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物理的魔法少女、神器の力に叫ぶ
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佐藤さんの家は元々裕福だったらしい。
しかし、跡目争いによって母親が殺害された。
父親と二人で逃げた佐藤さんはこの家で密かに暮らしていたらしい。
しかし、父親がいつしか神器の存在を耳にして、その力に魅了された。
神器を使用した父親は狂ったように神器使って金を稼ぎ、趣味だった実験を繰り返した。
その実験によって生み出されたのが、人造人間である一号と二号。
魔物の遺伝子を持ちながら人間の身体を持つ二人にはステータスが存在しないが、学習能力と成長速度が長けていた。
しかし、その二人には心が欠けていたらしく、失敗作の烙印が押された。
感情がなく、欲望がなく、何をするにも命令を必要として自分の考えで行動しない人形。
父親はさらに研究を続け、心を人工的に作り出そうとしたらしい。
だが、その時にはもう神器の力に身体は耐えられず、息絶えた。
人間や動物を実験体として使った事はなく、魔石やドロップアイテム、神器を利用しての研究を続けていた父親。
狂った様に研究していたが、その根本にあったのは娘の安全と愛した母親の復活。
娘に情を寄せれば命を使って守ってくれると思った。佐藤さんの父親はそう考えていたらしい。
その家族愛もいつしか歪んでしまったらしいが。
「父がまだ普通でいられた時に残された遺言がこれぞ」
その内容は自分が如何に無力で情けなかったのかが語られていた。
神器に呑まれて禁忌に手を出そうとしていた、世界の調和を破壊しそうだった。自分の愛する娘がいる世界を。
ホムンクルスの研究はしないで欲しい、心を人工的に作ろうなどと考えないで欲しい、平和で安全に生きて欲しい。
それとは矛盾するが、世界の崩壊を防ぐため、この世の神器を破壊して欲しい。
神器を悪用したら簡単にバランスは崩れる。
独裁国家だってできあがるかもしれない。命はおもちゃと成り果てる。
それを防いで欲しい、愚かな父親が残した娘宛の遺言⋯⋯その内容を聞かされた。
「⋯⋯ふむ。具体的に悪用されたらどうなるのか分からんな」
「お前結構ドライだな。ふむ⋯⋯自分が愛した人間が簡単に奪われる。全てを屈服させる人間が目指す事など、くだらぬ事よ」
まぁ、確かに。
俺だったら何をするだろうか⋯⋯特に出てくるモノはないけど、支配欲の強い人は多いだろうな。
力に魅了されて、暴走する⋯⋯どんな話にもありそうな事だ。
「父の様になって欲しくないと言う想いは無い。ただ父が後悔してしまった事を拭いたいのだぞ。それに、楽しいが壊れるのは嫌ぞ」
「今までに悪用した人っているの?」
「いる。例えばスラム街を奴隷都市にした奴、権力者を裏から支配する奴、人の女をひたすらに奪い壊す奴、様々だ」
「その中で選ばれた人は?」
佐藤さんは鼻で笑って、顔を横に振るった。
「いないな。選ばれたのは余とお前と一号と二号しか知らぬ。二号はまだ扱いきれてないがな」
結構身内に固まってんな。
「そう言えば、一号さんと二号さんの心はどうなったんですか?」
「プログラムされたAIじゃないからの。不思議な事に遊び相手にしてたら自然と心が芽生えたぞ」
じゃ、ちゃんと心はあるんだな。
表情とかにはでないけど、それを言葉や行動で伝えているのかもしれない。
それに佐藤さんの事を大切に想っているのは、何となく分かった。
「神器については概ね理解した。それで俺はどうしたら良い?」
「できれば手伝って欲しいとは思う。我々だけじゃ勝てない相手も多い。戦力があるに越した事は無い。だが、お前にはお前の人生もあるからの。引きずり込めぬ」
最初に話は聞いてくれなかったけど、良い人だな。
正直、また世界云々出て来てスケールが大きいんだよ。
俺にできる事は少ない。
「まぁ、何かあったら手伝うかもだし、連絡先は教えれるけど、いる?」
「貰っておく。⋯⋯それとお前の神器についてなんだが」
「うん」
てか、こんなの持ってたらこの人達以外の人にも狙われたりしない?
それはヤダな。
「神力を感じないんだよ今。一旦、あの女の姿になれぬか?」
「なりたくない」
「即答だな。頼む」
頼めたので、一旦目を背けてもらい、俺はステッキを出して変身した。
「良いですよ」
「ふむ。今度は神力を感じる」
その神力とやらが神器から発生されるらしい。
俺の拳から微弱ながら神力を感じるっぽい。
「うん。やはりそうか」
「どうしたんですか?」
「前に使ってもらった時には確信じみたモノがあった。心して聞いてくれ」
ゴクリ、唾を飲み込む。
真剣な眼差しの奥に哀れみを含んだ佐藤さんが、ゆっくりと口を動かす。
「装着維持ギリギリの神力しかないから、使っても効果はない。つまり、光るだけの拳ぞ」
「は?」
つまり、俺の本気攻撃は結局、普通に本気で攻撃しているだけって事か?
神器は強力とか、暗く重い家族愛溢れる遺言や馴れ初めを聞いて、少しだけ感情移入して同情してたりもして、言われたのに!
俺の神器、多分文字化けスキルのアレ、ただ光っているだけかよ!
「そんなんただのデメリットだろ!」
「まぁなんぞ。いきなり攻撃した謝罪の誠意は後日お渡しする予定ぞ。神器に選ばれて尚、神器の力を使えないのは初めてぞ。誇れ!」
「誇れるか!」
なんだその残念なモノを見る目は!
君は危険物質だから俺を攻撃したんだろ!
それがなんだよ! 実質封印みたいな形であって、本人からしたら本気出す度に光って迷惑な神器って!
ふざけんな!
「いっそ聞きたくなかった事実」
「げ、元気だせ!」
しかし、跡目争いによって母親が殺害された。
父親と二人で逃げた佐藤さんはこの家で密かに暮らしていたらしい。
しかし、父親がいつしか神器の存在を耳にして、その力に魅了された。
神器を使用した父親は狂ったように神器使って金を稼ぎ、趣味だった実験を繰り返した。
その実験によって生み出されたのが、人造人間である一号と二号。
魔物の遺伝子を持ちながら人間の身体を持つ二人にはステータスが存在しないが、学習能力と成長速度が長けていた。
しかし、その二人には心が欠けていたらしく、失敗作の烙印が押された。
感情がなく、欲望がなく、何をするにも命令を必要として自分の考えで行動しない人形。
父親はさらに研究を続け、心を人工的に作り出そうとしたらしい。
だが、その時にはもう神器の力に身体は耐えられず、息絶えた。
人間や動物を実験体として使った事はなく、魔石やドロップアイテム、神器を利用しての研究を続けていた父親。
狂った様に研究していたが、その根本にあったのは娘の安全と愛した母親の復活。
娘に情を寄せれば命を使って守ってくれると思った。佐藤さんの父親はそう考えていたらしい。
その家族愛もいつしか歪んでしまったらしいが。
「父がまだ普通でいられた時に残された遺言がこれぞ」
その内容は自分が如何に無力で情けなかったのかが語られていた。
神器に呑まれて禁忌に手を出そうとしていた、世界の調和を破壊しそうだった。自分の愛する娘がいる世界を。
ホムンクルスの研究はしないで欲しい、心を人工的に作ろうなどと考えないで欲しい、平和で安全に生きて欲しい。
それとは矛盾するが、世界の崩壊を防ぐため、この世の神器を破壊して欲しい。
神器を悪用したら簡単にバランスは崩れる。
独裁国家だってできあがるかもしれない。命はおもちゃと成り果てる。
それを防いで欲しい、愚かな父親が残した娘宛の遺言⋯⋯その内容を聞かされた。
「⋯⋯ふむ。具体的に悪用されたらどうなるのか分からんな」
「お前結構ドライだな。ふむ⋯⋯自分が愛した人間が簡単に奪われる。全てを屈服させる人間が目指す事など、くだらぬ事よ」
まぁ、確かに。
俺だったら何をするだろうか⋯⋯特に出てくるモノはないけど、支配欲の強い人は多いだろうな。
力に魅了されて、暴走する⋯⋯どんな話にもありそうな事だ。
「父の様になって欲しくないと言う想いは無い。ただ父が後悔してしまった事を拭いたいのだぞ。それに、楽しいが壊れるのは嫌ぞ」
「今までに悪用した人っているの?」
「いる。例えばスラム街を奴隷都市にした奴、権力者を裏から支配する奴、人の女をひたすらに奪い壊す奴、様々だ」
「その中で選ばれた人は?」
佐藤さんは鼻で笑って、顔を横に振るった。
「いないな。選ばれたのは余とお前と一号と二号しか知らぬ。二号はまだ扱いきれてないがな」
結構身内に固まってんな。
「そう言えば、一号さんと二号さんの心はどうなったんですか?」
「プログラムされたAIじゃないからの。不思議な事に遊び相手にしてたら自然と心が芽生えたぞ」
じゃ、ちゃんと心はあるんだな。
表情とかにはでないけど、それを言葉や行動で伝えているのかもしれない。
それに佐藤さんの事を大切に想っているのは、何となく分かった。
「神器については概ね理解した。それで俺はどうしたら良い?」
「できれば手伝って欲しいとは思う。我々だけじゃ勝てない相手も多い。戦力があるに越した事は無い。だが、お前にはお前の人生もあるからの。引きずり込めぬ」
最初に話は聞いてくれなかったけど、良い人だな。
正直、また世界云々出て来てスケールが大きいんだよ。
俺にできる事は少ない。
「まぁ、何かあったら手伝うかもだし、連絡先は教えれるけど、いる?」
「貰っておく。⋯⋯それとお前の神器についてなんだが」
「うん」
てか、こんなの持ってたらこの人達以外の人にも狙われたりしない?
それはヤダな。
「神力を感じないんだよ今。一旦、あの女の姿になれぬか?」
「なりたくない」
「即答だな。頼む」
頼めたので、一旦目を背けてもらい、俺はステッキを出して変身した。
「良いですよ」
「ふむ。今度は神力を感じる」
その神力とやらが神器から発生されるらしい。
俺の拳から微弱ながら神力を感じるっぽい。
「うん。やはりそうか」
「どうしたんですか?」
「前に使ってもらった時には確信じみたモノがあった。心して聞いてくれ」
ゴクリ、唾を飲み込む。
真剣な眼差しの奥に哀れみを含んだ佐藤さんが、ゆっくりと口を動かす。
「装着維持ギリギリの神力しかないから、使っても効果はない。つまり、光るだけの拳ぞ」
「は?」
つまり、俺の本気攻撃は結局、普通に本気で攻撃しているだけって事か?
神器は強力とか、暗く重い家族愛溢れる遺言や馴れ初めを聞いて、少しだけ感情移入して同情してたりもして、言われたのに!
俺の神器、多分文字化けスキルのアレ、ただ光っているだけかよ!
「そんなんただのデメリットだろ!」
「まぁなんぞ。いきなり攻撃した謝罪の誠意は後日お渡しする予定ぞ。神器に選ばれて尚、神器の力を使えないのは初めてぞ。誇れ!」
「誇れるか!」
なんだその残念なモノを見る目は!
君は危険物質だから俺を攻撃したんだろ!
それがなんだよ! 実質封印みたいな形であって、本人からしたら本気出す度に光って迷惑な神器って!
ふざけんな!
「いっそ聞きたくなかった事実」
「げ、元気だせ!」
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