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「なぁ、俺達今日、すっげぇイラつく事があってよぉ。ストレス発散したいんだわ」
「それと、俺がなんの関係に?」
今日は金曜日、ミニテストが数学の時間に行われていた。
芹沢、阿久津、我妻の三人は酷い点数で、生徒の前で先生に怒られていた。
それがストレスになったのだろう。見るからに怒りが剥き出しだった。
「カラオケとか行きたいから金、出せよ。それ以上は言わなくても分かってるだろなぁ?」
「さっぱり分からん! お前らはダンジョンに行ってるなら自分達で稼げよ。モンスターを倒している方がストレス発散になるんじゃないか?」
そう嘲笑うと、顔面に回し蹴りが飛んで来た。
演技っぽく吹き飛んで、躱しておく。
流石に顔面に受けるのは良くない。
「霧外、友達だろ? だから、頼むって」
阿久津が倒れた俺を見下ろしながらそう言って来る。
「友達なら、せびるんじゃなくて誘うんじゃないか?」
「キモイんだよヘラヘラしやがって!」
グッ。腹を蹴られた。
我妻が前に来る。
「お前がステータス持ってたら、PVP仕掛けて、ぶち殺してやるのに。ほら、多少のサンドバッグで許してやるから、金、貸して」
「ちゃんと返す書面が欲しい」
「何、返さないといけないの? それは嫌だなぁ。じゃあ、ちょうだい?」
「その理屈が分からない」
「あぁもう良いだろ、阿久津我妻! こいつをストレス発散機にしてやろうぜ!」
今から苛烈な暴力が始まる⋯⋯そう思った。
「こっちです先生!」
「ちぃ、流石にクラス担任以外に見つかるのはヤバい。行くぞ」
来たのは愛梨たった一人だった。
「⋯⋯なんで分かってて行くの?」
「⋯⋯なんで受け入れていると分かっているのに助けてくれるの?」
質問に質問で返す事は止めるべきだ。めっちゃウザイ。
だけど俺はそうした。
だって、彼女は既に答えを知っているから。
「日向くんが、暴力にひれ伏す所なんて見たくない」
「じゃあ見なければ?」
「それも嫌! 日向くんは酷く後悔しているかもしれないけどさ、私は⋯⋯」
「ほら、次の授業が始まる。さっさと行くぞ」
何かを言いかけた愛梨を俺は無理矢理止めた。
俺のやってしまった事を肯定されたらきっと、今の生活が壊れるから。
俺は彼らに反撃をしてしまう。
反撃で俺が有利になってしまえば⋯⋯昔の俺に戻ってしまう。
それだけは、俺の心が許さなかった。
さて、現在日陰さんのチャンネル登録者数はなんと十万人を突破しました。パチパチパチ。
実はその半分以上がリイアたんのファンと言う事が判明しまして⋯⋯しかも俺が撮ってない動画が沢山ネットに飛び回っていた。
例えば、血走った目でオーガと戦闘を繰り広げる日陰さん。猛ダッシュでエネミーを探す日陰さん。踏むと矢が飛んで来るトラップで、その場で矢を弾き返してしまうのでトラップをずっと踏んで起動してを繰り返している日陰さん。
同じダンジョンに居た人達によって俺はリークされていた。
助っ人モードのリイアは何回か確認されたが、武器は見えなかったらしいショート動画が上がっている。
一瞬で移動してエネミーを真っ二つにしている助っ人リイア。
尚、完璧に見た目が見えた訳ではなく、日陰の助っ人リイアと同じローブだからと言う憶測だ。嘘の可能性はある。
最後にモンスターがエネミーを瞬殺して移動している図だ。
日陰さんの動画にも登場したタコ男が範囲内のエネミーの影から尖った触手を出して貫き倒している動画や、エネミーで負けそうになっている人を助けた瞬間や、トラップから守る動画まで。
タコ男は主から離れても沢山の活躍をしているとバズっていた。
日陰さんの本体はタコ男説やリイアの弟子説、リア友説、実はリイアはクランに所属してその後輩が日陰と言う説。
色々な説が飛び回っていた。
そして、日陰や助っ人リイア、タコ男が確認されたダンジョンでは二足歩行のキモイモンスターもエネミーを倒しまくり、怪我を負った探索者を回復しまわっている様子もショート動画で発見した。SNSにも載っている。
オーガを瞬殺しながら回復魔法も使えてしまう怪物が。
エネミーを倒すモンスターなので当然、モンスターカードを使用している訳だ。
同ダンジョンに日陰さんが居る事で、その召喚者が日陰さんだと確定されたらしい。なんで?
それにより、高ランクモンカドを二枚も所持している事が世間に広まった。今も二枚だ。
四級も高い部類なのだろうが、億にはいかないので俺の中ではそこまで評価は高くない。
寧ろ、確定保証の最低ランクと考えれば低いだろう。今は持ってないけど。
「明日から土日休みだ。全力でポイントを集めるぞ。待ってろシークレットメイドちゃん!」
ある程度の情報収集が終わったので、俺は家を出る事にした。
部屋の前では、少し怒った様子の愛梨が立っていた。
「何?」
「⋯⋯日向くんってそんなにメイド、好きなの?」
「あぁ! あれ程魅力を感じる服装はないだろう。確かにチャイナ服やナースも良いかもしれない。だが、俺はメイド推しなんだ!」
「ふ、ふーん。も、もしもさ。もしもの話しね? わ、私が、その。メイド服、着たらどう思う?」
「え、普通に引く」
俺が好きなのは確かにメイド服を着た女性キャラだ。
あくまで『キャラ』であり二次元の話をしている。
言ってはとても悪いと思うが、俺的には三次元のメイドには全く興味が無い。
幼馴染の愛梨がそんな服装をした日には、俺は愛梨の目を当分見れなくなる。
「⋯⋯日向くん」
「なーに?」
「今から所持金が無くなるまで、PVPしよっか。ノーマル設定で」
「俺に勝ち目ないし無意味なので嫌だ」
「問答無用で一回戦じゃあああ!」
時間が勿体ないのでダンジョンに移動した。
昨日と同じダンジョンだ。攻略されてないので同じ場所に残っていた。
「俺は日曜の夜まで潜るつもりだから、途中で帰って良いぞ」
「嫌!⋯⋯じゃなくて、日向くん一人だと危ないと思うので、探索者としての先輩である私が傍に居ます! きちんと許可は貰ってるからね。知識も経験も豊富なんだから、頼りなさいって」
「そんな愛梨先輩に頼った結果、リイアたんとの繋がりが判明して、弟子説が濃厚になっているんだが? そもそもポイントを全力で集めるから一緒に行動してないんだが?」
「それはあれだよ。人は誰しも一度や二度の失敗をする。人は失敗から学んで進化するんだよ!」
同じ流派の剣術だから仕方ないけどさ。
俺の方が小さい頃からやってるし、俺の方が長くやってるのに。⋯⋯いや、俺途中から辞めてるし愛梨の方が長い?
弟子って、まぁたしかにさ、同じ流派を知らない人から見たらリイアの方が上手いかもしれないよ?
でもそれは素のアバターレベルが違うからさ、仕方ないじゃん?
「さて、今日も別れて全力でポイント集めだ。⋯⋯そう言えばリイアたんの雑談配信を最近は見ないな」
チラッと横を見る。
「私は愛梨だよ?」
「⋯⋯そうだな」
友達にはバレてなかったらしいので、今日も一時的にパーティ設定をしようと決めた。
友達とのパーティ解散も一度考えたが、後からまたやるのが面倒なのと、言い訳出来ないかららしい。
まぁ、不都合がないのにパーティを解散する必要は無いわな。
「せめて私がリーダーじゃなければやりようはあったんだけどね」
あるの?
それから俺達は時々色んな人達に見守れながら、ひたすらエネミーを狩り続けた。
モンカドのモンスターと愛梨の討伐数がとても速くて助かってます。
今の俺では、三十分程の戦闘でオーガ一体、二体同時だと倒せないレベルだった。
「純粋なレベル不足だな。武器は通用する筈なのに⋯⋯」
ここまでレベルが重要だとは。
レベルを10超えた辺りから身体能力が向上しているのを感じるようにはなっている。
「やっぱ、パーティ組んでいるとレベルが上がりにくいな」
つーか、経験値入ってるよね?
500レベル以上が平均のこのパーティで、ちゃんとオーガから経験値ドロップしてるよね?
レベル差がありすぎて心配になって来た。
そして俺達は前回と合わせてイベントガチャ百連を終えた。
結果として、SSRが7枚も出た。
「ちくしょう確率ゴミ過ぎるだろ! 無課金だぞ! 無課金! もう、土曜の昼だぞ! ふざけんじゃねぇぇぇぇぇ!」
「ちょ、日向くん。流石に大声すぎるよ。言葉遣い言葉遣い。後、スキルバレる恐れがあるからシーだよ!」
一級は手に入ったけど、シークレットがまだ手に入ってない。
まだ続けないと。
ちなみに、人と会っても話しかけられる事はなかった。
流石に俺の鬼気迫る表情を見たら話しかけにくいのだろう。
「気晴らしに現実世界に戻るか。データの飯は美味しくない」
「だね」
ご飯はアプリのショップで一応買えるが、美味しくない。もっと味覚再現を要求するよ。
ファミレスで昼食を食べて(金はデータ通貨を電子マネーに換金した)、ネカフェで一時間の仮眠を取って、再びダンジョンに潜る。
その間ずっと愛梨が傍に居たので、周りの目が痛かった。
「なんであんな男と?」って感じの視線や言葉。めっちゃ聞こえるの。
その度に愛梨がまじで殺しそうな程の殺気と視線を送っていたのが怖った。
二百連突破だやったー(棒)。
「ふざけんじゃあねぇ!」
スマホを地面に叩き落とすと、光の粒子となって消えて、俺の手元に戻る。
データ世界ならスマホだけは無限に再生する。
武器防具は壊れたら終わり、アバターも一千万無いと復活出来ない。
「あはは⋯⋯大変だね」
もう、日曜の朝だぞ!
近くの温泉に入って疲れを癒した程だ。
風呂上がりの愛梨の表情が気になったが、特に触れなかったらブチギレられた。本当に怖かったです。
そして三百連、丁度でようやく彼女は来てくれた。
天井システムが隠し要素としてあるんじゃないかって程にピッタリ三百の最後に出て来たのだ(確定枠のみ)。
嬉しい。
「ついに、ついに来たぞシークレットがああああああああああああああ!」
やりきった!
帰ったら寝よう。めっちゃ寝よう。疲れた。
現実世界では全く汚れとか怪我はないのだが、精神的な疲れは引き継ぐのだ。
もう夜だああああ!
お礼に一級のモンカドをあげようとしたら、丁重に断られた。
そもそも愛梨はモンカドを使わないらしい。装備的な関係で。
珍しい。モンスターの力は偉大だからこそ、あそこまでの値が付くのに。
金曜の夜から日曜の夜までの成果三百連。
四級124、三級101、二級50、一級25。他R類。
シークレット1枚。
イベントガチャなので全てがメイドの名がある。
そして今後俺達はシークレット狙いで無課金努力はきっとしないだろう。
もう、色々とやりきった気がする。
次やるとしたら、もっと上のランクだろう。
そして、俺達の活動記録は第三者によるショート動画で広まる事となる。
そう、俺が効率強化の為に最大召喚可能数である四体まで使った事が。
タコ男やカムイを引っ込めて、戦闘特化の一級モンカドで暴れて貰った事が。
その全てがメイド服を着込んでいる事が。
これが後に日陰が男である可能性が出るきっかけとなるのは、この時は全く想像していなかった。
そもそもそこまで広がるとか、考えてはいなかった。
「それと、俺がなんの関係に?」
今日は金曜日、ミニテストが数学の時間に行われていた。
芹沢、阿久津、我妻の三人は酷い点数で、生徒の前で先生に怒られていた。
それがストレスになったのだろう。見るからに怒りが剥き出しだった。
「カラオケとか行きたいから金、出せよ。それ以上は言わなくても分かってるだろなぁ?」
「さっぱり分からん! お前らはダンジョンに行ってるなら自分達で稼げよ。モンスターを倒している方がストレス発散になるんじゃないか?」
そう嘲笑うと、顔面に回し蹴りが飛んで来た。
演技っぽく吹き飛んで、躱しておく。
流石に顔面に受けるのは良くない。
「霧外、友達だろ? だから、頼むって」
阿久津が倒れた俺を見下ろしながらそう言って来る。
「友達なら、せびるんじゃなくて誘うんじゃないか?」
「キモイんだよヘラヘラしやがって!」
グッ。腹を蹴られた。
我妻が前に来る。
「お前がステータス持ってたら、PVP仕掛けて、ぶち殺してやるのに。ほら、多少のサンドバッグで許してやるから、金、貸して」
「ちゃんと返す書面が欲しい」
「何、返さないといけないの? それは嫌だなぁ。じゃあ、ちょうだい?」
「その理屈が分からない」
「あぁもう良いだろ、阿久津我妻! こいつをストレス発散機にしてやろうぜ!」
今から苛烈な暴力が始まる⋯⋯そう思った。
「こっちです先生!」
「ちぃ、流石にクラス担任以外に見つかるのはヤバい。行くぞ」
来たのは愛梨たった一人だった。
「⋯⋯なんで分かってて行くの?」
「⋯⋯なんで受け入れていると分かっているのに助けてくれるの?」
質問に質問で返す事は止めるべきだ。めっちゃウザイ。
だけど俺はそうした。
だって、彼女は既に答えを知っているから。
「日向くんが、暴力にひれ伏す所なんて見たくない」
「じゃあ見なければ?」
「それも嫌! 日向くんは酷く後悔しているかもしれないけどさ、私は⋯⋯」
「ほら、次の授業が始まる。さっさと行くぞ」
何かを言いかけた愛梨を俺は無理矢理止めた。
俺のやってしまった事を肯定されたらきっと、今の生活が壊れるから。
俺は彼らに反撃をしてしまう。
反撃で俺が有利になってしまえば⋯⋯昔の俺に戻ってしまう。
それだけは、俺の心が許さなかった。
さて、現在日陰さんのチャンネル登録者数はなんと十万人を突破しました。パチパチパチ。
実はその半分以上がリイアたんのファンと言う事が判明しまして⋯⋯しかも俺が撮ってない動画が沢山ネットに飛び回っていた。
例えば、血走った目でオーガと戦闘を繰り広げる日陰さん。猛ダッシュでエネミーを探す日陰さん。踏むと矢が飛んで来るトラップで、その場で矢を弾き返してしまうのでトラップをずっと踏んで起動してを繰り返している日陰さん。
同じダンジョンに居た人達によって俺はリークされていた。
助っ人モードのリイアは何回か確認されたが、武器は見えなかったらしいショート動画が上がっている。
一瞬で移動してエネミーを真っ二つにしている助っ人リイア。
尚、完璧に見た目が見えた訳ではなく、日陰の助っ人リイアと同じローブだからと言う憶測だ。嘘の可能性はある。
最後にモンスターがエネミーを瞬殺して移動している図だ。
日陰さんの動画にも登場したタコ男が範囲内のエネミーの影から尖った触手を出して貫き倒している動画や、エネミーで負けそうになっている人を助けた瞬間や、トラップから守る動画まで。
タコ男は主から離れても沢山の活躍をしているとバズっていた。
日陰さんの本体はタコ男説やリイアの弟子説、リア友説、実はリイアはクランに所属してその後輩が日陰と言う説。
色々な説が飛び回っていた。
そして、日陰や助っ人リイア、タコ男が確認されたダンジョンでは二足歩行のキモイモンスターもエネミーを倒しまくり、怪我を負った探索者を回復しまわっている様子もショート動画で発見した。SNSにも載っている。
オーガを瞬殺しながら回復魔法も使えてしまう怪物が。
エネミーを倒すモンスターなので当然、モンスターカードを使用している訳だ。
同ダンジョンに日陰さんが居る事で、その召喚者が日陰さんだと確定されたらしい。なんで?
それにより、高ランクモンカドを二枚も所持している事が世間に広まった。今も二枚だ。
四級も高い部類なのだろうが、億にはいかないので俺の中ではそこまで評価は高くない。
寧ろ、確定保証の最低ランクと考えれば低いだろう。今は持ってないけど。
「明日から土日休みだ。全力でポイントを集めるぞ。待ってろシークレットメイドちゃん!」
ある程度の情報収集が終わったので、俺は家を出る事にした。
部屋の前では、少し怒った様子の愛梨が立っていた。
「何?」
「⋯⋯日向くんってそんなにメイド、好きなの?」
「あぁ! あれ程魅力を感じる服装はないだろう。確かにチャイナ服やナースも良いかもしれない。だが、俺はメイド推しなんだ!」
「ふ、ふーん。も、もしもさ。もしもの話しね? わ、私が、その。メイド服、着たらどう思う?」
「え、普通に引く」
俺が好きなのは確かにメイド服を着た女性キャラだ。
あくまで『キャラ』であり二次元の話をしている。
言ってはとても悪いと思うが、俺的には三次元のメイドには全く興味が無い。
幼馴染の愛梨がそんな服装をした日には、俺は愛梨の目を当分見れなくなる。
「⋯⋯日向くん」
「なーに?」
「今から所持金が無くなるまで、PVPしよっか。ノーマル設定で」
「俺に勝ち目ないし無意味なので嫌だ」
「問答無用で一回戦じゃあああ!」
時間が勿体ないのでダンジョンに移動した。
昨日と同じダンジョンだ。攻略されてないので同じ場所に残っていた。
「俺は日曜の夜まで潜るつもりだから、途中で帰って良いぞ」
「嫌!⋯⋯じゃなくて、日向くん一人だと危ないと思うので、探索者としての先輩である私が傍に居ます! きちんと許可は貰ってるからね。知識も経験も豊富なんだから、頼りなさいって」
「そんな愛梨先輩に頼った結果、リイアたんとの繋がりが判明して、弟子説が濃厚になっているんだが? そもそもポイントを全力で集めるから一緒に行動してないんだが?」
「それはあれだよ。人は誰しも一度や二度の失敗をする。人は失敗から学んで進化するんだよ!」
同じ流派の剣術だから仕方ないけどさ。
俺の方が小さい頃からやってるし、俺の方が長くやってるのに。⋯⋯いや、俺途中から辞めてるし愛梨の方が長い?
弟子って、まぁたしかにさ、同じ流派を知らない人から見たらリイアの方が上手いかもしれないよ?
でもそれは素のアバターレベルが違うからさ、仕方ないじゃん?
「さて、今日も別れて全力でポイント集めだ。⋯⋯そう言えばリイアたんの雑談配信を最近は見ないな」
チラッと横を見る。
「私は愛梨だよ?」
「⋯⋯そうだな」
友達にはバレてなかったらしいので、今日も一時的にパーティ設定をしようと決めた。
友達とのパーティ解散も一度考えたが、後からまたやるのが面倒なのと、言い訳出来ないかららしい。
まぁ、不都合がないのにパーティを解散する必要は無いわな。
「せめて私がリーダーじゃなければやりようはあったんだけどね」
あるの?
それから俺達は時々色んな人達に見守れながら、ひたすらエネミーを狩り続けた。
モンカドのモンスターと愛梨の討伐数がとても速くて助かってます。
今の俺では、三十分程の戦闘でオーガ一体、二体同時だと倒せないレベルだった。
「純粋なレベル不足だな。武器は通用する筈なのに⋯⋯」
ここまでレベルが重要だとは。
レベルを10超えた辺りから身体能力が向上しているのを感じるようにはなっている。
「やっぱ、パーティ組んでいるとレベルが上がりにくいな」
つーか、経験値入ってるよね?
500レベル以上が平均のこのパーティで、ちゃんとオーガから経験値ドロップしてるよね?
レベル差がありすぎて心配になって来た。
そして俺達は前回と合わせてイベントガチャ百連を終えた。
結果として、SSRが7枚も出た。
「ちくしょう確率ゴミ過ぎるだろ! 無課金だぞ! 無課金! もう、土曜の昼だぞ! ふざけんじゃねぇぇぇぇぇ!」
「ちょ、日向くん。流石に大声すぎるよ。言葉遣い言葉遣い。後、スキルバレる恐れがあるからシーだよ!」
一級は手に入ったけど、シークレットがまだ手に入ってない。
まだ続けないと。
ちなみに、人と会っても話しかけられる事はなかった。
流石に俺の鬼気迫る表情を見たら話しかけにくいのだろう。
「気晴らしに現実世界に戻るか。データの飯は美味しくない」
「だね」
ご飯はアプリのショップで一応買えるが、美味しくない。もっと味覚再現を要求するよ。
ファミレスで昼食を食べて(金はデータ通貨を電子マネーに換金した)、ネカフェで一時間の仮眠を取って、再びダンジョンに潜る。
その間ずっと愛梨が傍に居たので、周りの目が痛かった。
「なんであんな男と?」って感じの視線や言葉。めっちゃ聞こえるの。
その度に愛梨がまじで殺しそうな程の殺気と視線を送っていたのが怖った。
二百連突破だやったー(棒)。
「ふざけんじゃあねぇ!」
スマホを地面に叩き落とすと、光の粒子となって消えて、俺の手元に戻る。
データ世界ならスマホだけは無限に再生する。
武器防具は壊れたら終わり、アバターも一千万無いと復活出来ない。
「あはは⋯⋯大変だね」
もう、日曜の朝だぞ!
近くの温泉に入って疲れを癒した程だ。
風呂上がりの愛梨の表情が気になったが、特に触れなかったらブチギレられた。本当に怖かったです。
そして三百連、丁度でようやく彼女は来てくれた。
天井システムが隠し要素としてあるんじゃないかって程にピッタリ三百の最後に出て来たのだ(確定枠のみ)。
嬉しい。
「ついに、ついに来たぞシークレットがああああああああああああああ!」
やりきった!
帰ったら寝よう。めっちゃ寝よう。疲れた。
現実世界では全く汚れとか怪我はないのだが、精神的な疲れは引き継ぐのだ。
もう夜だああああ!
お礼に一級のモンカドをあげようとしたら、丁重に断られた。
そもそも愛梨はモンカドを使わないらしい。装備的な関係で。
珍しい。モンスターの力は偉大だからこそ、あそこまでの値が付くのに。
金曜の夜から日曜の夜までの成果三百連。
四級124、三級101、二級50、一級25。他R類。
シークレット1枚。
イベントガチャなので全てがメイドの名がある。
そして今後俺達はシークレット狙いで無課金努力はきっとしないだろう。
もう、色々とやりきった気がする。
次やるとしたら、もっと上のランクだろう。
そして、俺達の活動記録は第三者によるショート動画で広まる事となる。
そう、俺が効率強化の為に最大召喚可能数である四体まで使った事が。
タコ男やカムイを引っ込めて、戦闘特化の一級モンカドで暴れて貰った事が。
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