物理系魔法少女は今日も魔物をステッキでぶん殴る〜会社をクビになった俺、初配信をうっかりライブにしてしまい、有名になったんだが?〜

ネリムZ

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物理系魔法少女、レベルアップを目指してライブする

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 紗奈ちゃんがあそこまでオラオラ系になる友達がいた事を今日知った。

 昔の紗奈ちゃんぽくて嬉しい気持ちになりながら、俺は受付に紗奈ちゃんが来るのを待っていた。

 「今日は生配信? それともうっかり生配信?」

 「どっちもライブな事に疑問を持ちますが、普通にライブです⋯⋯てか、なぜ知っている?」

 「うっかり撮影か~凄いっしょ?」

 「それはもううっかりじゃないでしょ」

 ロリ職員と慣れ親しんだ会話をしている。この人とは、紗奈ちゃんを待っている間に話している。

 イタズラっぽく笑う彼女に気になる事は一つ、いや二つ。

 一つは毎回いきなり出現するのと、二つ目は年齢だ。どっちも聞きづらいので呑み込んでる。

 適切な距離を保っているからか、ギルド職員だからか、紗奈ちゃんが反応する事は無い。

 受付に来たので向かい、今日の予定を話しながらステータスカードを貰う。

 「アニマル庭⋯⋯推奨レベル3だけど、星夜さん少し天狗になってない? へし折るよ?」

 「怖いな。安全は意識してるよ。ただ、一レベルで難易度もそこまで高くないなら問題ないと思ったんだ。レベルアップも早いだろうし、それより報酬の方」

 「うん。今やるね」

 紗奈ちゃんが慣れた手つきでタブレットを操作している。

 「成功報酬に適正レベルが足りない、イレギュラー、さらに推奨レベル4の魔物との遭遇の危険手当などを付け足して、500万円」

 えっぐ!

 卵じゃないからな!

 嘘だろ? 普通に社会人時代の年収を超えたんだけど!

 一ヶ月だから、月収で年収超えたんだけど! ま、安定している訳じゃないから、なんとも言えないけど。

 それでも、凄いだろ。

 やばー! 興奮が止まらん。

 「⋯⋯から、本部への移動に使用した転移魔法二回分の総額百万円を差し引いた四百万⋯⋯そこから諸々の税金が引かれる」

 「⋯⋯あの拒否権なかった招き入れで差し引かれるの?」

 紗奈ちゃんが拳を握って、少しだけ震わせている。

 「報酬は自分の懐から出したんでしょうね」

 怒りか悔しさか、はたまた違う感情か。

 「お世話になった一人だから悪く言いたくないけど、セコい。しかも一時的にパーティを組んだ事も把握されてたし⋯⋯それがバレなければもっと取れた」

 「搾り取ろうとしてたの?」

 お世話になった人に?

 俺は紗奈ちゃんの探索者時代を全然知らないな。

 「とりあえず振り込んでおくね」

 「うん。よろしく」

 「転移魔法がもっとメジャーだったらなぁ」

 そしたら車とか新幹線とか、必要なくなっちゃうよ。

 企業は困るが、事故が減るので良い事かもしれい。

 ダンジョンに入る。

 一面に広がる草原、遮蔽物として木や岩がある、量産型ダンジョンだ。

 俺はこう言うタイプが一番好き。

 なぜなら、自由に走り回れるからだ。

 「ライブを始めてっと。今日はエルダーワーウルフの討伐を目標だ」

 群れのボスクラスを倒していけば、レベルアップするだろ。

 ライブを始めて、早速走り出す。

 コメントを見る余裕なんてのは無いので、無言で進む。

 「いや、独り言は俺の代名詞だし、無言なのは退屈だな」

 すれ違った魔物は捕まえながら倒して、魔石をしっかりと回収する。

 『誘拐犯の手口やん』
 『魔石を逃さず倒す方法を確立』
 『なんか危険性が上がってない? アカツキちゃん』

 適当に走っているけど、これでちゃんと見つかるよね?

 そう考えながら昼飯を食べる。

 走り回って探していたらいつの間にか空腹になってた。

 今のうちにコメント見るか。

 『お姉ちゃんの作った弁当は美味い?』
 『俺はカップラーメン食べてる』
 『休憩時間』

 『食事の時間』
 『賢者タイム導入の前時間』
 『上のコメが意味不』

 お姉ちゃんの作った弁当?

 あ、ルミナスさんのアレか。

 結局忘れて調べてなかったけど、この様子ならかなり広がってるかもしれんな。

 SNSとかで告知とかはしてるけど、エゴサとかしてないしな。

 まぁ、良いか。

 「この弁当はどんなに腕の良い料理人でも作れんよ」

 本音である。

 『羨ましいな!』
 『家族仲が良い』
 『近親相○の百合を期待しても?』

 『最近変態が増えたな』
 『変態は消えてくれ~』
 『次に行かね?』

 もう少し休憩したい⋯⋯でも弁当は食べ終わったな。

 リュックに片付ける。

 「ん?」

 遠くから走って来る、群れの狼を発見した。

 口に火が溜まって、放たれる。

 ブレスじゃなくて球体だ。

 「動きは細かく、それでいて正確に、そしてスピーディーに」

 習った事を意識しながら蹴る。

 ぐにゃりと曲がり、ゴムのように跳ねて返って行く。これがサッカー。

 流石は推奨レベル3の魔物から放たれる魔法だ。蹴りでも砕けない。

 「これならいちいち掴んで、熱い思いをしなくて良いな」

 『嬉しそう』
 『俺も見れて嬉しい』
 『久しぶりに見た気がする』

 『誰にもできない芸当』
 『風の魔法を全力で使って押し返せばできる芸当ではある』
 『それむちゃくちゃ調整難しいし、検証動画の撮影時間もやばかったろ』

 『やっぱり本家が一番安心して見れる』
 『事務所とかには所属しないんですか?』
 『アカツキちゃんはソロだから良いんだよ』

 『数多くね?』
 『そろそろ魔法ぶん投げて倒しそう』
 『それな』

 一体一体倒すのが面倒になった。

 火球を手に掴む。うーむ、熱い。

 高くジャンプして、群れの集団の中心目掛けて、回転を乗せてぶん投げる。

 サッカーボールくらいのサイズの火球とは思えない程の火力で爆ぜ、周囲の狼にダメージを与える。

 「踵、落とし!」

 さらに大地を砕く攻撃をして、ダメージを加速させる。

 これであらかた片付いた。

 「⋯⋯あれ? 襲って来た数と魔石の数が二つほど合わないな。これだから範囲攻撃は」

 『注意、普通に戦ってたら魔石は壊れずに回収できます』
 『範囲攻撃、攻撃自体は単体攻撃だが、衝撃波が異常』
 『雨時々、脳筋魔法少女の踵』
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