106 / 179
物理系魔法少女、言い訳不可
しおりを挟む
「ただいま~!」
紗奈ちゃんが帰って来たので、俺達三人でお出迎えした。
食材を買ってきていたらしい。
「ごめん。本当は俺が手伝うべきなんだろうけど」
まだ上手く身体が動かせない事を謝罪すると、彼女は笑ってご飯を作り始める。
あのちょっと笑みの浅い笑顔は何か嫌な事があったな。
でもそれを聞いて余計に彼女を不快にしたくはない。
「明日動けそうならギルド行くね」
「うん。それで星夜さん」
「ん?」
「さすがにもう無理だと思うから聞くけどさ、魔法少女アカツキって星夜さんだよね?」
⋯⋯はて?
魔法少女アカツキとは一体なんの事だろうか?
秘書さんが慣れた手つきでテレビを操作して配信サイトを開いて、魔法少女アカツキのチャンネルを開いた。
そして最新のライブ映像であるがしゃどくろ戦を開いて、そこまで時間を早送りする。
「相変わらずパンチばっかりだね」
ユリアさんが楽しそうに見ている。
待って。紗奈ちゃんの発言に驚愕を示しているのが俺しかいないんだけど?
待て待て。
これは俺の男しての沽券に関わる事だ。絶対に誤魔化す必要がある。
何か俺に誤魔化すための手札は存在しないのか?
誰か俺をこの場から救ってくれ。
「別に私は星夜さんが魔法少女として活動してても、大丈夫だからね」
「ち、違うぞ! 第一考えてみて欲しい、この女の子と俺の共通点を!」
紗奈ちゃんが煮込みを始めて手を落ち着かさて、ゆっくりとこちらを見てくる。
その目は全てを察した聖母のように暖かかった。
「一つ、弁当の包に刺繍した絵柄がコレと一致」
見せてくれるのは紗奈ちゃんが普段弁当を包んでいる袋、同時に動画は巻き戻されて弁当を食べている映像に。
がしゃどくろ戦に突入しそうなタイミングだったので、ユリアさんがしょぼんとしている。
俺は冷や汗が止まらない。
「ちなみに言うと、弁当箱と中身も一致ね。毎回写真も撮ってるよ」
徹底的な⋯⋯。
「二つ、ステータスカードが筋力寄りだったので、しっかりとアカツキと戦い方は同じになるよね?」
「そ、そんな事は⋯⋯」
「ステータスカードで武器防具などの購入履歴はしっかり管理されてるんだよ。星夜さんが購入した武器は今までに合計いくつでしょうか?」
ここで質問だと?!
「ちなみに暇な時間にずっと履歴観てるから嘘は通じないぞ」
「逃げ道が、ない」
「自白してるやん」
秘書さんのツッコミすら俺の耳には届かない。
「そしてアカツキちゃんの使ってる武器と道具はそれと一致しているね? ちなみにリュックとかもそうだね」
「リュックは証拠として薄いのでは?」
「うん。だからリュック以外の個性の出るところで証拠出してるでしょ?」
ちくしょう否定できない。
弁当とかが偶然にも被っているのならば、それはコンビニとかそこら辺だ。
完璧な栄養管理などがされた手作り弁当が偶然被りました、なんてのは通じずらい。しかも必ず毎回だ。
紗奈ちゃんの刺繍のある袋もそうだ。
「三つ目、クエストとかそこら辺も合致してるんだよ? さすがに私を侮り過ぎかな~」
「⋯⋯紗奈ちゃんの場合、アカツキを発見したのが偶然だったりしません?」
「⋯⋯しません」
「今の間は!」
これあれか?
たまたまアカツキの動画を見たら俺と確信してしまったパターンか!
ちくしょう。
「それは⋯⋯たまたま」
秘書さんが俺の肩をぽんっと叩く。
「あの場所でネクロマンサーはイレギュラーなんだぞ?」
「ちくしょう魔石を出すんじゃなかった!」
紗奈ちゃんが料理を終えたのか、机に並べていく。ユリアさんも手伝う。
「四つ目、ギルド職員として一人の妻として見過ごせなくなった要因⋯⋯レイド型の単独討伐と報酬のお持ち帰り」
「確かにそれはもう、言い逃れできない」
「待ちな? さっきまで言い逃れしようとしてたの? あんな確定情報になりうる証拠出されて? よーやるわ」
てかしれっと『妻』になっているのだが、それはツッコミを入れるべきか?
やめよう。否定すると拗れる。
「まぁもういまさらだし特に言う事は無いんだけどね」
俺は言い難い感情に支配されて、頭が真っ白になった。
自分の動画を知り合い観られるのがどれだけ恥ずかしい事か⋯⋯しかも完全に見た目が違うしさ。
もういっそ、楽になるか?
「で、もう一度ど言うけど、見過ごせなくなったのがその単独討伐のせいね」
「ん?」
「今や世界中がそれに注目しちゃってるのよ。どのクランもアカツキを手に入れうようと躍起になってる⋯⋯ギルドにも連絡の嵐よ」
「ほれ」
秘書さんがSNSを見せてくれると、確かにトレンド入りしている。
「レイド型は大人数で倒せるレベルの魔物なの。それを単独って」
「運が良かったんだよ」
「運だけじゃ片付けられないと思うけどね」
手は辛うじて動かせるので、ご飯を食べ始める。
「なんとか星夜さんががしゃどくろのドロップアイテムを持ち帰っている情報の漏洩は阻止している状況なの」
「いまさらだが、この話は当事者でもギルド職員でもないのに聞いて良いのか?」
「ユリアさんは大丈夫です。それで星夜さん、問題が報酬の受け取りなんですよ」
ぶっちゃけ全部換金で良いんだけどな。
「てか、ギルドが俺の正体を⋯⋯違うか。知ってたのか本部長も」
ギルドもアカツキを探すと考えたが、本部長は知っている可能性がある。
そう思い、呟いて秘書さんを見ると、親指を上げていた。
なるほどねぇ。
「だから明日はコイツ⋯⋯」
「コイツ言うな」
「⋯⋯の転移で支部長室に一旦行って、報酬の手続きをやろうか。アカツキちゃんを求めるクラン対策も支部長と一緒に考えようね」
なんか面倒な事になり始めたな。
俺頑張ったのに。
「ちなみに本部長も入るらしいよ」
秘書さんがご飯を食べながらそんな事を言った。
紗奈ちゃんが帰って来たので、俺達三人でお出迎えした。
食材を買ってきていたらしい。
「ごめん。本当は俺が手伝うべきなんだろうけど」
まだ上手く身体が動かせない事を謝罪すると、彼女は笑ってご飯を作り始める。
あのちょっと笑みの浅い笑顔は何か嫌な事があったな。
でもそれを聞いて余計に彼女を不快にしたくはない。
「明日動けそうならギルド行くね」
「うん。それで星夜さん」
「ん?」
「さすがにもう無理だと思うから聞くけどさ、魔法少女アカツキって星夜さんだよね?」
⋯⋯はて?
魔法少女アカツキとは一体なんの事だろうか?
秘書さんが慣れた手つきでテレビを操作して配信サイトを開いて、魔法少女アカツキのチャンネルを開いた。
そして最新のライブ映像であるがしゃどくろ戦を開いて、そこまで時間を早送りする。
「相変わらずパンチばっかりだね」
ユリアさんが楽しそうに見ている。
待って。紗奈ちゃんの発言に驚愕を示しているのが俺しかいないんだけど?
待て待て。
これは俺の男しての沽券に関わる事だ。絶対に誤魔化す必要がある。
何か俺に誤魔化すための手札は存在しないのか?
誰か俺をこの場から救ってくれ。
「別に私は星夜さんが魔法少女として活動してても、大丈夫だからね」
「ち、違うぞ! 第一考えてみて欲しい、この女の子と俺の共通点を!」
紗奈ちゃんが煮込みを始めて手を落ち着かさて、ゆっくりとこちらを見てくる。
その目は全てを察した聖母のように暖かかった。
「一つ、弁当の包に刺繍した絵柄がコレと一致」
見せてくれるのは紗奈ちゃんが普段弁当を包んでいる袋、同時に動画は巻き戻されて弁当を食べている映像に。
がしゃどくろ戦に突入しそうなタイミングだったので、ユリアさんがしょぼんとしている。
俺は冷や汗が止まらない。
「ちなみに言うと、弁当箱と中身も一致ね。毎回写真も撮ってるよ」
徹底的な⋯⋯。
「二つ、ステータスカードが筋力寄りだったので、しっかりとアカツキと戦い方は同じになるよね?」
「そ、そんな事は⋯⋯」
「ステータスカードで武器防具などの購入履歴はしっかり管理されてるんだよ。星夜さんが購入した武器は今までに合計いくつでしょうか?」
ここで質問だと?!
「ちなみに暇な時間にずっと履歴観てるから嘘は通じないぞ」
「逃げ道が、ない」
「自白してるやん」
秘書さんのツッコミすら俺の耳には届かない。
「そしてアカツキちゃんの使ってる武器と道具はそれと一致しているね? ちなみにリュックとかもそうだね」
「リュックは証拠として薄いのでは?」
「うん。だからリュック以外の個性の出るところで証拠出してるでしょ?」
ちくしょう否定できない。
弁当とかが偶然にも被っているのならば、それはコンビニとかそこら辺だ。
完璧な栄養管理などがされた手作り弁当が偶然被りました、なんてのは通じずらい。しかも必ず毎回だ。
紗奈ちゃんの刺繍のある袋もそうだ。
「三つ目、クエストとかそこら辺も合致してるんだよ? さすがに私を侮り過ぎかな~」
「⋯⋯紗奈ちゃんの場合、アカツキを発見したのが偶然だったりしません?」
「⋯⋯しません」
「今の間は!」
これあれか?
たまたまアカツキの動画を見たら俺と確信してしまったパターンか!
ちくしょう。
「それは⋯⋯たまたま」
秘書さんが俺の肩をぽんっと叩く。
「あの場所でネクロマンサーはイレギュラーなんだぞ?」
「ちくしょう魔石を出すんじゃなかった!」
紗奈ちゃんが料理を終えたのか、机に並べていく。ユリアさんも手伝う。
「四つ目、ギルド職員として一人の妻として見過ごせなくなった要因⋯⋯レイド型の単独討伐と報酬のお持ち帰り」
「確かにそれはもう、言い逃れできない」
「待ちな? さっきまで言い逃れしようとしてたの? あんな確定情報になりうる証拠出されて? よーやるわ」
てかしれっと『妻』になっているのだが、それはツッコミを入れるべきか?
やめよう。否定すると拗れる。
「まぁもういまさらだし特に言う事は無いんだけどね」
俺は言い難い感情に支配されて、頭が真っ白になった。
自分の動画を知り合い観られるのがどれだけ恥ずかしい事か⋯⋯しかも完全に見た目が違うしさ。
もういっそ、楽になるか?
「で、もう一度ど言うけど、見過ごせなくなったのがその単独討伐のせいね」
「ん?」
「今や世界中がそれに注目しちゃってるのよ。どのクランもアカツキを手に入れうようと躍起になってる⋯⋯ギルドにも連絡の嵐よ」
「ほれ」
秘書さんがSNSを見せてくれると、確かにトレンド入りしている。
「レイド型は大人数で倒せるレベルの魔物なの。それを単独って」
「運が良かったんだよ」
「運だけじゃ片付けられないと思うけどね」
手は辛うじて動かせるので、ご飯を食べ始める。
「なんとか星夜さんががしゃどくろのドロップアイテムを持ち帰っている情報の漏洩は阻止している状況なの」
「いまさらだが、この話は当事者でもギルド職員でもないのに聞いて良いのか?」
「ユリアさんは大丈夫です。それで星夜さん、問題が報酬の受け取りなんですよ」
ぶっちゃけ全部換金で良いんだけどな。
「てか、ギルドが俺の正体を⋯⋯違うか。知ってたのか本部長も」
ギルドもアカツキを探すと考えたが、本部長は知っている可能性がある。
そう思い、呟いて秘書さんを見ると、親指を上げていた。
なるほどねぇ。
「だから明日はコイツ⋯⋯」
「コイツ言うな」
「⋯⋯の転移で支部長室に一旦行って、報酬の手続きをやろうか。アカツキちゃんを求めるクラン対策も支部長と一緒に考えようね」
なんか面倒な事になり始めたな。
俺頑張ったのに。
「ちなみに本部長も入るらしいよ」
秘書さんがご飯を食べながらそんな事を言った。
0
あなたにおすすめの小説
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中
あ、まん。@田中子樹
ファンタジー
仕事一筋40年。
結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。
定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。
だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。
唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。
化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。
彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。
現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。
これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜
涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。
ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。
しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。
奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。
そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる