ギルドを追放された俺、傭兵ギルドのエリートに拾われる〜元ギルドは崩壊したらしい〜

ネリムZ

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高級な特別報酬

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 「ミネス嬢。ようやく戻られましたか」

 「はい。少々のんびりし過ぎてしまいました。申し訳ございません」

 「いえそんな。どうぞ、お座りください」

 騎士1人が早々に帰って来たミネスに声を掛けた。
 先手を取られたと悔しい思いを顔に出す他の3人の騎士達。
 自分に向けられた想いが好意的なのは分かりつつも、今はその感情をしまっておいて欲しいと思うミネス。

 だからだろう。
 ミネスは誰にも気づかれないように小さく溜息を漏らす。
 まだ商人としての仕事をしたいと思いながらも、父親の期待には応えたい女の子。
 彼女の苦悩は誰にも届かないのだろうか。

 パーティも大詰めとなりつつある。
 父に対しての挨拶も終わり、貴族達はミネスの反応を伺う。
 誰もが分かっていた。このパーティで婚約者が決まるのだと。

 トローネ伯爵はミネスの気持ちを尊重しているつもりでいる。
 ミネスが選ぶ相手に嫁入りさせようとしているのだ。

 「お飲み物を」

 「⋯⋯あ、ありがとうございます」

 使用人の服装に身を包んだ男の人から飲み物を貰うミネス。

 「長時間の護衛お疲れ様です。喉が渇いていませんか? どうぞ」

 「すまない」

 飲み物を渡し終えた使用人は騎士達の後ろに下がり、グラスの回収もすぐに行えるように待機する。

 騎士達は受け取ったすぐに飲み物を喉に通す。
 かなり喉が渇いていたのだろう。

 ミネスは手で鼻を隠しながらスンスンと揺らしてから、ゆっくりと上品にグラスに口をつけ、喉に通して行く。

 この流れだけでも、ミネスが婚約者候補に向ける好感度は下がって行く。
 それに気づかぬ恋する青年達。

 「トローネ伯爵」

 真正面から白い髭の生えた老人がやって来る。
 ミネスは見た事の無い顔に少し警戒心を向けるが、老人なのでその警戒心は高くなかった。
 自分の知らない貴族だと思い、視線を明後日の方に向ける。

 ⋯⋯それが良くなかった。

 「お主は⋯⋯」

 知らぬ顔はトローネ伯爵本人も同じ。
 ミネスは警戒心を上げるが遅い。
 老人は顔をべりっと剥がし本来の20~25と思われる顔つきの男の顔を露わにする。

 「ッ!」

 「さらばだ!」

 「⋯⋯いやっ」

 簡単な変装に気づけず、隠し持たれたナイフがミネスに向かう。
 騎士達の反応は遅れる。剣に手を伸ばす頃にはミネスにナイフが届いている。
 老人だからと微かな警戒心すら向けなかった騎士の未熟さ。

 ミネスの護衛を若き騎士だけに任せたトローネ伯爵は永遠の後悔に苛まれるだろう。
 もしも、ミネスが誰にも護られなかったら。

 「3m!」

 ◆◆◆

 俺は池を離れたすぐにフィリアへ連絡を取った。
 変装してミネスの傍で彼女を護りたいと思ったからだ。ああ言う優秀な人は確実に生きているべきだ。
 フィリアは俺の意志を汲み取って、変装を得意とする仲間を用意してくれた。

 化粧や衣装などを完璧に変えた。
 これでバレないだろう。
 後は声、歩き方の癖などを俺が意識的に切り替える。
 ミネス相手ではその辺りを気をつけないと確実にバレる。

 「俺達の依頼はパーティを守る事だ。これが婚約パーティと言うなら、お姫様を守るのが俺達の仕事となる」

 俺は仕事は出来る限り最善の手を尽くしたいと思っている。
 使用人のフリして、俺の有効射程である3m以内にミネスを入れる。

 その時が来ない事を祈りながらパーティが終わるのを待っていたが⋯⋯その時は来てしまった。
 変装した暗殺者がナイフと共にミネスに接近する。
 誰も間に合わない距離と完璧な不意打ち。

 ⋯⋯俺がいなければ。

 「3m!」

 俺は殴る動作をすると、顔面と腹を同時に殴れられた衝撃に襲われ暗殺者は吹き飛ぶ。
 机にぶつかり料理をぶちまけ、床を転がる。

 俺はミネスの前に守るように立つ。
 敵の数は多い。時間は掛けたくない。

 「⋯⋯へ?」

 目を瞑っていたミネスがゆっくりと瞼を上げ、俺を見る。
 変装はしているが、装備している魔法石で誰か判別される。

 「どう⋯⋯して」

 目を丸くして驚くミネス。

 「それが俺の仕事だ⋯⋯怖かったか?」

 「えっ?」

 「どんな戦士も覚悟は出来ていると口にする。だが、その時が来たから皆怖いんだ。戦士は恐怖に打ち勝つために戦う。⋯⋯だが、貴女は戦士じゃない」

 「⋯⋯」

 ミネスは体を震わせる。

 「こわ、かった」

 絞り出した声。

 「どんな人も死にたくは無いものさ。その反応は当たり前だ」

 「怖かったです。⋯⋯死に、たくない」

 当たり前だ。

 「カグラ様⋯⋯ワタクシを⋯⋯守ってください」

 「当たり前だ。もう恐れる事は無い。怖がる必要は無い。ここには強い人が沢山いるだから」

 俺はチラッと、目尻を赤くしたミネスに視線を送る。

 「俺の3m以内に居てくれ。そしたら、絶対に守ってみせる」

 「⋯⋯はい。約束⋯⋯です」

 「納得した」

 俺はフィリアから他の仲間経由で受け取ったハンドガンを取り出す。
 コイツにはカラフルな水が詰まった弾が入っている。

 「失敗は許されないな」

 「⋯⋯待て待て! いきなり出て来てなんなんだお前は!」

 「俺は依頼を受けた傭兵⋯⋯」

 「傭兵風情がこの壇上に立つな! ここは貴族だけに許された主催者席だぞ!」

 ミネスの他護衛騎士全員が目の前の騎士と同じ意見らしい。頭を上下に動かしている。
 プライドだけは高い⋯⋯俺の嫌いなタイプの騎士だ。

 そんな騎士様を背後から狙っている銃を持った男がいた。
 俺への怒りで全く気づいていない。
 ⋯⋯仕方ないか。

 「3m」

 俺はナイフを適当に動かし、放たれた弾を完璧のタイミングで切り裂いた。

 「ッ!」

 小さな驚きを見つつ、俺は騎士を投げ飛ばし剣を奪い取る。

 「借りるぞ」

 「お前っ!」

 「らっ!」

 俺は騎士から借りた剣を投げ飛ばして牽制し、赤色の水が入った弾を命中させた。
 これでマーキング完了⋯⋯おっと。

 「面倒な」

 銃が無力と判断した暗殺者は5人の仲間を増やした。トローネ伯爵達を囲むように立ち塞がる。

 「騎士なら少しでも良いから戦ってくれ」

 「ッ! 言われるまでもない」

 剣を抜いた3人の騎士。
 その3人はバラバラの動きで暗殺者と戦う。
 正直かなり危ないし、たったの2人に押されている。
 俺が投げ飛ばした騎士は目を回して座り込んでいる。

 彼らを助けるとなると⋯⋯許された時間は10秒も無い。
 出来るか出来ないかと言われたら⋯⋯出来るな。

 「肉弾戦は得意とするところだ」

 トローネ伯爵もターゲットなのか、3人の暗殺者はそちらに向かった。
 残った1人が俺の方へやって来る。

 ありがたい限りだ。
 伯爵もミネスも俺の有効射程内。
 つまり、暗殺者全員に同時攻撃が可能だ。

 しかも、暗殺者達の魔法抵抗力はそこまで高くない。
 だったら最速で終わる。
 集中し、相手の動きから座標を予測、そして止めるイメージ。

 「3m」

 キュッ、軽く手を握ると奴らは同時に倒れる。中には泡を吹いて倒れる者もいる。
 直接心臓を握って止めた。
 死なないように加減はしたが、かなり危ないだろうか?

 「残り2人」

 俺は騎士達の方に向かって走る。暗殺者を射程内に入れる。
 プライドの高いコイツらは後々うるさいだろうが、今は構ってられない。
 集中している暇も無いので、一撃かつ雑な動きで終わらせる。

 「3m」

 手を床に向けて強く伸ばす。
 動き回っていた2人の暗殺者が床に頭を突っ込んで動かなくなる。

 俺は再び会場を見渡せる正面に立って暗殺者と思われる奴ら全員にマーキングして行く。
 百発百中は当たり前⋯⋯逃げて行く暗殺者にも素早く放つ。

 「多いんだよ本当に」

 「⋯⋯多い?」

 落ち着きを取り戻したミネスが俺の悪態を拾った。
 そして彼女はあろう事か騒がしくなった会場の観察に入った。
 敵への警戒心が無い⋯⋯いや、それは俺への信頼の証か?

 その信頼は裏切れないな。

 「これで最後だ!」

 俺は叫んだ。
 数が多く、広い会場では全員捕まえる事は出来ない。
 会場の広さを知っている俺だから尚更限界が分かる。

 フィリアは言っていた。
 出来ないなら仲間に頼れと。

 「オーケー良くやったわねカグラ!」

 ビリビリ⋯⋯暗殺者達のマーキングされた箇所から電気が迸る。

 「室内だと私の魔法はかなり制限される⋯⋯だからそれを解決させて貰ったわ」

 マーキングから出た電気は火力を増して対象の人間を包み込む。
 強烈な電撃への対策が無ければ意識を刈り取られる衝撃を受ける事となる。
 もしも耐えたとしても、他にも優秀な仲間が沢山いる。

 「カグラはそこでトローネ伯爵を守りなさい! 外に逃げた者、或いは他にも紛れ込んでいる者は他の仲間が対処するわ!」

 「理解した」

 「それと爆弾、発見が早かったのが幸いだったわね。もう解体したそうよ⋯⋯それも4つ全部」

 「理解した」

 これでこのパーティは無事に終わるだろう。
 血が一つも流れない⋯⋯最高の結末では無いか。

 ⋯⋯慌てて逃げ惑う参加者の貴族達。
 うん、無事に終わるは撤回だな。

 「カグラ様」

 「はい」

 「ありがとうございます」

 「仕事だから⋯⋯感謝は要らない。だが、もう既に渡された感謝はありがたく受け取ろう」

 唖然として俺の事を見る事しか出来ない騎士達。
 
 ミネスは今までに見せたどの笑顔よりも⋯⋯最高に明るく元気で、年相応の笑みを浮かべた。

 「⋯⋯特別報酬にしては⋯⋯かなり高級だな」
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