物理系魔法少女は今日も魔物をステッキでぶん殴る〜会社をクビになった俺、初配信をうっかりライブにしてしまい、有名になったんだが?〜

ネリムZ

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物理系魔法少女、契約した

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 「なぜじゃ!」と言われても、いきなり契約しろと言われてする人間は少ないだろう。

 そもそも、何の契約かも分かっていない。

 何よりも、紗奈ちゃんの見た目で俺の隣に立った事がむちゃくちゃ腹が立つ。

 それだけでこいつは信用しないと、俺は決意できる。

 俺ってこんなに乱暴な性格だったけ? 苛立ちが止まらん。

 「ちょっと待つのじゃ。きちんと話すからの?」

 契約とは、アオイさん達の言っていた魔法強化の事らしい。

 「どうじゃ?」

 「断る!」

 「なぜじゃ!」

 「詐欺だろ? それとも俺を煽ってんのか」

 こちとら魔法が使えないんだぞ? 泣くぜ?

 大体、魔法スキルを持ってないと言えるこの俺と契約したところで、意味は無い。

 だから何か裏が確実にある。疑うに決まっている。

 「⋯⋯ん? 主には確かに、わらわを呼び付ける属性を持っているぞ? つまりは幻術系の魔法を扱えるのじゃ。それもわらわが見た感じ、かなり強い」

 「ふーん。まぁどうでも良いけどな!」

 アオイさん達と合流して帰ろう。

 一旦違うダンジョンに行こう。なるべく硬度のある魔物が多いところに。

 そこでバットを振るいたい。本当にイライラしているのだ。

 「待て! 待つのじゃ! デメリットは無いのじゃ。メリットしかないのじゃ!」

 帰ろうとしたら、腰に抱き着かれて離してくれない。引きずっている。

 「止めろ! 引っ付くな! 匂いは着くと取りにくいんだよ」

 「精霊に体臭はないのじゃ!」

 「⋯⋯それもそうか。だからって引っ付くな!」

 どうしてこんなにも契約したがってるんだ?

 大体、それだったら悪印象を与えるなよ。

 「しかたない。詳しく話だけ聞くよ」

 「ありがとうなのじゃ」

 そして手をゆっくりと離される。

 「必殺マジカルシリーズ、本気逃走マジカルエスケープ

 「ちょっ!」

 俺は全力で泉の方に向かって走った。⋯⋯だが、俺の横に奴は居た。

 「精霊の森で精霊から逃げれる訳ないじゃろ?」

 「真顔で言うな! 背後霊か!」

 回し蹴りは木を砕くだけで終わってしまった。攻撃を躱すのが上手い。

 「実はじゃな」

 「話すのかよ」

 「他の精霊達は色んな奴らと契約しとる。じゃがな、わらわだけいないんじゃよ。幻術を扱える人間が少なくての。じゃから頼む!」

 「⋯⋯」

 シラケた目を向ける。

 「嫌なんじゃ! 契約した人数でマウントを取られるのは、もう嫌なんじゃ! 数が多いからなんだ! 契約した奴がレベル9になったからなんじゃ! いなくて何が悪いんじゃ!」

 そんな愚痴を聞く。

 愚痴りが終わったら、上目遣いで懇願してくる。

 「頼む。損はせん。わらわと契約してくれ」

 「天使の下僕らしいけど良いんですか?」

 「それも聞いた。そして今見たのじゃ。主は天使の下僕じゃない。加護を持っておらぬじゃろ? わらわは確信した」

 「まぁ、天使の加護は無いな」

 「⋯⋯そうじゃろ?」

 少しだけ間があった気がする。

 契約しないとずっと付きまとわれそうだな。

 でも、本当にデメリットがないのか気になる。

 「契約して、そっちのメリットは?」

 「万年ゼロ人が無くなる! それと、主が強くなれば自慢できる! 後は自身の力が上がる」

 最後のが一番重要そうで大切そうなのに、一番どうでも良さそうに言うのね。

 承認欲求の塊め。

 「はぁ分かったよ」

 もしかしたら、変身前の俺に変化があるかもしれない。

 「ようやくじゃ! ほい、手の平を合わせるのじゃ。それで契約は完了じゃ」

 手の平を合わせたが、何が変化したのかはいまいち分からなかった。満足したように精霊は消えた。

 二人と合流した。

 「居なかったわ」

 「同じく」

 「そうだね。今日も帰りますか」

 「そうね。また明日来るわ。二人に付き合わせるのは悪いし、明日から一人で来るわね。そちらも諦めたく無ければ、一緒に行きましょう」

 「ミズノはアオイちゃんと行く。夏休みずっと一緒」

 「そう、ね。アカツキさんは?」

 「俺は降りるよ。魔法使えないから意味ないし」

 そう言ったが、二人は信じてくれなかった。

 ステータスカードを確認したら、《幻夢精霊契約者》が増えていた。

 他のダンジョンで魔石を手に入れてから俺は帰る。

 「んで、どうして氷で手錠をしているのでしょうか」

 両手が動きません。周りの目を少しは気にしよう。

 警察来たらどうするのよ?

 「どうして? 簡単だよ、精霊の匂いが濃い⋯⋯密着したでしょ?」

 「⋯⋯いえ」

 「うんうん。誤魔化したいよね。でもさ、私に嘘は通じないよ?」

 怖い怖い。

 「そもそも精霊に実体は無いんだよ。それに性別も⋯⋯」

 「精霊は全員女だよ。それに、実体が無い訳じゃない。⋯⋯星夜さんよりも私の方が知識があるんだよ? で、言い訳あります?」

 「いえ」

 「よろしい」

 俺は俺の家に連行された。

 家の中には昨日と同じように秘書さんがくつろいでいた。

 ただ、笑顔とは裏腹に機嫌の悪い紗奈ちゃんは無言で秘書さんを凍らせようとする。

 だが、彼女は転移で紗奈ちゃんの隣に移動して避けた。すげぇ。

 「⋯⋯ッ!」

 耳打ちでもしたのか、紗奈ちゃんが驚愕して魔法が解除された。

 慌ただしく晩御飯が用意されて、三人で食べて二人は帰って行く。

 「また明日ね星夜さん!」

 「ああ」

 「神宮寺さん、また明日の晩お邪魔しますね」

 「は? 来んなよ」

 紗奈ちゃん口悪い。

 「だって~紗奈のご飯が美味いから~」

 「⋯⋯ほら、行くぞ」

 紗奈ちゃんが照れたぁ。

 「「可愛いが過ぎる」」

 俺と秘書さんは見つめ合い、お指を掲げた。グッジョブ秘書さん。
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