物理系魔法少女は今日も魔物をステッキでぶん殴る〜会社をクビになった俺、初配信をうっかりライブにしてしまい、有名になったんだが?〜

ネリムZ

文字の大きさ
137 / 179

物理系魔法少女、迷子継続中

しおりを挟む
 『左!』
 『空気を読んで右!』
 『普通にまっすぐ!』

 ホログラム映像として映し出されるコメントに俺は苦笑いを浮かべる。

 コメント欄に従って迷宮を進むって言うのをやって、人と会う事を祈っている。

 既に地図は役に立たない道具と成り果てているし、これなら紗奈ちゃんへの許しも得やすいと思ったからだ。

 残業でもしかたないのだ。そう言う企画なのである。

 コメント欄が暴走しているので、ステッキを中心に立てて、倒れた方向に進む。

 進行方向は右斜めだ。

 「それじゃ、右斜めに行きますか」

 『やった採用された!』
 『くっそ! ステッキ様にもっと媚びを売らなくては!』
 『ちくしょうめえええ!』

 ちなみに進行方向に道なんてのはない。

 前も左右も壁の行き止まりである。

 道がないなら作れば良い、とても単純で簡単な論理だ。

 「右斜めを狙って、パンチ!」

 右斜めを砕いて進み、道が現れたら再びコメントを確認して、最初に見えた方向に進む。

 壁があろうとお構い無しにしてくるので、殴って進んでいる。

 これじゃ安価の迷宮攻略だ。

 『うーん。殴る』
 『背負い投げでいこうぜ?』
 『ステッキを石にして投げる』

 などなど、宝箱に対するコメントが投げられる。

 ここで俺は疑問に思った。『普通に開ける』と言う選択肢が無い。

 「おいおい視聴者達よ。確かに、さっきまで三連続でミミックだったさ。だがな。仏の顔も三度まで、つまりは次こそちゃんとした宝箱なのだよ!」

 『ご都合解釈乙w』
 『仏はニコニコ眺めてるよw』
 『仏様の力すら凌駕してしまうアカツキさんチッスチッス』

 俺が宝箱に近づくと、その箱から手足が生えて、武器を装備して、目が現れて走って来る。

 今回は宝箱その物に変身したミミックのようだ。

 「クソッタレがあああ!」

 怒りのままにステッキを投げると、綺麗に跳ね返り俺に命中した。

 怒りのままにぶん投げたステッキの攻撃力は高く、めちゃくちゃ痛かった。

 「物理攻撃をそのまま反射するのは良くない」

 『アカツキの天敵か?』
 『これってどうやって倒すの?』
 『ピンチか?』

 「こう言う時の対処法は、既に知っている」

 まずは武器を軽く破壊して。背後に回って持ち上げる。

 ジャンプする。

 「物理攻撃は直接しなければ、反射されない!」

 回転して地面に向かってぶん投げて、倒した。

 亀との戦いで学んだ事である。

 物理攻撃を反射してくる酷い奴らは間接的に倒す。

 『そんな方法があったのか!』
 『狭い空間だとこれが一番なのかな?』
 『安全性を考えて奥にぶん投げるのが良かったのでは?』

 『重力もしっかり計算に入れているんだね』
 『地面が崩れますよー』
 『戻るなよ?』

 奥の壁を破壊して先に進む事にする。

 それから安価でのルート選択は進んで、魔物も倒しまくって、探索者用のリュックの大容量も限界に達していた。

 今回は十万近くの収入を確実に得る事ができているだろう。

 さらに配信の広告と投げ銭による金銭が約束されている。

 探索者としても配信者としてもウマウマである。

 問題はそうだな。地理を把握できるような優秀なスキルを持った人が欲しい。

 誰か、俺をここから帰してくれ。

 既に午後の三時。そろそろ帰らないといけない時間帯である。

 五時までには終わりたいぞ。

 「そろそろ誰かと会っても良いと思うんだけどな」

 そう思い、決めた時間内で多くのコメントを得た右側に進むため、壁をこれまたコメントで要望された頭突きで突破する。

 すると、壁の反対側に居たのであろうミノタウロスが目に入った。

 正直もう、倒す必要が無いのである。

 なので、軽くあしらうつもりで腹にキックを入れる。

 今までのミノタウロスと違って、防御姿勢には入ったが、その程度で俺のパワーは止められない。

 だけど耐えられたので、ステッキを強めに脳天に投げてヒットさせ、絶命させた。

 またコメントで次の方向を決めようと思った矢先、声がかけられる。

 そこには四人そこらのパーティが満身創痍の様子で座っていた。

 ミノタウロスとの戦いでかなり疲弊したようだ。血も流してるし。

 「ってこれ、他人の魔物を横取りしたんじゃん! えっと、魔石はいただきませんので⋯⋯」

 「ありがとう、ございます。助かりました」

 結構弱っている。

 『助ける』
 『魔法少女として挨拶をしてから助ける』
 『イキりを決めてから助ける』

 助ける以外の選択肢はない。だって道聞きたいし。

 だが、そのためのアクセントがどんどんとコメントで流れて来る。

 それらをフル無視して、俺はパーティメンバーのところに近寄って、壁際にゆっくりと寄せていく。

 回復するのを待ってからにしよう。

 「も、申し訳、ありませんが、ポーションを」

 「中級のなら持ってるけど、何に使うんですか? この辺にアンデッドはいませんが?」

 「えっと、回復に?」

 ⋯⋯あ、そうか。

 そりゃあそうだ。

 うん。知ってたし。

 常識的な使い方を忘れていたとか、そんなの全くなかったし!

 だからコメント欄で煽んな! 笑うな! ネタにするな!

 ドローンに搭載されているAIもそのコメントを映像にするな! 止まって一定時間経ったら映す設定にしてたの俺だった!

 出したい本音を呑み込んで、俺はリュックからポーションを取り出して、皆にかけていく。

 後は回復待ちだ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中

あ、まん。@田中子樹
ファンタジー
仕事一筋40年。 結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。 定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。 だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。 唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。 化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。 彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。 現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。 これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~

テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。 しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。 ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。 「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」 彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ―― 目が覚めると未知の洞窟にいた。 貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。 その中から現れたモノは…… 「えっ? 女の子???」 これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

処理中です...