遠に口を開けなくします」

 「冗談だよ。怖いな二人共」

 「あ、僕も?」

 露出狂マッドサイエンティスト、ルーペが僕らの共犯者となった。

 彼女が望み目指す世界は種族としてのバランスを平面上にし、差別の無い世界だ。
 そのためならどんな事でもやる覚悟を持っている。
 それが悪行だろうが、ルーペはやるのだろう。

 「今日からが楽しみで仕方ないよ。サイン殿、アーク様。よろしく頼むね。イーヒッヒッヒ」

 「存分に研究し生命の冒涜を繰り返すが良い。この場は無法地帯⋯⋯如何なる正義も我らの闇に届かぬ」

 「素材となる魔族が欲しいならばお声をかけてください。近場の魔王軍魔族から採取して来ます」

 「僕様が言うのもアレだが、君達はかなりやばい人達のようだ」
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