異世界転生したオタク、本気で鬱展開無しの魔法少女を育てる〜悪の組織と魔法少女達を束ねたら、魔王軍の戦力を超えてました〜

ネリムZ

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魔法少女の部活動

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 私とルーちゃんは校庭の草むしりを部活動としていた。
 小さい頃から鍛えている私は体力があり長期の活動が可能だが、ルーちゃんは学園に入る前までは魔法の訓練を基本にしていたので疲れた様子。

 「そろそろ休む?」

 「アナが平気そうなのに、ワタクシだけ休む訳にいきませんわ」

 そう言ってから再び草に手を伸ばす。
 頬から垂れる汗を拭きながら。

 ルーちゃんもセーギさんの訓練を受けてるし、どんどんと体力を増やすだろう。
 今は、少しでも彼女の負担を楽にするために私が頑張ろう。

 そう奮起したタイミングで気配を薄くした1人の先輩が話しかけに来た。
 男の人である。
 私達がきちんと存在を認識していた事に少し動揺を見せたが、特にそこへ触れる事無く話し出す。

 「俺はスパーイ。今後輩のとこへ順に回ってる2年だ。よろしく頼むな」

 「「よろしくお願いします」」

 私達は頭を下げる。
 身長は2メートルくらいありそうな程にでかく、強面の顔だ。
 さらに制服がピチピチで今でもはち切れそうな程に浮かび上がる筋肉。
 騎士を目指す人のようだ。

 「ははは。そんなに俺の体が気になるか?」

 「あ、いえ。すみません。凄い筋肉ですね」

 「これでも鍛えてるからな。もしも魔法を得意とする相手と戦う時、距離を潰して戦うのは効果的だ。その時必要なのは断然フィジカル!」

 フィジカル⋯⋯確かに。
 セーギさんも「魔法は間合いを詰められたら戦士の方が強いのがセオリーだ」と言っていた。
 だからこそ格闘技の訓練も行っている。

 「フィジカル⋯⋯」

 ルーちゃんが拳を握り、見詰めている。

 「ルーちゃん。スパーイ先輩を目指すのは私、反対だよ?」

 「本人を前にして良く言うな」

 「いえ。そこまではワタクシも求めてませんわよ。ただ⋯⋯彼に近づくならやはり筋力は必要かと思っただけですわ」

 セーギさんの事を言っているのだろう。

 私達の世界に入る前にスパーイ先輩が本題を言う。

 「草むしりに念動力を使うように勧めているんだ。やってるか?」

 「念動力をですか?」

 「そうだ。収束力や魔法力は使わない、純粋な念動力だけで草を取る。今やってみせるから、見て欲しい」

 スパーイ先輩はマナを操り土の中から10本の雑草を抜き取った。
 それを空に浮かべたまま籠の中へ運んだ。

 「「お~」」

 パチパチと2人で拍手を送る。

 「いやはや照れるな」

 拳で戦いそうな体なのに凄い念動力だ。
 他の先輩も遠巻きで見ているが、1つ2つで限界らしい。
 この先輩は2年生にしてかなりの実力者と言える。
 なんで慈善活動団体部に?

 「2人ともやってみてくれ」

 「「はい!」」

 まずは私がやってみる。
 4本同時に抜き取る事は成功した。土の中の根っこごと抜くために地中にマナを流す必要があり、それがとても難しい。
 針に糸を通すよりも難しい。
 抜くのが限界で、籠まで運ぶ事はできなかった。

 「難しい⋯⋯」

 「凄いな。先輩方でも4本同時をできる人は中々居ない。小さい頃からマナに触れて来たんだな」

 「え、あ、は、はい?」

 でも私よりも後からマナに触れたルーちゃんはもっと凄いだろう。
 彼女には才能がある。

 「それではワタクシも」

 ルーちゃんは同時に5本抜いた後に籠まで運んだ。
 この光景には他の先輩や同級生も手を止め見惚れていた。
 1年生でこの実力は無く、コソコソと「なんでこの部活に?」と聞こえて来る。

 私も自分のように嬉しくて少し笑みが零れた。

 「なんで笑ってますの?」

 「えへへ。嬉しくて」

 「自分が褒められている訳でもあるまいし、変ですわよ」

 「そうかな?」

 再び私達だけの世界に入りそうなところをスパーイ先輩が止める。

 「まぁこのように、清掃活動をしながら念動力を鍛える事も並行している。念動力を鍛えれば遠くの物を引き寄せる事もできるし、何かと便利だ」

 「私は魔法を使うためにマナを操るだけかと思ってたんですが、単体で使う事もあるんですね」

 「もうすぐ学習すると思うが、元々『念動力』と言う名前はマナで物質を操れる事から来ているんだ。念じれば動く力としてな。テストで説明しろ的な問題も来るし覚えておくと良い」

 「「ありがとうございます!」」

 「感謝は要らんよ。俺も去年は先輩にこうやって優しくして貰ったしな。伝統だ伝統。それじゃ、楽しく校庭を少しでも綺麗にしながら己を磨いてくれ」

 「「はい!」」

 優しい笑顔を浮かべながら手を振り、自分の持ち場へ消えて行く。
 気配の消し方や常に間合いの警戒を怠らないところはどこかセーギさんに似ていた。
 セーギさんの場合は近寄られても気づかないし、隙も全くないけど。

 「良い先輩が居て良かったね。良い部活だよ」

 「そうね。でも、常に自分に攻撃が来る可能性を考慮している気がして、ワタクシはあまり好きになれませんわ」

 「確かに学園内にしては警戒心強いよね。騎士家の生まれなのかな?」

 努力だけでは到達できないと思われるムッキムキな体してるし。
 まぁ、いくら考えても仕方ないだろう。

 常に自分の周りを警戒する事は決して悪い事じゃないし、間合いの管理も大切だろう。
 実際、気配を消しているスパーイ先輩の接近に気づけたのも会話しながら私達も周囲を警戒していたからだ。
 
 警戒しながら肩肘張らず楽にする訓練をセーギさんに受けている。
 魔法少女である事をバレないため、ヤベーゾが動いてもすぐに対応するため。
 日常を普通に過ごしながらも、私達は常に悪意や敵意、危険に意識を向けている。

 「アナは今の男、戦ってたら勝てると思う?」

 「正直今のままじゃ無理かな。念動力では圧倒的な差を感じたし、フィジカルではまず勝てない。力を利用して相手を投げる技も教えては貰ってるけど、どこまで通用するかどうか」

 あの先輩強いし。
 もしも会話中に攻撃を仕掛けられたらすぐに負ける。

 「今のまま、ね。つまりジャベリンなら勝てるって事ね」

 「うっ。痛いとこ突くね」

 ステッキと魔法少女の衣装があれば、負ける気はしない。
 それだけの自信は持っているつもりだ。

 「ふふ。ワタクシも同意見よ。セーギ様のお力を借りずとも学園の生徒全員倒せるレベルに強くならなくてはね」

 「そうだね!」

 まずは草むしりで念動力を鍛えるぞ!


 ──私達は知らなかった。裏で動いている計画を。
 そして私は再会する。強くなろうと心の奥底から決意したあの日。
 その日に出会った強者と。
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